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59話 ただ、通り過ぎるだけ。そんな事もあるさ。





「ふーん。次の国の名前はハンキッシュ皇国っていうんだな」


俺達は国境近くまで来ている。どうせ通過するだけの国だと思い、これまで国名すら聞いていなかった。


「そうだよ。通るだけだけど、もしいい国ならまた行きたいね!」


まだ行ってもないのに聖奈さんはテンション高えな…


「問題なく国境を抜けられればいいのですが…」


「大丈夫だろ?転移魔法で武器と魔導書と魔法の鞄は家に運んだから、怪しいモノや危険なモノは持ってないからな」


転移魔法だけ書き写ししておいたから問題ないはず。それまでも没収されたら無理だ。

子供が書いた落書きだと思ってくれたらいいが。


国境は地球程は混んでいない。

商人の馬車が何台か並んでいるだけで、荷物の少ない冒険者はすぐに通されている。

結局、護衛対象の商人を待たされているけどな。


他の道から国境を跨げば良さそうだが、馬車は道がないとダメだし、街道以外は魔物が多い為、そんな事をする人はいないようだ。

いても少数だろうな。



「次!」


どうやら俺達の番みたいだ。

呼ばれたので馬車を前に出し、指示通り下車する。


出国の際は、そこまで厳しくないと聞いていたが、冒険者カードを出しただけでほとんど何も話さずに馬車も少し確認されただけで終わった。


次は入国審査だな。一回で済ませて欲しいが無理だろうな。

この二重セキュリティのお陰で、知らないうちに色々な安全が享受されているんだろう。


「ここは非干渉地域なんだって。まぁ、100mくらいなんだけどね」


草すら生えていないな。向こうの手続きをする建物が丸見えだし。

ここからの密入国は不可能だな。強行突破とかわらん。


「良かったね!途中の町で剣を買っておいて」


馬車の中に古びた中古の剣が三本転がっている。

これは武器を何も持たない冒険者なんていない為だ。

魔法使いならわかるが、そもそも希少な魔法使いが3人もいるパーティなんて、怪しさで溢れてしまうからな。


「そうだな。俺はカッコいい剣が欲しかったけど…」


無駄に捻ってある握りづらそうなグリップに、剣身は二股から剣先で一つになっている漆黒の剣とかが欲しかったな。


多分重くて持てないけど。

いいんだ。飾れば。


「セイくん、剣つかえないよね?」


「そうだけど…もしかしたら才能が開花するかも?」


二人に冷たい目で見られた。

やめて!ゾクゾクするからっ!


「セイさんは既に魔法使いなので不要ですよ」


「そうだよ!剣は私かミランちゃんだよね!」


女性二人を前衛で戦わせて、俺は後ろに隠れて時々魔法を撃つ。か…


無理やっ!

絶対無理やっ!


「次!前へ!」


無駄な議論を繰り返していたら順番が来た。

次からは馬に乗ってこよう。魔法の鞄のお陰で、馬車はもういらないしな。

まだ馬に乗れないし、馬車は楽だからやめないと思うけど…


馬の上で剣を振り、魔法を放ち、魔物達や野盗などを蹂躙して、助けた女性からモテモテになる展開は遠いな…


いつか必ず…


「何をしている!降りろっ!」


やべっ!怒られた!


聖奈さんとミランから白い目で見られてる…

なんなら、後ろの馬車の人からも…



その後は特にトラブルはなく、入国審査は終わり、無事に俺達はハンキッシュ皇国に入国した。




ハンキッシュ皇国に入り南下を始めた。


「ハンキッシュ皇国ってどんな国なんだ?」


する事もない為、馭者をしていない聖奈さんに話を振る。


「うーん。王国とそこまで違わないよ。そのまま1.5倍した感じじゃないかな?」


聖奈さんは国境近くでも情報を集めていた。

流石お姉さん!


「そうか。この大陸でも大きい国なのか?」


「ううん。大きい国は王国の10倍くらいの大国があるらしいよ!国土はそうでもないらしいけど、とにかく人が多いんだって。

そこまで人が多いなんて穀倉地帯なのかな?」


10倍って3,000万か。

大国はいくつあるんだ?流石に敵となる国が無いなんてないよな?

もしないならこの大陸は平和って事か。帝国以外。


「そうかもな。他には何かあるか?」


「皇国は所謂日本みたいに歴史が長い帝国みたいなモノなの。歴史が長いと言うことはそれだけ国としては安全だと言うこと。

つまり、刺激が少ないの…」


何を求めて旅をしているのかな?殺戮かな?


確かに皇国と帝国は一緒だな。日本も帝国を名乗っていた時期もあるし、両方ともエンペラーを国のトップに掲げるしな。


「でも、異世界常識だと皇国には危機が訪れるから油断は禁物だよ!」


その言い方は訪れるのを待っているようにしか聞こえないのは気のせいかな?





時は経ち、聖奈さんの期待には添えないが、俺達は無事に南下を果たして、魔導王国との国境に来ていた。


魔導王国は正確にはナターリア王国と言うようだ。

初代女王の名であり、建国の魔女ナターリアに敬意を表した形だ。

元々は昔あった大国の一部でしか無かったそうだが、地球とは違い、リアル魔女狩りが行われてナターリアを中心に人が集まり独立した過去がある。

その為、魔女を始めとした魔法使い達が多く集まった事で、周囲からは魔導王国と呼ばれている。

もちろんその名に恥じないようにこの大陸で、魔導に関しては他の追随を許さない。


「皇国は南北に長いから結構時間かかったな」


季節はもう秋に入っている。日本はまだまだ暑いけど。

月の神(ルナ)様とも話せていない。


「そうだね。しかもトラブルがなかったよね」


まだ期待してたのかよ…


「私は宿の食事が苦手でしたので、長くかかったような気がしますね」


皇国の料理は質素だった。肉はほとんどなく、魚料理が有ればいいほうで、まるで精進料理みたいだったな。

食ったことないけど。


イメージだよイメージ!


「まあ、あそこの建物を越えると待ちに待った魔導王国だ」


俺達は期待を胸に国境を越えた。




「学園がある王都までは馬車で5日くらいらしいよ」


国境近くの町の宿で旅の疲れを取っていると、早速町に繰り出していた聖奈さんが、情報を仕入れて戻ってきた。


「魔導王国っていうくらいだから魔導列車とか走ってるかなって思ってたけど、無さそうだったよ」


調べれば調べるほど残念な結果になりそうだからやめたら?

とは言えず。


「そうか。ありがとう。今日も日本に帰るんだろ?」


「うん。嬉しい事に忙しいんだよね」


悲しそうに言われても…

俺は全然忙しくないから、罪悪感が…


実はバーンさんの工房の隣に新たな建物をみんなで作ってもらい、工作機械を導入した。

電源はソーラーパネルの為、晴れの日は纏めて切り倒した木を板などに加工してもらっている。

蓄電池は効率がまだまだ悪いし高いから…


俺がやったのは、ソーラーパネルの設置と旅の間に機械の説明書をこちらの文字に変換したくらいだ。


聖奈さんはトラブルが起きない為、会社の経営などに力を注いでいた。

2日に一度ほど、迎えに行くと必ず目の下に隈を作っていた。


労働基準法違反で俺を捕まえさせる気かな?


そんな感じで家具の値段が安定して、さらに以前に比べて生産量が増えている。

もちろん手作業が殆どだから地球の大量生産には程遠い。

それでも、大まかな加工は機械で、そして細かい作業は手作業で行なっている為、クオリティは変わらない。


ハーリーさんから仕入れたモノも軒並み順調に売れているようだ。

鑑定士に宝石、貴金属などを鑑定してもらい適正価格で販売もしている。


ちなみにギルはこの大陸のだいたいの場所で使える。正確には商人は商人組合で両替が出来るし、国境でも両替は可能だ。少しだが、宿にスムーズに泊まれる様に両替をしておいた。

戦時中の国でない限り、商人組合や冒険者組合はある。ありがとう組合。大陸中に蔓延ってくれていて。


「この国がいい国だったらここにも家を買いたいね!」


そう。俺達のブラブラ旅にも目的が出来た。

拠点を大陸中に増やす事だ。


聖奈さんは天下統一とか世界征服とか、よくわからん事を言っていたが、確かに気軽に街中に転移できる所が増えると楽だな。

行きたい時にどこにでもすぐに行ける。


「まぁ、それは王都についてからだな。俺が地球でする事は、当分ないよな?」


「うん!この前の旅行で終わりだよ」


俺たちがミランをボッチにしてまでした旅行は、アフリカ大陸だ。

アフリカでは絶えず紛争が起こっている。

つまりは武器を卸している人達がいると言う事だ。


もうわかるだろう?

聖奈さんは強い武器を求めてそんな危険地帯に俺を騙して連れて行ったんだ…


税理士さんにも強く止められたと聖奈さんから笑い話として後から聞かされた。

もちろんそういったものを運ぶのが一番難しい事だが、俺たちにはそれが一番簡単だから問題はなかった。


よく映画とかで見る対戦車ロケット弾(RPG-7)とかほかには戦車の装甲を突破できる徹甲弾など、威力重視で買い漁っていた。


対物ライフル以外はそこまで高価でなかったのが意外だったが…安価だから世界中で使われているんだな。


と、いう事で魔法の鞄(マジックバッグ)の中身はさらにヤバくなってしまった。


一先ず、色々な事は忘れて、素直に魔導王国を楽しもうと思う。


「じゃあ、今日も行くか」


俺は地球へと転移した。

皇国がこの後も出るかは不明です。。。

トラブルが起きれば…


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