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98話 旧友との再会。

 





「セイさんって凄腕の冒険者で、大商会の会頭だっただけじゃなく、国まで持っていたんですね…国王様って聞いてから、どう接すればいいのかわからなくて…」


 街を出て、急に態度が変わった理由をこっそり聞いたが、そんなことか…

 いや、普通の人からすればそんな事ではないか。


「王様って言っても内政なんか何も知らないけどな。エミリーはバーランド王国に来るって聞いたけど、何故オーケーしたんだ?」


「…セイさんに迷惑を掛けたじゃないですか。その恩返しが出来るチャンスがあるって聞けば、飛びつきますよ。ミランさんはヘレンさんも誘ったみたいですが、子供がいるから来れなかったみたいですね」


 ヘレン…ああ。合法ロリさんか。子持ちだと急にはこれないよな。いや、幸せなら来なくていいんだが…

 恩なんか感じなくていいし。あれもこれも全部気まぐれだからな。


「なるほどな…まぁ、俺のことはあまり気にしないでくれ」


 うーーん。聖奈がなんで人を集めているのかはわかるが…その人選が俺の気に入った奴らってのがな…

 まぁ裏切る可能性が低いからだろうが。


「ここならいいのではないでしょうか?」


「ん?ああ。誰もいないし、いいんじゃないか」


「!?」


 俺とミランの会話を聞いて、エミリーが身を硬くする。うん。知らない人が聞いたら何かされるって思うよな…


「エミリーさんはセイさんの魔法を見た事がありますよね?」


「え、えぇ。まさか…私を魔法で!?」


「いや、違う」


 うん。訂正は迅速に。


「セイさんは大魔法使いなので、魔法で国に移動する事が出来ます。これからその魔法でバーランド王国に行くので、セイさんの肩に触れて少し待ってください」


「そんな事が…セイさんなら出来てもおかしくはない、か…」


 ご納得頂けたようで、俺は詠唱に入った。


「『テレポート』」


 領都から国境まで続いている道。その道を脇に逸れた人っ子一人いないところから、我が家へと転移した。








「獣耳ね。これがセイくんの趣味かぁ…付け耳用意しないとね」


 城に戻った俺は早速聖奈にエミリーを紹介した。

 放っておくと、俺を仲間外れにミランが一人で聖奈に報告をして、有る事無い事吹き込まれたらたまったものじゃないからなっ!!


 エミリーは綺麗で獣耳も似合っているが、聖奈のタイプではない。

 良かったな。この魔王に気に入られると後が大変だからなっ!


「付け耳の件は…まぁ好きにしてくれ」


 聖奈の付け耳を想像したら断れず、恥を忍んでそう告げた。

 良いんだ。夫婦だから。


「それよりも、聖奈は信用できる…裏切らない人を集めているのだろう?」


「そうだよ。流石にわかっちゃったかぁ…」


 何でそこで残念がるんだよ…普通は言わなくとも理解されたら嬉しいものだろうがっ!


「それで一つアテがあるんだが…」


「美少女なのね。いいよ!許すっ!」


「ちゃうから。そもそも男だから」


 許すなよ。旦那だぞ?一応。


「そいつらはぼっちじゃないんだ。それに恩もないし、そもそも来てくれるかもわからん。それでもいいか?」


「いいよ。セイくんがしたいようにするのに反対する訳ないじゃん。ね?」


「そうです。それに男性は歓迎です。その方々がもし、実は女性だったとかなら殺していいですよね?」


 だめです…そもそもアイツらがあの見た目で…いや、一人怪しい奴がいたな…


 ミランはエミリーを見て、話を聞いてからピリピリしている。

 恐らく自分とは真反対の美人だったから、焦っているのかもしれない。

 ミランがキリッとした美人だとすれば、エミリーは甘い雰囲気がある美人だ。

 まぁ人の見た目を言える見た目じゃないからそんなに気にしないし、大切なのは中身と、どれだけの時間をどんな風に過ごしたか、だからな。


「ふふっ。殺気立つミランちゃんもカワユス…」


 聖奈がカメラを取り出す前に、俺はミランを連れて執務室を後にした。

 エミリー?

 魔王様への供物だよ。幸運を祈る…












「ここが小国家群ですか。小国らしく街の規模も質もバーランドに遠く及びませんね」


 大河は前に三国同盟会議でミランも訪れた事があるからな。

 あの道には転移せず、小国家群内にそのまま転移した。

 選んだのはあの三人が居そうな街だ。


「戦時中だからな。質は仕方ないだろう」


 そう。激戦区に来ている。と言っても、街は戦争慣れしているからそこまで荒れてはいないけどな。


「残されているのはここと後一つでしたね」


 折を見てジャパーニアに行き、小国家群の情勢は聞いていた。神聖国は大国二つの力を借り、後二国を残して統一間近だ。

 奴らがいるとしたらこの二国の内のどちらか。

 死んでる?んなわけ。

 アイツらは生きているよ。そんな気がする。


「そうだ。奴らが神聖国側か敵国側かはわからんが、傭兵の纏め場に行けばわかるだろう」


「わかりました。先ずはその場所を聞くのですね」


 ミランは二人きりになって、漸く可愛いいつものミランへと戻ってくれた。

 コン?

 アイツは戦地に行くって言ったら城の中に消えて行ったぞ…

 まだまだビビリだ。


 俺とミランは傭兵を集めている場所を聞き、そこへ向かった。










「空振りだったな」


 倉庫のような大きな建物の中はむさ苦しい男共で溢れかえっていた。

 受付の女性に仲間とはぐれてしまった。ここに来ていないか?と、名前を告げて問い合わせたがここへは来ていないようだった。


 物量的にも、すでに神聖国に囲まれてしまっている立地的にも敗戦濃厚なこの国に、傭兵共が集まっているのには理由があった。

 獣人達は多対少数を良しとしない種族も多く、他の者達は金払いがいいから選んだ者や、英雄思考の者達が多く集まったのだ。


 アイツらは俺のせいで神聖国には良い印象はない。そして、酒代を稼ぐためにも敵国側にいると思うんだけどなぁ。


「とりあえず今日の宿をおさえて、飯でも食いに行こうか」


「デートですね!もちろん行きますっ!」


 ちゃうねん。

 当たり前の行動やねん。








「ふう。食った食った」


 味は大した事ないが、野性味あふれる料理も偶にはいいもんだ。


「あの…まだ…帰りたくありません」


「…誰に教わったんだよ」


 いや、聖奈だろうけどっ!まぁ可愛いからいいか。


「じゃあ適当な酒屋に行くか」


「はいっ!」


 そういうとミランは俺の腕を取る。あざとい…あざといが可愛い…

 可愛いは正義!!

 あれ…?何だか聖奈みたいな思考に……夫婦は趣味趣向が似てくるとは聞くが、早過ぎないか?


 俺達は近くの酒屋を探した。



「あの看板は…酒屋っぽいな」「あれで酒屋でなければ詐欺ですね」


 看板にはエールらしきものが描かれていた。

 うん。間違いないだろうな。

 今更だが、この世界の識字率は高くない。看板に文字を書いたところで理解できる人が少ない為、子供でもわかる絵が描かれている事が多いんだ。これマメな?

 ちなみにバーランドは識字率100%を目指しているから看板は全て文字だ。

 絵が描かれているのは冒険者組合と商人組合などの大陸共通組織だけだな。


 バンッ!


 そんな事を考えていると酒屋から人が飛び出してきた。

 いや、正確には扉をぶち破って転がり出てきた。


「この盗人めっ!!おとといきやがれっ!!」


 どうやら無銭飲食みたいだな。


「いつつ……」


 転がっているやつは頭を押さえながらフラフラと立ち上がった。そして振り返ると…


「セイ…?」「ガゼル…か?」


 何と無銭飲食野郎はガゼルだった。何故無銭飲食?働き口は山ほどあるだろうに…


「なんか事情はありそうだが、とりあえず飲みながら話そう。入るぞ」


「いや、金ねーんだわ…」


「んなもん、気にすんな」


 俺は、はははっと乾いた笑いを溢すガゼルの肩を組み、先程の酒屋へと入って行った。

 ミランは反対の腕をしっかりと持っている。うん。歩きづらい…


「てめぇ!!まだ飲もうってのかっ!!」


 入るや否やガゼルの顔を見た店主がこちらに向かってきた。

 俺はそれを手を前に出して制すると、店主に告げる。


「コイツは連れなんだ。いくらツケがある?」


 戦時中とはいえ、無銭飲食は立派な犯罪だ。だからツケで押し通す。


「兄さん、いいのか?」


「ああ。迷惑料込みで請求してくれ」


 俺は金持ちだからなっ!白紙の小切手を切れるんだよ!!


 言い値に色を付けて払った俺は隅の席へと座った。


「先ずは自己紹介だ」


 俺がミランを紹介しようとするとミランが自分から話し始める。


「私はこちらのセイさんの第二夫人予定のミランと言います。ガゼルさんの話は聞いています。良きご友人だと。これからもセイさん共々よろしくお願いします」


 うん。いらん紹介文があったが、面倒だから無視だ。


「ガゼルだ。聞いているなら細けぇことはなしだぜ。とりあえず酒飲もうぜ?」


「そうだな」


 酒を注文した後、ガゼルから何があったのか聞いた。





「今は一人だ…」

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