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9話 続、宝石売りの聖。

 





 買取代金を無事に受け取った俺は、以前宝石を買った店に来ていた。


「この石が付いているものは、これで全てですか?」


 美人なお姉さん店員に、勇気を出して声を掛けてみた。


「サファイアですね。名前は豪華でそこそこ綺麗なのですが、女性に贈るにはあまりお勧め出来ません」


 前回は初めての事もあり、何も言わずに売ってくれたが…2回目だからか、何か教えてくれるのだろうか?


「どうしてでしょうか?アクセサリーに疎いもので、良ければ教えて下さい」


「はい。サファイアは宝石の採掘の時に出るハズレ石だからです。

 だいたいサファイアが20個ほど出て、その中の一つがルビーや他の宝石になります。

 なので我々の間だけでなく知っている方も多く、皆さんハズレ石と呼んでいます」


 なるほど…この世界ではサファイアが良く取れるってことか。他の宝石の値段次第だが、いずれサファイアだけじゃなくて他の宝石も売らないと地球でのバランスが崩れ……

 俺が少し売るくらいで崩れるのか?


 まぁ、変な噂を避けるためにも、地球では色々な物を売った方がいいな。


「そうなんですね。綺麗な石なので気に入っていましたが…

 ただ予算がわからないので他の宝石の大凡の値段を教えて頂けませんか?」


 客だが教えを乞う立場だから下手にでる。

 べ、別に同年代の美人さんだからって、緊張してるわけじゃないんだからねっ!!


「こちらはルビーになりますね。こちらは400,000ギルになります。

 それとこちらのダイヤモンドは800,000ギルですね」


 まだまだ全然買えないな…

 逆に向こうの安い人工ダイヤモンドを逆輸入したら……まずいよな…


「残念ですがまだまだ手が出そうにないですね。

 とりあえずサファイアで我慢しますね。他の物はありますか?」


 そう言ってなんとか在庫のサファイアの装飾品を出してもらい、200,000ギル相当分を仕入れる事が出来た。




 特にする事もない為、宿に帰ってゴロゴロしながら考え事をしている。


 サファイアを仕入れたからには、次に地球で過ごす時は少し遠出をして、遠方の買取専門店で売ろうと思う。

 問題は宝石ばかり売っていると、どこかで失敗しそうなんだよな…

 何か別の売れそうな物はないものか……


 仕方ない。少し他の人の知恵に頼るか。

 頼れる人が少なすぎるけど…




 少し仮眠を取り、早めに夕食を出してもらい、食べたら地球へGO!





 いつもの部屋に戻った俺は、まず携帯をチェックする。


「あれ?メッセージだ」


 なになに…


『近くまで行く用事があったから寄ったんだけど、留守みたいだね。

 メッセージみたら電話ください』


 長濱さん…なんかメ◯ーさんみたいだな…大丈夫か?


 そうだ!長濱さんに相談してみよう!

 ラノベにも詳しかったし、フリマにも詳しいから何かアイデアがあるかもしれんしな!


 よし。そうと決まれば電話しよう。


『もしもし。東雲だけど。今大丈夫かな?』


『聖くん?良かった。連絡が遅いから何かあったのかと思っちゃった』


 5時間も前の連絡だもんな…


『ああ。ごめん。少し忙しくしてた。それで、どうした?』


『特にはないんだけどね。また会えたらなって』


 よしきた!


『また瓶詰めに来てくれるのか?助かるよ!』


『えっ?う、うん。いつがいい?』


 明日の朝早く宿を出たら間に合うかな?

 最悪寝過ごしてもいいように荷物持ってこっちで寝るか…


『じゃあ、明日はどうかな?時間は任せるよ』


『明日は大学が昼までだから、それからで良いなら』


『じゃあ、明日昼に。相談したい事もあるからご飯でも行こう。じゃあ明日』


『う、うん。明日ね』


 なんだ?連絡しろと言ってきた割には返事が微妙だったな?


 あっ!でも寝過ごしたら向こうに次に転移する時が不味いな…

 まだ街から出られたら出てみよう。





 転移して戻った俺は宿の人に今日は急遽泊まらない事を告げた。もちろん返金など頼んでいない。


 月の位置は…あれ?なんであんな位置にあるんだ?

 あれ?月って常に同じように回るんじゃないのか!?

 とりあえず時間には間に合うな。後は門から出させてくれるか。

 おっと、その前に明日はこっちに来れないから、領主様用の白砂糖を急いで取りに帰ってハーリーさんに預けよう。

 お金も欲しいけど信用と安全も欲しいから、最初は献上しよう。

 砂糖なんて掃いて捨てるほどあるしな。




 人気のない路地裏で転移して砂糖を取りに帰り、ハーリーさんに白砂糖を預けてから街の入り口に来た。



「今から出るのか?」


「はい。夜通し歩いても届けなくてはならない荷があるので」


 大門は閉まっていたが通用口は通れるようで、兵士に嘘をついて出ることにした。


「商人も大変だな」


「お客さんあっての商人ですから」


 それっぽい事を言って扉を潜った。


 急いでいつもの場所へ行き、人目がない事を確認してから地球へと帰還した。







「こっちでも月の位置は同じだったな…」


 地球でも確認したら、月の位置は余裕で見える程度だった。


「明日長濱さんに聞いてみよっ」


 わからない事は人に聞くのが一番だ。

 一杯飲んで寝た。スャァ…






 翌朝、目覚めた俺はカーテンを開けて空を確認する。


「やっぱり月の入り?の時間が伸びてる。

 なんか小学生の頃習った気がするな…」


 急いで出掛ける準備をした俺は家を出た。




 最寄駅に着き、携帯で検索した場所までのルートを確認して電車に乗った。


 電車に揺られること2時間。途中乗り換えたりもしたが、無事に目的地へと辿り着けた。

 帰りは特急に乗らないと間に合わないな。



 店が開くまで暫く待ち、10時開店の店では何事もなく買い取って貰えた。


 今回もすごい額になったな。やはり硬貨より札だな。

 鑑定の間に調べた特急や新幹線が停まる駅まで行って、そこから最寄駅で降りてタクシーに乗った。


『大学の門で待ってます』っと。


 長濱さんに連絡しつつ、大学へとタクシーで向かった。

 何とか予定時間に間に合い、長濱さんを待つ事に。




「お待たせ。じゃあ行こっか」


 やってきた長濱さんは一昨日より明らかにおめかししている。

 まあ、暖かくなったから薄着はわかるんだ。俺も上はシャツだし。

 でも、露出過多じゃないかい?


「俺もさっき着いたとこ。提案しててあれだけど、どこでご飯食べる?」


「聖くんは猫って平気?」


 はて?





 猫カフェって飲めるけど食べれたっけ?と思いきや、猫カフェが見えるフードコートだった。

 良かった。猫は好きだけどアレルギー持ちなんだよな。何故かカッコ悪くて言えなかったけど…


「ごめんね。ご馳走してもらって」


「いや、話を聞いてもらうのはこっちなんだから、気にしないで」


 どうやらメッセージで送った奢ると言った俺の懐事情を心配してくれたみたいだ。

 通りでフードコート。いや美味いんだけどね。


「話と言うのは売る商品についてなんだ」


「あれ?胡椒はやめたの?」


「いや、胡椒は売り物ではないんだ。あれは頼まれているもので、売りたいのはアクセサリーとか工芸品なんだ」


「そうなんだ。うーん何が売れるかなぁ」


 有難いことに真剣に悩み出した長濱さんに伝える。


「ざっくばらんでいいよ。例えば、長濱さんが得意な異世界から何かを輸入出来たら何を売るとかでも…」


 直球過ぎたか?!


「異世界…アンティークとかかな?」


 すごい!すぐ出てきた!


「アンティークね。例えばどんな?」


「そうだね…ベルサイユ宮殿にありそうな家具とかかな?

 結構人気なんだよ?リノベーションしてある物とかも。

 高いけどね」


 なるほどな。確かに家具で良いものならこちらでも手作りのアンティーク物として売れるかもな。


「他にもあるかな?」


「んー。アンティーク物なら家具じゃなくても人気だよ?

 例えばランタンとかでも、キャンパーの人達やお洒落な部屋にしたい人向けにも売れると思うよ。

 後!異世界と言ったら金貨でしょ!

 もし金貨を持ち帰れたら精製して金の延棒でも作って売っちゃうかなぁ」


 なに!?確かに延棒にしてしまえば売れるけど…した事もないから無理だな。


「ははっ。さすがに延棒は素人には無理だなぁ」


「そんな事はないんじゃない?前に調べた事があるのだけど、ホームセンターに売ってる材料で出来そうだったよ?」


 なんだその知識は…この能力が長濱さんにあれば、俺なんかよりもきっと上手くやるんだろうな…


「ありがとう。また何か思いついたら教えてな」


「こんなので良かったの?じゃあ思いついたら言うね」


 食後、俺達はアパートに帰った。






「あれ?この前のがなくなってるね」


 以前の物はもう売ったからな。


「ああ。次も催促されてるんだ。頼める?」


「もちろん!その為に呼ばれたんだもんね!」


 長濱さんはテンション高めに作業へと取り掛かってくれた。

 暫くすると何かに気付いたのか、長濱さんは普段と変わりなく話し始める。


「胡椒とか砂糖の瓶詰めなんて、まるで異世界で売るみたいだね!

 あっ!銀細工も革製品もそうだね!」


 やばい!モロバレしとるやないかっ!!


「何か、ラノベの世界の作業みたいで、楽しいなぁ…」


 ぼそっと呟いた言葉は、まだ何かに悩んでいそうな儚げなものだった。

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