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83話 車ってすげーや。





「こちらへどうぞ」


初めて入る部屋で暫く待たされた後、準備が出来たとかで案内された。

いいなぁ王様。こんな美人な侍女さんに毎日お世話されて……


「いてっ!?」


「大丈夫?ちゃんと前見て歩かないとね」


アンタが俺の足を踏んだんやないか!?

くそっ!聖奈さんはエスパーか?


俺が侍女さんに見惚れているといつの間にか着いたようだ。


「お連れしました」


おっ。自動ドアが開いたぞ。まぁ中から騎士の人が開けてくれているだけだけど。


「よくきたな!まぁ座れ。セーナ達も遠慮せずに座りなさい」


この国王は女性にはジェントルマンだよな。

扱いが良くて俺とか設定(奴隷)忘れそうになるもん。


「それで珍しくセイから来たのだ。何かあるのだろう?」


席に着いた俺は社長らしく


「はい。説明はセーナから。宜しいでしょうか?」


「あれか。華がどうとかというやつか。かまわん」


「失礼します。実は陛下にお見せしたいものがあります。まずは口頭での説明をさせていただきたいのですが宜しいでしょうか?」


国王は鷹揚に頷く。


「こちらのエリーは魔導士です。まだ見習いですがこの度の発明で一流の魔導士にしていただきたいのです」


「それなら余ではなく魔導士協会に行けばいいだろう?」


「その魔導士協会に持って行くと隠蔽されてしまう恐れがあったので陛下に畏れながらも話を持って来させていただきました。

それほどの発明になります」


「それほどか…どういった発明だ?」


国王が食いついたか。こうやって興味を持たせるのが聖奈さんはうまいんだよな。俺ならすぐに本題に入っちゃいそう…


「移動する為の魔導具になります」


「移動する為?馬車よりもいいのか?」


「馬車より劣っているところは見当たらない程度には」


国王は頷くと侍女に何事かを告げる。


「少しまて。どうせなら専門家も話に混ぜよう」


「陛下。畏れながらも申し上げます。魔導士協会の方は…」


「大丈夫だ。其奴は協会員ではない」


それを聞いてホッとした。まぁ、流石に国王の前でなら魔導士協会の人もエリーの功績を奪わないだろうけどな。

地球でもドラマとかでよく教授が研究員の論文を我が物として発表したりしているからな。たしか実際にも…まぁその話はいいか。


「失礼します。お呼びと伺い参上しました」


30歳くらいのすらっとした男性が入室してきた。


「呼びつけたのはこの者達が新しい発明を持ってきたから其方に査定してもらおうとな」


「わかりました。はじめまして。私は王宮魔導具管理局の局長をしているイランと言います。それで発明品と言うのは?」


聖奈さんが国王にしたのと同じ説明をイランさんにした。


「なるほど。では魔石を動力に動く乗り物という事ですか」


「そうなります。多分似たような発明は過去にあったかと思いますが、これはそれらとは一線を画す物になります。

かなり高いエネルギー効率で燃費も良く、また馬車と違い生き物ではない為、環境に左右されづらいです。

最高速度は乗馬くらいの速度が出せます」


「どうだ?使えそうか?」


国王の言葉にイランさんは


「素晴らしい発明だと思います。が、実物を見ない事には」


まぁ疑うよな。多分これまでも似たような物はあったんだろう。

問題はタイヤなどに伝える効率がひどく悪く、また操縦性能が悪かったりするものばかりだろう。

だが俺たちのは地球産の物を使った為、その辺の問題をクリアしたからな。

この世界で再現できるかどうかは難しいと思うけど。

いいんだ。俺達だけ作れたら。


「ではイランを連れて実際に乗せてやってくれ。報告はイランから聞くとする。

私は今日は忙しいでな。またセイに連絡する所以」


「ありがとうございます。ではイランさん行きましょう」


俺は国王にお礼を言うとイランさんを伴い城を出た。

道中聖奈さんがイランさんに


「水都内ではなく外でのテスト走行になります。ですので私達と馬車で移動を。

主人が持ってきてくれますので」


えーと、どこにかな?


すると聖奈さんが小声で


「試験の時に通った街道で待ってて」


俺は頷いて返した。


「では、私は別行動になりますが現地で会いましょう」


「はい。よろしくお願いします」


イランさんに挨拶をして、俺は一人家に帰る。


聖奈さん達は馬車で先を行った。


家に帰り、車に乗り込んだ俺は転移魔法を発動させた。

王都からは馬車で20分くらいのところだ。こちらの道は冬には殆ど人が通らない。

この先はリザードマンがいる湿地帯だし、冬にそこを越える人は稀だ。


10分程待つと聖奈さん達が乗っているうちの馬車が見えた。今回は俺達から出向いたから自分達の馬車を使ったんだよな。おお、30万が俺を見つけたようだ。嬉しそうに見える。

50万は我関せずって感じだな。世話してやってるのに。


「おお!これがその乗り物ですか?」


「はい。車と呼んでいます」


早速イランさんは車を撫で回すようにチェックしていく。


「なるほど、確かに魔導具ですね。それでどこに乗ったらいいですか?」


俺は助手席をすすめた。といっても、ベンチシートだが。


「内装には手をつけていないので、すこしお尻が痛いですがご了承ください。初めは私が運転します」


「わかりました」


俺は湿地帯方向へ車を走らせた。

そして戻ってくると


「凄いです!これは世紀の大発明ですよ!確かに魔石は使用していますが、あの程度の魔石でここまでの力をだせるなら安い物です!

あの魔石でどれくらいの時間、距離を走れますか!?」


大興奮だった。

専門的な話はチンプンカンプンだからエリーと交代だ。

二人があーでもないこーでもないと盛り上がっている。

イランさん。悪いがエリーはやらないぞ?

貴方にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!!

俺がアホな妄想に浸っていると話し合いが終わったようだ。


「これほど素晴らしい発明なら、間違いなくエリーさんは一流の魔導士として認められるでしょう。

私の方からも陛下に強く進言しておきます!」


「ありがとうございます。こちらの論文と共にこの車をイランさんに預けますので、よろしくお願いします」


「わかりました!必ず協会に口を挟まれないように発表いたします!ですのでその時は…」


イランさんはこの車が欲しいようだ。もちろん個人ではなく王宮にという事で。


「エリーどうだ?」


「構いません。よろしくお願いします」


エリーが良いなら俺もいい。こんなガラクタではなく、最高な物をまた作れば良いからな。

あっ!ガラクタっていうのはガワね!エリーの魔導具は最高だ!


その後、俺たちは水都まで帰った。

もちろん帰り道はイランさんが車を運転した。

俺は聖奈さん達と馬車で帰り門前で水都の中に転移して馬車を迎える形にした。大丈夫だと思うけど、さっきいなかったと門番に怪しまれる行動は少ないに越したことはない。

イランさんは車に夢中で気付かないしな。


そのまま水都の入り口でイランさんとは別れた。

これで上手くエリーの功績が認められればいい。さらに車が量産とまではいかないまでも、実験したり作る人も増えるだろう。

イランさんは絶対作るな。ベアリングやサスペンションで必ず躓くと思うけど頑張って欲しいものだ。


それから1週間が過ぎた。

エリーには新たに車を作ってもらっている。完成には後3週間はかかるとの事。

まだまだ冬だから旅には出ないしかまわない。

そして客が来た。

相手は魔導士協会のお偉いさんだ。

この世界では論文や発明品を発表したところでみんなに周知されることはない。その分野の限られた人だけ知る程度だ。

イランさんの仕事は早く、2日後にはエリーの名で発表したようだ。内容とエリーと言う人物を吟味した協会はお偉いさんをよこした。

『エリーさんは見習いだと聞きました。この発明品は素晴らしいものだと協会も認知しています。

どうでしょう?協会としてはエリーさんをただの協会員としてではなく、役職付きで迎えたいと』

もちろんお断りした。

エリーは見習いじゃなくなればいいと伝えて帰ってもらった。

もちろん見習いからはすぐに卒業した。

国王と知り合いのこちらの正当な要求を反故に出来なかったようだ。


エリーは論文の内容を秘匿せずに全てを開示した。

イランさんは止めていたがエリーにとっては借金が返せたら後はどうでもいい。

国王はそれを聞き新たに車税を作り、販売及び製造した場合は国に税金を納めさせる形をとり、その一部をエリーに(ここでは主人の俺に)還元すると書状に認めて送ってきた。


何もしてないのにまた金持ちになってしまう。罪な男だな…

エリーには今度何か買おう。


特許があればこんなに面倒な事にならないんだろうけど、この世界にはないっぽいな。

真似されたらおしまいだ。まぁ、簡単に真似できないモノを発表したからいいけど。


後一月くらいは水都でゴロゴロ飲んだくれていられるなと俺が甘い考えをしていたら


「さっ!こっちで動けない時は向こうの事をしなきゃね!」


聖奈さんに地球へと連れ去られた…

さよなら飲んだくれの日々よ…





イラン「これは凄い!なんでしょうか…このハンドルと言うものを握ると気分が高揚してきます!まるで無敵になったみたいですね!」


エリー「そうでしょう!私も初めて握った時に何故か自分が偉くなった気になりました!」


聖(いや、それは危険運転する奴の思考じゃないか?)


ミラン「?人はそんなに簡単に変わりません。気のせいでしょう」


エリー&イラン「…はい」


さすリダ!



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