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SIDE:Hilda Ⅸ

見付けてくださりありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけましたら、幸いです。

 翌日、神殿から筆頭聖女の代替わりは公表された。そして、王都内では新聞が号外として発行された。

 セシリア様の結婚による筆頭聖女引退だけではなく、私が次代の筆頭聖女である事もレナード様と婚約した事も書かれていた。


「これ、大丈夫なのかしら。」


 街中で集められた、と言う号外を見ながらお父様に聞いてしまった。


「大丈夫だ。王妃様に何かする力は残っていない。」

「そうなのですか?」

「そうした。」


 と言う事らしい。

 既に離宮に幽閉された? もしかしたら、長い時間をかけて計画実行したのかも知れない、と思った。だって、早急に話が進み過ぎるもの。


「最初に《お呪い(おまじない)》と称して第二王子であるレナード殿下を呪った時から計画したからね。」


 やっぱり。


「あのまま大人しくしていれば王妃のままで居られたのに、更に問題を起こすからこうなったのだよ。」


 と言う事らしい。

 幼い頃のあの《お呪い(おまじない)事件》の後、父親の侯爵を引退させた事で力を削いだし、王妃様本人にも警告はしたのだそう。それでも、表立っては知らぬ存ぜぬを付き通した姿は天晴だったとお父様は言うけれど。


「あちらが知らぬ存ぜぬを通すのなら、こちらも好きにしようとね、そうなったのはある。」

「どういう意味ですか?」

「説明する事を省いた。」


 説明を、省いた?

 余計に解らないのですけど。


「先ず、君の母親であるヴェネッサは王妃様よりも2歳年上で、現国王と同じ歳なんだ。だから、最初から婚約者として望まれていた訳なのだけれどね。」

「やっぱりそうだったんですね。そんな気はしていました。」

「そうなんだ。でも、割って入ってきたのが王妃様の侯爵家なんだ。まぁ、細かい事は省くんだが、とにかく面倒臭い事になりかけて、ヴェネッサは早々に王太子妃になる事を辞めた。いいかい? 諦めたのではなく、辞めたんだ。」

「辞めた?」

「そうだな。とにかく気が強く、自分が王太子妃になるのだと幼い頃から言い続けていたからなぁ。」

「それで問題が起きたりしていたのですね。」

「まぁ、そうだな。」


 やっぱり………………

 王妃様には友人ではなく、配下の者しかいないという話は聞いていたので納得できてしまった。


「同じ侯爵位だからなぁ。年が上だからと、相手をたてるような事などしないしな。」


 でしょうね。

 どちらも筆頭ではなかったと思います。今ではすっかり王妃様の実家は廃れてしまいましたけれど。


「学園の入学前から寄子にヴェネッサの悪評を流していたくらいだ。関わりたくはないだろう?」

「それは、そうですね。ですが、その時に婚約者になる予定の王太子殿下は何かなさったのですか?」

「何も、していないな。女生徒の中だけで流され、水面下で行われていたからな。その辺が本当に巧かったんだ。」

「ですが、公爵家に嫁いだアナベラ妃は王妃様と同じ歳ですわよね?」


 思わず確認をしてしまったら、お父様が黙ってしまった。

 どうして? と思っていたら、「いいか? 内緒の話だぞ。」と言い出した。


「国内に問題の少ない平和な国の王女が、国外に嫁がない、外交上の利点になるのに国外に嫁がない、その意味を考えれば理解出来ると思う。」


 そう言われてしまいました。

 国外に嫁がないその意味とは?


「真面目に、真摯に、努力を怠らない方だったから、当時を知る生徒たちもアナベラ様を悪く言わないんだ。」


 余計に意味が解らな………………もしかして?


「嫁がないではなく、嫁げない。」


 口からポロリと出てしまった言葉にお父様はうなずいた。

 アナベラ様は、おっとりとした優しい方だ。決して才気煥発な才媛タイプではなかったとも聞いている。


「まぁ、そう言う事だ。そんなアナベラ様だから王妃様からも色々とされていた。この辺は、ヴェネッサの方が詳しい。」

「自分よりも身分が上の人に、ですか?」

「その時には王太子の婚約者だったからな、微妙だ。」

「まぁ、そうですけれど。」

「そんな方なのだよ。」


 そうですか、としか言えなかった。

 王妃様のプライドは、神殿に居る聖女様たちとは全く別なものなのだろう。そんな気がした。

 プライドじゃお腹はうまらないわ、と言っていた聖女様に何人もの聖女様が同意していたし。


「確かにオースティン様にそっくりですわね。」

「だろう?」


 本当に。

 自分の立場を上げる事で相手に並ぶのではなく、相手の立場を下げようとする所など、本当にそっくりだわ。

 そのオースティン様も自分が小馬鹿にしていた子爵家の人間になるのだけれど。


「で、だ。」


 とお父様は態度を改めた。


「タブロイド紙にすっぱ抜かれる前に、元になった王妃様が第二王子であるレナード殿下を呪った事は公表する。そして、その呪いを浄化したのが君。」

「ですが、浄化が出来る事を公表してもいいのですか?」


 この事を公表しなくなって随分と時が経っているから、知らない人も多いのに言ってしまっていいのかしら?


「その辺は上手くやる。今の案は、一緒に居た事で長い時間をかけて浄化した、だな。神殿のあの静謐な空気を知っていたら、無茶な話ではないだろう?」

「確かにそうですね。後は相性の問題も付け加えたらいいのではないですか? 誰にでも出来る事ではない、と明確にする意味で。」

「それも、いいな。幼なじみで気心の知れた仲だったから出来た事。聖女の婚約者に選ばれた事を重要視させよう。」


 お父様、それ逆じゃないですか?

 レナード様が選ばれたのではなく、私が選ばれた、だと思うのですが。あ、でも、知っている人は知っている、《覚醒》の条件を当てはめたら理解出来てしまいますね。

 本当に詳しい人なら、()()()()()()()()()()()なのだろう、と推察出来ますか。


「穢れや呪いは、神殿に居れば祓われる、でどうでしょうか。ただし、重篤なものはその限りではない、と付け加える事を忘れないでくださいね。」

「そうだな。ある程度まで、だな。」

「実際にほんの少しの穢れなら、祓われるようですよ。神殿で聖女様たちがそんな話をしてましたから。」

「そうなのか?」

「そうらしいです。私には見えないのですが、穢れが見える聖女様もいらっしゃいますから。」


 そうなのです。

 だから、こっそり祓っていたりもするらしいですよ。内緒ですけど。


「穢れが見えて浄化の得意な聖女様と、病に気付いてしまう聖女様がいますよ。誰が、とは教えられませんが。」

「………………知らなかった。」

「言ってませんもの。」


 本来なら、口にしてはいけない事なのです。

 けれど、穢れを浄化した、と公表する以上、どこまでなのかは知らないといけない事だと思いましたから。ちゃんと口止めもしますけど。


「この話は外部に漏れますととんでもない事になりますから、気を付けてくださいね。」


 釘を刺す事は忘れてはいけない。


「そうだな。でも、病かぁ………」

「そうなのです。その聖女様なのですが、何も出来ない事を申し訳ないと思っているそうです。ですが、全ての人を癒せないのなら、混乱を招くだけだと理解はしているようなのですけどね。」

「確かにそうだな。全員は、どう考えても無理だ。」

「そうなのです。だから、子供が巣立ったら小さな町に移住する予定らしいですよ。」

「小さな町?」

「そうです。こっそりと治せる程度人数だったら、治してもいいかしら? と言っておられますから。」


 囲いたいなぁ………と口から言葉がこぼれ出たお父様は、慌てて口を閉じたけれど。



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