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I am extraordinarily patient, provided I get my own way in the end.  作者: 天野 乃理子
第四章 聖女としての矜持

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20/26

SIDE:Hilda Ⅹ

 お父様とそんな話をしてから少しして、号外として王妃様がレナード様を呪った事が公表された。そして、王妃様が幽閉された事も、侯爵家が降爵(こうしゃく)されて子爵家になった事も。

 オースティン様の事は何も書かれてはいなかったけれど、側近共々学校を休んでいる事で学内では色々とウワサは飛び交っているのだ。


「ヒルダ様。」


 思いっ切り私への態度の変わった生徒たちにアンはおびえている。

 大丈夫だと言い続けるしかないのだろうけれど、私自身が困っているのが現状だったりするのだ。


「大丈夫よ、アン。」

「ですが………」

「そのうちに落ち着くわ。」


 としか言えない。

 公表こそされていなかったけれど、初等科の卒業パーティで2曲ダンスを続けて踊ったのだから気付いていなければおかしいのに。本当に不思議。


「胸を張って。私たちは悪い事はしていない、でしょう?」

「はい。」


 だって、本当に悪い事などしていないから。


「ヒルダ!」


 少し離れた場所からレナード様が私を呼んだ。

 ランチを一緒に、と言う話で校内のレストランに来たら囲まれてしまっていたのだ。学校指定の制服を着ていると探すのに苦労すると言われているのだけれど、アンも私もホワイトブロンドの髪なので、見付けやすいらしい。


「探してしまったよ。」


 開けられ道になった場所をレナード様が迎えに来てくれた。


「ゆっくりと食事をしよう。ここでは難しそうだから。」


 そう言われて案内されたのは、今まではレナード様が使っていた一番広い個室。

 もう、そうなってしまったのだと実感してしまった。何と言うか、今まで現実味が無かったから。


 案内されて部屋に入る時に、この部屋の担当者にレナード様が言った。


「この二人は無条件で通して。ただしこの二人以外は必ず僕に確認をするように。」


 あらあら、いいのかしら。

 アンがすっかり恐縮してしまっているわ。


「アン、僕やヒルダが居ない時に何かあったらここに逃げ込めばいい。許可無くこの部屋のあるエリアに立ち入っただけで罰せられるし、追い出されるから。」

「ですが………」

「聖女のアンは、重要人物なんだよ?」


 そう言われて、更に恐縮しているけれど。


「と言う事で、情報の共有をしておいて欲しい。」


 振り返ってそう言うと、レナード様は椅子を引いてくれた。


「取り敢えず座って話そう。」


 と言う事らしい。

 アンの椅子はこの部屋の担当者が引いてくれたのだけれど。


「先ず、オースティンとその側近は当面の間、休学になる。それが停学になるのか退学になるのかは現在、聞き取り中だ。」

「そこまでなのですか?」

「そこまでらしいぞ。」


 と私たちにまで教えてくれると言う事は、確実にやらかしていると言う事でいいのでしょうか。

 詳しい話はこちらまで回ってきてはいないから。


「自分は王太子で、国王になるのだから、と無茶振りをしていた件もあるそうだ。」

「本当にしていたのですか?」

「らしい。内々での訴えはあったそうだが、この学校の教師も貴族が居る訳だ。」


 後は解るね? と言われて納得してしまった。

 王妃派の方がもみ消していた、でいいのでしょうかね。私の所に話が来ない事で、いかに巧妙な手口だったのかも理解してしまった。


「特別凄い事をした訳ではないんだ。ただ、悪質なだけで。」

「悪質?」

「例えば、剣術の時間に自分に勝った相手の悪評を流すだとか。」

「もしかして、ズルをしたとか、ですか?」


 それは幼い頃、オースティン様が良く言っていた言葉。

 両親から聞いただけではなく、実際にその場で見て、聞いている。例えば、剣術の手合わせは自分よりも体の小さな子どもとしかしないだとか。


「まぁ、そんな感じだ。」

「やっぱり………」

「と言う事は、何か知っているの?」


 当然聞かれましたから答えましたけど。


 幼い頃の記憶に、父親である国王陛下が兄弟仲良くの意味で一緒に剣術の稽古をさせていたそうなのですね。そこで、オースティン様は自分よりも体の小さな子どもばかり相手にして、負けると言い掛りをつけている所を見ているのですよ。

 挙句、ワザと負けてくれるような子どもとばかり戦っていました。レナード様にも、『第二王子であるお前が、なんで第一王子の俺に勝つんだ。』と言っている所は何度か見ています。

 髪がこうなる前でしたし、両親ではなくエリザベス様や我が家の侍従とかとの観戦だったので気付いていなかったのかも知れないですね。まぁ、王妃様もですけれど。

 その後、例のあの《お呪い(おまじない)》の事件で剣術の稽古をレナード様がやめてしまったのでどうなったのかは知らなかったのですが、変わっていなかったのですね。


 と、当時の思い出話も交えてレナード様に話したのだけれど。


「だが、一番の問題は違うんだ。」

「違うのですか?」

「そうだ。実は教師側がテストの問題ではないが、情報を流していた。」

「は?」

「全部じゃないし、問題自体を教えていた訳じゃないから発覚が遅れたというか………」


 真っ先に思ったのは、それであの成績!? だったのだけれど。


「落第ギリギリのラインでしたよね? 成績。」

「そうだな。」

「否定しないのですね。」

「出来る訳ないだろう?」


 確かに!


「例えば歴史の場合だと、ちょうど100年前の事件が問題にでます、と教えられるだろう? 有名なものは当然として、少しマイナーなものもさらっておけば、点数はとれるし、問題を作った意図も明確だ。」

「そうですねぇ、キリのいい年の問題を出した、と言われたら文句は言えませんね。」

「魔法学だと**の法則はご存じですか? と言われたら、当然その辺の問題を覚えるだろう?」

「そうなりますか。」

「その上、レポートは専門家が資料を集め、テーマも決めていたそうだぞ。」

「そこまで?」

「そう、そこまでだ。」


 何と言いますか、レポートなんてテーマを決める事が大変なんですよ。

 そこから資料を集める訳ですけど、大量にある本の中から探す事になるじゃないですか。その大変な手間を省いてもらっているって、絶対にズル、だと思います。


「レポートに関しましては、私も人の事は言えないのですけど。」


 これは、本当。

 魔法学にしろ歴史にしろ、他の教科でも神殿や聖女は絡んでいる。だから、その辺の事を選べば当然、他の人よりも詳しい。


「聖女や神殿の事?」

「そうですね。他の方よりも調べ易いですし。」

「でも、そのレポートを読んで先生方は喜んでいたそうだよ。」

「え? そうなのですか?」

「そう。学校内でも先生方だけではなく、生徒も読んでいるようだし、王宮にも回ってきたよ。」

「はい?」


 なにそれ、恥ずかしい!


「セシリア様の時もそうだったのだけれど、聖女の知識って独特な事もあるじゃない? その辺の事を知る事が出来るから、と。」

「そうなのですか?」

「うん、そう。歴史とかだと神殿側の解釈とかが混じるから面白いんだ。」


 知らなかった。

 本当に知らなかった。


「セシリア様の神事の解釈のレポートは素晴らしいよ。機会があったら読んでみたら?」

「はい、そうします。」


 そうだった。

 レポートに神殿側が協力的だったのは、聖女の事や神事についてを詳しく知って欲しいという含みがあった事を思い出した。人は知らなければ知りたくなる。だから、ある程度の情報の提供はしよう、でしたっけ? 凡そそんな感じで。

 公式の発表ではないので、調べれば分かるという事が知的欲求を満たすものになるらしいです。詳しい事は知らないですけど。


「神殿側も知っていて欲し事を書かせている場合もあるからね、お互い様だと思うよ。」

「そうなのですか?」

「え? 知らなかったの?」


 逆に聞かれてしまいました。


「じゃあさ、機会があったら《聖女の覚醒の理由》のレポートが読みたいかな。」

「理由ですか? 条件じゃなく。」

「そう、個人的な事の方。公では調べられないでしょう?」

「それは、そうですけど………」


 本当にいいのでしょうか?

 でも、気になる人は多いって事なのでしょうけれど。



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