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68話 ここは稲荷神社か?

 






『これも美味いのじゃーーっ!』


 聞くにこの白狐、これまで何千年も生きているのにモノを食べたのは初めてとのこと。

 消化不良で死なないよね…?


「それは良かったな。それでコンはここからはやっぱり出られないのか?」


 コンとは俺が名付けた名前だ。

 狐にしか見えんからな。因みに本人は由来も何もわかっていないから気に入っている。

 白いから『ハク』も候補だったがなんかカッコいいからやめた。


『出れるはずじゃ』


「えっ!?出れるの!?じゃあ何で出ないんだ?」


 飯も初めて食べたということは出た事が無いんだろう。


『それはな……こ…い…じゃ』


「あ?もう少しハッキリ言えよ。念話の故障か?」


『怖いからじゃ!!』

 ・

 ・

「何が怖いんだ?下に住んでる奴らか?」


『違うわいっ!妾が怖いのは…ここから降りている時に誤って落ちないか…』


 あぁ。手が無いもんな…

 爪ガリガリで下まで降りるのは怖いのだろう。爪が折れたら終わりだし。


「降りたくはないのか?」


『降りれるものなら降りてみたい…』


「俺が連れて行ってやろうか?」


 ここから帰るのにどうせ転移魔法は使えんし。

 それなら道連れがいた方がな。


『…じゃが。妾がここから居なくなったら……』


「ん?この神域が困るのか?」


『いや、1000年くらいなら留守しても大丈夫じゃ』


「じゃあいいんじゃねーか?」


『1000年以内にここを登らねばならんのじゃぞ!?』


 いや、知らねーよ…

 お前は登っている俺を散々邪魔してたやないかっ!


「その不思議パワーで何とかならねーのか?」


『この能力(ちから)はそんなに便利なものではないのぅ…』


「神代魔法を使えなくしている機能を切れるなら転移魔法で送ってやれたけど、無理か…仕方ないな。ここでお別……」


 俺の言葉にコンはクリクリの大きな瞳を最大限見開いていた。


『で、出来る…誰か来たら嫌だから切った事はないが…出来るぞっ!!』


「わかった!わかった!やめろっ!くすぐったい!!」


 コンはここから出られる喜びに我を忘れて俺の顔を舐めまくり喜びを露わにした。


 狐でもなく犬だったか…


『こほんっ。連れて行ってくれるのか!?』


 折角咳払いして落ち着きを取り戻したのに、またテンション上がってんじゃん…

 尻尾揺らすのやめてくれませんか?ペシペシうるさいんで。


 まぁコイツは可哀想な奴だからな。

 同じぼっち仲間として慰め程度は楽しませてやるか。


「勿論いいぞ。だがコンみたいな生き物はこの世界で他に見た事がないから俺の言う事聞くのが条件だ」


『聞く聞くっ!』ハッハッハッ


 いや。犬じゃん。


「じゃあ行くぞ……っと。その前に爆弾回収してくる」


 流石に仲良くなった奴の家(?)を壊す趣味はないからな。

 爆弾を回収して戻ってきた。


「じゃあ行くぞ?」


「ワンッ」


 いや、念話…


『テレポート』


 やっぱり『コン』ではなく『ポチ』にするべきだったという俺の思いを山頂に残し、転移魔法を発動させた。









「と、言うわけでコイツがそのコンだ」


 時間は昼時。ちょうどみんな城にいたからコンを紹介した。


『妾が神獣フェンリぶえっ!?』


「可愛いっ!!この子はウチで飼うね!いいでしょ!?パパッ!」


「誰がパパやねん。それよりもコンが可哀想だから離してやれ」


 聖奈は割と動物好きだからな。

 だがそんな馬鹿犬は俺のペットには相応しくないから捨ててきなさいっ!


『ゴホッゴホッ…し、死ぬかと思うた…』


「凄いね!ホントに頭の中に聞こえるね!月の神(ルナ)様の時みたい」


『るな?誰じゃそいつは?』


「俺達の信仰している神様の名前だ。月の神様だな」


『お主達も神の使いであったか…道理でおかしな事が出来るはずじゃ…』


「変な喋り方ですぅ」


『其方には言われとうないわ…』


「餌はドッグフードでいいのですか?」


『どっぐふーどが何かわからぬが…嫌な気配がするから遠慮するのじゃ…』


 いや、餌にもつっこめよ。なに途中でめんどくさくなってるんだよ。

 ぼっちの期間がガチの筋金入りだから仕方ないか。


 まっ。上手くやっていけそうで安心したよ。








「コンちゃんは可愛いから嬉しいけど、他は残念だね」


 ここは王の寝室。といってもちょっと高級なマンションの内装と変わらない異世界情緒が全くない部屋だ。


挿絵(By みてみん)


 エリーの一件があってからはなるべくみんなで寝ているから、この部屋のベッド数が四つに増えている。


 元々寝る時間の違う俺達は夫婦でもベッドは非共有。一応城で働いている人達の目があるので部屋は20畳をはるかに超える広さがあるがモノは少なかったのでベッドが増えて丁度いい感じだ。


 俺は狭い部屋に慣れていたから最初は全然寝付けなかったな…


 閑話休題。


 そんな俺のベッドの上…というか、コンは俺の腹の上でスヤスヤ寝ている。

 俺が他の神の使いだと思ってから遠慮は一切無くなった。


 思ってからというのは、俺も神の使徒なのかどうか自信が持てないからだ。

 月の神様からは自由に生きていいとしか言われておらず、何か頼まれたこともない。


「そうだな。よくわからんが、連邦の目を南西部地域外に向けない作戦だったんだよな?」


「うん。南西部統一を目指すか、旨味がないなら他所の地域に向かうしか連邦が連邦を維持する方法がないならね」


 うーーん。難しい問題だな。

 俺達は聖人君子ではないから仲間→知り合い→国民という風に命にランクを付けている。

 実際に明確なランク付けはしていないが、咄嗟の判断はこれに従うように覚悟を決めている。


 南西部で血が流れる事により、北西部で血が流れないなら()は仕方ないと思っている。

 今より先のことは聖奈の頭の中の事で俺にはわからんからな。


「ほっとくでいいんじゃないか?」


「放っておけるの?」


 …無理だな。またエリーのような事が起きないとも限らん。

 みんなに肩身の狭い思いをさせているのも申し訳ないし。


「じゃあどうする?」


「一先ずその先を目指してみない?半島が一つだけとは限らないしね。もし他にも連邦と隣接している国が在れば…」


「そこに加勢して連邦を困らせる…か」


「うん。いきなり隣国が強くなっても中々調査は出来ないし、それをしようとしている時には隣国が連邦に乗り込んでそれどころじゃなくなるだろうしね!」


 うん。仕方ない事とはいえ、悪魔の所業だ。

 自国を守る為に他国に血を流させるなんてな。考えついても実行には移しづらい事だ。


「ありがとうな」


「ん?なにが?」


「聖奈が居てくれるから、一人じゃないから怖くないんだ」


 俺一人ならこんな恐ろしい事からは逃げていた。

 それにより本当に守りたいモノを失っていたかもしれない。


 これまではぼっち期間の長さもあってか、イマイチ他人の有り難みがわからなかったが、今はわかる気がするよ。


「ふふっ。それはお互い様だよ。明日からまた頑張ってね!」


「もう歩くのは飽きたんだが……仕方ないな」


 結局俺のぼっち旅は続くようだ。

 まぁ今回の事はイレギュラーだし、ぼっちの月の神様が同じくぼっちの神の使いを憐れんで俺を遣わせるイベントだったのかもしれないな。


 と、ゲーム脳の聖奈は考えていそう……






 翌朝。

「行ってくるよ」


「いってらっしゃい」「気をつけて下さい」「お土産は期待してないです!」『頑張るのだぞ?』

 ・

 ・

「いや、お前はこっち側だ」


『ニャ、ニャんで!?』


 猫かよ……お前に狐のプライドはないのか?いや、狼だったか……


 俺は安心安全でさらには美味いものも出てきて話し相手もいる城を気に入っていたコンを、無理矢理抱き抱えて転移するのであった。


「やっぱりコイツもポンコツだったか…」

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