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3話 輸入品購入。

 





 半ば立場が逆転してしまったが、俺の思い違いかもしれない。

 頼む。買い取ると言ってくれ!


「わかりました!重さを量る道具を持って来ますので暫しお待ちを」


 よっしゃあ!

 心の中で叫んでしまった。

 だが仕方ない。ここで売れないと俺には後がないからな。


 暫くすると天秤のような物を持って職員が戻ってきた。


「では、量らせていただきます」


 やはり天秤だったようで重さを量り終えた職員は


「砂糖が一キロですね。こちらは白砂糖ですよね?ここまで白い物を私は初めて見ましたよ」


「そうですね。白砂糖になります。

 他にもあるのですが買取をお願いできますか?」


 職員は身を乗り出してこちらを伺ってきた。


「まさか!?他にも砂糖が?!」


「いえ。こちらは別のものになります」


 職員にそう告げて俺は胡椒が入った壺をテーブルに置いた。


「これは…胡椒ですね」


 あれ?反応悪いな。もしかしてありきたりなのか、品が悪いのか…


「素晴らしい胡椒ですね。ここまで細かく、そして茶色一色で混ざり物が無いですね。

 こちらも高く買い取らせてもらいます」


 そう言うと嬉々として秤に掛けた。

 くそっ!砂糖の時と反応が違うから焦ったやないか!


「良かった。お願いしますね」




 暫く待つと査定金額が出る。


「砂糖は一キロで70,000ギルになります。普通の砂糖であれば一キロ10,000ギル程ですが、こちらは白砂糖ですからね」


「あのー無学で申し訳ないですが、普通の砂糖との違いを聞いてもいいでしょうか?」


 俺は気になったので聞いてみる事にした。


「ご存知の通り普通の砂糖は茶色ですね。私も色違いの原理は知りませんが少し雑味、クセがあります。こちらの白砂糖は見たこともないくらい粒が揃っていてサラサラです。何分見るのが初めてなので聞いた話しですが、白砂糖は貴族様専用の品と言われていますね。

 他国ではあるところにはあると聞いているくらいです。この国ではほとんどないのが現状ですね。

 ですので値段がお高いのです。

 どちらで入手されたのかは聞きませんが、無闇矢鱈に見せてはダメですよ」


「ご禁制の品とかでは無いですよね?」


 いきなり捕まるのは嫌なので一応聞いておいた。


「いえいえ。それでしたらウチは買い取れないですよ。

 次に胡椒ですが、こちらは300グラム、20,000ギルで買い取ります。

 入れ物の壺もしっかりしていますので一つ3,000ギルで買い取らせていただきます」


 貨幣価値がわからない為、頷くしか無い。


「わかりました。それでお願いします」


「では登録料を引いた89,000ギルになります。登録用紙と買取料を持って来ますのでお待ちください」


 砂糖70,000と壺二つ、胡椒20,000と壺一つで99,000か。これで相場が円の10分の1とかだと辛いな…

 そんな事を考えていると職員が戻ってきた。


「登録用紙にお名前と年齢、血判をお願いします」


「血判?親指を切る奴ですか?」


「いえいえ、こちらに親指を押さえていただくと、勝手に針が刺しますので痛みはほとんどないですよ」


 血判と聞いてビビったがそんな道具があるのか…




「はい。結構です。セイさんですね。私は商人組合の職員でハーリーと言います。これからもよろしくお願いします。こちらが89,000ギルになります」


 良かった。文字もしっかり通じたな。日本語のつもりで書いても、勝手にこの世界の文字になるのは気持ち悪いけど…


 渡されたのは小ぶりな金貨?1枚と大きめの銀貨3枚、その半分くらいのサイズの銀貨1枚と小ぶりな銀貨4枚だった。


「ええ。ではまた砂糖と胡椒を持って来ます」


「わかりました。胡椒に関しては料理屋に卸したり個人向け商店でも小分けして売るでしょうから、いくらでも買い取ります。

 私達も白砂糖の入手先であるセイさんの事は秘密にしますが、高価で希少品ですのであまりばら撒かれますと貴族や豪商、最悪はマフィアなどに目をつけられるかもしれません。

 そこはお気をつけください」


「わかりました。ありがとうございました」





 平静を装って商人組合を出たがやばい…

 バレたら異世界貿易どころか異世界生活が終わってしまう?

 いやいや、もう少し砂糖を売らないと地球での生活が破綻するぞ!


 とりあえず地球での生活の為に仕入れをしよう!

 何が売れるかわからないから物価の差が大きそうな物を探すしかないな。

 とりあえず貨幣価値を調べるぞ!


 一先ず俺は、ここでの生活に必要なモノの値段を調べる事にし、まずは食べ物を調べる為に市場へと向かった。


「いらっしゃい!ん?なんださっきの冷やかしのにいちゃんか」


「先程は邪魔をして済みませんでした。おすすめの果物をください」


 朝、商人組合の事を聞いたおっさんの店にきた。ここで買い物をすれば、悪い印象も無くなるし物価もわかるからな。


「お客なら大歓迎だ。うちの主力はリンゴだな。

 一つ100ギルだ。どうだ?」


「二つ下さい」


 俺はそう言うとドキドキしながら小ぶりな銀貨を一枚渡した。


「200ギルだから…800ギルのお釣りだ。

 十分熟れているからいつでも食べれるぞ」


 おっさんはリンゴと銅貨を8枚渡してきた。


「ありがとうございます」


 受け取った俺はお礼を言ってその場を後にした。




シャリ


 商人組合と市場の間にある広場のベンチに腰を下ろし、リンゴと呼ばれていたどうみても地球のリンゴを頬張った。


「中々うまいな。地球の物とそこまで変わらないかな。という事は、地球の物と同じで品種改良されてるのか?」


 異世界リンゴは元々美味いのかそれとも品種改良されているのか?というどうでもいい事を考えながら、リンゴを食べ終わった俺は貨幣を並べた。


 銅貨は一枚100ギルだな。という事は小銀貨1,000ギル、銀貨5,000ギル、大銀貨10,000ギル、小金貨50,000ギルということか?

 まぁこっちも十進法ならだいたい合っているだろう。

 それよりもだ。


 月の神(ルナ)ってのがくれた翻訳の能力はどうなっているんだ?

 同じリンゴがあるのはいい。だが固有名詞まで同じな訳ないよな?それも翻訳の範囲なのか?

 後は単位だな。通貨の名称こそ円とギルで違うけど、キロが地球と全く同じと言うのはあり得んだろ…1グラムの定義が地球と同じなわけないよな。

 馬鹿な俺にはかなりありがたい翻訳の能力(ちから)だな。


 異世界貿易が成功したらお供物でもするか。


 リンゴが同じくらいの価値観なら1ギル≒1円くらいだろうか。

 安直だが分かりやすいし問題が出るまではこの認識でいこう。


 日が高くなった事で店も開いている。次は地球で売る物だな。




「いらっしゃいませ。こちらはかの名工が彫った木彫りになります。プレゼントにおすすめですよ」


 俺は工芸品の店に来ていた。服は無理だし、食べ物は出どころ不明だと売れる訳ない。

 と、言う事でハンドメイド商品に目をつけてこの店にやってきたのだ。


「もう少しリーズナブルな品はないですか?」


 よくわからん木彫りに50,000ギルも出せるかっ!


「こちらは無名の方ですが丁寧な作りですよ」


 俺には名工の作った物と無名の作った物の差はわからなかったが、値段が安かったのでいくつか買った。


「銀細工とかはありませんか?」


 お金を払いながら店員に聞いた。


「三つ隣の店が扱っています。ありがとうございました」


 無駄な買い物にならないといいが…売れるのか?

 一先ず本命の銀細工屋に行くか。




「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」


 銀細工屋に入った俺に、おそらく10代の可愛らしい感じの店員が話しかけてきた。

 あまり見た目について思わない俺だが、やはり異世界は美形が多いな…見た目で浮いてないといいけど。


「ああ。そんな感じかな?数が欲しいからあまり高価な品は無理だけど…予算は50,000ギルで10個程見繕って欲しい。無理かな?」


「大丈夫ですよ!ではこちらが大体5,000ギルのものになります。

 この中からお選びください」


 見せられても商品の良し悪しなどわかるわけもなく


「任せてもいいかな?」


「はい!」


 それから10分程かけて説明付きで選んでもらい、金を払って店を後にした。





 その後、革製品の店でいくつか入れ物を買うが地球と財布の規格が違って肩透かしだった。他にも何かないかと街をブラつくが目ぼしい商材は見つからなかった。

 仕方なく宿を取る事にした俺は、宿と値段をリサーチしてから向かう事にした。


 残金

 89,000-200-8,000-49,500-12,000=19,300ギル

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