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48話 計画性にも程がある。

 





 地球でのトラブルは終わり、漸く新大陸へ向けて進めるかと思ったところ……想定外の事実が発覚した。


「こればかりは予想しようもないね」

「嬉しい話です。次は私かと思っていましたが…」


 女性陣が何やら話しているが、俺は流聖から目が離せない。


「あうあうあー」

「凄いぞ!このペースなら、後半年もすれば逆立ちが出来るぞ!」


 そう。流星が掴まり立ちを覚えたんだ。

 子供の成長って早いなぁ……なんて、俺が物思いに耽っていると、聖奈から声が掛かった。


「聖くん。この調子だと、私が異世界で腰を下ろして活動出来るのがまだまだ先になっちゃうんだよ?」

「それでも、授かりものだからな。俺は嬉しいよ」

「次は女の子でしょうか?」


 そう。産後ゆっくりしていたら、なんと次子が出来たのだ。

 これにより、計画は全て先送りすることに。


「そうだね。でも、私達の寿命は短いから」

「そうだな」

「だから、私抜きで進めて欲しいの」

「えっ?だって…聖奈が一番楽しみにしていただろ?」


 俺にとっての新大陸は、仲間や家族が安心して暮らせるだけの場所だ。

 というか、それが全てでそれ以上のことは一つもない。


 しかし聖奈は違う。


 天に届くんじゃないかと思うほどの高い理想を掲げ、それを実現させる為に全てを犠牲にしてきた。

 本人にとっては犠牲ではないのだろうが、俺からしたら途轍もない犠牲を払っているように思う。


 それを自分の手ではなく、人に託すのだ。

 もちろん一年程の期間だし、口は大いに出すのだろうが。


 それでも俺は驚いた。

 あの聖奈が、と。


「ミランちゃん」

「はい。なんでしょうか?」

「新大陸で、私の代わりに陣頭指揮を執ってくれないかな?」


 聖奈の言葉にミランが目を見開く。


「それは…私に務まりますか?」

「ミランちゃん以外には任せられないの」


 そうだな。

 俺に任せたら酷いことになるからなっ!


「…わかりました。必ずや、セーナさんの望む国を」

「うん。私としては残念だけど、ミランちゃんが代わりにしてくれるなら安心して任せられるよ」


 妻同士の仲が良いことは嬉しいが、俺にもその半分で良いから信頼をくれっ!!


 これより、ミラン主導による異世界新大陸での開発が幕を開ける。











「いや!危ないから!」


 数日後。

 あの日から二人で書斎へと籠り、漸く出てきたかと思えば『新大陸に行くよー』と言われ、俺はミランと聖奈を連れて現地入りした。


 以前連れてきた作業者はそのまま新大陸に居てもらって作業の続きをしてもらっていたから、ここが無人というわけではなかった。


 だが…そうはいってもな……


「皆さん変わりなく働いてもらっています。首都の周りはセイさんのお陰で安全が保たれているという証です」

「だが、いつ強力な魔物が出るとも限らないし…」


 俺がこの地に一緒に残ると伝えたら、先の返答だった。

 流石にミランを置いてはいけない。

 作業者には対価を十分支払っているからいいが、ミランの身はお金には変えられない。


「セイさんが付きっきりだと、セーナさんと私のポリシーに反しますので」


 …ポリシーと来たか。


「じゃあ…せめて、コンとファフニールを付けさせてくれ。そうじゃない『良いですよ』……え?」


 え?アイツらは良いの?

 しかも食い気味の即答……


「私から頼もうかと思っていました。それで、お願いします」

「そ、そうか。まぁアイツらがいるなら大丈夫…かな?」


 一抹の不安は残る。

 だってアイツらポンコツだもん。


「魔物などの襲撃があれば、コンさんかファフさんの背に乗せてもらいます。問題ないですね?」

「あ、ああ。じゃあ朝送って夜迎えに来る、でいいか?」

「はい。世界間転移の兼ね合いもあるでしょうから、ここに泊まる用意もしてきたので、地球へ帰れない場合は迎えは結構です」


 ……。

 張り切っているな。

 まぁいいか。使徒というか、神獣が二匹も護衛にいるんだ。

 俺の傍以外では一番安全だろう。


 建設総司令部となっている首都予定地にあるログハウスへとミランを残し、俺はバーランドへと転移した。










「凄い活気だな」


 戻ったバーランド王城のバルコニーから見下ろした景色は『人、人、人』だった。

 元々大陸一二を争う活気を見せていた王都だが、今は通常時の比ではない。


「大陸中から集まってるからな。関所の兵士達はさぞ大変だろーぜ?」

「商人組合と冒険者組合に多額の寄付金を払っただけはあるな」


 今となっては何もない場所に国を興すことは簡単だ。

 しかし、それは陸続きであることが条件になる。強いて言えば、そこまで安全に辿り着ける街道の存在。


 それがない新大陸への進出は、弊害が多く存在する。

 その最たるものが、人を集めること。


 人がいなくては国は成り立たない。

 しかも、出来るだけ若くて元気で、さらに上昇志向を持つ者が好ましい。


 冒険者組合からは、能力が頭打ちになった者が多く参加してくれた。

 このまま冒険者を続けていても、D-Cランクが関の山。そんな者達が夢見て新大陸へと希望を出した。


 勿論新大陸という名目は伏せてある。

 寝ている虎(帝国)を目覚めさせると面倒だからだ。


 商人組合からは後ろ盾や貴族などと縁のない若者が多く集まった。

 こちらは冒険者よりもずっとシビアで、いくら商才があっても持って生まれた縁が無ければ立身出世が難しい世界なので、その未来を悲観して集まった。


 数は冒険者が圧倒しているが、早急に必要なのは力仕事に従事してくれる人達だから、その点でもこの作戦は成功したといえる。


「全く、セーナの作戦はいつも突拍子がねーな。この大陸であぶれている奴、能力を発揮しきれていない奴を全員連れて行くってきたもんだ」

「地球では勿体無い精神が美化されているからな…」


 なんか違う気もするが、まぁいいだろう。


「全部で何人くらいになる予定だ?」

「ちょっと待てよ…確かこれに…おっ。あったあった」


 俺が質問すると、ライルは手に持つ紙の束から一枚の紙を取り出した。


「えっと……冒険者が2万に商人が680に料理人見習いが500人だな。後は移住希望者が8万だ。男女比は男7で女3。平均年齢が19.5歳だぜ」

「10万以上が集まったか…それもまだ増えるんだろ?」

「そうだぜ。この数字はバーランドを除いた数だ。バーランド国民でついてくる人数はこの何倍にもなるぜ?」


 手放しで喜べないな。

 何せ、その大群を運ぶのは俺なのだから……


「運ぶだけで数ヶ月は掛かりそうだな…」

「それも計画書があるぜ。新大陸の覇者であるセイの顔見せも兼ねてるってよ」


 やはり、知らないところで色々と進んでいるな……


「明日から第一便が出るからよろしくな」

「振り分けもしてあるのか…」


 おかしいな…聖奈はここへ暫く来ていなかったはずだが?


「この計画自体は別大陸からセイ達が帰ってきた翌日には始まっていたからな。この書類もその時に渡されたぜ?」

「そんな前から……」


 聖奈の行動速度にはいつも驚かされるが、計画は新大陸があるかもしれないと情報を掴んだ時から始まっていたようだ。


 早すぎだろ……南東部にある対帝国のトラブル時からこの計画を練っていたのかよ……



 明日から始まる転移魔法乱発を知り溜息が出る前に驚きがあった、そんな一日だった。

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