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28話 中生代

 





「見えたっ!見えたよっ!」


 幼児聖奈はテンション高く指をさした。

 その方角には、地平線…いや、薄っすらとだが水平線が見えた。

 あれから二日。

 一応探索の意味も込めて、ファフニールにはゆっくりと飛んでもらっていたが、やはり真新しい発見はなかった。


 そして、ファフニールの言っていたように、二日目にして海へと辿り着いたんだ。


 この二日、ファフニールには悪いが、俺達は地球で寝て過ごし、ファフニールは転移魔法を使い山へと帰し、そこで寝てもらっていた。


 コンもそうだが、使徒とはいえ、異世界転移に耐えられるというものでもないらしい。

 まぁコンは兎も角トカゲは目立つから、出来たとしても連れては帰れないが。


「大自然だな…」


 いや、元々大自然しかなかったよ?でも、語彙力が無いんだ。察してくれ。


「結局何も見つけられませんでしたね」

「そうだ……いや、それだとファフニールが…」


 ミランの言葉に納得仕掛けたが、それだとあんまりだ。

 こんなにも便利な仲間が増えたのだから、決して無駄では無かったのだよ。うん。


「そういえば…ファフニール。ファフニールは海竜について何か知っているのか?」

『む。その名は聞いた事がある。しかし、実際に見たことはないな。聞いたと言っても、余のダンジョンに人が来ていた頃の話だしのぅ』


 つまり、役立たずってことだなっ!

 というか同じ竜でも知らないんだな。


「聖奈。どうする?」


 目的地の一つであった東海岸には出られた。

 その上空でファフニールは指示待ちの為にホバリングしている。

 この後どうするのかを、考えがありそうな者に聞いてみた。


「とりあえず魔力歪みの壁があるから、西海岸は放置出来るね。よって、この大陸に進出する為には、東海岸にいい場所を見つけないとダメだから、その探索かな?」

「じゃあ、明日からはその探索をしよう。今日はどうする?」

「セイくんは船を持ってきてくれるかな?そうすればファフちゃんも一緒にいられるし、どうせ明日からは船で元の大陸を目指さないといけないしね」


 ん?ファフニールに乗って、元の大陸に帰らないのか?


「海図を作る為ですか?」

「うん。こっちに引っ越した後、元の大陸に干渉しないって言ったけど、交流は出来たらしたいからね!」


 なるほどな……

 俺達が死んだ後、こっちの進んだ文明で元の大陸に向かえば、侵略戦争が起こってしまうだろう。

 人とはそんなものだし。


 それを起こさない為にも、初めから国交を結んでおけば、俺達亡き後でも、下手なことは起こりづらいからな。


「交流さえしていれば…時間ができた時に異世界美少女と……へっへっへっ…」


 ……私利私欲かよ……

 ミランが甲斐甲斐しく聖奈の涎を拭き、ルナ様はドン引きしていた。


 鼻血を出しそうな聖奈をミランに預け、月が出たので、俺は一人地球へと転移していった。








「ここは良いね!」


 翌日。船を魔物がいない海域に放置して、ファフニールの背に乗り東海岸を巡っていた。

 遥か下の東海岸は三日月型の湾になっており、湾内は波が穏やかでかなりの広さがあった。


「ここなら港町として、元々の地形を活かした大きな貿易拠点になるよ!」


 街づくりシミュレーションゲームかな?

 俺は苦手だからしていないが、聖奈は好きそうだ。


 だが、これはゲームではない。

 生きた人というのは、時として不条理な動きを見せる。

 普通はそういった者達のイレギュラーも考えないといけないのだが、聖奈は考える必要がないと考えている。


 理由は、そんな人達には俺やファフニールといった抑止力があるからだ。


 歪んだ流れは、俺達のような強者を使い、真っ直ぐ叩き直す。


 それがこれまでの俺達のやり方で、恐らくこれからもその方針なのだろう。


 バーランド王国も初めは力で押さえ付けた。今は暮らしやすさと便利さ安全性を兼ね備えているから、俺という抑止力は必要なくなっている。


 そんな抑止力が不必要になるまで、王国でも何年と掛かった。

 聖奈が目指す大陸作りはもっと壮大で長大な計画だろう。

 少なくとも、俺の寿命よりも。


 場所は見つかった。

 後は無事に帰り、この長い遠足を終わらせるだけとなった。







「よーし!出発進こーう!!」


 幼女聖奈の掛け声と共に、船は東へと進んでいく。

 初めての船に身体を小さくしたファフニールは落ち着きなくウロウロとしているが、放っておこう。長旅になるからその内慣れるだろう。


「このまま真っ直ぐ東でいいか?」

「そうだね。海流もあるからその辺りも海図に書き込むけど、行かないことにはわからないからね」


 海流もあるし、海竜も…ププッ。

 口に出したら絶対バカにされるからやめておこう。


「元の大陸に着くまでは、どれくらい掛かると思う?」

「全然見当もつかないよ。もしかしたら、大きな他の大陸がまだあるかもしれないし、無くてもこっち側の方が離れているかもしれないしね」

「そりゃそうか」


 世界地図も無けりゃ衛星写真もない。さらには海図も。

 この世界も地球と同じ物理法則が適用されていれば、世界の大きさは計算できるだろうが、そんな計算はしたくはない。それをするくらいなら、ミランとゲームをする時間に充てたいな。


 最近は色々やる事が多くて、構ってやれていないからな。


「セイくんは船の操縦と海竜を見つける事に専念していてね」

「わかってる。船を壊されでもしたら大損害だからな」


 何せ何億もしたんだからっ!

 海竜がどんなものかは知らないが、当たっただけでも沈没しそうだしな。ソナーでも魔力波でも、しっかりと索敵はしておかないと。







 東へと真っ直ぐ進む航海は、予想よりも順調に進んでいた。

 途中で東へと向かう海流にも乗れたし、大きな岩礁などもなかった。

 ファフニールはこれまでずっと一人きりで寝ていたから、船でも同じように静かに過ごしてくれていたしな。

 何も問題はない。


「穏やかだねぇ」

「そうだな。ゆっくり釣りでもしたいが、それはまた次の機会だな」


 そう言う奴は結局しないんだよな……

 次の機会次の機会と言ってる間に、そんな気が起きなくなる。

 まぁ今は時間がないのは本当だから仕方ないが。


「今は半分くらいまで来てるよね?」

「その予定だ。この世界の広さがわからないことには正確な事はいえないけどな」


 最初の航海の時の半分くらいの距離は近づけている。

 西回りと東回りの距離が同じくらいだと仮定したならば、残すは半分なんだけど、そう上手くはいかないだろう……


 この世界は人が生きるには厳しいからな。




 そこからさらに一日後。

 俺達の視線の先には、知らない大陸が存在していた。


「アレは中央大陸じゃないよね?」

「だろうな…」


挿絵(By みてみん)


 だって明らかに活火山があるからな。

 中央大陸にもあるかも知れないが、俺は聞いた事がない。

 しかも……


「何か飛んでますね」

「どう見ても鳥じゃないな」

「ジュ◯シックパークかな?」


 島なのか大陸なのかわからないが、噴煙を上げる活火山があり、恐竜のようなモノが空を飛び回っているのが見受けられた。


「とりあえず転移してみる。みんなはここで待っていてくれ」

「うん。ファフちゃんに乗っていく手もあるけど、それが良さそうだね」

「わかりました。お気をつけて」


 あれだけ空飛ぶ何かがいるんだ。ファフニールに乗っていくと、あっという間に乱戦になってしまうだろう。


 俺は二人に船を任せ、見えている岸に向けて転移魔法を発動させた。




『ギャォォ』『ガァァッ』

「…完全にジュラ期にタイムスリップしたな」


 島には夏の蝉のように、怪物達の鳴き声が木霊していた。

 魔力波を飛ばして確認すると、やはり皆魔力を持っているようで、恐竜とは似て非なる存在のようだ。


「とりあえず進んでみよう。もしかしたら人が住んでいるかもしれないからな」


 森というよりはジャングルと化している森林地帯に向けて、俺は慎重に歩き始めた。

 待っているのは何なのか。


「これが俺の望んだ旅」


 だと良いな……

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