新選組の縁側 見た目会議
夕暮れの屯所。
稽古あがりの沖田総司、斎藤一、原田左之助、永倉新八は、縁側でくつろいでいた。
ふいに沖田が湯飲みを置いて、つぶやく。
「僕さ、前から思ってたんだけど。
新選組って、“見た目の方向性”、見事にバラバラだよねえ」
原田が目を丸くする。
「方向性? なんだよそれ」
「だってさ、うちの隊、こう……統一感がないっていうか」
「何言ってる。親や兄弟の集まりじゃないんだから、当たり前だろう?」
永倉が言う。
「うーん、そうなんだけどさ。それにしても、だよ」
沖田は指を一本立てた。
「まず、副長は“近寄りがたいほどのイケメン”」
永倉が即座に頷く。
「いや、別にイケメンだから近寄りがたいってわけじゃないだろ……」
「まあでも、無駄に顔は整ってるな。
しかもあの目つき。反則だよ」
「睨まれると、悪いことしてなくても謝りたくなる」
原田が短くうなずく。
「威圧感がある」
斎藤も、珍しく一言だけ添えた。
「副長は……まあ、絵になる男だな」
「そうでしょうそうでしょう!」
沖田は嬉しそうに言ってから、にやりと目を細める。
「――で、問題は“近藤先生”ですよ」
四人、声をそろえる。
「そこ触れるのかよ!!」
「だって、やっぱり新選組の“顔”じゃん?」
「先生、雰囲気はごついような柔らかいような、威厳もあるんだけど……
なぜか年齢以上に老けて見える時があるんだよね」
原田が腕を組んで唸る。
「いや、漢の顔としては悪くないだろ。苦労が顔に出てるだけだ」
「苦労しすぎなんだよ」
沖田は即答した。
「だって土方さんと一歳しか違わないのに、並ぶと親子みたいだもん」
一瞬、沈黙。
「総司と絡んでる時の先生、完全に孫とじじだしな」
原田が言い、
「左之助、その言い方は……」
と新八が止めるも、
「でも威厳はあるぞ。隊長としては理想だ」
原田は真顔で付け足した。
斎藤がぼそりと。
「……見た目年齢は、問題だな」
沖田は話題を切り替えるように指を折る。
「整理しよう。
斎藤さんは『無口なミステリアス枠』。
原田さんは『血気盛んな兄ちゃん枠』。
新八さんは――」
「待て、嫌な予感がする」
「一般人枠」
「やっぱりか!」
新八が叫ぶ。
「でもアニキって感じ。町にいそうで安心するよ?」
「話しかけやすいし」
原田が笑う。
「確かに、新八は隊の良心だな」
「褒めてるのか、それ」
原田がふと思い出したように聞いた。
「で、お前は何枠なんだ?」
沖田は胸を張って微笑む。
「僕? 無口じゃないミステリアス枠、どう?」
「違うな」
斎藤が即答。
「飼い猫だろ」
原田が続ける。
沖田はちゃぶ台を軽く叩き、
「ニャオ」
と鳴いた。
「ほら、可愛い」
「自分で言うな!」
新八が突っ込む。
沖田は満足そうに締めに入った。
「つまり結論として――
我々新選組は、見た目のジャンルが揃っていない!」
…………。
斎藤が静かに言う。
「……要するに、土方副長はいい男という話だな」
(それだけ言いたかったのだろうが、まわりくどい)
「「「あれは認めざるを得ない。口うるさいけど」」」
その時、廊下の向こうから足音がした。
「おい」
低い声とともに、土方歳三が現れる。
全員、反射的に姿勢を正した。
沖田だけが、にこやかに言う。
「副長。ちょうど見た目の話してたんですよ。
土方さんが隊で一番カッコいいって話!」
「は?」
土方は苦い顔をしつつも、
耳のあたりが、ほんのり赤い。
「……くだらねえこと言ってんじゃねえ」
そう言いながら――
ほんの少しだけ、嬉しそうだった。




