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34話 貿易の下積みの終焉。

 





「じゃあ私が買っておくから、家の掃除お願いね」


 新居の家具や調理器具を買う為、聖奈さんだけ地球に帰ることに。

 俺が帰っても何を買えばいいかわからないからな。


「頼むな」


「お願いします」


「うん。二人は掃除とバーンさんに改築をお願いしてきてね」






 マンションに聖奈さんを送った時、ミランの事を聞いた。


「何でミランは俺と一緒に寝ようとするんだ?

 聖奈が何か吹き込んだのか?」


「吹き込むとか失礼な!まぁ、吹き込んだんだけどね」


 やっぱりやないか!


「ミランちゃんは聖くんに感謝してるんだよ。でもその気持ちの伝え方がわからないって言うから、私達の世界では男女が一緒に寝ることが感謝の表現だよって伝えたの」


 全部あんたの所為じゃねーかよっ!?


「おい!次に二人で話す時には、絶対に訂正しとけよ!

 なに間違った文化を幼気(いたいけ)な13歳に教えているんだよ…」


「うーん。積極的なミランちゃん可愛かったのになぁ」


「いや、嘘はダメだろ…」


「まあ、私は皆んなで賑やかに寝てみたかったから嬉しいけどね!

 それにミランちゃんも寂しがり屋さんだから、ホントにみんなで寝たいと思うよ?」


 まぁそれはどのみち冒険すれば野営もあるからいいんだけどな。


「わかった。俺が頼みたいのはミランを過度に揶揄うなって事くらいだ。

 後は大体感謝してる」


「もう!大体ってなによぉ!でも揶揄うのはもうやめるね。

 聖くんだけにする」


 俺はどうでもいいんです。最近無視してるし。

 話を終えた俺は転移しようとするが、中々発動しなかった。




 5分ぐらい転移に時間が掛かってしまった……

 一先ず掃除をして、その後バーンさんに頼みに行こう。


 家具や物がない為、広い家だが午前中に掃除は終わり、昼過ぎには裏庭の草むしりも終わった。


 馬の水桶と飼葉入れはミランの弟妹が用意してくれていた。

 もちろんお金は渡している。


 俺達はバーンさんのいる工房に行き、家の改築を頼んだ。


 明日には見に来てくれるようだ。


 夕暮れには早目に飯を食べて、聖奈さんの迎えに備えて寝た。






「セイさん。起きてください」


「おはよう」


 ホントに最近は目覚めがいい。不摂生をやめたら身体の調子もいいし、良い事ばかりだな。しかし!酒をやめるつもりはないぞっ!!


「じゃあ、行ってくる」


「はい。私は出ていますね」


 ミランが部屋の外に出た事を確認して、月を見上げた。


「もうすぐ月の無い世界になるな」


 月が見えない新月がやってくる。


 新月とは、地球から見て月と太陽の方向が同じになり、月が反射した光が地球に届かないため、地球から月が見えない状態の事だ。


 この能力を授かってから2回目の新月がやってくる。

 一度目は地球で過ごした為、転移出来なかっただけだが、もしかしたら翻訳の能力にも影響があるかもしれないな。


「地球へ帰りたい」






 転移したマンションは静かだった。


「あれ?聖奈さんはどこだ?」


 探したが2部屋しかないから、いない事はすぐにわかった。


「とりあえず携帯の電源を入れよう」


 携帯の電源を入れるとメッセージが入っていた。


『家具屋さんで配達を頼んだから会社にいるね』


 なるほど?とりあえず会社に来いって事だな。


 俺は車を出して会社に向かった。






「あれ?電気が切れているな?」


 2階の窓は暗い。




 ガチャ


「おーい。いるのか?」


 電気をつけると奥のソファで聖奈さんが寝ていた。


「ふぅ。無事だったか」


 少しストーカーの事が頭に過ったが、どうやら何もなかったようだ。

 そりゃドラマみたいにホイホイ事件が起こったら困るからな。


「聖奈!迎えに来たぞ!起きてくれ」


「ん?聖くん?おはよう」


 目が覚めた聖奈さんとこの後にする事を確認した。


「じゃあ一階にある物を転移させれば良いんだな?」


「うん。重たい家具もあるから何度も転移しなきゃいけないけど頑張ってね」


 確かに2階からテーブルを運んだりするのは大変だもんな。





「これは2階の部屋の物だから、最初に私と一緒に転移してね。

 その横のが一階で使う物だから」


「わかった。とりあえず行こう」


 そう言うと、俺は転移を発動させた。




「私はミランちゃんと一緒にいるから、聖くんはリビングに後の物を運んでね」


「了解。行ってくる」


 そう告げると一階に向かい、リビングとは名ばかりの広間から再び転移をした。





 荷物を運び終えた俺は転移室に向かい、地球へと転移した。


「さて。マンションに帰るか」


 月のリミットがある為、急いでマンションに帰った。


 太陽は昇ってしまったが、なんとか月は見える。

 時間を掛けて転移は発動した。





 遂に、家に家具が来た。


「聖くんそっち持ってね」


「おう。ミランは危ないからいいぞ」


 俺達は手分けして家具を設置した。


 寝室には三つのベッド。マットは低反発の良いやつだ!

 その他にもソファとテーブルとチェストがある。


 隣の部屋には、服を入れる為のチェストをそれぞれ三人分と銃などの武器をしまう鍵付きのロッカーのような物を置いた。


 一階のリビングには、白砂糖などの瓶が置ける棚を壁沿いに置けるだけ置いた。

 約20畳のリビングだったが、かなりの圧迫感を感じるようになってしまった…が、仕方ないな。

 後は四人がけのテーブルと椅子があるだけだ。


 キッチンには食器棚とその中に地球産の食器、調理器具、調味料が揃えられていた。

 ガスはもちろん来ていないが、カセットコンロを2台とカセットガスのストックが置いてある。




「これで引っ越し完了かな?」


 聖奈さんが締めた。


「そうだな。また聖奈の手料理が食べられるのは嬉しいな」


「そんなに美味しいのですか?」


「ミラン。他の物が食べられなくなるくらいには美味いから期待していて良いぞ!」


「なんでセイくんが自慢してるのかな…?」


 聖奈さんは不可解そうにしているが、あの料理は美味いんだから仕方ない!


「楽しみです!セーナさん。良ければ料理を教えてくださいね!

 母は感覚でする人だったので、私に教えられなかったんです…」


 ここまでそつなく何でもこなして来たミランが料理を作れないのは驚いたが、そんな理由があったのか……


「今日の夕食は知り合いをご招待して引っ越し祝いをしない?」


 聖奈さんの提案に、ミランは飛びついた。


「いいですね!」


 俺は聖奈さんの言葉に疑問が一つ解消される。


「それでクーラーボックスに食材が多かったんだな?」


 三人しかいないのに大きめのクーラーボックスの中身がパンパンに詰まっていた。

 クーラーボックスではそこまで日持ちしないから、何でだろうと思っていたが、合点がいったな。


「へへ。バレてたか。聖くんはハーリーさんと、良ければ組合長にも声をかけて来てね。

 私は準備をしているから、ミランちゃんはご家族に声を掛けて来てほしいな」


「わかった」


「わかりました。楽しみにしていますね」


 家に聖奈さんを残し、俺とミランは家を出た。





 商人組合に着いた俺は、ハーリーさんを探した。


「ハーリーさんはおられますか?」


 目につかなかったので受付の近くにいた人に聞く。


「どちら様でしょうか?」


「セイと言います」


 カードを出して名前を告げた。


 暫く待つとハーリーさんがやってきた。


「こんにちは。珍しい時間ですね?とりあえず移動しましょう」


 特に聞かれて不味い話ではないが、念には念を。




「それはいいですね!砂糖を運んでくださる人にも顔合わせはしておきたいですし。

 ただギルド長は難しいかもしれません。一応誘ってみますが」


「わかりました。場所は先程伝えた所です。お待ちしていますね」



 商人組合での用事を済ませた俺は、足りない物を買い出しした。

 もちろん酒だ!



 家に帰る頃にはすっかり夕方になり、俺は荷物をキッチンに置いて邪魔にならないように晩餐の始まりを待った。





「いらっしゃいませ。どうぞ上がってください」


 人が増えた事で椅子が足らなくなったので、ミラン家から持参してもらった。

 俺達は持て成す方だから交互に座れば良い。


 テーブルは少し狭いがそんな事は気にならないのか、この世界での高級品である白砂糖に囲まれて、皆んな周りをキョロキョロしている。


 沢山の地球産の料理がテーブルに並んだので、俺が代表して音頭をとることに。

 人前に立つのはちょっと……



「本日は我が家にお越しくださいまして、ありがとうございます。

 大したおもてなしは出来ませんが、楽しんで頂けたらと思います。

 乾杯!」


「「「かんぱーい」」」


 どうやらここでもグラスを合わせる習わしがあるようだ。


 だが異世界では高級品であるガラスコップである為、みんな恐る恐るグラスを合わせていた。



「では、貴女がセイさん達がいない間に納品してくれるのですね」


「はい。よろしくお願いしますね」


 こちらはミラン母とハーリーさんだ。


 ちなみにミランとバーンさんは2階の改築する部屋に行っている。

 酔う前に見ておきたいんだとさ。


「おいしい!お兄ちゃん、これ凄いよ!」


「うん!こっちのサクサクもおいしいよ」


 子供達の食べる姿にほっこりしながら、俺も食事を摂る。


 暫くするとバーンさんが降りてきて説明を始めた。


「扉と窓は簡単に埋めれる。ただ新たに取り付ける扉は俺じゃあ無理だから知り合いに頼むが、いいか?」


「はい。お任せします」


「わかった。明日から取り掛かるから、昼間は空けておいてくれ」


 これで改築も大丈夫だな。

 武器の棚自体も、棚ごと奪われないようにいずれビスで固定しよう。


 その日はみんなを満足させてくれた聖奈さんを労って就寝した。





「おはよう。今日はどうするんだ?」


「おはよっ!今日は冒険に行かない?」


「おはようございます。遂に魔物討伐ですね!頑張りますっ!」


 遂に俺の冒険録が始まるのか…

 まあ、一番足を引っ張りそうだけど……


「今日から3日は転移出来ないと思うんだけど、その認識で合ってる?」


「そうだな。全くその時間がないとは言えないけど、その認識でいてくれ」


 バイトさん達には、すでに新月前後の日付は連絡が取れないと伝えている。


 俺達は(俺つえぇ)希望(大活躍)を胸に家を出た。

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