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82話 ハリウッドスター再び。

 





「エマ・ワトソンとトム・クルーズだな?」


 ぶほっ!?


「?」


 お茶をしばいていた俺たちを囲む沢山の王国兵を代表して、一人の兵士が何某か尋ねてくる。

 トム・クルーズがこんな顔だったらあそこまで売れていないだろっ!いい加減にしろっ!!そして噴き溢したお茶を返せっ!!


「そうですが、なにか?」


「軍務卿閣下がお探しである。ご同行願おう」


 ああ…俺たちの偽名だったな……恥ずかしいからその名前で呼ぶのはもうやめてね?


「わかりました」


「うむ。ついて参れ」


 ついて参れって…囲んでんじゃん。

 大体探していたって、いつから探してたんだ?俺は監視にやってきていたが、誰にも見つかってないぞ?

 まぁいいか。手間が省けた。


「聖奈。悪いな」


「ううん。少しだったけど楽しかったよ」


 健気……おいちゃんそういうのに弱いからやめて…おやつ食べるか?

 ミランやエリーならオヤツで喜ぶけど、聖奈って何あげれば喜ぶんだ?

 元々お金持ちだし、ボロい手拭いを後生大事に持ってるし、わかんねーな…


 その後、俺たちは兵達に連れられて、城まで案内された。








「ワトソン。久しいな」


 城の例の東屋で待つこと30分程。ニシノアカツキ王国軍務卿がやってきた。

 何だか目の下に隈が出来てて、人相が悪くなってないか?


「はい。お久しぶりです、閣下。体調が優れない様ですが、如何されましたか?」


 こっちはこっちで聖奈は笑顔で嬉しそうに聞いてるし…なんだ?


「…また武器を譲って欲しい」


「あら?足りませんでしたか?連邦から見事に防衛を果たしたと伺っていますが…」


「ふっ…わかって言っておるな?回りくどい問答は無用か…」


 はいはーいっ!僕、全くわかっていませーーん!!


「民や他の貴族…いや、陛下にまでせっつかれておるのだ。無傷で連邦を追いやったのであれば、攻め込むのも簡単であろうと……」


「心労お察しします。ご所望の品はすぐに用意出来ますが、一つだけお願いが…いえ、報告があります」


「なんだ?私に出来ることであれば何でもしよう。言ってくれ」


 まぁ、武器は聖奈が準備してくれていたからすぐにでも転移で持って来れる。デカいけど。

 軍務卿は周りからせっつかれて寝不足なんだな。

 頼みの武器(手榴弾)の数が心許無くなったから戦えないとは言い出せなかったのだろう。言ったところで『じゃあまた買えばいい』なんて言われるだけだろうし。

 いや、そう言われているのかも。だから俺達が指名手配されていたんじゃないか?


 俺は二人の会話に漸く納得がいき、これまで通り見守る事に徹した。

 喋らないのかって?

 …見当違いの事を言ったら恥ずかしいじゃん?


「武器の供与はこれが最後になります。次はどの様な方法で来られても売ることはありません。それを念頭に今後は行動してください」


「……どうしてもか?」


「はい。我々がこの国の力ではどうしようも出来ない事を理解されているのは閣下くらいです。

 ですので、他の方達には穏便にお伝えください。そうでなくてはこの国は滅びます。閣下ですら理解し難い方法で」


 倒置法の脅しっていいねっ!悪者感が増してるよっ!

 やはり俺の妻は魔王のようだ。

 自分(仲間)の為なら最悪他国はどうなってもいいというのが根底にある。まぁ俺もそうじゃないといけないことに漸く気づいたけど。


「……わかった。だが、消耗品はどうすればいい?」


「そこも問題ありません。次に売るモノは修理さえ出来ればある程度は持ちます。

 もちろん少ないですが消耗品もありますのでそちらも買って頂きます」


「じゅ、準備がいいのだな。まるでこうなる事がわかっていたかのようだな?」


 そりゃそうだろう。ここまで魔王のシナリオ通りなんだから。わかっていたのではなく、こうなる様に仕向けられているんだよ。

 俺なんかいつもそうだぞっ!!それがわかるのはいつも終わってからだっ!!


 軍務卿の言葉に聖奈は満面の笑みで答えとした。









 次に向かったのは体育館のような広さがある倉庫…とそれが併設されている塀で囲まれた広場。

 そこで準備を終えた俺たちは軍務卿を再びその場に呼んできた。


「こ、これは…?」


 驚く軍務卿の前にはあの広い倉庫の入り口すらも通せないような大きさのモノが鎮座している。


「カタパルトという武器になります。兵器と言う方が正しいのかもしれませんね」


 この世界でもカタパルト(投石機)はあるのかもしれない。地球でも有名な攻城兵器だからな。だが、これは存在しないだろう。


「他のカタパルトと違うのは、これが鉄で出来ているところでしょう」


 そう。聖奈が地球で作り上げたのはその部分の大半が金属で出来たカタパルトだった。

 車輪も自重に耐えられる様に地球の技術の粋が集められた。車輪が壊れたら再現不可だろうから、修理は出来ないだろうな。他の部分は何とかなるかもしれないけど。


「今回売る商品はこのカタパルト4台と倉庫内に入れてある球です」


「球?」


「はい。このカタパルトで飛ばす球になります」


 投石機だけで王国が連邦と戦うのは無謀だ。だが、その投石機で飛ばす物が…


「我々の言葉でその球のことは、爆弾と言います」


「ば、ばくだん?」


「はい。以前お渡しした手榴弾も爆弾の一種ですが、今回お売りする爆弾の威力は桁違いです。

 その桁違いの爆発する球を飛ばす為のカタパルトと言うわけです」


 倉庫内に用意された爆弾の中身はC4プラスチック爆弾。落下の衝撃で起爆するように設計されたそれは、一撃で城壁程度は簡単に破壊できる。

 人が密集しているところになんか落とそうものなら……見たくはないな。

 そもそも人に当たるなら石で十分だし。


「その爆弾は攻城戦に使っていただけます。使い方や分解方法、簡単な修理方法、威力などはこちらの冊子に纏めてありますので、後でよく読んで下さい」


「わかった。疑うわけではないが、これを使えば我が王国軍で連邦の街を落とすことは…」


「可能です。もちろんちゃんとした戦術も必要ですし、落とした後の事もしっかりと考慮しなくてはなりませんが」


 聖奈は自信満々にそう答えた。

 このカタパルトの射程は従来のモノに比べると倍以上は飛ばせるらしいから、ある意味で反則のような武器だろう。

 従来の武器、兵器と比べて間合いが違いすぎるところがこの兵器の最も利用すべき所だ。


 聖奈が作った説明書には使い方はもちろんのこと、有効な戦術が記されている。

 これだけお膳立てされて負けたら笑うしかないな。


「度々すまんな。今回も同じ様に倉庫に準備させる。明日にでも取りにこれるか?」


「はい。私は居ませんが明日こちらのトムに取りにこさせますのでよろしくお願いします」


 聖奈は忙しいからな。暇な俺が伺うぜっ!!


 翌日から俺はここ以外の倉庫を全て回る事になった。のだが……











 翌日、一人でニシノアカツキ王国へとやって来た俺は、二つの倉庫を周り、取引の成果を回収していた。


「残すは後一つだな」


 空になった倉庫で独り言を呟いた後、最後の倉庫へと転移した。


 転移した先で待ち受けていたのは山盛りの荷物…ではなく、多くの兵と一人の豪華な服を着た男だった。


「と、突然現れおった…」


 しまったな…軍務卿が誰も入れないと約束してくれていたから、考えなしで転移してしまった。

 俺たちの回収方法は伝えていなかったが、転移魔法のような方法で回収していたと予想していた様だ。

 お陰で俺がトムではなく、北西部のバーランド王国の王だといずれバレてしまうではないか…


「ここには誰も入れない様、軍務卿から言われなかったか?」


「うーーむ。どの様に移動したのやら…」


 聞いてないな…まぁ一緒だけど。

 兵達は無言で武器を構え、男は人の話を聞かず、どうやって急に現れたのか思案している。

 俺の魔力が人知れず暗く渦巻いていた。

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