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94話 戦闘シーン?そんなものは無い!





ついに決闘の時を迎えた。

俺は貴族じゃないから決闘しなくてもいいよねって言ったのに…


「これよりドリトニー家の陳情により決闘を行う。立会人は前へ」


その言葉にシュバルツさんが前に出た。

せめてこれくらいさせてくれとシュバルツさんから申し出てくれた。さらに


「私は第二王子であらせられるアンダーソン殿下の名代である。ドリトニー、セイ、両名とも遺恨なきようと、仰られていた」


「わかりました」


「勿論にございます」


バカも王子の言葉と聞いてしおらしくしている。


「この度の決闘の内容は勝った方の総取りという事で良いか?」


審判?の人が確認してくる。

もちろん了承済みだ。書類に血判も押したし。

ウチは店の権利と中の商品全部だ。

つまり今日は休業だ。このギャラリーの中にはみんながいる。

俺はこの闘技場を見渡した。




side聖奈


「対戦相手がわかったよ」


私が出来るのは情報を集める事だけ。王都中を駆けずり回って集めた情報を聖くんに伝える。


「Bランクか?」


聖くんが不安を隠した表情で聞いてくる。

そうだよね。


「ううん。そもそも冒険者じゃなかったよ」


「それは最悪のパターンか?」


食客の強さは最悪Aランクだもんね。


「ううん。それはないよ。むしろチャンスがやってきたね!」


「ど、どういう事だ??」


「聞いた話だから鵜呑みにするのは不味いけど、対戦相手はよくてBランク、多分Cランク程度って話だったよ!あの家の関係者ってお金渡したら何でも話してくれるから、情報集めの醍醐味が全くなかったよ」


「いや、それは今回はなくていい。そうか。雑魚か」


もう!悪い顔して!惚れちゃうぞ?


「相手はどうやらうちの店と商品全てを欲しがってるみたい。あ、後セイくんの命ね!」


「いや、俺の命をついで扱いはやめて…」


「ふふっ。それで向こうが出す条件は無制限みたいなの!」


「無制限?」


「そう!ようは勝てば何でもくれるって事だよ!」


ふふっ!また悪い顔になってるぞっ!あっ。私もか…


「じゃあ全てをもらおうか」





side聖


ここは王都の闘技場。観客が何万人も入るらしい。

ここで野球したいな。王都大会(地区予選)を勝ってマネージャーのミランを甲子園に連れて行くと約束しよう。


今日は国民にとっては祭りの決闘ということもあり、半端なく人が集まっている。

オリンピックかな?


観客の中にいるミラン達を探したけど見当たらないな。流石に無理か。

俺の対戦相手は大男だ。身長2mくらいの巨漢で斧?ハルバート?を持っている。あんなの食らったらスプラッタだぞ?

ホントに雑魚だよね?まぁ雑魚って言ったのは俺だけど…


シュバルツさんが近寄り耳元で


「あの男は以前他領で犯した冒険者殺しの罪で死刑になるところをドリトニー子爵が大金を積み買い取った男だ。

元冒険者でCランクだったようだ。悪い事は言わん。棄権しろ。金は後でも取り返せるが命に次はない」


ありがとう。貴方は本物の騎士だ。

そして俺は勝てる勝負を捨てる事はしない男だ!

あれ?なんかカッコ悪いな…


「大丈夫です。Cランクなら俺もですから」


シュバルツさんが目を見開き驚いている。

あれ?そう言えば冒険者だって言ってなかったな…


「武運を祈る」


「はい!」


Cランクの殺人鬼か。もしかしたらBランクくらいの実力はあるのかもな。

だが悪いな。この異世界モノはバトルモノじゃないんだ。ハーレムモノなんだっ!


「両者前へ!」


そう言われて前に出る。向こうはドリトニーと二人だ。

そこで勝負の賭け金をみんなに知らせた。ドリトニーが全財産を賭けたのを聞いてどよめきが走る。何でもこちらの全財産を奪うのだから、自分も全財産を賭けないと不公平な決闘になるとかなんとか。

ありがとう。貴方がバカな上に見栄っ張りで助かったよ。

そもそも聖奈さんが出した条件なのにな。まぁこっちは全財産の半分以下なんだけどな。転移魔法も異世界転移もある俺の財産を把握できる人など存在しない。

俺も含めて……


「では、始めっ!」


俺は開始の合図を待たずに構えていたライフルを身体強化した身体で固定して、合図と共に撃った。


バァンッ


闘技場に火薬が炸裂した音が鳴り響いた。


弾丸は相手の心臓付近を直撃して左腕ごと消失させた。

これは人に向けて撃っていいモノじゃないな。

残念だったな。これはスプラッタモノなんだ。


相手は一度視線を自身の左肩に向けてそのまま倒れた。

悪いとは思わん。相手がアンタで感謝しているくらいだ。相手が善人ならこんなもの向けられずに逃げていたかもしれん。


「しょ、勝者セイ!」


審判の宣言があっても会場は静まり返っている。

そこに


「流石セイさんです!」「やりました!」


「セイくんカッコよかったよ!」


三人の声が小さく聞こえるとそれが起爆剤となり


「「「うぉおおお!!」」」

「「「すげぇええ!」」」


地鳴りのような歓声に変わった。

スプラッタみて喜べるって…カルチャーショックだよ。


まさかの一瞬での決着に観客は興醒めかと思ったけど良かった。もちろん喜ばせる為にやったんじゃないけど、観客が味方だとこの後もスムーズに…


「バカな!?認めんぞ!どうせ卑怯な手を使ったんだろ!?」


おお!大正解だ!でもあの動きを見る限りでは普通にしても負けなかったかもしれんな。どっちにしても今まで金で思い通りにしてきた奴が納得するとは思えんがな。


「うるせー!俺たちが証人だ!」

「そうだそうだ!往生際が悪いぞ!」

「良い気味ね!庶民の苦しみを知れば良いわ!」

「スラムのゴミでも拾って食いつなげよ!」


やはりドリトニーは嫌われ者か。貴族が嫌われているというより、こいつが嫌われているんだろうな。普通の貴族なら嫌悪ではなく畏怖の対象だろうからな。

ここまでの批判を受けると言う事は普段から王都民に嫌われる行動をしていたのだろう。

今回の買収の手際も良かったし、うちに来てから騒ぎを起こすのも早かった。常習犯か何かかな?


どちらにしても聖奈さんにケツの毛まで毟られるだろう。それで喜ぶ趣味じゃない事を祈るばかりだ。


立会人のシュバルツさんの部下がドリトニーが変な行動を起こさないように囲んだからもう見えない。


そのシュバルツさんが近づいて来た。


「何が起こったのか分からなかった…いや、それよりもこれからの事だな。

立会人の権限でドリトニー子爵は軟禁する。しかし貴族である上に書類に軟禁は3日と明記されている。その間に差し押さえを終えないとすぐに難癖をつけられるぞ?」


「それは大丈夫です。得意な仲間がいるので。もし私が負けていたら拘束されていたのですか?」


サインはしたけど…何かいっぱい書かれていたから読むのは諦めたんだよな。


「それはそうだ。そもそもその条項を記載したのはそっちだぞ?ドリトニー子爵は勝った方が全てを手に入れるとしか書いていなかったからな」


「そうですか。聖奈に任せていたのであまり確認していませんでした」


俺がそういうとシュバルツさんは驚いて、そして


「仲間を信頼しているのだな。商人でも冒険者でも、そして人として一番大事な事だ。これからも仲間を大切にな」


何か勘違いしてるけど…

まぁ信頼かどうかはわからんけど…大切にはしますよ。


「この度はありがとうございました」


俺はお礼を伝えて審判の元に向かった。




「書類を渡さない?」


何言ってんだこいつ?そんなの通るわけないだろ?


「これは何かの手違いです…そもそも貴方は貴族ではないでしょう?」


「それは向こうがこれを望んだからだ。あんたがいくら掴まされているのか知らないが落ち目の人間にいつまでもついていたら道連れになるぞ?」


ここまで大事にしたんだ。なかった事にはさせんぞ。


「黙っていても困るな。それとも次はアンタが俺と決闘するか?」


「ひっ…わ、私は…」


「私の部下を虐めるのはその辺りでやめてもらいましょうか?」


何だか登場人物多くないか?覚えきれないぞ…

いや、審判の名前すら既に覚えてないから今更か。


新手の男は60手前くらいの白髪混じりの茶髪を神経質そうに七三にわけているおっさんだ。


「誰だ?」


もう貴族に喧嘩売ったんだ。敬語なんか使えるかよ。


「これは野蛮な方ですね。私は管理局の副局長を務めさせていただいているニール・ガランドと申します。

今回の事はどうやら不幸な行き違いがあったようですね」


「それはそっちの事情だろ?俺には関係ないな」


「いえいえ、貴方にも関係ありますよ。何でも貴族に手をあげたとか?

それは王国法で完全なる犯罪です。犯罪者の権利は管理局に全て委任されます。

よって今回の事は無かった事になりますね」


うーん。面倒だ。こう言う時は…


「それはないですね」


聖奈えもんの出番だ。


「誰ですか?部外者は入ってこないでください」


「書類にも名前がある関係者ですよ。セイくん。貴方は捕まったの?」


何か始まったな。


「いや。捕まった事は生まれてから一度もないな」


「じゃあ犯罪者じゃないね」


茶番かな?付き合うけど。


「そんな事はありません!現にドリトニー子爵を…」


「そんな事は一切聞いていませんが?」


シュバルツさん登場!俺は退場してもいいかな?


「いや、それは」


「今回の件はドリトニー子爵がセイ殿の店を欲しくて始めた決闘だと聞いております。もしそれが嘘ならドリトニー子爵が悪いという事になるのでは?」


さあ、どうするんだ?


「き、」


き?


「貴族を殴ったのですよ!?それを見て見ぬふりをされるか!?」


「ですからその様な事実はありません。もしあれば大変な事だと思います」


「でしょう?」


「ええ。それを黙る代わりにとセイ殿を脅して今回の決闘を承諾させたなんて、貴族に在るまじき行い。陛下へと陳情しなくてはなりません」


シュバルツさんが味方で良かった。あの時崖で助けたのは月の神様の思し召しだな。


「それにセイ殿はランク4の商人ですよ。この意味貴方ならわかるのでは?」


「ランク4…」


あれ?シュバルツさんに伝えたっけ?まぁ聖奈さんの仕業だろうな。

この国の王族の御用達ではないけど、勘違いしてくれる事を祈ろう。

っていうか、俺にも印籠あったじゃん…使えるか不明だけど。ドリトニーにも最初に見せていたらこんな事にはならなかったかもな。


どうやら諦めてくれたみたいだな。


「書類を」


シュバルツさんの催促に部下の審判の人は上司を見る。


「…渡しなさい」


流石に泥舟からは降りたか。伊達に何十年も汚職しているだけの()はあるな。こういういざとなったら保身の為に誰でも切る人間がいるから荒んだ世の中になるんだ。

俺を見てみろよ?もうすぐ切られそうだぞ!

主にエリーミランに。


聖奈さんは異世界と地球を往復したいから大丈夫。

なんか情けない理由だけど。


書類を手にしたらすぐに聖奈さんに渡した。


「じゃあ私はこれから忙しいからミランちゃん達をよろしくね!」


「お、おい。一人でするのか?」


いくらなんでも大変じゃね?身の危険もあるしさ。


「二人には見せたくないからね。セイくんになら全て見せられるけど?」


悪聖奈は見せられないと。

その言い方は語弊があるからやめてくりー。


「いや、その言葉マジックいらないから。わかった。魔法の鞄は持っていってくれ。何かあれば後の事は考えずに自分の身を最優先にな?」


「ありがとう。多分大丈夫だけど嬉しいよ」


何だか良い雰囲気?だけど、隣にはスプラッタがおる。台無しや。聖奈さんに魔導書だけ出してもらって魔法の鞄は預けた。

聖奈さんはそのまま行ってしまった。シュバルツさんを連れて。


え?もしかして俺じゃ役に立たないからいらなかっただけじゃ?


俺はスプラッタを検分しているシュバルツさんの部下だろうと思える人に声をかけた。


「あの。シュバルツさん連れて行ってしまって良かったのでしょうか?」


「はい。殿下から助けになるように計らえと仰せ使っています」


ありがとう。第二王子殿下。

凄いな異世界。子供でも恩を忘れないとは。俺なんか子供の頃、転んで足を擦りむいた時に近所のばあさんに治療をしてもらったのに、次の日にはその婆さんの畑で鬼ごっこして怒られていたのに……


「ありがとうございます…」


俺は腑に落ちないがエリーとミランの元へと向かった。


聖「くらえっ!」パァンッ


聖奈「やったね!」


聖「態々修行したのに生かす機会が戦闘以外ばかりなんだけど…」


聖奈「仕方ないよ!これはバトルモノじゃないんだから!」


ミラン「そうです。これはスイーツモノなのです」


聖(スイーツなんてどこで覚えたんだ?お父さんは量産型女子大生に育てた覚えはないぞ!)

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