中編
よろしくお願いします
私は何故サティと会えないのかをこの可愛い弟に説明するのを躊躇する。
そんな私の心情を幼い弟が把握することはなく容赦のない質問が繰り返されてゆく。
「兄様サティ様とは何故会えなくなるのですか?」
「それはサティが王子妃に相応しくないからだよ」
「えっ?そうなのですか?サティ様は誰よりも優しい方ですよ」
「そんな事はないんだ、彼女は学園で可哀想なメリーナを仲間外れにしていたんだよ」
「仲間外れですか!?メリーナ様とは誰ですか?」
「もうすぐ私の婚約者になる伯爵家の令嬢だよ」
「兄様の婚約者はサティ様ではないのですか?」
「彼女はメリーナを仲間外れにしたりして虐めていたんだ、だから婚約者ではなくなったよ」
「そんな〜僕、僕メリーナ様という人は会ったことないから人柄など解りませんが、それでもサティ様がいいです」
「ごめんよリオン。サティはリオンが言うほどそして私が思うほど優しい人ではなかったんだよ」
「でも、でも、僕の側にいらしたサティ様は優しくて⋯サティ様が一緒にいると苦しいのも辛いのもなくなって⋯元気になれたのはサティ様のお陰だったのに⋯⋯」
「どういうことだ?」
そこへ父である陛下より呼び出しがあってリオンとのお茶はお開きになった。
急ぎ陛下のもとへ行くと陛下の執務室には宰相と妃殿下、サティの父の公爵がいた。
顔ぶれを見て(あぁ婚約破棄の手続きだろう)と思った私は陛下に促され公爵との対面の席に座る。
すると陛下から思ってもみない言葉が私へ発せられた。
「レオナード第一王子、お前は廃嫡にする事にした。
その前に公爵にしっかりと詫びを入れさせるためにここへ呼んだのだ。先日の婚約破棄の件しかと謝るように」
「待ってください父上!何故私が詫びなければならないのですか?不義理を犯したのはサティです。婚約破棄は妥当な選択のはずです」
「やはり⋯⋯貴方は何も解ってなかったのね。こんなボンクラが私の息子だなんて⋯⋯公爵申しわけありません」
「いえ、妃殿下に謝られてもサティの気持ちを考えますと⋯⋯。やはり王子は何も聞いてなかったという事でしょう。そして伯爵の甘言にのせられた私の落ち度です」
「何を言ってる?公爵どういうことだ!そして母上私にボンクラとは⋯⋯」
「ボンクラはボンクラです。常日頃から自分の身分をカサに着て人の話を聞かない思い込みの激しい子ではあると思ってましたが、こんな失態を犯すなんて⋯やはり貴方を王太子にするのを先延ばしにしていたのは陛下の英断であったと今更ながら思いますわ」
私は理由がわからず、しかも廃嫡という現実がのしかかり絶望した顔で己の父を見ると、父上は静かに話し始めた。
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