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16話 聖十字連合神聖国の騎士達。呑んだくれを添えて。






『これより停戦に入る!』


ドドンッ


大きな宣言の後、これまた大きな太鼓の様な音が響いて男達が向かいの国に向けて足を動かした。


暫く行くと…


「凄い人数がこっちに来てるけど……大丈夫なんだよな??」


「はははっ!ビビってんのか!?流石に争いにはならねーよ。そんな事したら周りの国だけじゃなく共王国や皇国からも攻撃されちまうからな」


ビ、ビビってねぇしっ!?

ちびったかもしれんが……


蟻の様に見えていた人影はすでにしっかりと見えていた。

一万人規模の人達がここですれ違う。

立ち止まったりしたら人に踏み殺されたり馬車に轢かれたりするらしい。

聞けば一人二人死ぬ事は珍しい事じゃないらしい…


こぇぇ……


その後、俺達は無事に反対の砦を越えた。






「ここが宗教国家か…」


見た感じは前の国と変わらないな。街道は重装歩兵や重たい軍事物資を運んでいる為デコボコ道だ。

そして朽ち果てた建物がチラホラあり、その中ではそこそこ小綺麗な建物には手足が欠損している人達が共同で住んでいる。


町だと税が払えず住めないけど、なんの庇護も受けられないここで力を合わせて暮らしている様だ。


宗教の力でなんとかしてやれよ。とは思うけど、現実は難しいのかもな。

特にこの国は戦争になる事は稀だし、ここに暮らしている人たちも元は別の国の人が殆どみたいだな。


魔物?

これだけ兵士や傭兵が行き交う所には殆ど出やしないだろうな。

すぐに討伐されるだろうし、住んでる人達も元は兵で戦う術はあるだろうし。


「滅多な事を言うなよ。ちゃんと聖十字連合神聖国って名前があるからそれで呼ばないとしょっ引かれるぞ?」


「それを早く教えろよ…」


ガゼルは笑っているが冗談ではない。

行く先々の国で牢屋に入れられていたら、聖奈さん達に旅禁止令を出されてしまうだろっ!


「聖十字連合って名前だけど聖十字教って宗教なのか?」


「いや?キリスト教って名前だったな。何でもキリストっていう名の神様の子がここにいた事が由来らしいぞ。眉唾だけどな!」


キ、キリスト……ただの同名なだけだよね…?

うん。ボロが出る前に一刻も早く立ち去ろう。


そうは思っても今は集団行動真っ只中。俺一人の意見が通るわけもなく、小国家群の情報通である三人に従うしかない。

俺達は首都を目指した。






「今日はあの町に泊まるぜ。酒飲んで二日酔いになっても明日の朝出るからな?」


何だか俺に言い聞かせる様に伝えてくるが、一番まともだったのは俺だぞ?


他愛の無い言い合いをしながら四人仲良く町に入っていった。

町の中はやはり他国とは違い、神官服を纏った人が多く見られた。

入国税も入市税もかなりの額を取られてしまった。

お布施のようなものだって話だったけど、俺は仏教なんだよなぁ。いや、仏教の方が金かかりそうだな……やっぱり無宗教でお願いします。



よくよく考えれば俺は月の神(ルナ)教の教祖だったわ。俺の酒代の為にお布施よろしく。

そんなアホな考えをしながら宿へと入っていった。




「かんぱーい!」


「「「かんぱーい!!!」」」


ガゼル(上官)の号令に何の疑いもなく従う。

俺も立派な兵士(こま)になれたよ…


「かぁっ!キツイ酒だぜっ!」


どうやら蒸留酒を木のジョッキで頼んだ様だ。

馬鹿だろ…


ぐっ!?俺のもじゃねーかっ!?


「はぁ。こんなに毎日飲んだくれてて良いのか…」


「あぁん?一番飲んでるセイが言うなよな…それに傭兵なんてみんな同じだぜ?俺達は女を買わない分も酒を呑んでるから多い方だけどな!」


「柄にも無いぞ?」


コクコク


ガゼルだけじゃなくバックスにもそう言われてナードも激しく頷いて同意していた。


「以前酒で身を持ち崩しかけたんだ……その時の気持ちがな…」 


「はははっ!セイは堂々としてんだか、ビクビクしてんだかわかんねーぜ!

俺たち傭兵は今が楽しけりゃそれでいい!セイもこっち側の男だろ?」


「間違いないな」


コクコク


くそっ!そうだよ!

あれ?俺って生まれがこっちだったら間違いなくこいつらと同じだったよな?コイツらと違うのは、俺だと弱すぎてすぐに死んでそうだけど……


俺の呑んだくれの日々はどうやら続くようだ……




呑んだくれの日々は続いていっているが、俺達は無事に首都に辿り着いた。そして観光も程々に次の休戦日が近づく為、足早に首都を後にして国境へと向かった。

簡単に言えば酒ばかり飲んでいた…



聖十字連合神聖国は聖騎士と呼ばれる司教以上に認められた者達で編成された治安部隊がいる。

彼らのお陰で元々良い治安がさらに良くなっている。


例えばこの国には貴族はいない。では悪さをするのは?

悪い事を大きくしようと思うとどうしてもチカラが必要だ。

この国で権力のようなモノを持っているのは神官達だ。

そして神官は清廉潔白とのこと…嘘かホントかはしらん。


下は綺麗でも上は腐ってるなんてのは向こうでもこつっちでもありふれた事だ。

神官達を置いておくならばここで悪さを出来るのは商人達金持ちだ。


小さな村や町では商人が通ってくれないと生活できないところは五万とある。

俺の国でもあるバーランド王国でもそんな村や町は多い。


そういった力を持った商人が悪さ(賄賂の要求や商材の独占)をしないように見張るのも聖騎士の仕事の様だ。

神官は他国の傭兵からも敬われるが、この国の国民達は何よりも聖騎士にその想いを抱いている。

まぁ酒場で聞いた話だから酔っぱらいの戯言の可能性も……


そんな清廉潔白な聖騎士様に俺達は道を塞がれているんだが…どうしたものか。


「なんの用だ?俺達は他国の傭兵でここを通り道にしているだけだぜ?」


悪さはしてないよっていうアピールのようだ。

俺たちみたいな奴らは五万といる。


聖騎士達は俺達が首都から離れて人気が無くなってから声を掛けてきた。

俺には魔力探知があるから尾行には気づいていたんだよなぁ。

だからガゼルが言い訳しても無駄なんだけど、ここはとりあえず見守ろう。


「貴様に用はない。そこの黒髪の男を残して黙って去れば見逃してやろう。行け」


どうやらお目当ては俺らしいな。理由は何となく察しているけど。


「はっ。俺達傭兵に仲間を置いて去れだと?聖騎士だか性騎士だかしらねーけどここの国民じゃねぇ俺たちにでかい顔してんじゃねーよ!」


聖騎士はガゼル達からすれば戦争相手になった時に斬り合う敵だ。

敬うどころか敵対心しか持ち合わせていないのだろう。


「傭兵風情がっ!ならば死ねぇい!」


聖騎士の数は十人。その内の一人が叫びながらガゼルに斬りかかった。


キンッ


ガゼルは腰の剣で聖騎士の剣を斜め後ろに飛びながら弾く。

それを見てバックスは背中に背負った鉄の棍を持ち槍の様に構え、ナードは分厚く長い両手剣を抜いた。


ガゼルは三人の中では小柄で172センチほど。その小ささを活かした素早い剣術を使う様だ。

バックスは大柄な身体つきを見てわかる様にその鉄の棍を振り回しそうだな。

ナードは俺と同じくらいの体格だけど……その重そうな剣をちゃんと振れるのか心配になる。

まぁ今日まで生き残っている時点で俺の心配は杞憂だろう。


それに傭兵は明日のことを考えない。今を生きているから死んでも後悔はしない。

って聞いたけど……もう三人には死んでほしくないんだよな。


流石聖騎士と呼ばれるだけあってその剣は鋭く強そうだ。

しかし一対一ならガゼル達でも逃げるくらいは出来そうだな。


聖騎士達が一斉に斬りかかりそうになった所で俺は声をあげた。


「待て!俺になんの用だっ?!」


「貴様に用などない!あるのはその腰についてるモノだけだ!」


やっぱり…


「聖騎士様とあろう方達が物盗りか?落ちぶれたもんだな」


「うるさい!死にたくなければ魔法の鞄を渡せ!」


渡した所で殺すんでしょ?


「セイ!コイツら…『わかってる』」


俺はガゼルの言葉を遮り、聖騎士達に対峙した。

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