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32話 人種差別。人参キャベツに語呂が似てるよな?なっ!?





「すごーい!!」


末っ子聖奈の前に現れたのは広大な滝だ。


挿絵(By みてみん)


日本の滝とは違い河幅がとんでもないことになっている為、ナイアガラの滝に近いと思う。思うというのは俺は見た事がないからだ!


落差はそこまでない。高いところで10mくらいで低いところではその半分くらいの高さだ。

それでも全容が見えないくらい大きな滝は壮観で俺達は暫くそこから動けないでいた。


「綺麗ですね。セイさんの様に大きな滝です」


うん。俺はこんなに大胆じゃないよ?どちらかというと…


「はははっ!ミランちゃん!笑わせないでよぉ!!セイくんの(こころざし)くらい低い滝って意味だよね!?うけるぅー!!」


初めて笑い転げている人を見たな…

これが自分の事じゃなければ笑えたが全く笑えんぞ。


「あ、あの…」


「わかってる。ミランはいい意味で言ってくれたんだよな。このアホは放っておいて滝にもう少し近づいてみないか?」


「は、はいっ!お供します!」


うむ。苦しゅうない。近うよれ。


こうして俺達は道中も楽しく旅を続けていた。

そうそう。俺が求めていたのはこういうのなんだよ。

もちろん皇国は同郷の(よしみ)で助けてあげたいよ?でもこの世界では楽しむって決めてるからさ。

どんな苦境に立たされても楽しくを第一に考えないとな。


じゃないと仕事しているみたいで……俺は無職(夢食)なんだ…夢を食べて生きていくんだ…



ちなみにこの滝がある大河は帝国がここまで大きくなる前は二つの国の国境として存在していたみたいだ。

それを教えてくれた商人さんによると帝国の出現時期はわからないとのこと。いつの間にか現れて瞬く間に南東部の国々を呑み込んでいったらしい。


聞けば聞くほどわからなくなるとはこれ如何に?





ナイアガラの滝(自称)がある大河を渡し舟で越えた後は川沿いの大きな街で情報収集することになった。

地球でもそうであるように大河の周りに大きな文明又は国が発生するのはここでも同じ。

人とって大切なものが大河(ここ)にはあるっ!


帝国はバーランド王国と比べても倍以上の大きさだ。その為一々街の名前を覚えられない。聖奈さんが何かこの街の名前を言っていた気がするが気のせいだということにしよう。

どうせ覚えきれんし。


街は河から300メートルほど離れた場所から造られていて殆どの建物が木造建築だ。

恐らくこの大河を使って木材の運搬が可能だったのだろう。それで木造建築が目立つと。


おさらいだがこの世界に大規模輸送方法は少ない。この時代背景の建築物にレンガが多用されているのはレンガであれば材料の砂や粘土は何処にでもあり運ぶ事が容易である為だ。

なのでこの世界も例に漏れず煉瓦造りの家が多いのだが、この街では逆に木造建築の方が簡単…とは言えないが安上がりなのだろう。

庶民は綺麗な木の家に住んでいて富裕層は煉瓦造りの土台の上に恐らく中はレンガでその上に白壁を塗った家に住んでいる。


街に入った俺の第一印象がそんな感じだ。そして…


「あれって奴隷だよね?」


「多分な」


「まるで家畜の様な扱いですね」


北西部ではあまり目にする事がなかった奴隷が至る所に見られた。

その扱いはお世辞にも良いとは言えず、服ですらないボロ布を纏った男や中には女がリードの様なものをつけられて荷物を運んでいたりしていた。

全て…


「獣人だね」


「ああ」


人間至上主義とでもいうのか?獣人も多々見られるが街で見かけたその全てが首輪ないしリードをつけられていた。

所変われば品変わる。国が変われば常識も倫理も変わる。しかし…今まであった獣人はみんな良い奴だったからな……


えっ?狐耳お姉さんと猫耳男?忘れたなぁ……


宿を取り気分の悪くなった俺達は、何をするでもなくただただ無言の時間を過ごしていた。






翌朝、ライルを迎えに行き朝食を食べて再び気分の悪い街に戻ってきた。

『嫌なことでもあったか?何があったか聞かないけどセイの好きにすれば良い。俺はお前の味方だ』

なんて言われちゃあなぁ…

お兄さん役のはずなんだけどなぁ。有難い弟だ。


片や…

『えっ!?お土産がないです!?そ、そんな……』

この(バカ)は放置プレイだ。まぁ荒んだ心が少し癒えたから許そう。賞味期限切れかけのシュークリームをあげよう。


「セイくん…」


「そんな目をするな。いつも我儘を聞いてもらっているんだ。ロープウェイの件が片付いたらな?」


聖奈さんはクリクリの大きな目の下にこれまた大きな隈を作っていた。

一睡も出来ずに考えていたんだろうな。この子は弱者の味方だからな。俺よりよっぽど神様の使徒に向いている。


聖奈さんが教祖の宗教には絶対入りたくないけど。


「流石私の旦那様だねっ!」ギュッ


ブチッ


聖奈さんが調子に乗って抱きついてきた時、何かが切れる音が背後から聞こえた気がした。


「セーナさん。それについてはこの旅では持ち出さないと決めましたよね?まさか約束を破る…?」


「ひぃぃっ!?」


聖奈さんはミランの言葉にそちらに視線を向けた後、悲鳴を上げて後ずさった。

振り向いてミランを見るがいつもと何ら変わりはない。いや、昨日より可愛くはなっているけどなっ!


「セイさん?どうかしましたか?」


ブルッ


な、なんだ?!魔力視を使っていないのにミランからただならぬ気配が…!?


そんなコントを宿でしていた俺達だが、奴隷の事は今今どうにも出来ない為、それを呑み込み、今しなくては行けない事に取り掛かった。





「へぇ。そうなんですね」


街の市場にて八百屋のような店のおばちゃんと聖奈さんが話している。


「そうだよ。全くこれから忙しくなるっていうのに困ったもんさね。工兵?っていうんかね?早く戻ってきて仕入れや店番をしてくれなきゃ潰れちまうよ」


「旦那さんが早く戻って来れる様に祈ってますね」


聖奈さんはそういうとお金を渡していくつかの果物を購入した。

八百屋を出て市場の外れにある石の腰掛けに座り、買ってきた果物やサンドイッチの様なものを食べる事にした。

もちろん目的は情報の精査だ。


「結構強引に人を集め始めたみたいだね」


「そうだな。八百屋に何をさせるのか…まぁ鉄塔を建てたり拠点作りに使うんだろうな」


予備兵でもない人にいきなり武器を持たせて戦わせることはしないだろう。帝国は大国の上、まだ戦争が始まったわけじゃないし負けてもいないからな。


「多分ね。わかったのは帝国はロープウェイ…若しくはそれに近いものを早く実用化したいという事だね。それも工期を短縮したいくらいには急ぎたいと」


「だな。そうじゃなきゃ内容も理解できない力仕事しか出来そうもない八百屋の主人を徴兵なんかしないだろうからな」


ここには俺と聖奈さんしかいない。訳もなく。

ミランはモシャモシャと北西部では珍しい果物とサンドウィッチを食べている。

その小さな頬っぺたを膨らませている姿はまるで天使だ。


モシャモシャ…ゴキュッ


「う、ごくんっ。何で急いでいるんでしょうか?」


無理しなくて良いんだぞ?


「流石にこれだけの情報じゃわかんないよ。可能性で高いのはあるけど…」


「なんだ?」


俺とミランは食べる手を止めて聖奈さんを見た。


「そんなに改まられると言いづらいけど…今回のロープウェイは皇国を攻める為だよね?もちろんそれは手段で目的は別なんだけど。

じゃあ誰がその目的を決めたのかな?」


「それは…皇帝とかじゃないのか?」


「そうだね。恐らく皇帝かもしくは皇帝が断れない誰かなんだけど、その誰かさんの時間がなくなりかけているんじゃないかな?」


「?」


「つまり、皇帝が指示した事なら皇帝がその目的を果たしたいんでしょ?

その皇帝の時間…寿命か病か情勢なのかわかんないけどそれが間近に迫っているんじゃないのかな?」


なるほど…

つまり今回をクリアしたら帝国は皇国を諦める可能性が…


「それはないかな」


「…心を読むなよ」


ふふっ。と聖奈さんは笑うと続けた。


「分かり易いんだもん。ゴールが決まったような顔になったらそんな事くらいしか思い浮かばないしね。

でも残念。こんな大国がしようと思っているのならそれはこの国に必要だという事。

もちろん今の皇帝の私怨って可能性もなくは無いけど、可能性は低いよね。時間がない人の私怨に付き合うほど馬鹿な国ならここまで大きくならないだろうし」


「そっか。まっ!兎に角俺達のする事は変わらないって事だな!」


帝都までの道程はすでに聞いている。


「うん。話した通り悪いけどここからはセイくんに任せるね」


「うぅ…私も…」


「ダメだよ。時間がないからまた今度ね?」


聖奈さんが……お姉さんしてる…だ、と…?


ここから帝都まで馬車で2週間。

もちろん俺以外はそんなに暇じゃない。よって俺が一人で走って向かう事になった。

車を持ってきてドライブと洒落込んでもいいんだけど、車はエリーが研究の為にバラしていて組み立てるのに時間がかかる上にエリーには他にも仕事がある為頼みづらい。


よってまたぼっちマラソンが始まるって事だ。

俺の全力を見せてやるぜ……

サブタイトルは…気にしないでください…

(何も思いつかなったなんていえないっ!!)

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