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SIDE:Hilda Ⅷ

見付けてくださりありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけましたら、幸いです。

「………ごめん、ヒルダ。勝手に決めてしまって。」


 え?

 いきなり謝られたんですけど?


「怒ってる?」


 あー、いきなり黙り込んだからそう思われた、と。

 怒っているというよりは、対応に困っている気がするのですけど。先ほどから色々と考え過ぎて疲れてきました。


「怒っているというよりは、話が大きくなり過ぎて対応できていません。」


 だって、婚約の話だと思っていたのだもの。

 それがどうしてこうなってしまったのかしら。


「立太子の話はされていたんだよね、高等科に入学した頃に。」

「え? そうなのですか?」

「そう。初等科の卒業パーティでのオースティンを見て、考え始めたそうなんだけど。」

「そうなのですか?」

「そうらしい。立太子も婚約者も高等科を卒業するまでに決めればいいか、と思っていたらしいけど、パートナーになってくれる令嬢も居なかった事を知って呆然としたらしい。」

「確かに、侯爵家の寄子の伯爵令嬢でしたね。」

「だろう? 原因のひとつが王妃様だとは気付いていたそうだけど、それだけじゃないだろう?」

「そうなりますか。漏れ聞いた話では、自分の話と王妃様の自慢話ばかりするそうですよ。だから、お話をしても楽しくない、と。こっちの話など聞く耳も持ってもらえないのだと聞きましたから。」

「やっぱり………」


 少し頭を抱えそうになったレナード様は私が知らない何かを知っているのだろう。

 王族として、話せない事がある事は知っているし、その事を責めるつもりはない。知ってしまったらマズい事も多いだろうし。


「私は今まで通りにオースティン様とは関わらないつもりですから、問題は無いと思います。」

「いや、問題は作らせない。」


 あら、強気ですね。

 でも立太子したら、立場は上になりますか。


「一番の問題は、『自分が次期国王だから。』と身勝手な振る舞いをする事なんだよ。」

「え?」

「あー、ヒルダには話が行かないか。」


 とは?


「もしかして、学園でやらかしているのですか?」

「そうだな。剣術の授業ではさ、自分に勝った生徒を罵った話とか聞く?」

「もしかして、オースティン殿下は剣術が得意らしいと笑いながら話していた男子生徒がおりましたが、それですかね?」


 私が聞き返したら、「あーーーー」と頭を抱えていたから、そう言う事なんだろうな。


「話半分に聞いていた事が、もしかして事実だったりするのでしょうか?」

「凡そそれでいいと思う。」

「だとしたら、最悪と言いたくなるのですけど。」


 思わず口にした言葉にレナード様は頭を抱えていたけれど。

 なんと言いますか、本当に傍若無人なのですよ、オースティン様。下位貴族の存在は無視しているだけではなく、側近の言葉も教師の言葉すらお聞きにならないとか。自分の思う通りに話が進まないと、途端に不機嫌になると聞いていますし。


「諫言が聞けない事が一番の問題。」


 ぼそりとレナード様が言った。

 オースティン様って、本当に人の話を聞かないですものね!


「母子でそっくりだと思わないか?」


 そう言われましてもね?

 答えられないと思いませんか?


「君が思っている以上に、王宮内でのあの母子の評判は悪いんだよ。」

「そうなのですか?」

「そう。先ず、王妃様は自分をよく見せる事にしか興味がないから、言いだす事がめちゃくちゃなんだ。」

「めちゃくちゃ、ですか?」

「そう。例えば貧民への炊き出しをしようと言い出しても、その予算の出所を考えない。ただ、自分の名で炊き出しをする事だけに注目する。」

「いいじゃないですか、炊き出し。」

「まぁ、普通はそうだな。予算が貧民街の住人への仕事の斡旋をする為に使おうとしている予算じゃないならな。」

「はい?」


 炊き出しはその場限りになる。

 だからこそ、長い目で見れば仕事を斡旋した方がいいのは当然かと思うのですが、王妃様は違う、と。


「自分がドレスを我慢して、それを予算にしたらもっと人気が出ますよ、と言った文官はクビになったな。」

「はい?」

「自分は散々贅沢をして、予算は側妃である母のドレスを削った事もあったな。その時に『側妃様からの炊き出しです。』とした伯爵は男爵になった。」

「そ、そうなのですか?」

「そんな話は事欠かないよ。オースティンだって似たような事してるな。」

「とは?」

「政務で忙しい、とか言って授業をサボって遊び歩いているそうだ。」

「政務、していらっしゃるんですか?」

「してないな。」

「レナード様はしているのに?」

「そうだな。」


 なんだか本当に《王》にしてはいけない気がして来た。

 もしかしたら、解っていて政務を振らなかったのかしら。


「僕が政務をしている事すら知らなかったらしいし。」


 うそ、でしょう?


「今まで通ってきたわがままが通らなくなった事に気付いて、焦っているんだと思うんだ。」


 それが公爵家への婚約依頼につながるのですね。

 ここ最近は、執拗になっていると聞いていたから。


「父上は、国王陛下は王妃の力を少しずつ削いていく事で自分のわがままに気付くかを試したのだそうだ。その結果は見ての通りだけど。」

「………そうだったのですね。では………」

「幽閉は確定。せっかく見逃してもらえたのに、その事にすら気付けないようじゃ問題だろう?」

「確かにそうですねぇ………」


 否定は出来なかった。

 第二王子の暗殺に、側妃の住む離宮への毒。お家がお取り潰しにならない事に感謝しないといけないレベルだと私は思うのです。


「実家の侯爵家にオースティンを引き取らせた上で、子爵にしたらいいんじゃないかな? と言うのがジェスの意見。」


 あら、ジェスロウ第三王子の、ですか。

 ご自分の母と兄ですのにいいのでしょうか。


「継承権をはく奪して、平民にする案もあったのだけど、周りに迷惑でしょ、と言うのが理由らしい。」

「でも、そうしますとジェスロウ第三王子のバックボーンが弱くなりませんか?」

「その為の僕だし、下手に関わらせると期待しそうだから、と言う事らしいよ。」

「そうなりますか。」


 下位貴族に含まれる子爵になるなどオースティン様のプライドはどうなるのでしょか。

 子爵ですと、高級文官になるのも難しいですし、王家には嫁げなくなりますね。何より、寄り親ではなく、寄子の立場になると思うのですが大丈夫なのでしょうか。

 ですが、ここまで話が進んでしまったら、私にはどうする事も出来ないのでしょうけれど。


「オースティンの太鼓持ちをしている側近は、廃嫡もあるそうだしね。」


 あら、そこまでするのですね。

 と言う事は、諫言をしている方もいらっしゃる、と。


「筆頭聖女の代替わりから、一気に話を進めるそうだよ。」

「え? では、私の件も公表される、と?」

「そう。ターナー嬢には昨日のうちに伝えられたそうだ。」

「そうなのですか?」

「うん、安心していたらしいね、彼女。」


 確かに、平民の筆頭聖女はここ何代かは出ていないけれど。

 でも、神殿には何人もの平民出身の聖女様はいらすのに。


「王太子妃としての役割もしなければいけないから、ターナー嬢の協力が不可欠になるだろうから、お願いはしてある。」

「アンには本当に申し訳ないわ。」

「君ならそう言うだろうと思ったけど、そうしたらターナー嬢への筆頭聖女の移行が穏やかになるだろう?」

「それは、そうですが………」

「問題はレイチェルが覚醒するか否かだな。」


 確かにそうですわね。

 レイチェル様が覚醒したら、筆頭聖女としては一番だと思いますもの。もしかしたら、それが一番の問題なのかもしれませんね。


 

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