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95話 聖奈に春が来て、俺には…





その日聖奈さんは夕方に店に顔を出したが、そのまま今日は帰らないと告げて出ていってしまった。


「セイさん。良いのですか?」


「何がだ?」


ミランが何某か聞いてくるが話が掴めん。


「セーナさんの事です。このままではシュバルツさんに…」


「いや、それはないから」


無いよな?


「でも、騎士様ってどこの国でもモテます」


「エリーは本の読みすぎじゃないか?」


そうだよね?


その日は何故か寝つきが悪かった。




「よし。準備できたな?行くぞ!」


翌朝、まだ日が出る前に二人を起こして王都へと飛んだ。

二人はまだ眠たそうにしているが仲間が頑張っているんだ!休んでなんかいられないよな?


「セイさん。こんな時間から動いてもどうしようもないですよ?」


「そうです。ふぁ。朝ごはん食べましょうよ」


そうか。朝飯もまだだったな。俺は一体何を焦っているんだ?聖奈さんに任せておけば大丈夫だ。

無理なら誰がしても無理だ。


「ただ…」


「ただ?どうしました?」


魔法の鞄(マジックバッグ)を聖奈が持っている」


「…と、いう事は?」


「飯がない…」


そう。非常食も作り置きのご飯もない。もちろん水都の冷蔵庫のような魔導具の中にはあるけど、あれは向こうの子供達と爺さん達の飯だ。


「じゃあ食べに行きましょう!」


「エリー。金持ってるのか?」


そう。俺の所持金もあの中だ。


「仕方ありません。こうなれば借りに行きましょう」


「ミラン先生!どこに?」


「先生?…私の実家にです」


先生って呼ばれて照れてる顔も可愛いんだから!


まぁここは恥を忍んで借りに行くしかないよな。商人組合に行ってもカードがなきゃいけないし…

こんな事なら昨日地球に帰れば良かった…弁当とか沢山売ってるし向こうの金なら家になんぼかあったのに…




「おはようございます。朝早くから済みません…」


ミランの家に行き、中に通してもらった。まだ日の出の時間に…申し訳ない…


「良いのよ。困った時はお互い様なんだから」


「それで実は…」


事のあらましを伝えた。もちろん決闘とか余計な心配事の種は話さずに。


「ふふっ。セイさんもおっちょこちょいなのね。私と一緒ね」


やめて!貴女は人妻なんです!私を誘惑しないで!

その後、お金を貸してもらって王都へ戻ってきた。


「何を買う?」


「そうですね。私達は料理を作れないので、市場に行っても仕方ありません。

なので朝からしている食堂へ行き、出来合いの物を買ってくるのではどうでしょう?」


うん。それしかないよね。店の子供達を起こして食べさせに行くのは可哀想だし。慣れたら自炊してもらう予定だけど、まだまだ開店したばかりだしな。


「よし。それじゃあ出掛けますか!」


この時俺は油断していた。まさかあんなモノを…




王都の朝から営業している店を探している俺達はかれこれもう四件の店に断られていた。


「やはり早すぎますし、宿と食堂が一緒のところは量が決まっているので難しいですね」


「そうです。宿に泊まって朝にご飯がないなんて…泣いてしまうです」


泣くほどなのか…


「しかし、手当たり次第だろ?」


「そうですね。中々朝から空いている店は少ないですからね」


五軒目の宿兼食堂に入る。


「いらっしゃいませ〜」


「すみません。朝食を買い取らせてもらえませんか?」


宿のおばちゃんに伝えると


「何人分でしょう?」


「7人分ですが…なければ少なめでもいいです」


俺が朝食をぬけば良い。


「それなら大丈夫です。入れ物はありますか?」


「あります!」


即座に鍋とパン入れようのトレーの様なモノを渡した。


暫く待っていると泊り客も降りてきた。


挿絵(By みてみん)


「セイくん…?」


ん?


「聖奈…」


階段にいる聖奈さんの後ろにはシュバルツさん…


「悪い。何か気分が悪くなってきたからこれを頼む」


俺はミランにお金を渡して店を出た。

もちろん行き先なんてない。

そもそも何で出てきたんだ?


アテもなく王都の道を歩いてきたけど…どこここ?


「なんか何にもないとこに来たな。まるで俺みたいな場所だな…」


今いる場所は建物が無い小高い丘だ。多分3メートルくらいしか高さがない。

何の為にあるのか少し気になったけど…さっきの光景が頭から離れず俺に他の事を考えさせてくれない。


「何でだ?そもそも女性として意識していなかっただろう?でも嫉妬とかそんなんじゃないんだよな…」


まるで…昔、世話していた猫が他の家で餌をもらっていたのを見てしまった感覚…


「まさか俺は聖奈さんをペットとして見ていたのか…?」


「それは酷くないかな!?」


「うおっ!?なんだ、聖奈か」


いきなり後ろからでかい声で話しかけるなよ…

心臓止まるかと思ったぞ…


「何だじゃないよ!急に出て行くんだもん。もしかして勘違いさせちゃったかと思って追いかけてきたらこれだよ…」


「勘違い?なんだ?シュバルツさんとは上手くいかなかったのか?」


シュバルツさんは硬派っぽいもんな。聖奈さんの訳の分からない言動には俺よりもついていけないだろうな。


「上手くも何も、目的はドリトニーの財産を押さえることだよ?

私はてっきりシュバルツさんと一緒に寝たと勘違いされたかと思って説明する為に追いかけたのに…ペットって…」


「ああ。それはすまん…。昔飼っていた猫を思い出してな。それと聖奈が何故かダブったんだ…」


良かった。一瞬聖奈さんに惚れているのかと勘違いしそうになったけど、やっぱりそんな事はないな!

しかしペット扱いは不味いな…

だが何扱いならいいんだ?


「セイくんってホント酷いよね。ペットはないよ。ペットは!ミランちゃん達の子供扱いもアレだけど…」


アレってどれでしょう?


「悪いとは思うけどこればかりは仕方ないだろ?みんながそう見えてしまうんだから」


必殺開き直り作戦だ!


「ふぅ。手強すぎだよ…」


「なんか言ったか?」


必殺難聴系主人公!


「な・に・も!!もうっ!行くよ!」


「お、おう…」


どこに?とは聞けん…ここは従う系主人公だ…

なんだよ従う系って…





「おかえりなさい。食事は食べましたよ」


王都の店に戻るとミランに出迎えられて、そう告げられた。


「了解。さっきは悪かったな。お詫びに今日地球でうまいモノ買ってくるよ」


「ありがとうございます」


あれ?ミランのテンションが…普段ならもっと喜ぶのに。

俺は聖奈さんと共に冷めた朝食を食べた。


「シュバルツさんはいいのか?」


「良いよ。宿を出る時に食べていてくださいって伝えておいたから。

多分勘違いの勘違いをしてるから後で弁解しなきゃだけどね」


すまん…謝る系主人公するから許して。


「どんな感じだ?」


「シュバルツさんと?」


こいつ…めんどくさい系かよ…


「ふふ。冗談だよ。一応法的に名義を変えられるモノは変えたよ。私の名前だけどね。大半の現金は貴族院っていう所に預けてあるみたいだから、それは名義変更が終わったら私達のものだよ。

今日は現物を押さえに行く感じだよ」


「聖奈の名前のままで良いんじゃないか?現物か…それは貴族街に行くって事だろ?」


この王都は周りに国民が住んで、中心に城がある。城との間に貴族街があり、一般国民は入ることすらできない。


「そうなるね。前にお城に行く時に通って以来になるね。しっかりと楽しんできます!」


ビシッと音が聞こえるような華麗な敬礼をした。

いや、遊びちゃうやん?

まぁ、異世界大好き人間からしたら貴族街は玩具箱だよな。

リアルメイドさんとかに会える可能性高いし。


「まあ、ほどほどにな。話は変わるけどさっきミランの対応がおかしくなかったか?」


「そりゃそうだよ。セイくんがすっきりした顔で帰ってきたんだもん。まぁ分からないだろうから私の方からフォローしておくから安心して美味しいデザートを買ってきてあげて」


うん。任せます。


「了解。シュバルツさんにもよろしくな」


「うん。ちなみにシュバルツさんは妻子持ちだよ」


なんだよ!早く言えよ!


俺はその日は店の護衛として突っ立って過ごした。

エリーの両親は暫くおっかなびっくりしながらの接客をしていたが、昼過ぎには普段通りに戻っていた。

殴られた子は…


「あの時は助けられなくてごめんな。これで美味いもんでも食べて忘れてくれ」


「ありがとうございます!大丈夫ですよ!またのご来店お待ちしています!」


人気者になり副収入も得ていた。

この世界逞しくないと損をするな。俺も見習わなきゃな。

もちろん俺からもすぐにフォローをしておいたが、俺の活躍を見てから俺を見る目が変わっていた。

冒険者とかにならないでね?君はウチの看板なんだからさ…


朝はあの後、すぐに聖奈さんがミランと話をして、ミランは元に戻っていた。

聖奈マジックと名付けよう。


朝のデザートももちろん完食した。俺の分を二人で取り合いながら。


聖「聖奈とシュバルツさんが一つ屋根の下で…」


ミラン「セイさん。もう帰ってこなくなった人の事なんて忘れてください。私達がいるじゃないですか」


エリー「そうですよ!デザート下さい!」


チビミラン「パパデザート!」


チビエリー「パパおやつ!」


ガバッ!!


聖「うおおおおおっ!!??!!?!?!?」


ミラン&エリー「どうしましたっ!?」


聖「…良かった…夢で…俺はロリコンちゃうんや…」

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