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8話 バレとるやないかっ!





「おお!見えてきたな!」


あの後すぐに街を出た俺は、次の目的地を目指していた。

それは貿易の拠点。アーメッド共王国の王都『ターミナル』だ。

場所は海からほど近い場所にあると聞いていたが…


山のような丘から見下ろす王都は壮観だった。

やはりここにも城壁はなく、海へと繋がる川を中心に円状に街が広がっている。

恐らく海へのアクセスには川船を使っているのだろう。

海から少し離れているのは高潮の被害から逃れる為なのだろうか?若しくは津波か。


そして山のような丘が近くにあるのに無防備な姿を晒している王都は外敵がおらず安全が保てるから便利さだけを重視した結果なのだろう。


この国に来る為には紛争地帯である小国家群を越えるしかないからな。ジャパーニアが攻めてきても海からだけのようだし、ジャパーニアはジャパーニアでどことも戦争する気配はないらしい。


そして魔物も出ない。街道にさえ。


初めは偶々かと思ったけどギルマス曰く、獣人(獣の特徴がある人達)達は好戦的で魔物を見かけたら誰彼構わず討伐に向かうらしい…


その好戦的な獣人もこの国ができた当初はその気質から度々問題を起こしていたが『そんなに戦いたいなら魔物を狩れ!街中で力を振るう事は子供のする事だ!』と当時のカリスマ性抜群な建国の王、共王に言われてからはストレスが溜まる前に狩りで発散させるようになった。


そのお陰で人が住む場所の近くでは魔物は激減。出るには出るが気付く間も無く討伐される。


やべぇな獣人…


そんな魔物からも他国からも襲われないこの国の街は外壁要らずってことらしいな。




「さて。それじゃあ他国の王都を見学と行きますか」


公務でもないのにやる気を出す。

いや、公務じゃないからこそやる気が出るんだ!


「それにやる事も見つけたしな」


俺は王都に向けて足を踏み出した。




「四泊頼む」


俺は王都の中でも比較的綺麗な宿に泊まる事にした。

折角金持ってんだから使わないとな!


「はい。お部屋にご案内致します」


お金を払ったらホテルマンならぬ宿男に部屋へと案内された。

高級宿は違うぜ!


「では、何かありましたらお気軽にお申し付けください」


部屋に案内した後そう言った男に俺は


「済まないが教えてくれ。オークションの日時は明後日で合っているよな?」


「はい。オークションは明後日の午後から目の前の建物で開催されます」


「ありがとう」


俺はそういうとお礼にチップを渡した。

男は恭しく受け取ると部屋を出て行った。


「うーーん。ギルマスにオークションの事を聞いて直ぐに向かったけど…明後日かぁ……まあ観光でもして時間潰すか」


ここまでは馬車で1週間だと聞いた。だから走った。死ぬほど走った。

その結果三日で着いてしまった。正確には三日掛かってないけど……まぁ馬車って案外遅いし?


『セイさんでしたら間に合うでしょうが、次のオークションの開催日は五日後です』


それを聞いて飛び出したけど、飛ばし過ぎたな……


ギルマスは転移魔法がどこでも行けると思ってたんだな。そんなに便利なら城から聖奈さんが言っていた世界征服が出来ちゃうじゃん……


「王都は人ばかりだな。ここは獣人が少ないみたいだ」


恐らく住み分け?のようなものなのかな?

それとも魔物が多い場所に獣人達が多く集まっているのかも。


安全な街道とはいえ走り過ぎて流石に疲れたから今日は早いが休もう。




早めに休んだのだったが俺は夜中に異変を感じて飛び起きた。


「えっ!?俺の腕が……光ってる…あっ!」


呼び出しか……一瞬エルフに言われ過ぎていたせいで精霊になったのかと思ってビビったぞ…


「今何時だ?」


窓の外は真っ暗であった。


呼び出された俺は王城(建設中)へと転移した。








「そうだったんだね。在庫がかなり減っていたから驚いたよ」


城で聖奈さんにあった俺はエルフの事を除いて殆ど正確に伝えた。

ああ…獣人が多い事も伝えてないな。


「真面目に仕事をしていて驚いたか?」


「うん。それは偶々だね。でも活動資金が出来て良かったね。それで隠し事は何かな?」


ギクッ!?

何故バレた…


「だって顔に書いてあるよ?話すべきかどうかって」


「……そんなにわかりやすいか?はぁ。じゃあ伝えるぞ。ジャパーニア皇国という国の情報を手に入れた」


今すぐどうこうとかではないけどいずれ話す予定だったから前倒しになってしまったな。


「…なるほど。名前だけで何となくわかったよ。それに私にまだ(・・)伝えるつもりがなかった理由も」


「……まぁ聖奈は忙しいからな…主に俺のせいで」


これ以上心労を含めて苦労を掛けるのは忍びない…


「はぁ。前にも言ったけどみんな好きでセイくんの為に頑張っているの。というか、セイくんの性格だとこっちがいつまで経っても恩返し出来ないんだよね。

そういうところにみんなが惹かれているんだから不毛だよね……」


「俺は好きなことをさせてもらえているから十分なんだけどなぁ…」


「そう思ってもらえてるならみんな喜ぶよ。とりあえずジャパーニア皇国についてはすぐにどうこうって事じゃないって認識でいいんだよね?」


うん。一を聞いて十を知るというやつかな?

俺クラスになると十を聞いて半分以上忘れるぞ!


「そうだ。驚くと思うけどジャパーニア皇国は輸出品としてアーメッド共王国に真っ白な紙と鉛筆それから醤油などの調味料を送っているんだ」


「ふーん。まぁそれくらいなら作れるよね。問題は大豆?かな。似たような豆類があれば作れそうだけど…他には?」


作れるんかいっ!じゃあわざわざ紙を地球からの輸入に頼らずに商会で作れば……いや、何か考えがあるんだろう。口は出すまい。


「他は……調べてない…」


「セイくん…旅を楽しんでいそうで何よりだよ」


面目ない…

というか、まだ先でいいじゃん?の精神なんだよ。

夏休みの宿題と同じなんだっ!!


「こっちでも色々と調べてみるよ。遠くの場所はまだ私達に関係なさそうだったから近隣の情報しか調べてなかったけど、それを聞いたらまだまだ楽しい事が待ってそうだねっ!」


「いやぁ…楽しいか?俺には面倒ごとの香りしかしないぞ…」


「セイくんはずっとそのスタンスだもんね!私はどちらかというと今みたいに内政も楽しいけどトラブル待ちだねっ!」


聖奈さんはトラブルメーカーが天職だもんな。


久しぶりに会った聖奈さんとは夜明け近くまでついつい雑談をしてしまった。


「忙しいだろうにこんな時間まで付き合ってもらって悪いな」


「だ〜か〜らっ!それはいいのっ!それに私は貴方の愛しの奥様なんだよ?夫婦に夜通しの会話は必須なんだからっ!」


「……それ、まだ続けるのかよ」


偽装結婚なのに他の人がいないところで夫婦プレイって意味あんのか…?


「明日…といっても数時間後だけど忙しいだろ?俺も宿に帰るよ」


「うん。寂しいけど私がいないからって泣かないでね?」


「……おやすみ」


これって誰得なん?


転移魔法を使いアーメッド共王国王都ターミナルの宿へと帰った俺は秒で寝た。



翌朝起きてする事もない為街をブラブラと散策する事にした。


「元々いろんなモノを見る為に旅に出たんだからこれが目的だったはずなのに…」


コロコロと変わる現状に少し気落ちしたけど…


「ま、いつも通りか!」


ポジティブに捉える事にした。

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