↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/356

44話 ウィンダスターの街並み。

 





 そこは見知らぬ天井だった……


 いや、昨日泊まった宿だな。忘れてたわ。


「おはよう。起こしてくれても良かったんだぞ?」


「いえ、今日は街に滞在予定でしたし、昨晩も遅くまで作業していたので」


 それは貴女もでしたよ?


 昨日の夜はミランと共に転移して、俺は地球に帰り会社に行って砂糖と胡椒を運んだりしていた。

 その間ミランは、実家にお土産を持って行ったりしていた。


「聖奈は我慢出来ずに?」


「はい…」


 はぁ。聖奈さんは異世界中毒だからな……


 俺達は一人で出掛けた聖奈さんを追うように宿を出た。

 ここは王都とリゴルドーの中間地点の、王弟が治める街『ウィンダスター』だ。

 門番に聞いたところ、王弟は普段王都にいるらしいから飾りかな?



 しばらく整地された綺麗な道を進むと、喧騒が聞こえた。


「賑やかだな。市場か?」


「時間が遅いので商店や出店、露店が並んでいる所ではないでしょうか?」


 確かに市場なら、もう静かになっている時間か。


「聖奈が居そうな所だな」


「そうですね。見る物には困りそうにないですね」


 喧騒の発生源は、人と露店などが溢れ返っていた。

 年末のアメ○かよ……


 俺は逸れないように、ミランに手を差し出した。


「逸れたら探し物が増えるからな」


 照れてそうなミランに、言い訳を与えた。


 嘘です!照れているのは僕ですっ!


 通りを半分くらい進んだところで、聞き覚えのある声が聞こえた。


「ああっ!!手を繋いでるっ!ズルイっ!」


「す、すみませんっ!」


 ミランは聖奈さんに言われて、慌てて手を離したが……


「ミラン。聖奈は俺に言ったんだぞ?」


「へっ?」


 ミランはわからなかったようだが、俺の考えは正しいだろうな。


「セイくんズルイ!私もミランちゃんと手を繋いだ事ないのに!」


 ほらな?勘違いするなよ!


「聖奈。それよりもどうだった?何かあったか?」


「それよりもって…残念ながらなかったよ…見てて楽しかったけどね」


 まぁ、楽しめたなら良いんじゃないか?


「地球で売るものですか?」


「そうだよ。でも目ぼしい物はなかったの…」


「まぁ、気長に探せば良い。とりあえず家具職人を探さないか?」


 俺の提案は採用された。



「どうやって探すの?」


 むー。確かに……


「こんなのはどうですか?」


 ミランが言うには・・・

 工房はどうせ街中には無い。当てもなく外を彷徨うより、家具を売っている商店に入り、お金を渡して聞いてみるのが手っ取り早い。

 どうせ王都の影響で、こっちでも安い家具が出回っているだろうから、引き抜きを気にせず教えてくれるのでは?

 との事。


 さすが俺達のリーダーだ!

 名前だけは冒険者パーティのリーダーは俺だ。

 名前だけは会社の社長も俺だな。

 見事に全部名前だけだな……


「そうしよっか?当てもないしね」


「そだね」


「どうかしましたか?セイさん?」


 そろそろ活躍しないとホントに名前だけの人になる。俺はそれに思考が支配されて、返事がカー○ングの選手みたいになってしまった。


「セイくんは病気だから放っておこうね」


「えっ…はい」


 いや、病気ちゃうから!納得しないで!


 俺はどうにか爪痕を残そうと考えたが、やはり出来る事、わかる事が二人に比べ少ない事に気付いて、諦めた……



「見て。あそこに家具が売ってあるよ」


「ホントだな。いってみようか」


「はい」


 その商店は、家具の搬入を考えてか、入り口が大きく中が丸見えで見つけやすかった。


「こんにちは」


「はい。いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」


 出てきた店員さんは30才くらいの男性だった。


「実はお尋ねしたい事がありまして、こちらの家具ですが、製作者の方の居場所を教えて頂けないでしょうか?」


 面倒臭いのでストレートど真ん中で聞いてやったぜ!


「王都の商会の方ですか?何度も伝えましたが困ります」


 聞いた瞬間顔色が変わってしまった。こぇー。


「いえ。王都の商会ではないです。私はリゴルドーの商人です。

 王都の商会で何かありましたか?」


「そうでしたか…いえ、勘違いをしてしまいすみません。

 王都の事はご存知ないですか?」


「もしかして、家具を大量生産して、格安で販売している事ですか?」


 心当たりはこれくらいしかない。ミランの表情が少し曇ってしまったな。すまんな。


「はい。家具以外もありますが、概ねその通りです」


 やはり噂以上に手広くやっているようだな。


「実は、それで仕事を無くされた腕の良い職人を、集めているのです。

 私達は独自のルートで販売しているので、過当競争により他の職人に迷惑を掛けることはありません」


「それは…もし本当であれば、私のお抱えの職人さんを紹介したいものですね」


 そこで顔を暗くさせていたミランが、珍しく話し合いに参加してきた。


「本当です。私の父は家具職人でしたが、王都の商会に仕事を奪われて困っていたところを、この方達…セイさんとセーナさんに助けて頂きました。

 リゴルドーに住む、他の職人の人達も助かっています」


 感情の籠ったミランの言葉を聞いて、商人さんは口を開いた。


「わかりました。信じましょう。と言うか、私も職人さんを助けたいのですが、手段がなかったのです。

 むしろありがたい申し出です」


「私はリゴルドーで商人をしているセイと言います。こちらは同じく商人で冒険者でもあるセーナ。こちらの子は冒険者のミランです」


「申し遅れました。私はダージンと言います。妻に店番を頼みますので、これから職人さんを訪ねましょう」


 こうして無事(?)に作戦は成功した。

 やはりストレートで、後は出たとこ勝負が楽で良いな!



 奥さんに店番を任せたダージンに先導されて、街を行く。


「御三方は、ウィンダスターは初めてですか?」


「初めてですね。リゴルドーより賑やかな街だと感じました」


「そうでしょう。人口も40,000人くらいいますから、リゴルドーよりも多いですからね」


 くそっ!リゴルドーを馬鹿にしやがって!

 40,000なんて東○ドーム満員よりもすくねぇじゃねーかよ!


「ですが王都に近いせいで影響を受けるので、良い事ばかりでは無いですけどね」


 都会は怖いからな…よし、許してやろう。


 そんなアホな事ばかり考えていたら、どうやら着いたようだ。


「こちらが職人さんの家になります」


 そう言うとドアをノックした。


「ダンさん。私です。ダージンです」


 ガチャ


「ああ。ダージンさんか。何の用だ?借金ならまだ返す当てはないぞ?」


 ダージンさんは金を貸しているのか。そりゃますますどうにかしてやりたいよな。


「いえ、お金はいつでも構いません。今日は仕事を紹介しに来ました」


「ん?まさか王都のクソ野郎達のとこかっ!?

 俺はぜってぇいかねぇぞ!?」


 扉に隠れて姿は見えないが、口悪いな…誰かの心の声かよ……


「違います!王都の商会とは違い、腕の良い職人さんだけを集めている人に紹介したいのですよ!」




 ダージンさんが説明をして、ある程度納得させたところで、俺達を紹介してくれた。

 ダンさんは25才と職人にしては若いが、父の跡を継いだ職人らしく、子供の時から道具を触っているから腕は確かだそうな。



「では、私は店に帰るので、後はよろしくお願いしますね」


「ありがとうございました」


 俺達はお礼を伝えてダージンさんを見送った。


「それで、アンタらが俺の家具を売ってくれるのか?」


「そうです。いいですか?こちらのお二人は路頭に迷っていた・・・・・・」


 ミランが口の悪いダンさんに、明らかに誇張した話を聞かせた。


 いや、バーンさんは路頭には迷ってなかったやん?

 あんた実の父をつかまえて何言うてますの!?


「そ、そうだったのか……嬢ちゃんも苦労したんだな。

 わかった!俺で良ければいくらでも使ってくれ!」


 どうやら勧誘は済んだようだな。


「では、工房へ案内してください。全て買い取りますので」


 次は聖奈さんが話をする番か。


「ぜ、全部?売れないが時間はあったから数が多いぞ…?」


「はい。構いません。ですが条件があります」


 うまい話には気をつけろよ……


「な、なんだ?」


「工房を手放してリゴルドーへ移住してください。

 良ければお家も手放してください。そうすればダージンさんへの借金も返せますし、向こうでも暫くは暮らせるお金が手に入ります」


「む、無理だ!いや、リゴルドーに行くのは構わんが、工房を建てる金がねえ」


「工房はミランちゃんのお父様に、間借りさせてもらってください。

 私達が今ある物もこれから作る物も全て正規の価格で買い取りますので、近いうちに工房を建てる事が出来るように頑張って作ってくださいね」


 聖奈さんの挑発とも取れる言葉に、口の悪いダンさんは目を見開き、ついでに口も開いた。


「よ、よーし!言ったな?全部買い取って貰うから覚悟しとけよ!」


 どうやら話も纏まったみたいだな。

 実物を見ていないが、この手のタイプは手を抜く事を知らないから大丈夫だろう。


 …あれ?また何もしていないんじゃ……


 その後、四人で馬車に乗り、ダンさんの工房へ向かった。




「結構あるが大丈夫か?」


「ええ。160万ギル程だと思いますが、如何でしょうか?」


 バーンさんので大分見る目が鍛えられたから、そこまで外していないだろう。


「お、おう。俺の販売価格と寸分も違わねぇ…」


 後はここと家を売れば、ダンさんはリゴルドーに行けるな。


「こちらがお金です。夜には運ぶので、鍵は開けたままにしておいてください。

 必要な道具などは、今馬車に積んでしまいましょう」


 ようやく俺の出番になった事で、饒舌に喋れたぜっ!


 俺の活躍(?)により、その後は滞りなく進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。