61話 見習い魔導士は金欠。
「あ、あの!これは…そ、そうです!水浴びをしていたのです!」
どこの世界に服を着たまま水浴びをする人がいるんだよ…
銀髪美少女は無理な言い訳をしているが俺は大人だ。ここは乗ってあげよう。
「そうでしたか。秋とは言えまだまだ暑いですからね。申し遅れました。私はセイと言う商人兼冒険者をしている者ですが、エリザベス・ドーラさんはおられますか?」
「商人兼冒険者さんですか?珍しいですね。私がエリザベスです」
え!?この少女が…?明らかにミランと歳が変わらないようにしか見えんが…
いや、異世界あるあるでこう見えて80くらいの婆さんかもしれないな。
「そ、そうでしたか。それは失礼を。私は冒険者活動で魔法を使います。それで更なるスキルアップの為に魔法の技術を磨きたいと思い、高名なエリザベスさんに弟子入りをしたく訪問させて頂きました」
・
・
えっ?なんで…泣いてるの?
「うわーん!やっと…やっとお弟子さんが出来たよぉー!」
「えっと…ここでは何ですし、中でお話しませんか?」
やばい!側から見たら俺が少女を泣かせているようにしか見えん!間違ってないけど…
事案だ!
俺が言うことじゃないけど早く二人きりにならねば…
「そ、そうですね。ではどうぞ」
「お邪魔します」
バタンッ
「ではそちらにお掛けください。今お茶をお持ちします」
「はい」
とは言ったものの…どこに座るところがあるんだい???
エリザベスちゃん?さん?の家は物で溢れかえっていた。
「もしかしてあれが椅子か?」
俺の前には本が堆く積まれた椅子らしき物がある。
「勝手に動かして良いのだろうか?と言うか、ほんとにこの子のところで良かったのだろうか…」
あの受付嬢にいっぱい食わされた感が否めないが…来てしまったものは仕方ない。
とりあえず弟子入りして気に入らなければやめればいいな。
「お待たせしました。あれ?立ったままですか?どうぞお気になさらず座って下さい」
「…あの。この椅子ですか?」
「はい!あっ!本が邪魔してましたね!今片付けます!」
そう言うと椅子を倒した。
バサッバサッ
「…」
「どうぞ!後これは粗茶ですが」
粗茶って…白湯やないかい!
一先ず座って落ち着こう。
「では頂きますね」ズズッ
「なんだか冷えるので温かい飲み物が良いですよね!」
そりゃ水被れば寒かろうて…
「それで弟子になっていただけるのですよね!?」
「え、ええ。そのつもりで来ましたが…」
なんだこの食いつきようは…
「ではこちらの紙にサインをお願いしますね!」
「えっと…これは?」
差し出された紙は何やら魔導協会と書いてあるな。
「ご存知ないですか?これは魔導協会が発行している、弟子入りを認めるための書類です」
「そうなんですね。無知ですみません。何分先日こちらに着いたばかりで」
なになに〜魔導の弟子入りをした者は生涯においてその者を師と崇めること。は?
「あの?弟子入りしたらずっとその人が師匠なんですか?」
「はいっ!魔導協会に所属している魔導士は弟子をとって一人前と判断されます!それに師匠をコロコロ変えてしまうと貴重な術式などが失われてしまうことがあるので、何人も師匠を持つことは出来ますが、師匠と弟子の関係は一生涯です!よろしくお願いしますね!」
一人前か…それでえらく食いついたのか。
「ではお邪魔しました」スタッ
俺は子守は二人で十分だ。なんで独身なのに子守の数を好き好んで増やさにゃならん。さいなら。
ガシッ
「ま、待ってください!何故ですか!?」
そりゃこの部屋の惨状と貴女の見た目のせいですよ。とは言えんな…さすがにこの見た目の人を無駄に泣かせるとめんどい…
「どうやら私には魔導の道はまだ早かったようです。では」
そういって出ようとするが離さない。
「行かないで!何でもしますから!」
「おいっ!俺が最低な男みたいに聞こえるセリフはやめろ!」
しまった!心の声が…
「では出て行かないです?」ぐすんっ
くそっ!このままだと変な噂を流されそうだ…
「わかった。とりあえず話を聞かせてくれ。何でそんなに弟子に固執するんだ?」
ここまで執着する理由があるはずだ。それくらいなら聞いても良い。
「実は…借金がありまして…」
「ん?借金?なんか高価なものでも買ったのか?」
借金と弟子とどんな関係があるんだ?
「魔導士になる為の本代や魔導士協会に払う会費などです…」
よかった。散財じゃなくて。
「それなら協会なんて辞めてしまえばい良いんじゃないか?」
「実は…」
そのあとエリザベスから紡がれた言葉を要約すると
魔導士になる為には協会に入会しなくてはならない。魔導王国では魔導士が人気なようだ。
そして入会すると素質のあるものには本や師匠の斡旋を行う。本はとても高価なもので、特に魔法に関しての物は高い。
しかしそれではなり手が減ってしまう為、魔導王国は威信をかけて魔導士に予算を割いた。
内容は、魔導協会での借金は一人前の魔導士になればチャラにする。ようは国と国が運営している協会が肩代わりするというものだ。
「なるほど。要はエリザベスさん?ちゃん?には才能があったわけだ。
それを国は埋れさせるわけにはいかないから、金を貸したってニュアンスか」
「エリザベスでいいです。そんな感じです…里の村の両親は私に才能があって大喜びしていました。。。家にはお金がありません。なので弟子を取って一人前になるしか私が生きていけることはないんです…」
流石に自己破産なんて制度はないだろうな…
「事情はわかった。だが俺がその紙にサインすることは無い」
「そ、そうですよね…私みたいなダメな見習い魔導士では…」
「そうじゃない。金を払うから弟子にしてくれないか?」
これならwin-winだろ。
「えっ!?そ、それならお金はいいのでサインを…」
「いや、俺は魔導王国に骨を埋めるつもりはないし、協会に入るつもりもない。それに年下のエリザベスを今後ずっと師匠として敬うのは俺の精神衛生上きついからな」
暫し沈黙が流れ
「わ、わかりました!頑張りますのでお給金をよろしくお願いしますね!」
「そうか。ところで普段はどうやって生活費を稼いでいるんだ?」
まさかそれまで協会に借金してないよな?
「私の師匠達の論文の清書や見直しなどで日銭を稼いでいます」
「達?何人もいるのか?」
「はい。師匠は3人います。師匠の数を増やさないと、日銭が稼げないんです」
何と不憫な…
「そうか。エリザベスは何歳だ?俺は21だ」
「私ですか?レディに歳を聞くのは失礼だと思いますが、いいでしょう!私は18です!ところでお名前は?」
おいっ!最初に名乗っただろうが!
と言うか、童顔が過ぎやしないかい?遂に合法妹キャラ?
「セイだ。魔導士が教える費用はいくらくらいなんだ?それがわからないと給金を払えないからな」
「いくらなんでしょうか?」
あのー俺が聞いてるんですが?
「じゃあ、清書とかで稼いでいる日銭はいくらくらいだ?」
「それでしたら1日で書ける分で大体銀貨1枚ないくらいですね」
あれ?そんなもんか?騙されてないよな?
「1日ってどれくらいの時間だ?」
「実働ですか?それなら16時間くらいですね」
16時間で5000ギル相当…
「ちなみに借金の総額は?」
「うっ。それは…300万です…」
思ったより少ない…か?まぁ、日本の大学に奨学金借りて入れば大体それくらいはみんな借金あるよな。
「そうか。じゃあ授業料として1日大銀貨一枚払う」
「えっ!?そんなに貰えるですっ!?」
ミランもだったけどこの子もこの子で金銭感覚大丈夫か?
それとも俺がおかしいのか?
1日つきっきりの家庭教師を雇えばもっとかかるだろう。
しかも見習いとは言え数が少ない魔導士だ。
…驚きすぎて語尾が変だぞ?
「教え方が上手ければもっと払っても良い。だから師匠?だかの雑用は断ること。俺は旅の途中だし、仲間をあまり待たせるわけにはいかないからな」
「わかったですっ!頑張るですっ!」
どっちが師匠かわからんことになってるけど…いいか。
頑張る人は好きだからな。老若男女問わずに。
「とりあえず明日からお願いする。なので明日までに部屋を片付けとけよ?それからこれで何か美味い物でも食べとけ」
俺は大銀貨を一枚エリザベスに投げ渡す。
「うわっと。えっ!?これは!?」
「契約金だ。明日は朝からだ。じゃあな」
はあ。結局見捨てられなかったな…
「あ、ありがとうございますですっ!」
まぁいいか。
あの受付嬢も何が高名な魔導士だよ…あっ。高名な魔導士は変わり者っていってただけで紹介するとは言ってないか…騙された……
それよりもこの後の聖奈さんへの説明がめんどくさいな…また美少女だし…
酒のも…




