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42話 要塞の完成。

 






 人間、やれば出来るもんだな。

 あれから半月の時が経ち、俺達はついに仕事を終えた。


 …つっても、俺の匙加減だから聖奈が望んだレベルで出来たかはわからんが……


「お帰りなさい!ティアさんも!お腹空いてるでしょ?沢山料理を用意したからいっぱい食べてね!」

「セーナだったか?いつも食事をありがとう。有り難く頂戴させてもらおう」

「……ただいま」


 うん。ティアって言うことが男前なんだよな。


 大陸を探索中の食事は、毎回転移で城へ取りに帰っていた。

 ティア達を連れて帰れば手間は少ないのに、何故態々その様なことをしたかというと……


 何がきっかけになって、ティアが暴れるかわからないからだ。

 魔族の習慣も常識もわからないからな。


 もしティアが素面で暴れたら、バーランド王国は地図から消えてしまうだろう。

 俺は仲間を逃すのと自分が逃げるので精一杯となる。


 …あれ?

 ディーテがティアを使徒にしてダンジョンを任せてるのって、もしかしなくとも魔界とソニーの為なのでは?


 …よし。この思考はやめよう。


「セイ。いい加減酒が欲しい」

「悪いな。世界平和の為に酒は控えてくれ」

「何故?ああ、宗教上の理由か。承知した」


 宗教上の理由なら、使徒が呑んだくれなんだから酒は全年齢OKだよ。

 勘違いでも何でもいいけど。


「その代わり報酬の酒を弾むから、ダンジョンの縄張りで愉しんでくれ」

「心得た。魔神にも頼む」

「ああ。そのつもりだよ」


 酔っ払い魔王の所為でダンジョンが壊れるかもしれないんだ。ディーテにも礼は弾むさ。


 慰労会を終えると、ティアをダンジョンへ届け、ディーテへとお礼の品も届けるのだった。









「完全に航空写真だね」


 翌日、報告も兼ねて地球にて大陸の写真を聖奈へと見せていた。

 地球へは昨夜遅くにやって来ていた。何やら見せたいものがあるらしい。


「ファフニールのお陰だな。これで地図も作れそうか?」

「そうだね。それは頼んでおくから写真のデータは預かっておくね」


 誰に頼むのかは知らないが、そういう専門家がいるようだ。

 宇宙関係の仕事をしていた人だと聞いた。その人だと、ある程度の写真があれば地図を作れるそうな。

 実際に見て来たけど俺には不可能な芸当だな。


「見せたいものって、遂に完成したのか?」

「流石にバレちゃった?そうだよ。お義母様達には明日以降の引っ越しをお願いしているから、今が自由に見れる最後の機会なの」

「そうか。姉貴達がいないなら今行くしかないな!」


 親父達は別にいい。姉と兄が居ないのならその方が俺には都合がいいのだ。


 聖奈と終始黙っていたミランを連れて、引っ越し先へと転移した。






「凄いな…」「よく一年余りでコレが建ちましたね」


 転移した瞬間に声が出た。

 別に驚愕の声じゃない。呆れているんだ。俺もミランも。


「こんなに大きな建物が必要なのか?」


 一応図面や完成予想図は見せてもらっていたが、実際目の当たりにすると呆れるほど巨大だ。

 これが家かよ、と。


「最悪はここから出なくても自給自足で暮らせるように設計してあるの。一階は・・・」



 聖奈の説明によると、一階は施設ばかりだった。

 先ずは駐車スペース。これが車50台分。

 他にはジムと体育館、図書館、医務室、プール、職員室、職員用居住区、入館管理室、などなど。


 二階は親父達の居住区と甥っ子姪っ子の保育施設、会議室、遊戯室、パーティールーム、などなど。


 三階は兄姉の居住スペースになっている。

 四階は俺達の家だな。

 屋上にはエリーの魔導具が設置してあり、自家用ヘリも用意されている。


 そして、地下室には大規模災害や核戦争に耐えられるシェルターが完備されている。



「見てても仕方ないから、とりあえず行こう?」


 聖奈の号令に従い、巨大ショピングモールのような我が家へと歩いて向かうことに。


 ちなみに周りに建物は存在せず、我が家へと近づけば否が応でもその存在は明らかとなる。

 見るからに防犯は完璧だと思えた。







「既に職員が働いていたとはな」


 新居の筈なのに他人が先に住んでいたとは、これ如何に?


「彼等の身元はしっかりと調べたし、教育(脅し)もしてあるから、裏切らないよ」

「教育のニュアンスが俺の知ってるものとは違いそうだが、流石聖奈だ」

「ふふ。働いている職員は二十人だけど、常時建物にいる職員は五人くらいだよ」


 そりゃそうか。彼等の仕事の殆どは、掃除などの建物管理と来訪者の対応くらいだからな。

 後は俺達に頼まれる日々の買い物くらいか。


「あそこが新しい団地だよ。あの奥に見えるのが新しい町内の公民館だね。その横が小学校だよ」

「当たり前だけど、全部新しいな」

「セーナさんの子供が通う学校ですか。先の話なのに何だか感慨深いですね」


 今は自分達の新居から新しい町を見下ろしているところだ。

 二千人くらいの町らしいが、もっと住んでいそうに見えた。

 ここからスーパーも本物のショッピングモールも見えるし、町としての機能は全て兼ね備えてあるように思う。


「そうだね。ミランちゃんの子供が通う学校も作らないとね?」

「はいっ!」


 ちなみに聖奈は妊娠しているが、ミランはしていない。


「屋上の魔導具の機能って、説明したっけ?」

「してないな」

「じゃあ簡単に言うね。アレは・・・」


 魔導具はバリアだった。

 使用方法は簡単。

 石板の様な魔導具に魔力を登録してあれば自由に出入り出来る。

 ただそれだけ。それだけで充分と言える。


「職員と家族しか登録していないだろう?他の人はどうやって入るんだ?」

「入る用の魔導具があるの。薄い板なんだけど、それを身体の何処かに付着させていたら、魔導具に阻害されることなく建物に入れるんだよ」

「なるほどな。ちなみに強度は?」


 車で突っ込まれたくらいで破られるなら、コンクリートで建物を覆った方が百倍マシだ。


「聖くんでも素手で壊せないよ。重機でも無理だと思うけど、一応RPGには耐えたよ」

「それなら十分だ」


 それでダメなら諦めもつく。いや、つかないか。

 しかし、可能な限りの努力だと言えるんじゃないだろうか?


「よく作れたな」

「バリアは水都のを見てたからすぐに思いついたけど、個別認証が難しかったよー」

「だろうな。良かったな。地球の人達も魔力を得ていて」


 そう。以前親父達の誘拐騒ぎの時に聖奈には教えていたが、この世界の人達も少ないけど魔力を持ち始めていた。

 魔力は人それぞれに違いがあるらしい。

 その辺りでルナ様と俺はほぼ同じだから魔力的に繋がっていても問題なく、逆に聖奈達へこの魔力チートを渡せなかった理由になるわけだ。


「うん。魔力視を偶に使ってるけど、時々ミランちゃんよりも魔力が大きな人がいて驚くよ」

「そうなのか?その内魔法使いが現れるだろうな」


 地球に魔力というエネルギーが齎されたが、その濃さはソニーの1/100以下。

 聖奈調べだと、1/100になるまでまだ10年は掛かるだろうとの見込みだ。


 それでも今まで存在しなかったエネルギーが新たに生まれたのだ。

 潜在的にエネルギー問題を抱えている地球には今のところ良い事でしかない。

 いずれソニーに併合される未来が来るとしても、かなり先の話だしな。


「回復速度も向こうの1/100だと、使えても検証出来るレベルには程遠いけどね」

「なるほどな。じゃあどう足掻いても、俺達の生きている内は、俺達の専売特許ってわけだな」


 アドバンテージは常に握っておかないとな。


「今夜にでも聞くんだよね?」

「世界樹の話ですか?」

「うん。丁度満月だし」


 新大陸の唯一の懸念。

 もしあの木が本当に世界樹で、世界の根幹を成すものであれば、対応に困る。


「そうだな。わからないから聞いておかないとな」

「ルナ様…無理しないかな」

「慈悲深きお方です。私共には想像もつかない苦労と苦悩が…」


 ないから。

 どうせ次に顕現した時に何を食べるか、何をするか悩んでいるくらいだから。



 新居で迎える最初の満月も綺麗だった。

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