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6話 神獣の本領。

 





「予定日は一月後、予選は王都近郊を使い、決勝トーナメントはオークション会場を押さえた。よいか?」


 共王との話し合いはスムーズに進み、日程の話まできていた。


「それは僥倖。一ついいか?」


「なんだ?」


「出場者枠を俺と後二人分抑えて欲しい」


 飛び入り参加でもいいが、初めから素性がわかっていた方が気が楽だしな。


「その二人も、バーランド王と同じく強者なのだろうか?」


「ああ。一人は俺の元師匠で、もう一人はその嫁さんだ」


「なんと…わかった。では三人分、共王推薦者枠として本戦からの出場としよう」


 推薦者枠?

 なんかしらんが、早く終わるならそれに越した事はないな。


「つまり、俺達はオークション会場からスタートってことか?」


「そうだ。私の推薦者なのだから当然だな」


「助かるよ。じゃあ決勝トーナメントで会おう」


「うむ。期待しておるぞ」


 俺の得意分野は魔法だからねっ!?まぁ負ける気は微塵もないけど。

 よし。無様な戦いは出来ないから、修行すっか!!
















「えっ!?一緒に鍛錬しないっ!?」


 話がついた俺は、城にミランを送り、その足で水都まで来たんだが……

 リリーと爺さんに断られてしまった。


「当たり前じゃろ?なんで目下目標の相手と練習すると思うたんじゃ?阿呆じゃろ……」


「ビクトール様と同じく。私達も別々に鍛錬するから条件は同じだ。失望させるなよ?」


「失望って……まぁわかった。俺は俺で鍛えるよ。二人は予選が終わる頃に迎えに行くから。恐らく一月後から始まるからプラス二週間後ってところかな」


 何せアーメッド共王国は人口多い上に、参加率も高いだろうからな。

 予選がクソ長いって共王も言っていたし。


「わかったのじゃ。楽しみにしておるでのぅ」


「セイ。その間の店の護衛だが…」


「それは手配しておく。二人は強くなる事だけを考えておいてくれ。俺もそうするし」


 別にこの二人に勝つのが目標じゃないけど、負けたらなんかムカつくから、絶対に勝ちに行くけど。

 だからこそ、同じ条件でな。


 俺はアテが外れた事で、城へと戻っていった。















「強者…ですか?」


 一人ではいい案が思い浮かばなかった俺は、早速ミラン先生に相談した。


「ああ。アテにしていた爺さん達に断られてな。ライルは素手での戦闘に向いていないし、誰かいないもんかと」


「うーーん。そうですね。あの方はどうでしょう?」


「あの方?」


 さすミラ。すぐに答えをくれた。





『良いのじゃ。妾の強さに慄くが良い』


 ミランが選んだ相手は、ほっぺたに生クリームを付けて、惰眠を貪っていた駄犬だった。


「身体強化以外の魔法なしって伝える前はビビっていたくせに……」


『な、何のことじゃ!?神獣であるコン様に恐れるものなどないわっ!!』


 恐れないモノの方が少ないよ、チミ。


「まぁ何でも良い。被害が出たらアホらしいから、ダンジョンに行くぞ」


『良くはないが……わかったのじゃ。運ぶがいい』


 何で偉そうなんだよ。

 手伝っているから?なんか解せんが……


 俺は渋々ダンジョンへと転移した。
















「久しぶりだな」


 やって来たのはロックタートルが出てくる第六層の岩場。

 決勝の舞台と同じくらいの広さの場所を探し、そこでポツリと呟いた。


『ここが他の神の使いのテリトリー…何だか不思議な感じなのじゃ』


「コンもそう思うか?実は俺も何か不思議な感覚があるんだが、他の仲間に言っても気のせいだって言われたんだよな」


『恐らく神の使い同士にしかわからぬ感覚なのじゃなろうな。それよりも本当にいいのかえ?』


 使徒同士にしか分かり合えないってやつか。


「当たり前だろ?手加減しようモノなら、アリの巣にぶち込んでやるからな」


『ヒェッ!?わ、わかったのじゃっ!!全力で戦うのじゃ!!』


 コンはこう見えて殺生には向かない。

 もし、俺を傷つけたらと甘いことをいっているが、千年も引きこもっていたフィジカルお化けなんかには負けるつもりはない。


「さあ。掛かってこい」


「キシャーーッ!!」


 身体強化をマックスで使ったビビリな俺は、食い殺さんばかりに威嚇するフェンリルをさらに挑発した。
















「大丈夫…ですか?」


 修行が終わり城へと戻ると、手当てをしてくれているミランが心配そうに声をかけてきた。


「イテテ……染みるな…」


「コンさんは無傷なのです!!可愛いは正義なのですっ!!」


「エリー。戦っていた時のコンは可愛さのかけらも無かったぞ?」


 そう。俺はコンに勝てなかった。

 正確には、俺の方が攻撃を当てていて、コンの攻撃は一度も当たってはいない。

 なのに何故負けたのか……


『妾は最強の神獣じゃからのぅっ!かっかっかっ!!』


「いや、卑怯だろ。何だよその毛皮!フルパワーで殴ってもうんともすんとも言わないって!!」


『戦いに卑怯もクソもないのじゃ。あるのは勝者と敗者のみ』


 うん。攻撃が当たらなくて『なんでじゃーーっ』って駄々こねてた奴のセリフとは思えんな。


「プラス、何だよその攻撃。避けたのに喰らうって魔法と変わんねーじゃん!!」


『魔法じゃないぞえ?妾も何故か知らぬが、爪撃が飛ぶんじゃ』


 くっそ意味不明な攻撃しやがって!!

 お陰で、避けたのに擦り傷だらけだぞっ!!


「でもよ。セイがダメージ負ったのって初めてじゃねーか?」


「…確かに。いや、鍛錬では爺さんからもダメージは受けていたな」


 コイツが初めてなのはムカつくから、記憶を総動員してやったぜっ!!

 何の自慢にもならんが…


「どちらにせよ、セイさんの修行にはなりそうですね」


「悔しいが、そうだ。攻撃力もさることながら、コンの速さはかなり驚異だ。一番はその出鱈目な防御力だがな」


『かっかっかっ!褒め称えるのじゃっ!!』


 うぜぇ……フレアボム叩き込んだるぞ?


 こうして俺は、修行相手を見つけた。















「演説の日程が決まった」


 翌る日、エンガードの王城にお邪魔した俺は、アンダーソン王太子から報告を受けていた。


「おお。早いな!」


「セイからの頼みだからな。それよりも……大丈夫なのか?」


「…これか?問題無いから、出来れば触れないでくれ」


 なんせ包帯ぐるぐる巻きだからな…

 見た目より傷は浅いんだ。なんせ戦っている最中には、血が止まったからな。

 これもルナ様のお陰かもしれない。


「そ、そうか。なら聞くまい。日程だが・・・・」


 気まずそうに話す内容はいずれも問題なかった。


「わかった。その予定で街を回らせてもらう」


「うむ。私もその時にはその場にいられる様にするから、何か問題があれば教えて欲しい」


「それは有難いが、地方へは俺が送ろうか?」


 何せ、国中の大きな街を回るんだ。馬車移動は大変だろうし、過去にはその馬車移動で死にかけていたからな。


「いや、それには及ばん。国を見てまわるのも、王族の勤め。いい機会だと陛下も仰られていた」


「…相変わらず意識高いな。何処かの呑んだくれ国王に見習わせたいものだ」


「?それは自身の事か?」


 馬鹿っ!!違うわいっ!!

 ……いや、あながち間違ってないか。


「いや、こっちの話だ。じゃあ当日はよろしくな。観衆に配る物資はその時運ぶから、置く場所を空けて指示してくれ」


「うむ。セーナの演説を楽しみにしていると伝えておいてくれ」


「ははっ。程々にしとけって、言っておくよ」


 アンダーソンはセーナが好きだよな。お互い結婚しているから異性としてって事ではなく、面倒見の良い近所の憧れのお姉さんって感じだけど。

 その憧れは間違っているが、若者の夢を態々壊す事はないしな。


「?」


 アンダーソンは知らないから疑問顔だな……世の中には知らない方が幸せな事が沢山あるのだよ…


 そんな事があり、俺は約束の日を迎えた。

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