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69話 黒装束の一味。お荷物を添えて。

 






『いやじゃー!ここは嫌なのじゃー!!』


 コンがワンワンと五月蝿いが、それは勘違いだ。


「コンを置いていくつもりでここにやって来たんじゃないから安心しろ」


『!?そ、そうだったのかえ?それならそうと言わんかっ!!』


 面倒臭ぇな…


「確認の為に来た。どうだ?コンが昨日から留守にしていたが結界に綻びはないか?」


『大丈夫なのじゃ!妾はあくまでも管理しているだけでここには神気が満ちておるからの』


「そうか。じゃあもう一つ確認だ。コン。元のサイズに戻ってくれ」


 コンはこの小型犬サイズがデフォではない。

 本人曰く、ここに生まれ落ちた時のサイズが最も身体が動かしやすいとか。


『ふふん。驚くなえ?』


 そう告げるとコンの身体が白い光に包まれた。


「おおっ!本物の神の使いに見えるぞ!!」


 そこには尻尾も入れた長さで全長5mはある立派な体躯の白狼がいた。


『どうじゃ!!跪いて頭を垂れても良いのだぞ!?』


「ポンコツが調子に乗るなよ?お前をここに置いて行ってもいいんだが?」


 確かに強そうではある。よくわからない威圧すら感じる。だが中身はビビリのポンコツなんだ。


『ご、後生じゃ!!頼む!捨てないでぇえ!?』


 プゲェッ!?


「わかった!わかったからやめろっ!?」


 俺に飛び掛かり押し倒して、俺の腕より長く太い舌で舐め回してきた…


『ほ、本当じゃな!?何処までも着いて行くからなっ!?』


「わかったって。もう一つ確認したら行こう」


『何じゃ?まだ何かあるのかえ?』


 コンは麓よりも離れていた俺をここから捕捉していた。

 と、いうことは…


「コンは何処まで下界を見る事が出来るんだ?」


『そんな事かえ。何処までもと言いたいところじゃが…実はそんなに広くはないのぅ』


 コンの説明を地球単位に直すとこの山を中心に半径50キロ程度だということ。

 つまり…


「ここ以外の情報はないって事か…」


『す、すまぬっ!役に立って見せるから捨てないでっ!!?』


 やめろや!俺がロクデナシの男みたいに聞こえるだろっ!!


「仕方ない。森の外から迂回して先を目指そう」


 獣人達はこの山に守られている。つまりここには用はないって事だ。

 俺達は森の外、連邦側に転移して、旅を再開した。









『あれはなんなのじゃ!?』


 コンは知らないモノを見つけるたびに聞いて来た。


「あれは馬車だな」


『あれは!?あれは!?』


「うっせぇな…あれは……砦だ」


 コンとの旅ももう5日。いい加減答えるのが面倒になってきたところで遂に変化があった。


「どうやら砦が必要な何かがこの先にあるみたいだな」


『セーナが言うておった、連邦の敵国かの?』


「そうだといいが、その前に俺達は身を隠さなくちゃな」


 連邦は軍事国家だ。こんな国家にとって重要だと思われる砦に近づいて何もないわけがない。


挿絵(By みてみん)


 海に程近い海岸線の街道から海とは反対側に岩場がある。

 そこで隠れて転移して帰る事にした。


「夜にまた来るぞ」


『うぅ…妾は寝てても良いのじゃ?』


「俺だけに働かせるのか。わかった。これからはセーナにコンの面倒を見てもらう事にしよう」


『ひっ!それは嫌なのじゃ!!セーナは怖いのじゃ!!』


 激しくモフモフされてるからな…

 コンには偶に聖奈の涎が付いていることがある。

 恐らくコンを抱き抱えながらミラン達にコスプレをさせていたんだろう。


 ぼっちの居場所はぼっちの傍なんだ。いい加減気付け。


 逃れられぬ運命に俯いてしょげているコンを抱え、城へと転移した。





「過去の遺物の可能性もあるけど、その可能性よりは国境の可能性の方が高いよね」


 城へと戻り聖奈に報告した後、今は夕食時でみんなと協議しながら食べている。


「確かに過去のモノの可能性もあるな…」


 大昔に戦争の為に作ったものだったらまた空振りか…


「それよりもどんな形状だったの?」


「砦か…切り出した岩を組んで造られていたな。規模からしたらもしかしたら要塞なのかもしれないな」


 確か砦と要塞の違いは規模だったよな?

 砦が出張所みたいなもので要塞は本丸だったかな。


「サイズは?」


「うーん。街道から向こう側が見えないくらいだったからそこそこ大きいとは思うけど…発見したらすぐに近寄るのはやめたからな。正確な事はわからんな」


 俺の進行方向で見ると左手に高さ5m以上の崖があり海が広がっている。

 逆に右手の方は行軍不可の岩場だった。俺やライルなら跳びながら越えていける程度ではあったが聖奈では移動不可だ。


 砦までの道の幅は10m程。

 砦は道幅よりも大きかったからそこそこの建物ではあるのだろう。奥行きがわからんから何とも言えんが……


「じゃあ兎に角夜にこっそりそこを越えてからだね。今夜はみんな起きて待っていようね!」


「わかりました」「はいですっ!」「仕方ねーな」『妾も待機が良かったのじゃ…』


 約1名不服そうだが…無視だ。






 夜になり転移魔法で砦付近に戻ってきた俺は、暗視ゴーグルを使いまじまじと観察した。


「やはり見張りがいるな。連邦(こっち)方面でもいるって事は反対は倍じゃきかない数の見張りがいそうだな」


『わ、妾は色白だから目立ってしまうのっ!足手纏いはいかん!城で待つとするゆえ送って『却下だ』…何故じゃ…』


 コイツは自分を過小評価しすぎだな…

 どう見てもお前強いだろ…まさか小さいサイズに慣れすぎて弱者思考から抜け出せないのか?

 んなアホな…


「コンは生まれてから戦った事はないんだよな?」


『ば、馬鹿にするでないっ!!妾は神の使いぞっ!?』


「ん?じゃああるのか?」


『……ない』


 何の見栄だよ…


「お前は普通の大きさになればかなり強いぞ。少なくともその辺の兵が束になって掛かってきても問題ないくらいにはな」


『そ、そうじゃったのか…』


 俺には魔力視があるからな。

 コイツが通常サイズに戻った時の魔力視に映った魔力は爺さん(元師匠)が身体強化魔法を使っていた時に酷似していた。

 つまり5mの普通(?)の狼の身体能力をさらに少なくとも4倍した身体能力があるって事だ。


「それに俺達が見つかっては何の為にコソコソとここまで来たのかわからんから、見つかる気はないしな」


 俺はそう言うと聖奈から預かってきたある物でコンの身を包んだ。


『何じゃこれは?』


「ただの黒い布だ。これを巻いていれば向こうからは俺達が見えない。俺が何の為に真っ黒の服に着替えてきたのか考えなかったのか?」


『ダサいとは思うておったが…そんな意味があったとはのぅ……』


 やっぱりこいつ捨ててこようかな?


 俺はコンに布を雑に巻き付けて落とさないようにキツく縛った。

 そして…


『にゃっ!?真っ暗にゃっ!?ヒギッ!?』


 乱雑に担ぐと闇に包まれた岩場を飛び跳ねるように移動した。


「黙ってないと舌を噛むぞ?」


ニャニャニャニャーン(もう遅いわ)ッ!!」


 何か言っているが……猫語は翻訳されんな。

 砦は篝火が焚かれていてここからはっきりと見える。


 夜の闇に不気味に照らされた砦を迂回するように闇の中を進んだ。





「ふぅ。ここまでくれば大丈夫だろう」


 顔が割れないように覆っていた黒い布を剥ぎ取り、息を吐いた。

 ここからも砦は見えるがそれは向こうが明るいからだ。俺たちのように暗視ゴーグルでもあれば別だが、肉眼では捉えられないだろう。


「ん?おーい。生きてるか?」


 気付いたらあれだけ騒がしかったネコ……じゃない、コンが静かになっていた。

 不審に思い、首に巻いていた布を外して地面に降ろした。


「…気を失ってやがる」


 どうやら恐怖と揺れにより失神したようだ。

 よかった。失禁じゃなくて……そんなことを背中でされたら、本格的に捨てる自信しかないぞ…


「おい!着いたぞ!起きろ!」


 ユサユサ


『はっ!?妾は一体…』


「寝ぼけているところ悪いが先に進むぞ」


 こんな事で一々帰っていたら旅が一生終わらん。

 俺は駄狐とは違い寿命があるか弱い生き物なんだからなっ!


『な、何が……待ってくれぃ』


 記憶まで無くしているとは…

 まぁコイツにとっては全てが生まれて初めての体験だったから仕方ない…のか?


 俺はコンが役に立つのか自信が無くなってきたが…まぁ一人旅よりはマシか!

 と、思う事にした。

 もちろん考え事をしていたポンコツ2号(コン)を待つことはなく、先に進んだ。

長らくお待たせしております。

後一週間くらいでもう少し投稿出来るようになる予定です。


いつもいいねありがとうございます。最新話を読んでいただけていることを確認できるのはいいねだけなのでやる気が出ます!


ブックマークもありがとうございます。少しでも面白い話が書ける様に頑張ります。


高評価もありがとうございます。過分な評価ですが、今後にご期待下さってのものであると自身に言い聞かせています。





第二部も中盤を大きく越え、登場人物の言葉遣いが変わってきていますが、立場が変われば人も変わるということです。いえ、立場が人を作るのかもしれませんね。

おふざけモードの時は以前と変わらず、通常モードには若干の変化を、シリアスモードの時は口調と思考に変化を付けています。


エリー?……はて?誰の事でしょうか?

ポンコツはポンコツ街道を爆走していきます。

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