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57話 忘れられた親孝行。






さらにあれから数日後。俺達は国境前、最後の町での宿泊をしていた。


リゴルドー→ウィンダスター→サクシード(王都)→魔導王国方面と全て西に向かってきている。

聖奈さん情報だと、王都から南に向かっていけば近いらしいが、異世界あるあるの『武力で勢力を伸ばしている帝国』を通る為、そのルートは使えないようだ。


仕方なく迂回ルートを使っているが、急ぎの旅ではないし、観光?目的だから何の問題もない。

仕方なく思っているのは、早く行きたい聖奈さんくらいだ。


その急いでいるはずの聖奈さんからこの町に留まる宣言が出た。


「どうしてだ?この町は良くも悪くも田舎だから、見るところは少ないんじゃないか?」


「セイくん。やっぱり忘れてるでしょ?」


はて?


「温泉旅行だよ。明日の朝から一泊2日で行くんだよ?」


「そうだった…じゃあミランはどうするんだ?」


「私ですか?私はこの町にいます。小さな町なので、治安も良さそうですしね」


どうやら行かなければならないようだ。

気が重たいなぁ・・面倒くさいなぁ・・・


俺がやる気のない表情をしていると俺達の良心であるミランさんが


「セイさん。孝行できる時にしておいた方がいいですよ。したい時には親がいないことが多いので」


あんた何歳なんや?ホンマはエルフちゃうんか?

ミランがエルフだと言われても、納得しかないぞ。


「そうだな。楽しませてくるよ」


「はいっ!」


ミランに見送られて、俺と聖奈さんは地球へと戻った。





家を経由して戻ってきた俺は聖奈さんに聞きたいことがあった。


「なぁ、聖奈は仕事が忙しいのか?」


「私もこっちにきた理由かな?そんなの決まってるよ。私も温泉旅行に付いて行くからだよ」


えっ?家族旅行と言うか、俺は送り迎えだけだぞ?


「もしかして、俺の分も温泉宿の予約を?」


「当たり前だよ!私と同じ部屋だよ!嬉しい?」


いや、いつも同じ部屋だよ。

偶には一人にさせてくれ…


「ミランちゃんも偶には一人にさせてあげないとね」


その優しさの半分を私に下さい。


「まあ、聖奈は頑張ってくれてるからな。温泉くらい奢らないとバチが当たりそうだ」


「月の神様からかな?」


急に温泉に俺も泊まる事になったけど、まぁいいか。


俺達は温泉宿に期待を膨らませて眠りについた。





翌朝、準備を終えた俺達は両親を迎えに行った。

道中、当たり前の事に今更気付いた…


「親になんて言えばいいんだ…」


聖奈さんの事をなんて紹介するのか悩んだ。

当の本人は、助手席でアニメを堪能している。


「秘書だって言えばいいんじゃない?」


聞こえていたのか…


「同じ宿だろ?同室に泊まる秘書がいるのか?」


「ふふっ。冗談だよ。彼女だって言わないと無理なんじゃない?」


くそっ!外堀から埋めて行く作戦だったか!

まんまと罠に掛かってしまった…


「それに聖くんの知り合いはご両親以外は私の事を彼女だと思ってるよ?」


「ん?会社の人は思ってないだろ?わざわざ俺がそう伝えたんだし」


「え?ちゃんと訂正しておいたよ?恥ずかしがり屋さんだから誤魔化していたって」


なんちゅう事を…

そもそもアンタはええんか?


「もう俺はこっちでの事は色々と諦めてるけど、聖奈さんはいいのか?そんな噂が流れても」


「いいよ。私が流しているんだから」


そうだった…元凶はこいつだった。

まぁ、これでストーカーの目をこちらに向けられるならいいか。

そもそも俺は年齢=なんだし…


しかし!異世界はダメだからな!

エルフとかがいて、もしかしたら美形に慣れすぎてブス専かもしれないからなっ!


自分でいってて虚しくなってきた…ブスではないよ?イケメンでもないけど…


いいんだ。俺は異世界一モテるモブになるから。




様々な葛藤の果てにいつの間にか実家に着いた。


「おーい。迎えにきたぞ!」


チャイムなんか鳴らす奴はこの辺りにはいない。

セールスくらいだから声を掛けた方が間違いなく出てくる。


ドタドタ


「あらー。聖おかえりなさい。荷物を車に積んでおいてね」


お袋はそう言うと荷物を玄関に運んできた。


「返事も聞かないのかよ…相変わらずだな」


俺はため息と共に荷物を車へと運んだ。


聖奈さんと外で5分ほど話していると


「待たせたな。母さんがバタバタしててな」


親父達が出てきた。


「お父さんのトイレが長いからじゃない。あら?そちらのお嬢さんは…もしかして?」


お袋…視線がウザい。はっきり言えよ!


「初めまして。挨拶が遅くなりすみません。聖さんとお付き合いをさせて頂いている、長濱聖奈と申します」


「あらあらご丁寧に。聖の母です。やったわね!物凄い美人さんじゃないのっ!」


バシバシッ


痛い…肩がもげる…


「聖の父です。息子がお世話に…」


そう言うと親父は聖奈さんを見てフリーズした(固まった)


「金持ちって凄いな…」


おい!失礼だろ!息子に!

聖奈さん?事実は違うけど似たようなもんだから仕方ないな。


「お父さん!失礼でしょ!もしかしたら本当に聖の事を好きになってくれているかもしれないのよ?!」


やめてくれ…失礼以上に恥ずかしい…


「ふふっ。面白くて良いご両親だね!」


貴女を楽しませる為の芸人さんじゃないのよ?ウチの両親は。





移動中

「そうですか。同じ大学だったのですね」


助手席は荷物だ。後は後ろだ。俺は無心だ。


「はい。お父様とお母様は?」


「やだよー!お母様だって!私は良いけどお父さんに様は似合わないわよねー」


両方だよ…


「私達は高校が一緒でしてね。所謂腐れ縁という奴ですよ」ははっ


何が『ははっ』だ!


「お父様。敬語はやめて頂けませんか?私は聖さんにお世話になりっぱなしで…ご両親に気を遣わせるのは心苦しいです」


「そうよ!どうせ育ちの悪さはすぐにバレるんだからカッコつけてもダメですよ」


あれでカッコつけてたのかよ…

穴があるなら入り…いや、埋めたい。


馬鹿な話をBGMに車は温泉街へと着いた。

車をナビ通りに進めて宿の駐車場に停めて漸く降りられた。


早く…温泉に…


「立派な宿だな!ありがとうな聖!」


「そうですね。料理も美味しいのよね?聖?」


そこは乗っかって感謝だけしろよ…

まぁ、聖奈さんの手柄だからあまりされても居心地悪いけど…


「料理?食ったことないからわからんな」


「もう!聖くんったら!あんなに一生懸命にお父様が休めて、お母様が満足できる宿を吟味してたじゃないっ!

お母様。お料理も人気みたいですよ?」


おいっ!勝手に俺を作らないでくれ!相手は一応実の両親だぞ!?


「そうなの!?まあ、聖も立派になったのね…」


良い温泉宿を知っていることが立派なのか?

どんなねじ曲がった基準だよ…


「さあ、聖奈さん、母さん行こう」


いや、自分の荷物くらい持てよ!

そして息子の名前は呼べよ!




一先ず別々の部屋へと入った。


挿絵(By みてみん)


「ふぅ。無駄に疲れたぞ…」


温泉の効能がどれだけ凄くても割りに合わないな。


「お疲れ様!ミランちゃんも連れて来れたらなぁ」


「そうだな。ミランに頼りっきりだから何かしてあげたいが。

まぁ追々だな」


俺達は少し喋りながら休憩を取った後、男女で別れて温泉を楽しんだ。

その後の料理も美味しかったし、何より日本酒が美味かった。





翌朝、朝風呂までしっかり満喫した後、宿を後にした。


「この後はどこに連れて行ってくれるのよ?」


運転中の俺は寝耳に水だった。

なんか居眠り運転してるみたいだな…


「近くにこの辺りで有名な滝があるのでそこに連れて行くって言ってましたよ?」


ナイスフォローだ!

と、言うかあまり甘やかさないでくれ…

際限がないから。。。



無事に滝に連れて行った後、両親を送り届けた。


「聖奈さん。聖の事を捨てないでやってくれよ」


「聖奈ちゃん。聖を嫌いになってもいつでも来てね」


最後まで両親は変わらなかった。




「いやぁ。聖くんのご家族はホントに良い人達だね!次はお兄さんとお姉さんだねっ!」


マンションまでの道中に聖奈さんが伝えてきた。


「やめてくれ…」


末っ子の俺は家族の中でヒエラルキーは最下位なんだ…


無事にマンションに帰った俺達は大量のお土産を持って、異世界へと帰った。



「あれ?ミランちゃんいないね?」


「トイレか?」


宿の部屋へと転移した俺達はミランの姿が見えない事に気付いた。何故か馬車の修理道具の金槌だけ床にある。


「とりあえず、宿の人に聞こう」


俺達は一階の受付に向かう。


「あれ?この時間なのに人がいないね」


「聖奈。嫌な予感がする。魔法の鞄(マジックバッグ)はミランが持っているから武器を取りに家に戻ろう」


魔導書は転移魔法に必要だから大体俺が持っている。

しかし、他の武器はミランが持っている魔法の鞄の中だ。


「うん」


俺達は部屋に戻り、武器を取りに帰った。

戻った俺達は何か手掛かりがないか部屋を漁ると


「聖くん!ここの床だけおかしいよ!」


聖奈さんが言っている床は


「確かに…ここだけ俺が普段使ってる地球の釘が使ってあるな」


「何とか剥がせないかな?」


「家にバールがあるから取ってくるよ」


俺はすぐ様往復した。


一体ミランに何があったんだ?

宿の異様は気になるが、町の人達の事なんてしらん!

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