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24話 聖奈の策略。

 





 戻ってきた聖奈さんと一緒に地球へと転移した俺は、今後の予定を聞いた。


「今日する事はあるのか?」


「聖くんにはこの書類に目を通してサインして欲しいの。

 印鑑は押しておいたからよろしくね」


 俺は言われたまま、書類にサインをした。

 世の社長さん達も言われるままにサインしているのかな?しているんだろうな。


 一人で納得した俺は、書類に目を通す事なくサインしていく。

 って!なんだよこれ!


「聖奈っ!何だよこれ!?」


 俺は見つけた書類に驚いて聖奈に確認を取った。


 冗談にしてもひどいぞ…車の保険の書類の次に入れるなんて…


「あれ?バレちゃった?流れでそのままサインしてくれると思ったのになぁ」


 可愛らしく、唇を尖らせて言ってくるが、内容は全く可愛くない。


「何で婚姻届なんかあるんだよ……」


「聖くんは私と結婚したくないの?」


「いや、今冗談を言う時じゃないだろ…」


 危うく知らない間に、結婚する所だった。


「実はね。あながち冗談でもないんだよ?」


 な…んだ…と…?


「聖くんは今後間違いなく、大きくなっていく会社の社長さんだよ。

 周りから結婚を勧められる事もあると思うし、仮に私と付き合ってるって嘘をついても、それが通るのは3年くらい。

 そこからは、何で結婚してあげないんだ攻撃が周りから徐々に広がるの。

 でも聖くんは転移とかの秘密があるから、このまま行けば誰とも結婚出来ない。

 でも、結婚を周りから急かされる。

 耐えられる?」


 確かに…理には適っているな。だが…


「だけど、そこに大事な物がないぞ」


「えっ?まさか愛?私は聖くんを愛しているから大丈夫だよっ!」


 もう冗談はええねん。


「いや、冗談じゃなくてな。俺には確かに助かる提案だけど、無理だな。

 聖奈の人生を、そんな事で決めて欲しくないからな」


 そう。この話には、聖奈さんの幸せが一切考慮されていない。

 俺は聖奈さんと結婚出来てメリットは見あたるが、聖奈さんには一切ないだろう。

 あるとすれば、唯一転移できる俺を、法的に逃げられなくするくらいだ。

 それも向こうに俺が一人で逃げてしまえば済むため、メリットとは言いづらい。


「聖くん。私はもう聖くんから……ううん。ミランちゃんとも離れるつもりはないよ。

 私達は運命共同体。聖くんに、他に意中の相手がいるのなら諦めるけど、私には二人しかいないの。

 ・

 ・

 でも()()諦めるね。

 次は逃がさないけど」


 また思い詰めているのか?最近は不安定さが鳴りを潜めていたと思っていたけど、俺の思い違いかな?


「聖奈ならすぐに相手を見つけられるだろうに」


 気が変わるかも知れないしな。

 それに周りの男達が放っておかないだろう。


「言い寄ってくる人は確かにいるけど……

 前にも言ったけど、私の話をちゃんと聞いてくれたのは聖くんだけだよ」


 それは言っていたな。


 もしや、転移した事で、主人公補正が掛かって俺にモテ期が!?


「もう!この話はおしまいね!明日は早くから会社に行くからもう寝るね!おやすみ」


 バタンッ


 行ってしまった。

 まさか、本当に俺の事が好きなのか?





 〜〜2年前〜〜


「聖くん。この前のアニメ見た?可愛かったでしょ?」


 俺は東雲 聖 19歳。大学一年生だ。

 初めてのサークル選びを間違っていたのではと、最近になって思い始めている。


 正直俺はラノベを少し読んでいたくらいで、アニメの事は全然わからない。


「ああ。見たよ。はい、借りてたDVD」


 この美人な女性は、同い年の長濱 聖奈さんだ。


「ねぇ、感想聞かせてよ」


「うーん。確かにキャラクターは可愛いかったけど、俺には話が重すぎたかな」


「そっかぁ。私は主人公の子が親を亡くして・・・・」


 暫く長濱さんの話を聞いて、時々意見を求められてを繰り返しては、時間が過ぎていった。


 俺と話している間も、同じサークルの人達が何度も長濱さんに声を掛けていた。


 多分長濱さんは、サークル活動でいつも一人(ぼっち)でいる俺を憐れんで、話しかけてくれているんだろうな。


 可愛くて人気者な人は性格もいいのか。俺はモテないはずだな。


「じゃあ、またね!聖くん」


「また今度」





 〜〜現在〜〜


 いや!どこにも俺の事が好きな(そんな)記憶はないなっ!


 ただ聖奈さんは、あの時も今も俺を助けようとしてくれているのは間違いない。


 聖奈さんに聞けば自分の都合がいいからとしか言わないだろう。

 何故助けてくれるのか……


 まぁ理由なんていいか。助かっているのは事実だし、俺も出来ることはしてあげたいしな。


 あっ!お礼の欲しいものを聞くの忘れてた……


 とりあえず酒飲んで寝よう。うん。それがいい。







 今日もいい匂いで起きた。何か久しぶりな感じがしたけど、そうでもなかったな。


「おはよ。朝ごはん出来ているから、顔を洗ってきてね」


「おはよ。わかった」


 眠たい目を擦りながら洗面所へ行く。


 そうだ。何が欲しいか忘れる前に聞いておこう。


 顔を洗った俺は、テーブルにつき、朝食を食べながら話しをした。


「今日も美味いな。ありがとう」


「良かった。お粗末様でした」


「それと、いつも頑張ってくれている聖奈にお礼がしたいんだけど、何か欲しいものとかある?」


 聖奈さんは満面の笑みを浮かべて口を開いた。


「ありがとう。気持ちだけで嬉しいよ!」


「気持ちだけって……何かないの?」


「うーん。じゃあけっこ『気持ちだけにしとくわ』えーっ!?」


 どうやら本当に欲しいものはないようだ。

 多分昨日言っていた、俺とミランがいればいいと言うのは、ある意味本音だったんだろうな。


 その内良い人が現れる事を願っておこう。

 依存は良くないからな。


「今日はこれから会社(倉庫)だっけ?」


「うん。バイトの子達とも顔合わせして欲しいんだよね」


「何かいるものはあるか?」


「それなんだけど、キャリーケースに3日分くらいの着替えを入れて、パスポートを持ってきてね」


 ん?着替えは置いといて、パスポート?


「どこにいくんだ?」


「それはお楽しみで!安全な冒険の為だから、断るのはなしだよ?」


 俺が断れた事なんてないだろ……婚姻届以外……


「まぁ、任せているから構わないけど」


「じゃあ、準備したら出ようね!」


 俺はお出かけの準備をした。

 高校の修学旅行が外国で助かったな。

 聖奈さん。庶民に急にパスポートなんて言っても持っていないぜ?




 準備が出来たので、玄関で聖奈さんを待つ事に。


「お待たせ。それじゃあ行こっか」


 梅雨が明けたこの時期はクソ暑い。聖奈さんの格好は涼しそうな白いワンピースだった。


 涼しそうだけどその格好は俺に刺さるからやめて……


 見た目はどタイプなのだ。


「今日の格好は可愛いな。似合ってるよ」


「ありがとう!服装を褒めてくれるなんて珍しいね!」


「普段も綺麗だけど、その格好?が珍しくてな」


 俺たちはわいわいキャイキャイ言いながらタクシーに乗って職場を目指した。


 あれ?傍目から見たらリア充に見えるくない?


 ついにリア充デビューしたかと思ったけど、良く考えれば、聖奈さんは彼女じゃなくて仲間だし、俺はイケメンではなく呑んだくれだった。


 俺が自虐的になっていたらタクシーは会社に着いた。


「時間はもう少しあるから、とりあえず会社に入ろう?」


「そうだな。未だに自分の会社だと思えないけど、気にしたら負けだな」


 未だに慣れない建物に俺は足を踏み入れた。





「おお!明るいとそれっぽくみえるな!」


 外階段を上がって2階に入ると、そこは事務所になっていた。


「リサイクルのオフィス用品だけど、いい感じだよね!」


「そうだな!ありがとう。俺ならこんな風に出来なかったよ」


 事務所は手前と奥が衝立で仕切られており、奥が俺達の席になるようだ。


「おお!一階が丸見えだな!」


 奥はガラス張りになっていて下が見下ろせた。

 もちろん窓になっているので、開ければ下にいる人と会話も出来なくはない。


「気に入ってくれて良かったよ!ちなみに今のバイトさん達は週5で土日休みだよ。今日は早いけど普段は10時から17時まで働いてもらう事になってるの。

 だからここで直接転移する時は、その時間はやめてね」


 おっ。気をつけないとな。どちらにしても緊急でない限り、自宅以外からする気はないけどな。


「バイト代は時給1,200円だから、募集がかなり集まったみたいだよ。

 ここは都会から離れているから時給が少し低いみたいだね」


「結構良い時給なんだな」


「安くて文句言う人はいるけど、高ければ文句も悪い噂も出にくいからね。

 あっ。来たみたい」


 外階段を登る音が聞こえる。


 ガチャ


「失礼します」


 どうやら来たみたいだな。

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