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53話 頂き物は高価な物。






商会が潰れたと王都で話題になった。

聖奈さんに考えがあると言われて俺とミランは人に話を聞きながら情報を集めた。


「じゃあ、従業員の中でも作業員は捕まってないんだね?

場所はわかるかな?」


俺達は集めた情報から作業員の家を伝えた。


「わかるだけでも10軒もあるね。何とか今日中に回ろっか!」


俺達は聖奈さんに着いて行き、家を回った。




「ホントに何も知りません…」


気の弱そうな青年が謝る。

まだ何も言ってないのに…


「勘違いしないでね。私達は貴方を責めに来てないよ?

勧誘に来たの」


どうやら従業員や作業員の殆どが噂の影響で、王都民からひどい言葉を投げかけられているようだ。


「か、勧誘ですか?」


「そっ!だって貴方達はこのままじゃ働き口がないどころか、ずっと嫌がらせをされるよ?

だから助けに来たの」


ぶるっ


なんだ?夏なのに寒気が…


「貴方達に家具を作ってもらいたいの」


は?何言ってんだあんた?


「いや…もう懲り懲りしてます…」


そりゃそうだろ。

悪気がなくても、自分達の所為(せい)で困った人が沢山出ていたんだからな。


「勘違いしないでね。職人としての貴方達の腕には期待してないよ。もし後悔しているならチャンスを与えてあげるって事だよ」


聖奈さんの言う事は


これまで困らせていた職人さんの手伝いをする仕事を与える。

しっかりこき使われて、一人前の職人になる事が唯一の働ける条件。

場所は王都から離れたリゴルドーの街だから噂も少ない。

心機一転やり直しなさい!


との事。


いや…

都合よく使ってるなぁ。

俺も使われてるって?知ってるよ・・・





その後は1日掛けて王都を回り、全員に声を掛けたが…


「三人だけだったな」


リゴルドーに来て頑張ると言った人達は10人中3人だけだった。


「うん。予想より多かったね!来ても二人くらいかなって思ってたけど、多いに越した事はないもんね!」


ほぼ、予想通りだったのか。

俺ならこんなに都合のいい話ならもっと集まるって予想しそうだけどな。


やはり作戦は任せたほうがいいな…


宿に帰ると王子から手紙が来ていた。


「なんて書いてあるの?」


部屋に戻り、手紙を開けると聖奈さんが聞いてきた。


「ちょっと待てよ・・・おっ!褒美が明日の午前中に来るってよ!

どうせなら置いて行ってくれれば良かったのにな」


それは無理か。


「やったね!何かな何かな!美少女奴隷とかだったらどうする!?」


いや、どうもしねーよ…

返品するわっ!


「ど、奴隷ですか?ないと思いますよ?」


そう言えば奴隷制度とか聞いてなかったな。


「基本的にこの国では奴隷は犯罪奴隷のみです。それも大罪人ではなく、死刑以外の判決が出た人が刑期の短縮の為に自ら志願した場合のみです。

なので、褒美には値しないかと」


期限付きの褒美なんて聞いたことないな。


「それに衣食住を管理しなくてはなりません」


犯罪奴隷に志願するなんてオッサンばかりだろう。

オッサンを養うのは嫌だな…


罰ゲームかよ…


「まぁ、奴隷はないだろうな。どちらにしても王子の褒美だからしっかり受け取らなきゃいけないな。

プレゼントの中身は明日だな」


「そうだね。変な奴隷が来たら、ちゃんとお断りしてね」


話聞いてたのかな?


「それを受け取ったら、明日の夜から1日地球に行かない?

そろそろ新しいバイトさん達にも会ってもらいたいし、胡椒の代金でもある品物を向こうで売りたいんだよね」


「ああ。わかった。ミランもいいか?」


「はい。了承しました」


堅い…

俺達仲間だよね…?


その日も同じように過ごして翌日の朝を迎えた。




いつものルーティンを行い、使者を待っていると扉がノックされた。


「ご来客です。騎士の方でしたが…揉め事は…」


宿の人に伝えてなかった…


「すみません。揉め事ではないです。下でお待ちですか?」


「ええ。揉め事でないなら大丈夫です」


バタンッ


「行こうか」


「うん!」「はい!」


下に降りると入り口の所に何人か騎士がいて、その内の一人、見覚えのある騎士がいた。


「シュバルツ様でしたね。お久しぶりです」


相手は近衛騎士様だからな。

俺は強い相手には下手にでるぜっ!


「セイ…いや、セイ殿。その節は助かった。心よりの感謝を3人に」


そうシュバルツさんが言うと、お連れの3人の騎士も敬礼した。


カッコいいな…俺も返礼とかしたいな…

やり方知らんけど。


「早速だが本題に入る。ここからは国王陛下並びに第二王子殿下の言葉である。

作法として、片膝をついて聞いてくれ」


なるほどよくあるやつだな。

と、考えている間に左右の二人は跪いている。

俺も慌てて膝をつく。


かっこ悪…


「ごほんっ。この度は余の息子であるアンダーソン王子の窮地を救った事に父として、また国主としても感謝の言葉と褒美を送る」


もう一人の騎士が一歩前に出て


「アンダーソン王子殿下のお言葉である。

この度は其方達の献身により私の今がある。陛下に褒美は最上のものを、と頼む事しか出来なかったが受け取ってくれ」


話しが終わるとシュバルツさんが近づいてきて、耳元で


「例の件は陛下には伝えたが、其方達の安全の為、他言無用にしている。褒美にはその件も含まれている。

この伝言は殿下からだ」


なるほどな。侯爵に俺達が関わっている事を秘密にしてくれたんだな。

ありがとう王子!それが一番の褒美です!


「これが褒美だ」


おっ?王家からの褒美にしては普通の袋にはいっているんだな。

中身はなんだろうな。今開けたらダメだよな…


「はっ。謹んで頂戴します」


「うむ。これで褒賞の儀は終わりだ。褒美には陛下の気持ちが籠っている。大切に、そして有意義に使ってくれ。

では、失礼する」


そう言うとシュバルツさん達は去っていった。

うーん。ここで受け取ったのは間違いだったか?

宿の人達から熱い視線を感じる…


まぁ部屋には武器が転がっているから入れられないけど…

興味本位で弄られて暴発したらやべーからな…


「さっ。一先ず戻ろう」


俺達は熱い視線を背に部屋へと戻った。


大事なところでは俺に話をさせてくれるなんて…出来た仲間を持ったな…


ガチャ

バタンッ


「それでセイくん。何が入ってるの?」


聖奈さんは中身が気になるようだ。


「甘いものでしょうか?」


俺の心のリーダーまで…

こんな古い袋の中に食べ物入れないだろ・・・


「まぁ、待て。今確認するから」


ゴソゴソ

ガサガサ


「ん?紙しか入ってないぞ?」


「えっ!?王家の宝が…」


「セイさん。何か書いてますよ?」


ミランに言われて紙を開くと


「何何・・・『この袋は拡大魔法が付与された魔導具だ。貴重な品だから盗まれないようにな。シュバルツ』・・・えっ?」


「えっ?」


「えっ?」


も、もしや、四次元○ケット…


「ええっ!?貸して!」


聖奈さんに目にも留まらぬ速さで奪われた…

あれ?聖奈さんのジョブってシーフだったっけ?


「す、凄い…ホントに…あったんだ…」


聖奈さんが泣きながら袋のサイズをゆうに超えているライフルを出し入れしている。

ヤバい奴にしか見えん・・・

理由を知っていても、理解できん・・・


「セ、セーナさん…?」


ミランがドン引きしてる。

俺もしてる。


聖奈さんが現実に戻るまで俺達は佇んでいた。



「ご、ごめんね!つい、感動して…」


「い、いえ…良いんです。ありますよ。誰にでも…」


全然良くなさそうだぞミラン?


「とりあえず!褒美は沢山入る袋って事だな!ところでどれくらい入るんだ?」


「そ、そうですね!気になります!」


「そうだね。ここでは量が測れそうな物がないから、家に帰って瓶で試そう?」


冷静になった聖奈さんはいつもの出来るお姉さんだが…

俺達は夢に出てきそうだ。

古ぼけた袋を抱きしめて泣く女を…


なまじ美人だからホラーなんだよな…




王都の外に出るのが面倒だったので、宿の人に誰が来てもいないと言ってもらうようにして、部屋には来ないでくれと伝えた。


さっき見られていたやり取りが効いたのか、かなり畏まって良い返事をしてくれた。


「転移するぞ」


俺達は家へと転移した。



家に転移したら階段を降りてリビングという名の、在庫置き場にきた。


「じゃあとりあえず30個砂糖の瓶を入れるね」


いきなり15キロ分の量を入れた。瓶も含めたら20キロはある。


「まだまだ入りそうだね!セイくん持ち上げてみて!」


俺は20キロを覚悟して袋を持ち上げた。


「うおっ!軽っ!全然重さが感じられないぞ!」


「ホントですか?」


全然信用してくれない訝しげなミランに袋を渡した。

ちょっと待て。

それは酷くないか?


「本当ですね…不思議です」


「流石魔法の鞄(マジックバッグ)だね!」


袋なのに(バッグ)なんだ…

まぁ、異論はない。


「ミランが知らないなんて、凄い希少(レア)なんだな」


「私は知らない事ばかりですよ?特にこの手の富裕層や貴族層の方達が持っているものは」


「ねぇ!早く限界を試そうよ!」


「わかった。落ち着け。瓶を割らないようにな」


こうして俺達は作業に没頭した。



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