16話 WS設立。
今日こそはと、ソファで寝ていた俺はいい匂いに目を覚ました。
「おはよう。もう少しで朝ごはん出来るから、顔を洗ってきてね」
まるで新婚の…以下省略。
顔を洗って席に着くと、すでに朝ごはんは並べられていた。
相変わらず美味い朝ごはんを食べた後に、俺は話しを切り出した。
「とりあえず給料とは別に、100,000円ほど現金を渡しとくよ。何か必要なものがあればそこから出しといて。
足らなかったらまた言ってくれ」
そう言って100,000円が入った封筒を渡しておいた。
「それから、この後少し遠くの買取専門店に行ってくる。
聖奈は起業の為に動くんだよな?」
「うん。その予定だよ。計画の為には人を雇わないといけないから、そっち方面も今日してくるよ」
なんだか聞いてもよくわからないから全部お任せだ。
俺が口を出すより、聖奈さんに任せた方がきっとうまくいく。
口は出さないが金は出すぜ!ヒャッホッーイ!!
まだ500万ないけど…
準備をした俺は目的地が遠い為、先に家を出る事に。
「じゃあいってくる」
「いってらっしゃい」
聖奈さんが笑顔で手を振る。
「なんだか新婚さんみたいだね!」
いらんことも言う。
駅に着いた俺は以前とは違う店に向かった。
片道2時間も掛けていったが、それ以外に特筆することはなく、無事にお金に換えられた。
余りの大金にカバンに添えた手が震えるが、他の人にはどう映っているのだろう?
チワワの様に可愛く見えるだろうか?
変質者には間違われないよね!?今職質されたら変なこといっちゃいそうだわっ!
帰り道。空いている特急は良かったが、向かいの混んでいるホームを見た俺は、怖くなって改札を出てタクシーに飛び乗った。
「お客さん。顔真っ青だけど大丈夫かい?」
タクシーの運転手さんに心配されたが、ボケを返す余裕もなかった。
無事に帰宅した俺は、寝室に金が入ったカバンを置いてリビングで休んでいた。
「あんなのいつもそばにあったら気が休まらんわ…
聖奈さん…早く帰ってきて…」
初めて聖奈さんがいない事に不安を感じたのだった。
side聖奈
「ただいま。あれ?いないのかな?」
灯りは付いているのに返事がなかった事に疑問を抱いたが、あまり気にせず部屋へと入っていく。
「なんだ。寝てたのか」
リビングに入るといつものソファで聖くんが寝ていた。
「ホントに寝てるのかな?」
つんつん
「寝てるね。私も寝ちゃおっと」
私は聖くんが寝ている狭いソファの上に身を縮めて横になった。
side聖
「ふぁ。あれ?寝ちゃってたのか…」
あれ…?何で聖奈さんが一緒に寝てるんだ!?
しかも抱きつかれてる…
俺の理性がぁー!!!
ぺしっ
「痛っ!えっ!?なに!?」
スヤスヤ寝ていた聖奈さんのおでこに、デコピンをかました。
「なにって、それはこっちのセリフだ。
ベッド貸してたんだから、そっちで寝ろよ…」
俺の精神衛生上ぜひそうして欲しい。
「だってエアコンが効いてて少し寒かったんだもん。
聖くんは暖房として商売できるね!」
誰がこんな酒臭いやつと添い寝したがるんだよ…
「アホな事言ってないで、報告会を始めよう」
俺は仕切り直して聖奈さんと話を始めた。
「まずは俺からだな。といっても聖奈さんの報告は聞いてもチンプンカンプンなんだけどな。
70万ギル相当のサファイアを全て売ってきた。
売却価格は10,615,000円だったよ。
お金はどうする?とりあえず500万渡せばいいか?」
「凄いね!
とりあえず株式会社設立に必要なのが100万円だから、それは今預かっておくね。
後の400万円は銀行の手続きが終わって、会社の口座が出来てから預かるね。
残金はどうするの?」
すでによくわからん。
「残金は税金の支払いに消えるから、そのまま残すかな」
「えっ?そんなに税金かからないよ。
その為の会社だから」
「そうなのか?」
詳しく聞いたがさっぱりわからない為、全部管理してもらう事にした。
支払わなければならない税金は俺が想像していた額の3/4から1/2くらいに出来るようだ。任せよう。それが世の為だ。
「社長は聖くんだけど、給料制だから運営資金の余剰として会社で預かっておくね」
給料制か。その方がお金の管理が楽でいいな。
生活費に20万だけ残して、後はお小遣いだ!やったぜ!
「社長は俺なのか?聖奈の方が向いてるし、何より動いているから聖奈にして欲しいのだけど」
「ダメだよ。女性はまだまだ甘く見られがちだし、それに私は社長業より実務の方が向いてるからね」
まぁ、名前だけだし別にいいけど。
「それに約束したよね?私を雇ってくれるって」
あんな中途半端な言葉をまだ言ってくれるのか。
「そうだな。これからもよろしくな」
「うん!よろしくね」
翌日から地球での物事が急速に進んでいく。
俺は何にも関与してないからわかんないけど…
翌日、夕方の報告会で俺にわかりやすいように、聖奈さんが纏めてくれた。
1.株式会社『WS』を設立。社長は東雲 聖。
1.会社の場所は少し田舎の倉庫兼事務所を借りた。
1.従業員にバイトを二人雇う。
1.聖奈さんの知り合いの顧問税理士を頼んだ。
「なあ。WSってなに?」
とりあえず上から順に質問してもらう事にした。
「私達の名前って、偶々だけど両方とも聖ってつくよね?
WSって感じで付けたの」
どこの聖闘士だよ!黄金目指してるのかっ!?
恥ずかしいけど、誰にも言わなきゃバレないよな。
全部任せた事を少し後悔したところで、次の質問に移った。
「なんで田舎の倉庫にしたんだ?ここからだと車じゃないと不便じゃないか?」
「田舎の方が家賃が安いし、人件費も安いのが大きな理由だね。他にはあまり人が来ない方が私達には良いからかな。
後、車は買ったよ。後5日くらいで納車されるよ。聖くん免許待っていたから社用車名義で買っちゃった」
なに?!知らぬ間に車を買ったのか…流石の行動力。
でも、助かるな。買い出しにも困っていたからナイスとしか言いようがないな。
「わかった。車はどっちにしろ買おうと思っていたから助かったよ。バイトも新しい事業には必要だし、暇な時は白砂糖の瓶詰めをしてもらえばいいな。
税理士さんもありがとう。
ちなみに車は何にしたんだ?
プロ○ックスとか、サ○シードとかかな?」
俺はパッと思いついた、物を運べる商用車を並べた。
「いいよ。それが私の仕事だからねっ!
車は型落ちだけどア○ファードにしたよ!広くて良いよね!カッコいいし!」
何故にその車に……
まぁ、普段何も文句言わずに動いてくれているんだ。
好きにさせよう。
しかし俺にあんな大きな車を運転できるのか…?
「よく昨日今日でそこまで決まったな。流石聖奈だ」
とりあえず褒めとけ作戦だ。
「ふふふっ。流石に1日じゃ無理だよ。事前に全部用意していたから、今日は書類を提出しただけだよ」
「それも含めてやっぱり聖奈は凄いな」
ここまで聖奈さんをべた褒めして持ち上げているのには理由がある。
それは、今日は二人にとって、特別な夜になるからだ。
まだ成功するかわからないけど、精一杯頑張るよ。
いや、告白ちゃうよ?
「聖奈。ついに今夜だぞ」
「えっ!?まさか告白っ!?」
わかってるくせにこいつは…
「じゃあ俺が告白したとして、異世界の事はいいんだな」
「嘘嘘!!覚えてるって!毎日祈っていたんだからっ!
あっ。でも、告白はしてもいいよ?」
まだふざける聖奈さんに、俺はおやすみといってソファに寝転がった。
「えっ!?嘘でしょ!?満月が終わっちゃうよ!起きて!」
焦る聖奈さんが面白くてつい笑ってしまった。
「ははっ。大丈夫。ちゃんとお願いするから。それに時間は日を跨いでからだぞ。満月のピークが3時頃だ。
だから1時くらいまで仮眠しよう。
おやすみ」
まだ暗くなり始めたばかりだが、寝る事にした。
ここまで頑張ってくれたんだ。少しでも成功確率を上げたい。
「ありがとう聖くん。失敗したら慰めてね」
聖奈さんは寝転がる俺に向けてそう言うと、ほっぺたに柔らかい感触があった。
「おやすみっ!」
バタンッ
おいっ!寝れなくなったやないかいっ!
残金
1,130,000+10,615,000-10,000,000-100,000-200,000=1,445,000円(次回端数は切る)
100,000ギル
税に造作が深くないのでファンタジーという事で…
便利な言葉、魔法の言葉ファンタジー…
(作者にとって)




