9話 金なら捨てるほどあるっ!童○は捨てられないけど…
「おっ。綺麗なアクセサリーがあるな。よし。機嫌取りに買って行こう」
王都散策で探していたのは聖奈さん達へのお土産だ。
ライルには何か別の物を買おう。
いや、イケメンリア充にお土産いるか?いらないよな?
「すみませーん」
俺は店員さんを呼び、みんなに似合いそうなモノを見繕ってもらった。
俺が選ぶから喜ぶ?
ホントに俺のセンスでいいと思うのか?
ミランにプレゼントでたま○っちを選ぶくらいだぞ?
いや、これは別の世界線か…
何言ってんだ?
「ここが明後日のオークション会場か…」
散策ついでの買い物を済ませた俺はオークション会場の下見に来ていた。
といっても宿の向かいなんだけどな。
「当館に御用でしょうか?」
キョロキョロしていたら燕尾服のようなものを着た初老の男性に声をかけられた。
「明後日のオークションに参加しようと思っていてその下見に…」
冒険者モードでいくか商人モードでいくか決めかねていた為、挙動不審に答えてしまった。
「左様ですか。であれば中をご覧になりますかな?今ならまだオークションの品を搬入前ですのでご覧になれますよ」
「お言葉に甘えます」
「ではオークション参加資格証か又はそれに準じるモノを確認させてください」
俺は商人カードを見せた。
「ほぅ。ランク4の商人様でしたか。であればオークションへの参加は可能ですな。こちらへ」
参加資格とかあるん!?って焦ったけど何も言われてなかったから元々参加できるって組合長はわかっていたんだな。
言ってくれよ…
何はともあれこの男性について行こう。
俺は宿の前の円形の大きな建物内に入った。
どうやら一階の真ん中がステージになっていて全ての階の全周からオークションに参加できるようだ。
建物の大きさはステージの直径が10m程、建物全体の直径が60m程ある。
「普段この建物はどんな用途があるのですか?」
「ここは定期的にオークションが開かれていますので他のご利用は出来ません。
昨日は奴隷市が開かれていましたし、明後日は魔導具のオークションになります」
なるほど。オークション専用会場か。
ここは奴隷制度があるんだな。昨日行かなくてよかった…
絶対聖奈さんやミランに小言を言われる事になっていたな…頭痛が痛い。
「オークション参加者の方々は一階と地下に出入りは出来ません。失礼ですがオークションの仕組みはご存知で?」
「いえ。初めて参加します」
「ではご説明致しましょう。
オークションには様々なモノが出品されます。ですが購入方法は全て同じでございます。
参加者には番号札とそれと同じ番号が書かれたモノを身体の見えやすい位置に付けていただきます。
競り落としたい商品があればその商品の競りがスタートしましたら任意の金額を番号札を上げながら中央のステージの係の者にその場でお伝えください。
ここで注意事項ですが、オークションの前に受付にて番号札を貰うときにお金を預けます。
このお金以内でのオークション参加になります。
ですのでそれ以上の入札を行うとペナルティとして預けたお金の7割か又は提示額の半額の大きい方が没収されてしまいます。
途中で預けている資金が足りなくなれば追加する事も可能ですのでその際は係の者にお気軽にお声がけ下さい」
なるほど。ルールは地球でもよくあったものと同じか。参加した事ないけど。
注意事項は大事だな。残高を覚えておかないとな。
「ありがとうございます。では明後日また来ます」
「はい。ご参加お待ちしています」
「ところで…その服はジャパーニア製でしょうか?」
「おお!わかりますかな?こちらはモーニングと呼ばれるモノだそうです。
流石大商人様はモノを良くご存知で」
兄弟の結婚式で親父が着てたからな……
やはりジャパーニア…
生地はどうしたんだろ?
俺はどうでもいい生地の事に思考を持っていき、現実逃避しながら宿へと帰って行った。
夕食後宿の部屋にて。
「まさか銃火器はないよな?」
そう独り言ちるが…
「いや、真っ先に作るよな…」
甘い思考はやめよう。どう考えても普通は戦う力を優先するよな。その後に娯楽とかだよな。
「でも服とかに力を入れてるからやはり今は落ち着いているのか?」
文化に力を入れられるのは国が国内外すべて安定していないと無理だ。
ナターリアがまさにそれだったな。
「今考えても意味ないけど…やっぱ気になるよな」
今生きている可能性は限りなく低いけど、建国者かそれに近い立場に居たのは間違いなく元日本人だろうな。
それか日本大好き外国人の可能性も…
そんな風にモヤモヤと過ごしていたらいつの間にかオークション当日に。
「凄い人だな…」
オークション会場の入り口にはすでに列が出来ていた。
俺はその最後尾に並び入場の順番を待った。
「お次の方どうぞ。身分証又は紹介状の提示をお願いします」
「お願いします」
先日は見なかった可愛らしい狐耳が頭の上でぴょこぴょこなっている女性に商人カードを渡す。
「確認できました。セイ様ですね。ご入金金額の確認とお金をお願いします」
ドサッ
「す、凄いですね」
ドサッ
「えっ?」
ドサッ
「」
ドサッ
「待ってください。セイ様はVIPルームにご案内しますのでこちらは一旦お戻し下さい」
俺が無言で金貨袋を取り出し続けるとお姉さんに止められた。
どうやらある金額以上の預かり金を入金するとVIP待遇が受けられるそうな。
態々並んだ意味…と、思わなくもないが知らないものは仕方ない。
狐耳の可愛いお姉さんに連れてこられたのはステージがしっかりと見える広いボックス席だった。
他の席は木の長椅子だけどここはソファが置いてあり、テーブルまである。ここに一人は寂しいと感じるくらいだ。
「こちらで入金額を確認致しますね」
何だろう…心なしかお姉さんの笑顔が増えたような。
後近いし。む、胸が……当ててきてる!?
ここは天国か?
間違いない!こんな時にいつも邪魔するあの人がいないんだ!天国万歳!狐耳万歳!巨○万歳!
俺が煩悩に塗れていると数え終えたようだ。
「ではこちらで間違いないですね?」
「は…はい」
「あら?暑いですか?お飲み物を持ってきますね」
あれ?オークション会場だよな?
キャバクラじゃないよな?
お姉さんは何故か隣に座り、飲み物や食べ物のお世話、さらには暑いと言えば扇子のようなもので扇いでくれた。
「そうなのですね。ではセイ様はこの後出品される『
魔法の鞄』を狙っていたのですね」
「え、ええ。私はこの通り持っているのですが仲間にも有れば便利なので…」
そう。今回のオークションでの狙いは魔法の鞄。
レデュールのギルマスが俺が魔法の鞄を持っていると知った時に、このオークションの事を教えてくれたのだ。
『てっきりそこで競り落としたのかと思いましたよ』
その後、大凡の落札額を聞いて足りそうなため、急遽ここへ来たのだ。
「あっ。始まりますね。頑張って下さいね」
「頑張りましゅっ!」
まるでコスプレイヤーのような格好と見た目をした可愛いお姉さんに笑顔でそんな事を言われたら…噛んじゃうっ!
『では本日の目玉の一つ、魔法の鞄です。金貨200枚から始めます』
徐々にではあるが金額が上がっていっている。俺はまだ参加しない。
この国の…と言うよりも北東部地域の貨幣制度は銅貨何枚とかだ。
一応ギルのような通貨単位はあるんだそうだが、色んな人種がいるからわかりやすくそうしているそうだ。
鉄貨→銅貨→銀貨→金貨の順だ。大銀貨とかもあるが俺は金持ちだから細かいところはいいのさっ!
『金貨700枚です。他には?』
「金貨800枚」
これまで10枚単位で上がっていたところに俺が100枚上乗せでいきなり参加した為、周りがどよめいた。
『805枚だっ!』
『2011番様。805枚です』
わかりやすいデブで装飾過多の商人か貴族っぽい見た目の奴が上乗せしてきた。
「金貨900枚」
ザワザワ
『3225番様。900枚です』
俺は金持ちだからな!端数など知らんのだ!がはっはっ!
『くぅ…901枚』
まだ頑張るか……いいだろう。くらえっ!成金奥義……
「金貨1000枚」
アナウンスがデブの金額を告げる前に被せるように上乗せした。
まぁ。ほぼ全財産なんだがな。
これ以上乗せるなら今回は諦めるしかない。ギルマスも1000枚は中々超えないって言ってたし。
カンカンッ
『金貨1000枚で3225番様。落札です』
どうやら落とせたらしい。
「キャー!!カッコいい!!セイ様やりましたねっ!」
ギュッ
だ、だ、抱きつかれたぁぁあ!!
柔らかい……これが金貨千枚のちからぁ……




