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I am extraordinarily patient, provided I get my own way in the end.  作者: 天野 乃理子
第二章 ホワイトブロンドの髪とアイスブルーの瞳
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SIDE:Hilda Ⅴ

見付けてくださりありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけましたら、幸いです。

 初等科の頃は侯爵家の令嬢が私に成りすまそうとしていた。自分がレナード様の初恋の人だ、と。

 確かに彼女は赤い髪に青い瞳だったのだけれど。


 高等科に入学してみれば、その侯爵令嬢はいなかった。

 きっと、お父様からもクレームが行った事で進学を諦めたのだろう。これ以上は踏み込んではいけない領域なのだ、と理解してもらえていればいいのだけれど、無理なのではないかと思っている。

 今更ながらに思うのは、レナード様を追いかけるような事をしていなければ、彼女は第一王子の婚約者になっていただろう、と言う事。だから彼女の行動が不思議だったのだ。


 そして、穏やかに過ごせると思った高等科も、王都に来た聖女見習いの所為で希望通りにはなっていない。

 愛してもらえないと覚醒しない、と言う見習い二人は神殿で何を学んでいるのだろう? そう思って、何度もクレームを入れている。私だけではなく、レナード様からも。もしかしたら、オースティン殿下からも行っているかもしれない。

 それでも変わらない二人に、神殿も手を焼いていると漏れ聞くようになったのは、年が変わってから。9月の入学だから、4カ月程度しか経っていない。


 北の方では雪が積もるこの国で、冬の間は王都での社交に力を入れる貴族も多い事もあり、この国の社交シーズンは秋の収穫が終わってから春にかけてとなっている。農耕に力を入れている領主は、春の種まきから秋の収穫までは何かと忙しい事も理由のひとつだと思うのだけれど。


 そんな社交シーズン、王宮でのパーティーもある。

 基本的にデビュタントを済ませていない子どもは、夜に行われるパーティー、俗に言う舞踏会には参加できない。ただし、成人年齢に達し、保護者が同伴の場合は特別枠での参加可能になってはいるのだけれど。


「アン、準備はいいですね。」


 確認するように言えば、「大丈夫です。」とは言ったものの、不安が残った表情のアンが居て。


「大丈夫です。似合ってますよ。」


 そう言えば、ほころんだような笑顔を向けてくれた。

 今日はこれから王宮である夜会に向かう。しっかりとアンの後見人になったお父様が保護者として向かう事になっている。当然私も一緒に。




「待っていたよ。」


 公爵家の控室になっている部屋には、何故だかレナード様と側妃のエリザベス様が居たのだけれど。

 あ、お母様の表情を見ると、お母様だけは知っていたみたい。


「今晩はレナードが参加するので引っ張り出されたの。」


 とエリザベス様は言う。


「そうね、保護者は必要だものね。」


 実に楽しそうにお母様が言うから、絶対に打ち合わせ済みだ。

 よくよく見ると、レナード様の正装に使われている生地が私のドレスに使われている生地と同じに見えるのだけれど、見間違えではないわよね?


「婚約者っぽくていいでしょう?」


 といい笑顔でお母様が言うから、そう言う事なのだろう。

 お父様は知らなかったみたいだから、二人で決めたのね。だって、楽しそうにエリザベス様もお母様も笑っているから。


「エリザベス様、紹介しますね、こちらターナー男爵家の養女になったアン、です。」


 思い出したように、お母様がアンを側妃様に引き合わせるように紹介した。

 その言葉を聞いたアンが側妃様にカーテシーをする。


「息子から話し合聞いているわ。これからもよろしくね。」


 そう言われてアンは感激していたけど。

 でも、これからはこんな機会も増えていくと思うの。


「それよりも、座ってお話しましょう。」


 と言われて、私たちもソファに座った。

 考えてみたら、入場までにはまだまだ時間がありそうだ。


「今日は私たちと一緒の入場になるわ。王妃殿下と第一王子殿下は国王陛下とご一緒らしいけれど。」

「確定したのですか?」

「してないわ。」

「あら。」


 とエリザベス様とお母様の会話は少し物騒だ。

 いいのかしら? こんな場所でそんなお話をして。だって、オースティン様が王太子になっていない、と言っている訳でしょう?


「王妃殿下はヤキモキしているから、私はこちらから、ね?」


 政治的な判断?

 違う、婚約者である事を優先させた、かしら。王妃様は公爵家の私とオースティン様の婚約を望んでいたから。


「それに、早々に退場するつもりだから、子どもたちは離宮で預かるわよ。」

「お願いしてもいいかしら。」


 エリザベス様の言葉に、お父様の顔を見てからお母様が言った。

 と言う事は、大忙しね。

 ダンスも踊りたいし、挨拶周りもしないといけない。少なくとも、セシリア様の所にはいかないと。

 忘れちゃいけないのは、ターナー男爵もいらしているからアンを連れて挨拶しないとね。




 そして、国王陛下の有難いお言葉で始まったパーティは、王妃様と踊った国王陛下が珍しく側妃であるエリザベス様ともダンスを踊った。


「珍しいですね。」


 思わずレナード様に聞いてしまったけれど、小難しい顔をしていたので返事が無くてもこれ以上は何も言わなかった。


「ヒルダ、踊ろう。」


 国王陛下とエリザベス様とのダンスが終わると、レナード様にエスコートされ、ホールの中央に向かう。

 今日のオースティン様は誰もエスコートをしていなかったので、え? 二人きりじゃないわよね? とその場を確認したら、国王陛下がエリザベス様と2曲目を踊るようだった。

 いいのかしら、王妃様とは1曲しか踊っていないのに………と思いつつも、「ヒルダ、余計な事は考えないで。」とレナード様から言われてしまったので、ダンスの方に神経をそそいだ。


 曲が終わると、国王陛下は壇上に向かい、エリザベス様はお母様の方に向かった。

 どうやら、アンと一緒に居る事を選んだようだ。だって、次の曲はお父様がお母様をエスコートしてフロアに出てきたから。


「では、挨拶に回ろうか。」


 ダンスを2曲続けて踊った後にレナード様が言った。


「セシリア様とターナー男爵は必須なのだろう?」

「そうですね。他は、まぁ、知り合いもそういないと思いますし。」


 クラスメイトがこの夜会に参加する話は聞いていないから。

 でも、発見してしまった。見習いが二人だけで参加していたのを。

 保護者である伯爵と男爵とは一緒ではないので、ちょっと拙いと思うのだけれど、本人たちは全く気にもしていないようだった。


「レナード様。」


 視線で彼女たちを示せば、あからさまにレナード様の表情が変わった。


 大急ぎでエリザベス様の所に向かい、エリザベス様から給仕で入っている人に指示を出してくれた。私は知らないけれど、きっと、何かの役付きの人なのだろう。

 人の中に紛れてしまったので、その後の事は解らないけれどきっと、別室に連れて行かれたのだろうと思う。だって、保護者無しでデビュタント前の令嬢はここに居る事は認められないから。


「これで安心してご挨拶に向かえるわね。」


 と笑顔でエリザベス様は言う。

 もしかして、ご一緒してくださるのですか? セシリア様はともかく、ターナー男爵様は驚かれそうなのですが? そう思ったのだけれど、黙っておく。途中で両親と合流してもいいのだから、と。


 セシリア様は婚約者の侯爵令息と一緒で、パーティを楽しんでいるようだった。


「ヒルダ様。」


 けれど、ひそめた声で言いたい事が理解出来てしまった。

 どうやら、男爵家の見習いはレナード様とダンスを踊るつもりで来ているらしい、と教えてくれた。


「大丈夫です。エリザベス様が手を回してくださいましたから。」


 そう伝えたら、安心されていた。

 けれど、一番の関心事は国王陛下と側妃であるエリザベス様が2曲続けてダンスを踊った事らしい。

 

 今まで2曲続けて踊る事のなかった国王陛下とエリザベス様が今日は2曲続けて踊った。たったこれだけで、状況がこうも変わるとは思わなかった。


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