87話 一号店オープン。無職→用心棒。
「いらっしゃいませ!ごゆっくり見ていってください!説明が必要でしたらお近くの従業員までお気軽にお声がけください」
元気な声が店内に響く。
一応安いものは置いていない。だが、売り方は庶民的だ。
「ホントに無料なのか?」
「はい!試飲はお一人様一杯限り無料です。明日まで無料なのでまた来てくださいね!」
女の子はメイド服を着ている。もちろん聖奈さんの趣味で地球産だ。
ちなみにミランとエリーも例外ではない。ご愁傷様。
男は執事服だが、俺は普段着だ。最初はどんな客が来るか分からないから用心棒として立っている。
聖奈さんは客層と売上、売れた商品を細かにチェックしている。聖奈さんは自らメイド服を着ている。もちろん写真を死ぬほど撮らされた。
開店前は店の前でみんなで記念撮影をした。もちろん孤児達は何をしているのかわかっていないが聖奈さんの言葉にはイエスマンだった。
子供達は侮られる事もなく着々と接客をこなしていく。
良かった。絡まれる事がなくて。
昼になり1人ずつ休憩してもらう。今日は6人も店員がいるけど普段は三人だ。だから一人ずつでの休憩に慣れてもらう。エリーとミランは最後に二人同時に休憩だ。
ちなみに売れ行きも上々だ。
一人の商人が他の街に行商に行くから大量に買いたいと申し入れがあった。別に量はいくらでも構わない。買い占めなど不可能だからだ。地球の生産力を舐めてもらっちゃ困るぜ。
その商人はガラス瓶を買おうとしていたらしいが値引きには応じない。子供達がそう言うと上の人に紹介してほしいと言ってきた。しかしそれも無理だと伝えると肩を落とし10瓶程購入して出ていった。
流石商人。トラブルは起こさなかったな。これがただの金持ちや国のお偉いさんだとまた違ってくるかもしれない。
その為の予防に入り口に王族御用達と看板を掲げている。これで変な事をする人が減ればいいが。
もちろんその看板は逆の効果も発揮する。
王族御用達なんて書かれていたら敷居が高いと感じる人が多いからだ。
まぁその内口コミで広がるだろう。リーズナブルではないが珍しく、そしてちゃんとした商品だと。
「セイさんも休憩に入ってください。お弁当美味しかったですよ」
「そうか。それは楽しみだ。何かあればすぐ呼ぶんだぞ?」
俺は二階へと上がっていった。
「お疲れ様。愛情を込めて作ったからこれ食べてね!」
2階では聖奈さんが机に向かって何か書いていた。
「うん。ミラン達への愛情の味がする」
やっぱり聖奈さんの料理はメチャクチャ美味い。性格と味は比例しないのか?
そうだな。それなら俺が作ったら世界一美味くないといけないもんな。
「売上のほうはどうだ?」
「初日の午前中にしては売れた方じゃないかな?
これから口コミで広まればお金持ちが食器や小物を買ってくれるんじゃないかな。
どちらにしても一週間くらいが勝負だね」
それ以降は良くも悪くも安定すると言うことか。
さて昼からも頑張りますか。
『ですから!委託販売などはしていないですっ!』
俺が昼からも頑張ろうかと思っていたら下から大きな声が聞こえた。
この声は大人しい最年少のシリーの声だな。
よし。助けに行くか。
「待って。まだ様子を見ましょう。私達がずっといるわけじゃないからね」
「そうだな。いざとなってから介入しよう」
俺たちは下の声に耳を傾けた。
sideシリー
「ですからウチは委託販売は行っていません。通常の販売では個数制限は設けていませんのでいくらでもご購入ください」
このおじさんはしつこいですね。これまでの商人さんはすぐに引き下がってくれたのになぁ。
「子供じゃ話にならん。この店の責任者を出せ」
しかも高圧的。セーナさんが教えてくれた商人のしてはいけない事ランキングのトップ5に入る事です。
子供と言われている私達でも守っている事が出来ないなんて、大した商人さんではないんでしょうね。
「責任者はここを任せられている私達です」
「言葉が通じんのか?俺は魔導士協会のお偉方にも顔がきくんだぞ?こんな店すぐに潰してもいいところを話をしてやると言っているんだ!早く店主か会頭を出せ!」
言葉が通じないのはあなたの方です。
しかし、一応お客様。無碍には出来ません…
そう私が考えていると
「すみませんがトラブルを起こされる様でしたらお引き取り下さい」
ガイくんだ。大丈夫かな?
「なんだガキ?俺に楯突いたらこの街じゃ暮らせんぞ?」
「お引き取りを」
凄い。ガイくんは気丈に対応している。普段は私より子供っぽいのに…
ミランさん達は助けてくれる気配がないから私達でどうにかしなきゃ。
「お帰りください」
私も頭を下げた。
「このガキどもが!」
その声に顔を上げると顔を真っ赤にしたおじさんが私に向かって手を振り下ろそうとしている…
バキッ
「うっ!」
「ガイくん!!?」
なんで!?なんでガイくんが殴られるの!?
「ガキ!邪魔だ!」
おじさんはさらにガイくんに追い討ちをかけようとしている。
私は暴力に恐くなり目を瞑ってしまった。
「そこまでだ。よくも俺の可愛い従業員に手をあげたな」
聞き慣れた声に顔を上げると・・・
そこにはおじさんの首を後ろから掴んで持ち上げているセイさんがいた。
見たことのない怖い顔をして。
side聖
「なんかヤバそうじゃね?」
ガイが割り込んでシリーを助けたのはいいが、あの手の奴は気丈に対応すると逆効果になる事が多いんだよな。
むしろおだてればすぐに解決しそう……
まぁ、あんな客はうちにはいらんからどうでもいいが。
「そうだね。手をあげたら介入しましょう」
「遅くないか?それだと子供達が怖がるんじゃ?」
PTSD的な?
「あんな奴は捕まえなきゃダメだよ。今のままだと衛兵に捕まってもすぐに解放されちゃうけど、暴力を振るったら…」
「おい…」
俺たちがそんな話をしていたら案の定男は手をあげた。シリーに。
それは許さんぞ!
しかし俺の目に飛び込んだのはそれを庇うガイだった。
バキッ!
『うっ!』
それを見た俺は聖奈さんに
「もういいだろう」
「うん。やっつけてきて」
水○黄門みたいだな。ここでは動くのは水戸光圀だけど。
俺は男の首を後ろから掴み上げると
「そこまでだ。よくも俺の可愛い従業員に手をあげたな!」
「ぐ、ぐるじい…」
「ガイ!よくやった。女の子を守るとはまるで御伽噺の騎士様だな!」
俺はこっちを見ているガイを褒めておいた。俺の指導は褒めて伸ばすタイプだからな!
生徒はいないけど…
「セイさん!ありがとうございます。ですが私は騎士ではなく商人になりたいです」
そこは嘘でも合わせておけよ。まぁそう言われて嬉しいけど?
「ガイくん!大丈夫!?ごめんね。私のせいで」
「シリーのせいじゃないよ。それにこういう時はありがとうだろ?」
おい。独身彼女無しの前でイチャイチャするな。俺が殴るぞ!
いや、泣くぞ!どうだ!怖いだろ!?大人が泣いたら怖いんだぞ!
「俺はこの男を連れて行くから店を頼むな」
「「「はいっ!」」」
三人の子供から元気の良い返事をもらって、ミランとエリーからは『なんでもっと早く助けなかったんですか!!』というくらいの冷たい視線をもらった。
さて。どこに連れて行こうかな。魔導士協会に知り合いがいるって言っていたからそこに苦情を言いに行ってもいいけど。
面倒だし知り合いのところにするか。
俺は身体強化魔法を使いながら、気絶してしまった男を引き摺り水都の道を歩く。
「ど、どうされました!?」
驚いた騎士が駆け寄ってくる。ここは城の入り口だ。
「すみません。本日からセイレーンで店を開いたのですが、この男がうちの従業員に暴力を振るったので捕まえて来ました」
「セイ殿は凄腕の冒険者だと聞いております。よもやその店で暴力を振るうとは…こいつは…」
うん?何やら男に見覚えがあるようだ。
「私は店の護衛があるので、何かあれば店の方にお願いします」
「はっ!わかりました!身柄は確かに預かりました」
騎士の言葉に俺は背を向けて店へと帰った。
良かった。騎士さん達が俺の事覚えていてくれて。
側から見たら不審者はどう考えても俺だもんな。
聖(見たか子供達よ!ヒーローの参上だぞ!)
ガイ「うーん。商人の方がお金持ちになれそうだし、商人で!」
シリー「ガイくんありがとう!カッコよかったよ!」
聖「あれ?俺が助けたのに…?」
ミラン&エリー「セイさんから邪なオーラが出ています」
聖奈(2人のメイド服…)デュフフ…




