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51話 ミランの災い。






王子からの返答待ちな俺達は出来ることもない為、リゴルドーの家で過ごしていた。


「凄いですね!魔法を使わずに冷やす事が出来るなんて…」


ミランが冷蔵庫に感動している。

もちろん俺も


プシュッ


グビグビ

「ぷはぁ!夏に昼から飲むキンキンに冷えたビールは最高だな!」


「セイくん!夜には向こうで運転しなきゃいけないんだからそれで最後だよ!」


聖奈さんに最後宣言されてしまった…


「ミランちゃんもプリンは1日一つまで!」


「はい…」


どうやらお姉さんモードのようだ。

お姉さんモードはありがたいけど、今じゃないんだよな…


俺とミランは聖奈さんの視界に入らないように、隅で飲み食いした。


「セイさん。これは何に使うモノですか?」


「これか?これは洗濯物を洗ってくれる道具だ」


ダイニングに居場所を無くした俺とミランは家の中を探検していた。

今いるのは裏庭だけど。


「これまでは地球で洗っていただろ?その機械は乾燥までしてくれていたんだけど、こいつは洗うだけだから外に置いても大丈夫なんだ。中古で安かったし」


ミランに家電の用途と使い方をレクチャーして回った。

そんな事をしていたら夕方になったので王都近くの人目につかないところへ転移して歩いて宿へと帰った。


この方法なら三人でリゴルドーに帰れるけど、王都に入るのにも時間がかかるし、やはり馬を預けられて暇な時でないと無理だな。






その日の夜、遅い時間に俺と聖奈さんは地球へと帰還した。


「もう9時以降じゃないと月が顔をださないな」


「そうだね。満月も近いんじゃないかな?」


必要がなくなった家具は会社で使えるものは使って、その他は景品?みたいな感じで希望する購入者にプレゼントする。

それの為に聖奈さんは会社で作業をしている。

その傍らで俺は胡椒の大量輸送を始めた。


俺達の胡椒は決して安価ではなくて高級品の部類だ。

既存の胡椒とは価格差もあるし、そもそもモノが違う為、棲み分けは出来るはずだ。

どちらにしても異国原産の商品だからエンガード王国民にはそこまで影響ないな。


言い訳じゃないんだからねっ!?





翌朝、胡椒を馬車に積んだ俺と聖奈さんは商人組合(ギルド)に来ていた。


「ありがとうございます!ここまでの量であれば白砂糖に続いて他領にも売り出せます」


いつもの個室に案内された俺達の前にはテンション激高のハーリーさんがいた。


「安定した供給は出来ますがこれ以上の増加は難しいと考えてください」


聖奈さんにしては珍しく控えめにしたな?


「わかりました。今でもかなりの量なので問題ないですね。

今回も売れてからのお支払いになりますが大丈夫でしたか?」


「はい。但し、以前にも申し上げたように胡椒の売上は現物でのお支払いでお願いしますね」


「わかりました。では、ある程度纏まってから現物をお家の方に運ぶと言う事で」


「はい。よろしくお願いします」


もはや商人組合でも話せなくなったな…

いや、いいんだけどさ…

偶には譲ってね?


砂糖の売上を貰った俺達は王都に転移した後、ミランも含めて三人で買い物に出掛けた。


「何を買われるんですか?」


「宝石とか嵩張らなくて地球(向こう)で売れるものかな。

あっ!今はセイくんは大金持ちだから欲しいモノがあれば何でも言ってね!

私も買うから!」


ミランは甘いもの以外に執着しないからな。聖奈さんが欲しいのは異世界を感じられるモノかな?

何だろう?


「私は特には…」


やはりな。


この時、俺はミランに不幸が襲いかかる事をまだ知らなかった。







買い物を終えて宿の部屋へと帰ってきた。

いや、5時間もかかるか?


「もう…許してください…」


「聖奈。やりすぎだ…」


「ごめーん!だってミランちゃんが可愛過ぎるのがいけないんだもん」


ミランは聖奈さんの着せ替え人形(おもちゃ)になっていた。

聖奈さんの欲しいものはミランの服だった。

それも一般の人が着ている物ではなくて、『ザ・異世界』なフリフリの衣装だった。


俺は途中で付き合いきれなくなって、宝石を買いに行ったりしていたが、流石にミランが可哀想になって聖奈さんを止めた。


ミランの今の格好は赤いドレス?に白のレースが袖や首元、腰回りにたくさんついているモノに、黒の光沢のある靴。そして頭に何か飾りで白のレースがついた物をつけられている。


もちろん異世界でも貴族街ではないから浮きまくっていた。


ちなみに胸元には俺が先程買ってきた大粒のサファイアのネックレスが…

それ売り物なんだけど・・・


「セイくんは何か買ったの?」


「俺はこれを買ったぞ」


俺は30cmくらいの長さの木の棒を聖奈さんに渡した。


「えっ…いくらだったの?」


「50万ギルだったかな?」


「…セイくん。悩みがあるなら言ってね?」


ん?

もしかして俺がただの木の棒を、大金叩いて買ったと思ってるのか!?


「おい!勘違いするなよ!これは魔導具だ!」


「えっ?ただの木の棒を綺麗なお姉さんに買わされたんじゃないの?」


異世界デート商法かよ…


「ちゃうわ!よく見ろ。所々青く光ってるだろ?」


「あっ。ホントだ!じゃあホントに魔導具?!」


「綺麗ですね。水か氷の魔導具ですか?」


ミランさん。流石です。


「知ってたか?これは氷の杖だ。氷系統の魔法にしか使えないが、魔力をある程度肩代わりしてくれるモノらしい」


「らしいって…やっぱり偽物なんじゃ…」


仕方ないだろ!俺が氷の初級魔法(生活魔法)を使ったところで魔力の減り具合なんてわからんわ!


店内で上級魔法を連発出来るわけないしな…


「とにかくこれは2人で使ってくれ」


「「えっ!?」」


「セイさんの物ではないのですか?」


「俺が使ってもそこまで効果はないだろ?上級魔法でも大して魔力が減らないからな。

詠唱省略の魔導具だったら良かったんだが…

兎に角、二人ならミランであれば氷の中級魔法が使えるようになるかもしれないし、聖奈なら上級の氷魔法が使えるようになるかもしれないからな。

使える方が使ってくれ。

両方とも意味が無ければ一先ず家にでも置いておこう」


それを聞いた二人は目の色を変えた。


「ミランちゃん」


「はい。セーナさん。行きましょう」


二人が阿吽の呼吸を見せるが…

転移する(連れてく)のは俺だよな…





結果は両方とも氷魔法に限り一ランク上の魔法が使えた。


「多分偶々でしょう」


「そうだよね。こんなに簡単に上位魔法に手が出せるなら、この杖はもっと色んな人が持ってるよね」


二人の見解は正しいだろう。

買う時に店の人に注意されたからな。このレベルの杖で魔法が強化されるのは十人に一人くらいだと。


偶々二人の魔力があと少しで上位の魔法に届くところにあったんだろうな。


杖の性能を試しがてら、翌日から王都近郊に魔物討伐に通った。

俺は夜に毎日冷えたビールが飲めたら幸せだ。

お月様。ありがとう。オリ○糖…いやプリン体か・・・

今回の満月では会話はできなかったが、その内またお礼を伝えたいし、望みがあれば聞きたい。

叶えられるかは別として…




暫くそんな生活を続けていると王家から使者がやってきた。

使者がもたらした物は手紙だった。


「召喚状か?」


「みたいなものじゃないかな?」


「豪華な紙ですね」


綺麗な紙に2日後に来るように日時の記載があった。


「やっぱり貴族は苦手だな…」


「この世界の多くの国は絶対君主制がほとんどだろうから、セイくんも慣れないとね!」


いやいや、あんたは危なっかし過ぎると思うよ?

ワイは平和に生きたいんじゃ…




約束の日にちは直ぐにやって来た。

俺達は綺麗な服に着替えて、前回と同じセバスさんに案内されて部屋へと着いた。


「お客様をお連れ致しました」


ガチャ


「失礼します」


「「「失礼します」」」


前回同様、一礼の後、入室した。


「きたか。少し長い話になる座ってくれ」


そう言われた俺達は、間違いがあっては命に関わりそうなのでセバスさんを見ると、頷きを返されたので素直に着席する事にした。


「それで話なんだが」


そう切り出した、第二王子のアンダーソンはどう見てもミランと大差ない年齢だ。

この世界の見掛け年齢あてにならんな…精神年齢高すぎだろ……


「私の部下を使って調べさせたが、其の方らの言う通りだった」


「では、商会を…」


聖奈さんが我慢出来ずに口を挟むが


「待て。話はそう簡単ではない。順に話す」


そう言った王子の話はこんな感じだった。


商会は確かに独占する為に手段を選ばず、品質の低い家具を大量に作って売っていた。その影響で少なくない数の職人や商家が路頭に迷ってもいた。

独占した暁には、品質の低い商品を高値で売る予定だと言うこともわかった。


しかしここから話は変わる。


会頭はアイデアを出していて実際に店も切り盛りしていたが黒幕が別にいた。



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