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3話 鴨葱鍋。

 





「ふむ。バーランド王の要望は分かった」


 昼、アーメッド共王国へとやってきた俺達は、共王へ要望を伝えた。


「もちろん王都に教会を建てたりするのはかまわないが…そういうことではないのだろう?」


「ああ。ウチの国教でもあるルナ教は、お布施を集めているわけじゃないからな。教会を他国で作っても維持費や管理の問題が出てきてしまう」


 俺達はただ布教したいだけということを全面に出し、共王へと訴えた。


「その上で国が先導して布教してほしいのです」


「…それは出来ん。費用も莫大な額がかかるであろうし、国民がどの神を信仰するのかを強制することは出来ないからな」


「はい。重々承知しています。ですのでアーメッド共王様には他の方法でご協力して欲しいのです」


 俺は知らないミランと聖奈の作戦を、アーメッド共王に伝える。

 ・

 ・

 ・

「確かにそのやり方であれば、我が国にもメリットはあるな…」


「はい。ですので是非前向きにご検討頂ければと思います」


 説明を終えた後、二人はそう言葉を交わした。

 俺はただ聞いていただけだが、その話の中心…というか、要は完全に俺だった。

 聞いていないんですが?


「わかった。五日で結論を出す故、また来て欲しい」


「はい。では五日後にお伺いします」


 俺がいなくとも話は終わる。

 俺が必要なのかって疑問に思うだろう?

 俺はミランの送り迎えに必要なんだよっ!!わかったかっ!!


 アーメッド共王国では話が纏まったので、俺達は帰ることになった。

 仲間にも報告しないとな。







 という訳で、聖奈はいないが報告会だ。


「どうやって共王を説得したんだ?」


 話が纏まったと伝えたら、ライルが興味を示した。

 確かに国として協力してもらうんだからな。向こうにメリットがないと話にならない。


「簡単です。武闘会を開くと伝えたのです。それも費用はこちら持ちで」


「武闘会?」


「はい。アーメッド共王国に住まう方の殆どは強者に従います。それもただ強い者を見たいだけではなく、自分達も戦いたいのです。じゃあ戦ってもらおうと、私達は考えました」


 私達の中に俺は入っていないぞ!ライル!こっちを見るなっ!

 見ても何も知らんっ!


「共王には共王国中に布告を出してもらいます。内容は王都で武闘会なる素手での強者を決める大会を開くというもの。セイさんにはそれに出場してもらい、優勝してもらいます。そしてその場で、強さの根源はルナ様を信奉しているからだと伝えるのです」


「そんな事で本当に信者が増えるのかよ?」


「ライルさんはあまり知らないと思いますが、アーメッド共王国とはそんな国なのです」


 全員が全員、戦闘狂というわけではないんだがな。だけど、戦いを生業としない獣人ですら強者に憧れている。

 そういう性質の国なのは間違いないな。


「セイが負けたら…?」


「搦め手以外でセイさんが負けることは先ずあり得ないと思いますが、もしそうなれば表彰式で魔法のデモンストレーションをしてもらうつもりです」


 かっこわる!?

 負けたくせに国王だからとしゃしゃり出て、優勝者より目立つのかよ……

 こりゃ負けられねーぜっ!!


 俺が変な方向にやる気を漲らせて、その日の活動は終わった。

 この時、エリーに変な目で見られていたのは秘密だ!

 エリー!無駄な洞察力を発揮するんじゃないっ!













 翌日、アーメッド共王国にはもちろん行かないが、何もしないわけでもない。


「成程。話はわかった。大恩あるバーランド王の頼みである。エンガード王国は協力を惜しまない。アンダーソン王太子を補佐につける故、そのように進めてくれ」


「ありがとうございます」


「エンガード王と王国に感謝する」


 この国は貴族の権威が強いから難しいかと思ったが…バーランドの件と帝国戦の件を未だに感謝してくれているんだな。

 有難いことだ。




「バーランド王。ご壮健なようでなによりです」


 許可を得た俺は懐かしい城の中を侍女に案内され、アンダーソン王太子の執務室へと訪れていた。


「アンダーソン王太子。今は公の場ではないから言葉を崩して欲しい。元気そうで何よりだ」


「ご無沙汰しています。書簡の内容はすでに?」


「ああ。父上と確認した。だが、確認の為にもう一時教えてくれないか?」


 元々利発そうな子だったが、時が経ち今は立派な青年へと成長している。

 流石弟。バーランドの面影もしっかりと受け継いでいるな。


「はい。陛下が頼んだルナ教の布教ですが、エンガード王国には布教の場を与えてもらいます。

 王都、副都、またそれに続く街数カ所に人を集めて欲しいのです。

 布教演説の参加者には、砂糖等を配らせてもらいますが、ルナ教は制約がない宗教です。

 エンガード王国に不利益がない事をお約束します」


「セイ達のする事だ。それは心配しておらぬ。それよりも…貴族達を黙らせる為に、要らぬ出費をさせてしまい済まないと思っている」


「それは気にしないでくれ。俺達の要求を通すための必要経費だ」


 エンガード王国の貴族家には、それぞれ地球産の洋服を贈る予定だ。

 当主には燕尾服を、夫人にはドレスを贈る事になっている。


 普通であれば、別の国家の宗教を内部に入れることなどあり得ない。

 これが可能になっているのは、仲がいいから…ってのは冗談で、元々バーランド王国が北西部の覇権を握れるほど強いのに、それをしていない事が大きかった。

 貴族達が断る理由で最大の『あの国に乗っ取られる』を言わせないって事だな。

 それ以外の断り文句なんて、贈り物でチョチョイのチョイよ。(死語)


「…兄上が存命であれば、この話を遠巻きに聞けたのかもしれぬな。セイが相手であればさぞ愉快な兄上が……。いや、すまぬ。栓なきことを言ってしまったな」


「いや、俺もそれを想像しない日はないよ。でもな。アンダーソンにはアンダーソンのやり方や想いがある。

 別にバーランドならって考える必要はないと思うぞ。

 むしろバーランドは自由な奴だったからな…アンダーソンの方が国民に寄り添える為政者には向いていると思う」


 友や仲間としてはバーランドは素晴らしい人格者だけど、為政者にはアンダーソンの方が明らかに向いている。

 アンダーソンに足りないのは自信かな。

 バーランドの亡霊に囚われず、思った通りにやってもらいたいものだ。


「私は二番手向きだからな。セイや兄上みたいな人の上に立つ器ではない。

 もちろんこれは卑下しているわけではなく、それを理解して、受け入れることで、また私も上に立てれるのだと思っている」


 うん……難しく考えすぎやん…

 俺達は好きなことをしてるだけだよ?

 まぁバーランドはその中でも俺とは違い優秀だったけど。


「変な話になったな。では、その様に手配しよう」


「よろしく」「よろしくお願いします」


 時々顔を出そう。うん。その方がバーランドが喜ぶ気がする。









「って、感じになったぞ」


 いつもの報告会。月が出たおかげで聖奈も参加している。俺は今日あった出来事と、聖奈が知らないであろう出来事を報告した。


「順調そうでなによりだよ。私の方も忙しいけど順調だよ」


「それは良かったです。後はセイさんが武闘会で優勝するだけですね!これでルナ様が……」


 うん。ミランさん。なんかやばいくらい嵌ってるね……

 まぁホンモノの神様と会話したんだ。元々そういったモノとの距離が近い、この世界で育ったミランなら仕方ないか。


「聖奈は何をしてたんだ?」


「編集したDVDをばら撒いていたんだよ。ネットに上げるだけだと、信憑性が下がっちゃうし、偽者も出てきちゃうだろうからね」


 所謂公式動画って奴か。


「それでね。漸く鴨がネギを背負ってきたんだよ」


 うん。よくわからんけど、詐欺集団の会話に聞こえるからやめよ?

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