表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

221/356

57話 犯人はお前だっ!!






「よし!待ってろよエリー!今助けに行くからなっ!」


あれから感情の変化も魔力の暴走も感じられなかったので晴れてエリー捜索に参加する事になった。


「セイさん…どこに向かうつもりですか?」


「わからんっ!こういうのは気持ちが大事だからな!

聖奈。どこに向かうんだ?」


わからない時は聖奈えもんに聞けば大丈夫。


「はぁ…本当に大丈夫なのかな?まぁいいや。情報と推測を当て嵌めると首謀者は南西部地域だよ。

侍女のプロフィールは嘘だらけだったけど、街の人への聞き込みでその可能性が高まったの」


「一応理由も聞いておこうか」


聞かなくてもいいんだけど一応ね?


「行商の商人さんが侍女が持っていたモノを見たんだって」


「ここにはなくて南西部にあるものだったのか」


「そういう事。女性用のシースルーの布だよ」


「?なんだそれ?」


パンツかな?


「よくエジプトとか砂漠とかの映画で女性の踊り子さんがヒラヒラしているやつだよ」


「ああ!何となくわかるぞ!確かにこの国にそんなモノはないな…」


そんな踊り子さんがいたら俺が知らないわけないしなっ!!

いや…結婚前の話だよ?


「その行商人さんが珍しいから侍女に話しかけたんだって『南西部から来られたのですか?』って。そしたら焦ったように無視してどっかに行ったんだって」


「そいつからしたら何でわかったのか不思議だったんだろうな」


常識は時として人を無能にするからな。

侍女からすればその布はどこにでもあるモノで、こっちからしたら珍しいからな。

特に焦った時はそういうことは見落としがちになるし。


「じゃあ行ってくる」


「ちょっと待って…まだ何も伝えてないよ…」


そうだった。危うくすぐに聞きに帰るという恥ずかしい行動を取るところだった…


「とりあえず正規ルートで進んでね。そしたらライルくんとここで合流出来るから。

それで北西部と南西部の境に着いたら一度転移で戻ってきて」


聖奈が地図を指し示しながら説明してくれた。


「わかった。魔法は使ってもいいんだよな?」


また感情が黒く染まってきたらやだよ?


「うん。でも気にしながら使ってね」


「セイさん。ご無理は…」


「わかった。ミラン。大丈夫だ。もしまた俺が血迷っていたら戻してくれるだろう?」


「も、もちろんですっ!」


俺は二人に手を振りながら転移した。





「爺さん!ライルは来たか!?」


水都の屋敷に転移した俺はみんな留守だった為、店に顔を出した。


「ライル?見ておらんのう」


店の護衛として突っ立っていた爺さんに声を掛けたが空振りのようだ。


「そうか!じゃあなっ!」


「ちょっ!?何事じゃあ!?」


何か後ろで叫び声が聞こえたが気のせいだろう。


俺は水都を後にした。





「確かこの道を真っ直ぐだな」


聖奈から示された場所はナターリア王国とその南の隣国の国境付近だった。


「ライルも水都にくらい寄ればいいのに」


どうやらライルは休憩も取らずに移動しているようだ。

寝ずに移動していたのなら恐らくそろそろ待ち合わせ地点に着いているはず。


ナターリアからエトランゼに行った道は東方面。この道は南方面の為初めて通る。

北西部地域で行っていない国は後二つ。その内の一つを通って南西部地域へ向かうことになった。


聞き込みや何か策を弄する時は聖奈とミランは必要不可欠だが移動の時ばかりはお荷物になってしまう。

今も全力の身体強化状態で街道を走っている。


「魔導車よりは速いな」


俺には速さを測るメーターは付いてないからわからんが、エリー監修の魔導車よりはスピードが出ていそうだな。





「じゃあ寝ているうちに魔力のうねりが収まったってことか」


何とかその日のうちにライルと合流出来た。

コイツは目の下に大きな隈を作っていたから転移で城に連れて帰って休ませる事にした。


「そういう事だな。とりあえず寝ろよ。明日からはバイクじゃなくて走らないといけないからな」


「そうさせてもらう」


ライルは預けていたバイクで城を出ていた。バイクも車と同じくエリーに改造してもらっていたから燃料は魔石だ。

現地調達出来るから便利なんだよな。



翌朝、日が昇る前に合流地点に転移して国境を越えた。

国境のナターリア側の兵士に侍女の事を聞いたがわからないとの返事だった。

そしてさらに三日後に北西部と南西部を分ける山脈の麓に辿り着いた。


「結局それらしい奴は見つからなかったな」


「そうだな。こことは別のルートを使っているのか、それともまだ辿り着いていないだけなのか…」


考えてもわからん。

こういう時は指示通り動くに限るな。


「よし。聖奈からは正規ルートでって指示があった事だし、ここを登るか」


「そうだな。遅れるなよ?」


俺達は大陸に跨る山脈へと足を踏み入れた。





「おかえりなさい」


転移で帰ってきた俺達を3人が出迎えてくれた。


「指示通り、丁度中間地点くらいで戻ってきたぞ」


聖奈からの指示は山脈のこちら側と向こう側の間。

山頂ってわけじゃないから不確かだけど、俺達はすでに2回目だからそう間違ってはいない所だろう。


「向こうの山脈との違いってあった?」


「いや、特にないな。行商の人達が渡れる程度だから高さも大きく違いはないと思うぞ」


聖奈が言っているのは北東部と南東部の境目の山脈の事だ。


「ありがとう。大体わかったよ」


うん。俺にはなんにもわからん。


「エリーはどこにいるんだ?」


「それはまだわかんないよ。でも首謀者の見つけ方には心当たりがあるよ」


聖奈の説明はエリーを誘拐した理由に遡った。


「エリーちゃんの発明でこの世界の人を驚かせたのは何だったかな?」


「トンネルですか?」


さすミラ!!


「うん。それでエリーちゃんがトンネルを掘ったのはどんな所だった?」


「山だな。それも人類未到の険しい山だ」


さすオレ!!


「そ。だったら大陸を分断しているけど人が通れる山にも使えるかもって考えた人達がいてもおかしくないよね?」


「……だがそれは」


「うん。多分不可能だと思うよ」


そう。あの山は険しいが北と南を分ける山脈より大きい訳ではない。

あそこのトンネルはいくつもの山にトンネルを掘ってそのトンネルとトンネルの間は普通の道だ。


しかし南北を分断している山脈は一つの大きな山だ。トンネルを開通させようと思えばかなりの距離になる。

俺達が掘ったトンネルの何倍もの距離を掘れるとは思えない。

もちろん山の途中からとかなら可能かもしれないが、そこまであの魔導具を運べるとは思えん。


「でもこの世界の人達なら同じ山ならいけると思ってもおかしくないよね?」


「つまり…何かしらの理由でトンネルを掘りたい奴がエリーを拐ったと?」


「うん。南西部の情報を集めたら、危険を冒してまでトンネルを掘りたい山はその山脈くらいだったよ。

次点で南西部の国どうしの国境の山もあるけど理由はかなり弱くなるね」


しかし、それだけだとかなりの広さを探さないと首謀者が……あっ!


「もしかして…道か?」


「おっ!半分正解だよ!!」


半分かよっ!!


「エリーちゃんのあの大きな魔導具が通る為の道はもちろん必要だよ。でもそれよりもわかりやすい動きがあるよね?」


「作業員を集めている国か商会ですか?」


「そう。私達はセイくんのチートで楽をさせてもらったけど、他の国や組織はそうはいかないもんね。

拐ってから全てを進めるなんて遅いと思わない?それもここまで用意周到に誘拐してきた人達がね」


つまりもう動き出しているって事か…

あの魔導具が作れる時間も逆算して。


「もしかして例の魔導具の設計図も?」


「うん。盗まれてたよ。もちろんこっちの捜査を分かりづらくする為に他の魔導具の書類も盗まれていたけどね」


「犯人もすぐにわかるだろうがタイムリミットもそれ程長くはなさそうだな」


エリーの魔導具には欠点があるからな。


「うん。足回りはこの世界の技術では再現不可能だもんね…あの魔導具のキャタピラの部分も殆どが地球産だし」


「という事は、エリーさんが向こうに着いて製作に取り掛かるとすぐに作れない事がバレてしまうという事ですか?」


「そうだね。この予想が合っていようが合ってなかろうが急がなきゃね」


聖奈がここまで言うということは…


「首謀者はどこだ?」


「恐らく、南西部にある軍事国家『イステーファル連邦』だよ」


ついに連邦制が出てきたか…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ