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I am extraordinarily patient, provided I get my own way in the end.  作者: 天野 乃理子
最終章 王太子とは?

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23/26

SIDE:Leonard ⅩⅢ

 ジェスを迎えに行く日は、早朝に出発して、途中に何度かの休憩を挟んで夕方に目的地に着く予定。そこの宿に1泊して、翌日にジェスの居る施設に向かう。

 その日は第一王子とその婚約者の次代の聖女の視察になる。一応、公式の視察としてもらった。第一王子になった僕の初のお目見えに近しい公式視察になる。


「お疲れ様、ヒルダ。大丈夫? 疲れただろう?」

「さすがに疲れました。」


 先に馬車から降りて、手を差し出す。

 何度もしている事だけど、公式視察になっているので出迎えの人数も多い。第二王子だった頃とは桁違いに。


「出迎えありがとう。部屋に案内してもらえるかな。」


 代表者らしき人に声をかけた。

 何か言われる前に、休みたいと意思を伝える。そうじゃないと、ご挨拶モードとかになったら面倒だから。それは、明日の予定だから。


 明日はパワーランチだけじゃなく、朝食の席からしてそうなっていたりする。学園を休む日を少なくする為に詰め込んでもらったのは僕なんだけど。

 でもさ、そうじゃないと今まで無視していたような人までご機嫌伺に来るんだよね。無視していたのならいい方で、鼻で嗤っていたりだとか、露骨に悪口を目の前で言っていた人とかも居たんだよね。

 だから、極力、人と会う時間は減らす、が僕の視察のモットーなんだよ。その調整に僕唯一の側近であるジェイデンは四苦八苦しているみたい。それに関しては本当に申し訳ないと思うんだけど、向こうも解っているから何も言わない。

 ごめんね。9月になったらもう一人側近が出来るから。ちゃんと文官としての採用だから、少しは楽になると思うよ?

 後半年は先になるけど。





 と言う事で、味のしない朝食を食べて部屋に戻って、予定の確認をしてから視察に向かう。実は楽しみにしているんだよね。


「お待ちしておりました。」


 出迎えてくれたのは、先代の国王殿下の弟である公爵様。

 父よりも10歳と少し上だと聞いていたのだけど、見た目は十分若い。父と同世代にしか見えない。


「いえ、弟がお世話になりました。」

「それが私の仕事ですから。」


 そうだった。

 魔力過多で苦労した人だった。だから、自分の経験を基に実験的に受け入れ施設を作ったのだった。


「それでもお礼が言いたかったのです。ありがとうございました。」


 半分は僕が追い出してしまった感じだから。

 王宮に居ても体が大きくなればそれなりになれるとは思うんだけど、オースティンが弟を虐めるから。それがある以上、あそこは危険なんだよ。

 同じ子どもなのに、王妃様はオースティンしか見ていなかったから。だから、自分の身を守れない間は本当に拙いと思ったんだよ。


「いや、話は聞いている。君の取った行動は正しいと思うよ。」


 そう言われて泣きそうになった。

 仲が悪い訳じゃない。純粋に懐いてはくれているけれど、それでも親と接する機会を奪ってしまったのは事実だから。


「君がしてくれた事に彼は感謝しているよ。」

「え?」

「あれが君に出来る精一杯だったと知っているからね。」

「ありがとうございます。」

「うん、お礼はいいから彼と仲良くして欲しいかな。」

「はい!」


 僕たちの会話をヒルダは黙って見ていてくれたけど。

 きっとここにこの話を聞いた人は面白おかしく話を広めるのだろう。それならそれで構わない。今までは黙っていたけど、違うから。

 これからは、黙っているのではなく黙殺の方向で。これ、似ているけれど僕の中では違うんだよ。今までは言っても無駄だから黙っていたけど、今は放置の方が強いかな。言いたきゃ言えばいい。だけど、一定以上になったら逆襲する感じかな。

 無駄な足の引っ張り合いは本当に嫌なんだよ。


「では、案内するよ。彼も待っている。」


 と言う事で、施設を案内してもらった。

 何と言うか、関係者以外立ち入りは禁止にしているらしくて、僕とジェイデン、そしてヒルダしか中には入れなかった。取り巻きになりたいというか、知己になりたいとここに来た人は置き去りだったりする。


「いいのですか?」


 と思わず聞いてしまうくらいに、無慈悲に切り捨てられていた。


「いいんだ。入れたら入れたで面倒しかない。」


 との事で、僕も放置。

 施設の責任者の意見は大事だよね? と中に入って歩く事しばし。


「兄上!」


 と飛び込んできたのは小さな体。

 11歳ってこんなに小さかったっけ? と思った僕に公爵様が説明してくれた。


「ここに居る子どもは、魔力になっちゃうんだ。」

「え?」

「すっごく食事も食べるんだけど、体の成長よりも魔力になる。」

「そうなのですか?」


 思わずそう聞いてしまった僕に対して、ヒルダは納得していた。


「魔力………私の場合は聖力ですけれど、使うとお腹が空きます。」

「そうなの?」

「そうなんですよ。」


 知らなかった。


「だから、神殿にはパンや焼き菓子、フルーツなどを常備してますよ? ここでもそうなのですか?」

「ここは決まった時間しか食べられない。」


 ヒルダの問いに、ムッとしてジェスが答えた。


「ちゃんと十分な食事は出しているだろう? 聖女様方が結界に聖力を送るのと一緒にするな。」

「え? 聖女様なの!?」


 公爵様の言葉にジェスは驚くけど。


「お前、昨日の説明、聞いてなかったな!」


 とは?


「済まない。昨日のうちにちゃんと説明したんだ。明日来るのは君の兄だけじゃなく、婚約者の聖女様も来るって。」

「そ、そうだっけ?」

「お前、浮かれすぎて聞いてなかっただろう。」

「………………ごめんなさい。」


 公爵様に注意をされて、ジェスは謝った。

 もしかしてこれって、凄い事じゃない? オースティンは最後まで謝らなかったし、王妃様もそうだったと聞いているから。


「初めまして、ジェスロウ殿下。レナード様の婚約者でもう少ししたら筆頭聖女になりますヒルダ・フォークナーと申します。」


 少し腰をかがめてジェスと視線を合わせてヒルダが言う。

 その言葉を驚いたようにジェスは聞いていた。


「え? 聖女様なの!? しかも筆頭聖女様?」

「はい、そうです。これからよろしくお願いします。」

「こちらこそ! ボクの事は兄上と同じようにジェスと呼んでください。」


 そう言われて、確認の視線を向けられたのでうなずいた。

 これ、懐かれたな。


「ジェス殿下、では私の事はヒルダと。」

「殿下はいらないよ、ジェスで! その代わりボク、義姉上(あねうえ)と呼んでもいい?」

「それは気が早い。」

「え~~~~~」


 ちょっとそれはどうかと思うんだ。

 それだけじゃなく、行く行くは王太子になって国王になる事を考えると、無謀じゃないか?


「私はいいですよ? 一人っ子なので弟が出来たようで嬉しいです。」

「わーい! ヒルダ義姉上!」


 ヒルダが嬉しそうだから、いっか。

 公爵様は僕たちのやり取りと微笑ましそうにみている。そうですね。ジェスがこうして笑っていられるのなら、問題は無いですね。


 こうして始まった視察は、実に有意義だったのだけれど、他の場所で使う事は難しいらしい。何より、魔力の充填を出来る者が居ないのだ。

 言われてみれば、確かにそうだな。

 だから、これからの課題として研究は続けるのだそう。この施設を卒業した子どもたちが、学校を卒業してから戻って研究しているらしい。


「私の代では無理でも、息子の代、孫の代では可能にしたいですね。」


 と実に有り難い言葉をもらったので、販売が可能になったら買いたいな。




 パワーランチは公爵様と二人で。当然ジェイデンも一緒だ。きっとヒルダにもジェスにも聞かせられないような腹黒いやり取りがあるのだろう。

 ヒルダはジェスと一緒に子どもたちとランチをする。どうやら聖女見習いの子どもも居るのだそうで、その子と午後から神殿に向かう事になっている。

 今日はこのままここに泊まり、明日1日ここで子供と過ごし、もう1泊して王都に戻る予定だ。

 そして、ジェスは母が保護者になる事になっているので、一緒に離宮に住む事も決まっている。



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