SIDE:Leonard ⅩⅡ
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「日程が決まった。ヒルダも行くかい?」
話には聞いている、ジェスの居た施設の見学込みでのお迎えの話だったりする。
ヒルダも興味津々だったから。
「ご一緒したいです。いつですか?」
「10日後だな。学校を休む事になるが、大丈夫か?」
「大丈夫です。神殿側が配慮してくださってますので、そちらはお休みの日ばかりなので。」
「じゃ、伝えておく。」
と言う事で、ジェスのお迎えにヒルダと行く事が決まった。
学園への編入時期は未定のままなんだけど。
何て言うのかな? オースティンが学園に復帰する日が決まっていないのもあるんだ。一応、そろそろ王宮は出る事にはなっているのだけれど、ごねてる。出てしまったら、王宮に戻れない事を知っているから。
それなら、元になった王妃様と離宮に向かうか、と言うとそれも嫌なのだそうで。
形式的には謹慎になっているので部屋から出る事は出来ないのだけれど、ジェスが来る前に子爵家になった元王妃様の実家に行かせないいけないんだよ。だから、そろそろ王命が出そうなんだよなぁ………
今までは温情で何とかなっていたけど、そろそろね? 1カ月は経ったし。今まで通りに自分のわがままが通用すると思っている所が痛い。継承権も無くなった話もしているはずなんだけどなぁ………
相も変わらず、自分に都合のいい事しか聞こえない耳は健在らしい。
本人曰く、今回の件は何もかも全て、第一王子である自分を王太子にしない国王陛下が悪いのだ、と言い張っているんだけどねぇ。こればっかりは、自分のした事を考えて欲しいかな。
ずっと我慢していたんだよ、君と君の側近や取り巻きたち以外は。
だって、親の目がないからと学園ではずいぶん好き勝手していたじゃないか。人にいちゃもんをつけたりだとか、冤罪を着せられた男爵家の子息もいたんだよ。幸いにして僕が気付けたから、こっそりと逃がす事にして別の学校に編入してもらったんだけど。僕が気付かなかっただけで、もしかしたら他にも居たかもしれないんだけど。
カンニングもどきだけじゃなく、本当に色々とあって。その度に僕が尻拭いに奔走していたんだけど、気が付けばそれが当たり前にされた。
唯一公爵家の子息が協力してくれたけど、王宮の文官たちは『学園の事だから。』とノータッチを決め込むし、上に報告の義務も怠っていたし。その辺の処分も考えないといけないんだよね、本当は。
問題が表に出ないように、と本当に頑張ったんだよ。これは、ヒルダも知らない。教えられなかったが正解なんだけどさ。
その事に気付いていないのが問題。側近もさ、自分は何も悪い事はしていない、と言い張るヤツも居てね? まぁ、無条件で親から爵位を奪われて、領で蟄居してるみたいだけど。
反省している者は居たりするし、ずっと諫めていた者も居た。
『私の力が足りずに申し訳ありませんでした。』
と最初に頭を下げた子息は公爵家の次男なんだけど、婚約を白紙に戻して領で蟄居しようとしているのを僕が止めた。
だって、ずっとオースティンの事を諫めていた事を知っているから。僕と一緒に尻拭いに奔走してくれたから。
そんな誠実な人なら僕の側近にしたいじゃないか。
無位無官じゃ難しいから、と公爵家にあった子爵を継いで文官試験を受ける事が決まっている。1学園上の人なので、準備期間はほぼないけど合格したら僕の側近になる事が決まっている。
成績もいいし、大丈夫だと信じたい。
側近だけじゃなく、取り巻きも謹慎していたのだけど、自分のした事を理解し反省した者の中には神殿に向かった人も居た。卒業してから、と言われたのだけれどそれを押し切って地方の神殿に向かったので、彼はきっと立ち直ってくれるだろうと思う。
まぁ、無条件で神殿に押し込まれた人も居るけど。初等科しか学校を卒業していないから、ほぼ最下層からのスタートになる。今どきは平民だって初等科程度は卒業していたりするからね。
自分が何人もの側近や取り巻きの人生を狂わせた自覚のないオースティンを見ていると、上に立つ者の責任の重さを感じてしまう。僕が間違ってしまったら、僕の部下が、ヒルダが巻き添えになる。
知ってはいても、理解していなかった事を実感してしまったら、ため息しかでない。
そして、父が僕を王太子にしたい理由がこれなのだろう、と気付いた。
でも、無理です。
僕は幼い頃からそう決めていましたから。
母の誘導ではなく、父が、周りが僕を見る目で決めた。
僕は、待ちに待った王子になりそびれた第二王子。
それでいい。
そのつもりで生きてきたから。
先に生まれても、王妃様のご機嫌取りで第一王子にならなかった段階で心は決まっている。僕だけじゃなく、母も。
その事に気付いていないのか、気付かない振りをしているのか、を僕は知らないけど。
オースティンに何を言われても、父の側近から何を言われても、王宮に居る貴族から何にを言われても、王宮に居る使用人から何を言われても、スルーしてきたのはそれが理由。
僕はサブでメインじゃない。
そんな事くらい、態々言われなくても解っている。
解っていないのはあなた方だ! と何度口にしたかったか。そんな事にすら気付いてもらえないこの場所に居る意味はない。
ずっと都合のいいサブ扱いをしてきた自覚、あるのかな?
そう思えて仕方がない。
誰もが国王になりたいと思う訳じゃないんだよ。その事に気付かない傲慢さが嫌なんだ。なりたいんだから、ならせてやろうってさ、僕が一度でもなりたいって言った? と聞きたい。
あー駄目だ。
思考が思いっきりマイナスに走っている。
本当に色々とあり過ぎたんだよ。
9月に高等科に進学して、同時に聖女見習いも入学した。散々僕の事を追いかけていた侯爵令嬢は学校に居なかったけど、今度はもっと質の悪い男爵令嬢だ。
散々引っ掻き回してくれたから、年が明けて罷免されて安心したのもつかの間、母が父と2回続けてダンスをした事でオースティンからの八つ当たりが酷くなって。でも、誰も止めてくれなくて。
その挙句に王妃様からの毒殺未遂。
本当にやめて? シャレにならないから。でも、こうして笑っていないと泣いてしまいそうなんだよ。
身の危険を感じて10年以上生きてきた母の事を考えるとさ、僕たちはここに居ちゃいけないんだって思えるんだよ。その元凶が居なくなっても、その悪意は残っているから。
その事に気付いて手を打ってくれた人はいる。けれど、大半が面白おかしく見ていて、無関係を装う。下手したら、煽る。
僕ね、執念深いと言われても、冷徹だと言われても、母を僕を小馬鹿にしたり無視したりした人たちを忘れていないよ。逆に手を差し伸べてくれた人も。
恩には恩で返したいし、見て見ぬフリをした人には見て見ぬフリをするって決めているんだ。こんな質の悪い男を国王にしちゃ駄目なんだよ。僕はヒルダのように優しくないから。
あ、でも、王宮を去る前に、オースティンの引き起こした問題をスルーしてくださった文官様方を処分しないとね。当然だよね? 上官への報告義務を怠ったんだもの。
きっと王妃様の派閥の人なんだろうけど、今頃焦っているかな?
ま、僕には関係ないけど。




