73話 修行の後は力試しに限る。えっ?俺つえーがない?
「凄いのう…まさか2ヶ月で儂の強化度に並ぶとはのう。悔しいが教え甲斐はあったのう」
ここは水都に程近い森の中だ。俺と爺さんは殆どの時間をここで過ごした。
最初の一月程は夜になると転移で家の中に入り、聖奈さん達を迎えに行くというのが日課となっていた。
異世界人だとは伝えていないが、普通ではないと思われている。
言葉遣いも呼び方も変わった。爺さんは変わっていないが。
ここでは時々雪がパラつく。もちろん積もったりはしないが。
水都はここ50年は白く染まっていないとの事。
実際生きてきた人が言うなら間違い無いだろう。ちなみにマンション付近はまだ雪は降っていない。
「爺さん。だけど俺はまだ一度もあんたに当てれてないぞ?」
そう徒手空拳での模擬戦は全敗だ。
「当たり前じゃ。いくら4倍に強化出来たと言っても、元々の技術やフィジカルが違うんじゃ。じゃが、近いウチに抜かれるじゃろうて。技術やフィジカルじゃのうて5倍や6倍の身体強化魔法でのう」
「それは抜いたと言っていいのか?」
「強さを求めておるんじゃろ?それなら間違いなく抜いておろう」
そうだな。元々は仲間を守れる力・・・・・・
何を言っているんだ!?
俺は守るんじゃなくてハーレム王だろ!?
俺つえーして、異世界美女美少女を…ぐふふっ
「儂は教えるやつを間違えたかのう…」
「なんか言ったか?それよりもあの件はどうだ?受けてくれるか?」
「儂にとっては悪い条件は一つもないからのう。もちろん受けるぞ」
俺は漸く修行から解放されて、家へと帰った。
「あれ?今日は早いんだね!」
聖奈さん達は水都の家に車の部品達を転移で持ってきた事で、殆どこちらで活動している。
俺は商人の仕事があると爺さんに言って、地球に帰ったり、リゴルドーに行ったりしていた。
「漸く修行が終わったんだ。今日は打ち上げをしたいんだがどうだ?」
「いいね!じゃあ今から準備するね!」
「ありがとう」
俺は風呂に入った後、リゴルドーに飛んで聖奈さんに頼まれている物を取りに行った。
爺さんもここ一月はウチに泊まっているから一々呼ぶ必要はない。
後は…
「爺さんも誰か呼びたい人がいたら呼んだらいいぞ?」
「うーむ。そうじゃの…じゃあ世話になっとるしアイツを呼ぶかの」
そう言うと一人で出て行ってしまった。俺もついて行こうと思っていたが…暇になったな…
部屋でゴロゴロしていたら準備が出来たようだ。
ガチャ
「セイ。連れてきたぞ」
爺さんも帰ってきたな。タイミング良しだ。
「おかえり。セイといいます。何もおもてなし出来ませんが、どうぞ時間の許す限りお寛ぎください」
爺さんの横にいた爺さんに挨拶をした。
やっぱり爺さんの知り合いは爺さんか。美女を少しは期待してたよ?
「ありがとう。ビクトールが誘ってくれる事が初めてで驚いていたが、まさかこんな立派な屋敷に行くとは思っていなかったよ。お邪魔するよ」
「こちらへどうぞ」
中に案内して席に着いた。
「まずは自己紹介をしましょう。私はセイと言います。商人と冒険者をしています」
「私は…」
こちら側はそれぞれ自己紹介をした。まあ、爺さんの名前なんて興味は無いけど一応ね?
「私は水都セイレーンの冒険者組合の組合長のリンドーンと言う。今夜は晩餐に招待してくれて感謝する」
おいっ!ギルドマスター!急に現れんな!
「組合長でしたか。お世話になっています」
この2ヶ月間も冒険者組合には納品させてもらっていたからな。頑張って高価買取してくれよ!
「ビクトールから聞いている。何でもじきにビクトールを凌ぐらしいな。
Bランクのビクトールを近いうちに超える冒険者の世話ならいくらでもしよう」
「爺さんBランクだったのか。まぁ、あの強さなら当然か」
「なんじゃ?今更持ち上げてももう教えられる事はないのう」
惚けた爺さんだけど、確かに半世紀以上も修行と飯を食べる為に狩りをしていたらそれだけの強さと実績は出来るよな。
何事も継続か…
どうにか楽出来ねぇかなぁ?
「そうか。今はDランクか。では今度私を訪ねてこい。Cランクの試験を用意しておこう」
やったぜ!これで俺も一流と言われているCランクになれる!
「仲間も受けられませんか?」
「ん?仲間か。強いのであれば構わない。Cランクは強さが求められる。さらに上のランクになると他にも求められるがな」
「ありがとうございます。やったな聖奈。ミランも」
「うん!ありがとうございます!」
「ありがとうございます」ペコリ
まさかこの女性達だとは思っていなかったようで、リンドーンさんは驚いていた。
その後、リンドーンさんは止めようとしていたが聖奈さんが引き下がるわけもなく、後日試験を受けに行く事になった。
持つべきものは組合長の友人の師匠だな!
「リンドーンさんはいますか?」
後日、冒険者組合に俺達はやってきていた。エリーも登録は済ませている。まだFランクだけど。
「リンドーン?組合長でしょうか?」
「はい。組合長のリンドーンさんです」
俺はカードを渡して再度聞いた。
「確認してきます。少々お待ちを」
流石にいきなりは通してくれないか。まぁ、確認してくれたら問題ないよな。
暫く待ち組合長室に案内された。
「お久しぶりです。ご厚意に甘えにきました」
「来たか。まあ、座ってくれ」
四人と組合長が席に着いた。
「それで試験の内容だが、職員が見ている前で指定された魔物を倒すというものだ」
よし。それなら銃火器が使えるな。職員には魔導具だという事にしよう。
俺はもちろん使わないけど。
「わかりました。魔物はどんな奴ですか?」
「ここから馬車で1日ほど南に行ったところに湿地帯がある。
そこにいる魔物、リザードマンを倒すと言うものだ。
元々Cランクの試験には適している相手だが、今は冬だ。少し難易度が高くなっているがいいか?」
冬だと難易度が上がる?よくわからんがいいだろう。
「構いません。いつから始めますか?」
「準備もあるだろうから明後日の朝来てくれ。職員に用意させて待っている。そちらも現地までの移動や野営の準備をな」
俺達は組合を後にした。
街中で
「セイくん。多分だけど地球で用意しておいた方が良いものがあるの。いいかな?」
「ん?わかった。明後日の旅の準備はどうする?」
「それは殆どないんじゃないかな?野営の用意も馬車もあるしね」
なるほど。普通は野営の用意は出来ていても、移動方法を考えないといけないのか。
後、地球での用意するものも全然わからん。
歯磨きとかか?
夜になり地球へと転移した。
「じゃあ行こっか」
俺は聖奈さんに連れられて買い物に出かけた。どこに行くかわからないのに運転させられるのは怖い…
試験当日。準備万端で冒険者組合を俺達は訪れた。
「セイさん達ですね。組合長室にご案内します」
受付嬢に案内されて組合長室へ。
「おはようございます」
「おはよう。準備は出来たか?こちらはいつでも出れるようだ」
もちろん準備は完璧だ。俺は大した事をしていないけど…
やはり組合長は行かないようだ。そりゃそうだよな。
そんな主人公みたいな展開はないよな。
組合長『セイ!お前がナンバーワンだ!』
美人受付嬢『キャーセイさん凄いですね!ご飯でもどうです?』
みたいな展開が不足しています。
「もちろんいつでも大丈夫です」
俺がそう言うと扉がノックされた。
「おはようございます。こちらが試験を受けられる?」
「そうだ。紹介しよう。今回の試験官を務める、職員のマークとリリーだ」
そこにいたのは30代中頃の中肉中背の特徴のない男性と、20代前半に見える金髪グラマラス美女だった。
ついに俺の時代が来たか?
「マークです。よろしく」
「リリーだよ。なんか変わった組み合わせだけど…頑張ってな」
なんか見た目と違って姉御肌な喋り方だな。
もっとウフフ系のお姉様かと思ったが…
いや、喋り方なんて些細な問題だ!大事なのはお互いの気持ちだろう?
ん?なんか聖奈さんから只ならぬ気配が…
まさか心の声が漏れていたか…?ガクブルだぜ…
「せ、セイです。よろしくお願いします」
三人も自己紹介をして組合を出た。
「じゃあ私らは後から付いて行くからいつも通りな」
そう言ったリリーさんとマークさんは馬車ではなく馬に跨っている。
この二人が遅れる事はないだろうな。
馬車は水都を行く。
最近後書きに小話を書いていますが少々お付き合い下さい。
注!この話はフィクションです。
聖『界○拳4倍だァァ!!』(身体強化4倍魔法)
聖奈(私もしたい)
エリー「何ですか界○拳って?」
ミラン「エリーさん。これは無視する流れです」




