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41話 旅の始まり。(説明回)と、言う名のプロローグ…

 






 赤目熊の討伐から3日が経っていた。


「では、予定通り明日から旅に出られると?」


「そうだよ!地球(向こう)からキャンプグッズも買ってきたから準備もバッチリだよ!」


 地球から軍幕テントなど異世界(この世界)でもギリギリあっても大丈夫そうな物で、旅に有用な物を買い集めていた。


 もちろん部品の一つ一つを見たら異世界ではありえない物ばかりだが……

 便利な物は諦められなかった。僕って現代っ子だからねっ!


「もし他の旅人に持ち物について聞かれたら、旅の間に知らない旅人から譲ってもらったと言おう」


「その道具もいつでも買えるのですよね?

 どうせなら欲しい人達に高値で売ってしまえばいいのでは?」


 少しそれも考えたけど……


「流石にその度に地球で買い足すのは面倒だし、この世界では作れないものを売って、目立ちたくはないからな」


「そうそう。放って置いてもストーカーが勝手に出来るのに、わざわざ自分達で目立ってストーカーを増やす必要もないかなって。

 何よりお金(ギル)には困ってないからね。

 それなら自分達の安全や安心の方が大切だよ」


「すみません。少し貧乏性が出てしまったようです。

 それで構いません」


 こう言っているが、ミランが貧しかった事はないそうだ。ミランが冒険者をしていたのは、小さい弟妹達がいるからと、勝手に肩身を狭く感じていたからだ。要は良い子なんだ。


 ミランがしょうもない小さな嘘をつく時は、恥ずかしがっている時の口ぶりだって、ミラン母から聞いているぞ!


「俺たちがしなきゃならないのは口裏合わせだな。

 流石に娘を旅に連れて行くのに勝手は出来ないから、ミランの両親には転移魔法の事は伝えたが、他の人には伝えていない。

 街の外に馬車を置いて人だけで転移して戻るから、リゴルドーでは馬車を使えない。

 最重要なのは、転移魔法も異世界転移も絶対にバレないようにしなきゃいけないって事だ」


「それなら大丈夫だよ」


 聖奈さんに何か案があるようだ。

 変な事じゃなきゃいいけど……


「ハーリーさんに頼んで、街で使う用の馬車を注文しておいたから。

 だから旅の途中に倒した魔物の素材が邪魔になったら、旅の途中でもここの冒険者組合に納品出来るし、砂糖とかの大量の納品にも使えるの。

 お家に置いておくけど、普段はバーンさんに家具の搬入に使ってもらえばいいかなって思っているけど、どうかな?」


 どうかなって…すでに注文済みやないかいっ!

 だけど……


「でかした!これで街では変わらず行動出来るな!」


「流石セーナさんです」


「ふふんっ!任せて!家だと砂糖や胡椒の置き場が限られているし、ミランママさんだけじゃ納品が間に合わないしね。

 これで転移魔法で帰ってきても、馬車で砂糖を納品出来るね!」


 旅の前夜に家でゆっくりと過ごした。が!

 正直、転移魔法が使える分、地球で海外旅行をした時よりも近所に出掛ける感が……

 気のせいか……





 翌日、街の人達には普段と変わらない様子で、俺達は旅立った。


「何か旅立ちって感じしないね」


 いや、それ言うなよ!


「ですが、私達はセイさんの半分しか戻れないので、旅気分はしっかりと味わえますよ」


 そう。旅先では荷物の見張りもあるし、宿で俺たちがいない言い訳要員も残さなくてはならない。


「それでも挨拶もしてないよね…それに転移魔法である程度の荷物も運べるのがわかったから、荷物も少なめだし…」


 地球より移動が難しい異世界で、これから旅をするとは思えないほど俺達は軽装だ。


「まあ、便利なんだから良しとしないとな」


 風情は一切ない…


 俺たちの馬車は道を行く。聖奈さんの馭者で。


 流石に俺たちも馬車の運転ができないとな。






 暫く進んだ後、ミランにこの後の予定を聞いた。


「じゃあこの先に王都があるんだな?」


「私も訪れた事はないのですが、そうですね。まだまだ日にちは掛かりますが」


 聖奈さんの希望で、まずはこの国(エンガード王国)の王都を目指すことになった。

 理由は特になく、聖奈さん曰く『異世界テンプレが私を待っているの!』らしい……


「経由地の街はどんなところがあるんだ?」


 俺は旅や旅行はしおりが必要なタイプだ。


「そうですね…いくつか町や村はあるようですが、ちょうどリゴルドーと王都の間に、王弟様が治める大きな街があるようですね。

 そこまでは、あまり見る物はないと聞いています」


 地球のように観光地が充実しているわけはないよな。

 俺と聖奈さんには全てが新鮮で楽しいけど、ミランには王都まで退屈させるかもな。


「次の町ではぶどうという甘い果物が有名みたいなので、それは必ず食べましょう」


 いや、十分楽しめてそうだな……


「わかった。沢山食わせてやるからな。

 でも、俺の知っているぶどうと同じなら、すでにミランは食べているぞ?」


 あれ…?ミランがフリーズしてしまった……


 お土産で渡したフルーツサンドにはぶどうも入っていたからな。

 フリーズしてしまったミランは置いといて、俺達の現状を確認しよう。




 この3日で聖奈さんは再びバイトの募集を始めた。

 家具はまだそこまで売れているわけではないが、この旅で売れるものが見つかれば、その職人さんに声をかけて仕入れる予定だ。

 もし見つからなくても、仕事がなくて困っている家具職人さんを見つければ、リゴルドーに誘致して家具の量産を目指すという事になっている。


 もちろんそんな未確定の事でバイトを増やしてはいない。

 あくまでも地球での収入増加を見越してはいるが、こちらでも動きがあった為だ。



 ハーリーさんにいつも通り納品していた時のこと。


「実は折り入ってお願いがあります」


 そのお願いとは、胡椒の納品量増産と俺たちの着ている服の販売のお願いだった。


 服はタグさえ取ってしまえばいいので手間は少ない。

 ネットで色々な色の服を300着ほど仕入れて、家の空き部屋に置いておいた。


 問題は胡椒だ。

 砂糖は今ぐらいの量でも単価が高い為、十分な利益がある。その為これ以上の増産は聖奈さんも考えていなかった。

 その点、胡椒は手間がかかる。この世界でもキロ単価では白砂糖とそこまで変わらない為、小さい入れ物に入れなくてはならないからだ。

 その作業の為もあり、バイトさんを新たに二人募集した。


「交換条件があります」


 俺が答える前に聖奈さんが口を挟んだ。


 俺が唯一商談が許されていた商人組合が……


「増えた胡椒と衣類の売上は、お金ではなく物納して欲しいのです」


「こちらが用意できる物であれば…何を用意しますか?」


「食器を中心に下さい。木の食器、焼き物の食器に関わらずです。

 それを家に届けてください」


「よろしいので?かなりの量になりますよ?」


 そうだろうな。普通食器はどの街でも作られているから、行商ではそんなに売れる物ではない。


「構いません。量によってはストップを掛ける場合もありますが、それはお家にいるこちらのミランちゃんのお母様に伝えてもらいます」


「その場合の売上はどうされますか?」


「その時はサファイアの宝飾品を代わりに納品してください」


 なるほど…そうすれば地球で食器の売れ行きが悪くなっても円が稼げる。

 もし食器が売れるようならサファイアを売らなくても済むな。


 天才かっ!?

 いや、俺が何にも考えてないだけだよな……


「サファイア…ですか?宝石としての価値がないただの綺麗な石ですが、よろしいのですか?」


 もちろん俺達(地球)には価値が高いから問題はない。




 こうして俺達は、円不足の解消の一手を打った。

 例え食器が売れなくとも、家具だけの販売よりは周りの目が変わってくる。

 それに木の食器は人気みたいだしな。陶器の食器もアンティーク調で売れるモノのようだ。


 紙皿でも気にしない俺には、その価値はわからんが……


 とにかく全てがハンドメイドの為、俺たちの会社はこれからもその路線で攻めていく。

 ブランドとして確立されたらいつかメーカー(製造のみ)として、取引は企業相手だけにしたいと言っていた。


 あのー。どこを目指しているのでしょうか?

 俺は楽が出来たらそれでいいんですが……



 俺の思いとは裏腹に物事(聖奈さん)は進んで行く。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かった♪︎ 次回が非常に気になる(^ー^) カテゴリーを、『異世界貿易』を増やしてみては?
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