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I am extraordinarily patient, provided I get my own way in the end.  作者: 天野 乃理子
第一章 赤い髪と青い瞳の少女
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SIDE:Leonard Ⅴ

見付けてくださりありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけましたら、幸いです。


 意外にも、卒業記念のパーティーにオースティンがエスコートしてきたのは伯爵家の令嬢だった。


 え? 何? そうなの!?


 とこっそりとヒルダが教えてくれたのは、王妃と側妃の力関係の逆転とその理由だった。僕が知っているのよりも凄いらしい。

 実家の権力が無くなった事は知っていたけど、そこまでだったとは知らなかったよ。だから、焦っているのかな?


「実は、側妃であらせられるエリザベス様の交友関係がですね、そうさせているのです。」


 え~っと、そう言えば君の母もそうだったね。

 母親同士が従姉妹で幼い頃から仲が良かったんだったよね。その辺から発生した交友関係なのかな。


「代替わりした、でいいのかな?」

「はい、そうです。」


 そうか。

 確か王妃様は早々に婚約者になった事もあって、友人が少ないと聞いたな。友人ではなく、配下に近しい関係が多かった、と。俗に言う、お取り巻きの関係だった、と。


「肩入れするのなら友人とその子ども、と言う事らしいですよ。」


 とヒルダは言うけど。

 確かに、友人関係に上下は無いけど、お取り巻きだと下に見られてる事確実じゃない? それに、王妃様だったら顎で使うとかありそうな気もするもの。

 それに、もしかしたら呪いの事も知られていそうだな。内々でだけど。友人関係だったら、話しそうだもの。愚痴と言う名の暴露で。


「父は父で、顔も広いですし。」


 そっちもかぁ………………

 妻の友人として仲良くしているのなら、人柄も知っているものな。息子の僕が言うのもなんだけど、身の程を弁えてひっそりと後宮の片隅で暮らす母の評判は悪くないのだ。

 一方の王妃様は、頭のいい人なんだけど、如何せん押しが強いし、我も強い。それがいい方向に向かうだけではない事も多々あったそうで。まぁ、そうらしい。


「それで軒並み断られた、でいい?」

「………らしいです。」


 まぁ確かに王妃様は姑にはしたくないタイプだよね。

 僕だってそう思ってしまうくらいだから、その辺を知っているとためらってしまうのかな? それに、自分が一番な人でもあるから、娘を大切にしてもらえなさそう、とか思われたんじゃないかな。そんな気もするんだけど。

 オースティンもオースティンで自分が一番なタイプだもの。今だって、エスコートしているつもりらしいけどさ、相手の令嬢が歩きにくそう。身長差もあるんだからさ、もう少しゆっくりと歩いてあげようよ、って僕でも思う。


「それもあっての私、だったのではないでしょうかね。」


 そう簡単に言わないで欲しい。

 でも、こうしてエスコートをする事を許可された、と言う事の意味をかみしめていたいんだ今は!


「だから、か。」


 父である陛下はデビュタントでのエスコートと考えていたからね。

 15歳からデビュタントは可能だけれど、正確には指定の学校を卒業したら、学園の場合は初等科を卒業したら可能だけれど、高等科に進学した生徒は高等科の卒業を待っての事が多いから。


 フォークナー公爵様も公爵夫人も、王妃様の事は好きじゃないみたいだし。

 特に公爵夫人の場合は、同世代になるのだろうから色々とありそうだなぁ………同じ侯爵家の令嬢だったから。


「ねぇ、もしかして君の母親も候補だった?」


 確認するかのようにそう聞いてしまった。

 あの世代にも公爵家にはちょうどいい年ごろの令嬢がいなかった、と聞いている。正確には先代の王妹殿下が嫁入りした公爵家に居たそうなのだけど、さすがに血が近いと候補にならなかったんじゃないかな。今回もそうだし。


「お声がかかる前に、公爵家との婚姻を決めたそうですよ。」


 あー、そっちね。

 当時を知る人に言わせると、侯爵令嬢の頃の王妃様は相当気が強かったと聞いている。だから、難を逃れる為に、もあるのかも知れないな。


「私の祖父、母の父と父の父は学園で仲が良かった事もあるそうですけど。」


 それを理由にした、と。

 でも、僕の母親は逃げ切れなかった訳ね。うん、納得。


「素敵な理由だね!」


 僕もそうだし。

 やっぱり交友関係って大切だよね! って思うもの。側近とは別だしね。






「では、ダンスフロアに向かおうか。」


 卒業生代表の挨拶は第一王子であるオースティンが済ませた事に文句など無い。

 僕はひっそりと生きたいのだし。

 でも、成績に関しては今後の事もあるから譲ってはいないんだけど。首位は子爵家の令息なんだけど、実は仲がいいんだよね、僕。

 自分の側近としか一緒にいないオースティンとは違って、僕の交友範囲は広い。それはヒルダもそうなんだけど。


 優秀な生徒はほぼ知り合い。総合的な成績だけじゃなく、単教科の生徒にも、特に魔力の多い者や扱いの巧みな者には声はかけていたりする。その辺は第二王子の範疇かな? と思っているのもあるんだけど。それより何より、向こうはそんな事なんか考えていないだろうし。

 と言うか、爵位でしか人を見ていない気もするし。

 側近も軒並み上位貴族でそろえているのはまぁ、王太子候補としては間違っていないだろう。でも、優秀な生徒でも子爵令息だと目に入らないんだよ。学年首位でも。


 僕の方は僕の方で、側近候補が居ない訳じゃないけど臣下に下る予定だから必要性を感じていない。だから、側近と言う名のお目付け役でもあるジェイデンしかいないんだよね。

 名前の上がった側近候補はさ、オースティンの候補よりも身分も能力も劣る令息ばかりだからね? まぁ、王妃様の差し金だと思うけど。

 なので、爵位や跡取りであるとかそんな事は無視して、交友関係を広げつつ自力で探しているんだよ。王宮の文官になった上で僕の側近になってくれたら、心おきなく公爵家に婿入り出来るし。

 優秀な何人かは、僕個人で雇って公爵家に連れて行ってもいいし。


 そんな事も考えながらダンスをした。


 そうじゃないと、ヒルダを意識し過ぎてしまうから。


 あっという間に1曲目が終わり、人が動く。

 オースティンのペアと僕たちのペアのダンスを見ていた生徒がダンスに加わるから。でも、まぁ、この辺も上位貴族から順番に………みたいな感じには当然なる訳で。

 僕たちはそのまま踊る事を選び、オースティンはダンスの輪から離れた。


「いいのですか?」


 とヒルダは聞いてくるけど。


「さすがに3曲連続は駄目だと言われたけど。」


 未だ結婚はしていないから。

 婚約者の証明のような2曲目のダンスは憧れだったんだよ!


「それは、そうですね。」


 ほころぶようにヒルダが笑う。

 駄目だ! こんな笑顔を見せてしまったら、大変な事に………って、2曲目を踊るから暗黙の了解で婚約者として発表した事にもなるな。初等科の4年間、何時だって一緒だったからそう思われてもいいと思うのだけど、認めたくない生徒も、その保護者も多かったから。


「ドレスもおそろいにしていただけたので、本当に嬉しいんですよ。」


 そうだった。

 僕の色をヒルダが着てくれているんだった。それだけで僕だって嬉しいんだよ。僕のポケットチーフはヒルダのドレスと同じ布を使っているし、カフスはヒルダの瞳の色に近い淡いブルーのダイヤモンドが使われたものだし。

 実はこれ、ヒルダからのプレゼントなんだけど。僕がドレスを送ったお礼なんだって。


 一応、僕の髪は落ち着いたブロンドなんで、彼女の髪の色でもあるホワイトブロンドの布に金糸で刺繍をしたドレスになっている。アクセントとして、僕の瞳の色であるグリーンも入っているけど。


 あ、そう言えばさっきオースティンのパートナーだった伯爵家のご令嬢は、ブルーのドレスだったな。あれは、オースティンの瞳の色でいいんだよな。アイツの髪はブロンドだし。





 後で聞いたら、王妃様が作らせたドレスだった。ヒルダが僕の色を着るだろうから、その色を避けた、でいいんだよなと確認しちゃったんだけど。



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