沖田総司 僕には僕の基準がある
屯所の廊下。総司は自分の腹をぽん、と叩きつつ愚痴っていた。
「僕さあ、今の体重ベストだと思うんだよねぇ。
なんで土方さんは、僕を太らせようとするんだ?」
横で見ていた斎藤が眉をひそめる。
「心配してんだよ。お前は細すぎて風に飛ばされそうだってな」
「飛ばないよ!? どんな台風想定してるのさ!」
総司は胸を張る。
「第一さ、剣は自信あるし――いやもう天才? じゃん」
「自分で言うな」
「仕事だって、僕、きっちりだよねえ。」
「問題がありすぎるのはその口だろうな、」
「それにさぁ、“病弱だ”とか言う人いるけど――どこ見てるの。
僕、お腹も壊さないし、熱とかもあまり出さないじゃん?なんでさー」
(顔の色だろ、それと例の祭りな、と斎藤は言いかけたが――)
そのとき、食堂の奥から大きなくしゃみ。
「へぶしっ!!」
現れたのは、腹を押さえた近藤勇。
「……またかよ近藤さん」と土方が額を押さえる。
「うぅ……歳……腹が……」
「はい出たー。ね? 見た? 見たよね?」
総司は袖を引っ張りどや顔。
「太ってる近藤先生のほうが、しょっちゅうお腹壊して怒られてるじゃん?
僕のほうが健康じゃない?」
「おい総司、近藤さんは、たまたま――」
「たまたま? ふふ〜ん?
飲みすぎ、おいしいもの“食・べ・す・ぎ”
体重関係なし〜」
総司は肩をすくめて笑う。
「僕の体重は最適なの。盛るのはやめてね?
ほら、僕ってば繊細な胃腸だし〜
近藤先生みたいに食べすぎてお腹壊すのはまっぴらだもん」
「す,すまん 歳ぃ…その、 薬ないかな」
ちっ,と舌打ちする土方。
「申し訳ない、いたたたた、 ううう、、」と それどころじゃない 近藤。
「ほらぁ。近藤先生、大丈夫?」
「僕のことよりさー、近藤先生の飲み会減らしてあげてよ、土方さん」
「お前は黙ってろ」
響き渡る土方の怒号と、腹痛を抱えた近藤のうめき声。
そしてその隙をついて総司は、台所のほうへそっと逃げていく。
「よーし、次からは普通の量にしてもらうぞぉ〜!」
「待て総司ォォォ!!」
新選組の夕暮れは、今日も平和…かな?
今日も総司は自分の健康と胃袋を守るため、ひと悶着。
でもこうやって、皆に見守られるって悪くないかも。
明日もまた、何かやらかしてくれるかな…?




