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41話 世界樹とエルフ。

 





「後一月で完成するよ!」


 あれから時は経ち、地球での建設に終わりが見えた頃。


「いよいよ引っ越しだな」

「うん!地球も、こっちもね!」


 地球での安全が確保されれば、残すは本題の別大陸進出。


「それで、またお願いがあるんだけど…いいかな?」

「構わないぞ。何せ暇してるからなっ!」

「ふふっ。ごめんね?でも、次のお願いは暇じゃないから、大いに楽しんでね!」


 何だろう……鳥肌が立っているのは気のせいだよね?











「魔神からは外もダンジョンも同じだと聞いていたが…確かに同じのようだ」


 ティアと俺は別大陸へやって来ていた。

 聖奈のお願いとは、ある程度の脅威の排除と不確定要素を減らすというものだった。


 方法は知っての通り……


『魔神ディーテ様へケーキとお菓子を持ってお願いに行って来て欲しいの。一月だけ使徒をお貸しくださいって』


『もちろん二人きりじゃないよ。コンちゃんもファフちゃんも連れてね!』


『出来たら強い魔物の排除と、前回の冒険で見つけられなかったマズいモノがないかの調査をお願いねっ!』


 拙いものとは過去の文明の遺物などのこと。

 この地に住む予定の人達が勝手に見つけて勝手に悪用しないように、始めに調査しておいてくれという話だった。


 もしかしたら、爆弾やミサイルのようなものが遺っているかもしれないしな。

 意味もわからず間違って起動でもされたらたまったものじゃない。念入りに調べておこう。


 とはいっても、一人で出来ることなど高がしれているわけで、別大陸で戦力になる奴だけを集めて向かうことになった。

 人型の強者が俺だけだと心配だからと、魔王ティアも連れて行くことに。


 報酬は缶ビール1ケースだ。

 安い……

 何で俺の周りのやつは無欲なんだよ……俺も欲深くないはずなのに、目立たないじゃん。


「とりあえず俺が魔法をぶっ放すから、それでも死なずに向かって来るやつを頼みたい」

「いいだろう。ダンジョンの魔物を殺しすぎると魔神が五月蝿いからな。ここでストレスを発散させてもらうとするか」


 当たり前だろ?

 何で自分が作った魔物を仲間(部下)に殺されにゃならんのだ。

 お前はダンジョン最下層の砦なんだよ。ディーテは役割をちゃんと伝えているのか?


「大陸にあまりダメージを負わすなよ?」

「心配するな。地面が無くなれば俺も困る故な」


 アホかな?


「…なるべく広範囲を調べたいから、さっさと始めるぞ」

「心得た」

『……』『……』


 コンはビビリだから、ティアを一目見た時から一言も喋っていない。

 ファフニールは出会い頭に殺されそうになっていたので、すでに調教済みだ。


『お前、強いのか?』


 ティアによる開口一番のこのセリフに対し、ファフニールは喧嘩を買ってしまったんだ。


 俺が止めなければ、ファフニールは肉(ティアの食料)になっていたことだろう。


「『フレアボム』×10」


 ティアは喧嘩っ早いが、悪い奴ではない。

 話せばわかるが、気質が獣人寄りなだけだ。

 獣人とは違い、同族でも簡単に殺すみたいだけど……


 俺はカルチャーショックを受けつつも、魔法を連発して大陸の掃除を始めたのであった。











 ドーーーンッ


「な、なんだっ!?」


 強烈な揺れと爆音に俺は飛び起きた。

挿絵(By みてみん)

 寝起き眼に飛び込んできたのは、海に巨大な水柱が立っている光景だった。


「アイツ…何してんだ?」

『岩を投げておるのじゃ…』


 俺の呟きを拾ったのはコンだ。

 そんな俺とコンの視線の先には、海岸沿いの岩場に立っているティアの姿があった。


「何をしているんだ?五月蝿くて飛び起きたぞ…」


 そんなティアの元に転移で近づくと、そう声をかけた。


「ん?ああ。朝飯に久しぶりに魚を食べようとな」

「まさか…岩で仕留めようと?」

「ああ。だが、失敗に終わった。貧弱なアイツらは、岩に潰されて何処かに行ってしまった」


 馬鹿だろ。

 いくらダンジョン暮らしが長くても、考えたらそれが無謀だってわかんだろっ!!


「…魚料理を持ってくるから、大人しく待っていてくれ」

「そうかっ!よし。酒が飲めないから、食事くらいは楽しみがなくてはな」


 俺も飲んでねーんだよっ!!

 大体お前が飲んだらこの大陸がなくなっちゃうだろーがっ!


 俺の言葉を受け、掲げていた直径10mはある大岩を無造作に海へ投げ捨てると、ティアは野営地へと向かっていったのだった。








「セイ。あれはこの世界では普通なのだろうか?」


 半月後。特に真新しい発見はなく、森を破壊して平らな大地を量産していた俺達の視線の先には、巨大な木が鎮座していた。


 視線の先といっても、恐らく10キロ以上は離れているが。


「普通じゃないな。もしかしたら、前文明の遺物かもしれないけど、恐らくアレは人が造れるものではないだろう」

「アレは俺でも引っこ抜けないだろうな」


 何基準だよ。


「アレはもしかしたら世界樹と呼ばれるものかもしれない」

「世界樹?」

「そうだ。俺が知っているモノであれば、アレはこの世界の創造神が創ったこの世界を管理する為のモノだろう」


 大きな木はそれ一本だけで、高さがスカ◯ツリーくらいはありそうだ。

 アレを自然の物と考えるには無理がある。


「あれっ?そういえば…世界樹があるなら、奴らがいるのか?」

「奴ら?」

「ああ。世界樹を護っている設定で有名な種族だよ」


 設定?

 そんなティアの言葉を置き去りにして、俺は環境破壊を中断し、世界樹(仮)の元へと向かうのであった。








「馬鹿でかいだけで、何も見当たらないな」


 世界樹の麓まで障害などはなく、すぐに辿り着くことが出来た。

 エルフが出てくるものかと思っていたが、予想に反してトラブルはやって来なかった。


「これをどうするのだ?セイの魔法で焼き尽くすか?」

「まさか。何が起こるかわからないからな。ルナ様に話を聞けるまでは手を出す気はないな」

「魔神に聞けばいいだろう?」

「ディーテはティアの神であって俺の神じゃないからな…」


 信仰もしていないのに都合よく頼み事ばかり出来ないだろ?


 あくまでも隣人程度…よくても友人の距離感までが精々だよ。


「そうか?魔神はセイのことを気に入っているが、まあ俺が口を挟むことではないか」

「そうだ。俺達は使徒同士だから歪みあっていなければ友人だが、相手は神だ。この世界の為にもあまり不必要な手出しをさせない方がいいだろう」


 それに、俺達がルナ様を頼るのは良い。

 だけど、頼める神がいるのに別の神を頼れば、それも不義理な気がするんだよな。


 基本人の世のことは人がやらなきゃな。

 今回の世界樹(仮)については、世界の根幹に抵触しそうだからお伺いを立てるけど。


「そうか。では、どうする?」

「ここはそのままにする。迂回する形をとって、後半月で元の港に戻れるように進もう」

「わかった」


 ここは大陸北東部に位置する。

 ここから大陸中部を開墾(破壊)して、大陸南東部を通ってスタート地点の港を目指すことに決めた。


 他の土地の開墾(森林破壊)はここに進出してからでいいだろう。


「よし。コン。大きくなれ」

『わ、わかったのじゃ』


 ティアの指示で大きくなったコンの背に、ティアが飛び乗った。

 地上はティアに任せ、俺はファフニールの背に乗り優雅な空の旅が再び始まった。


 目指すは冒険者達が造った拠点(スタート地点の海辺)。

 後半月の冒険で下準備は終わる。



 視界に広がる緑の大地を見下ろし、本当に終わるのか不安になるのだった。

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