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152話 ナターリア王国軍vsシューメイル帝国軍





対峙したのは帝国軍25万とナターリア王国軍30万。

数では王国が勝っているが、国の気質で剣より魔法に力を入れてきた為、物理的にぶつかれば十中八九負ける。

軍隊なんだから魔法部隊と上手く連携しろよと思わなくもないんだけど、それも魔導士至上主義の国風により難しいのが現状のようだ。


国王の演説の後、両軍で作戦会議が行われていた為、今は両軍は離れている。

この草原自体は帝国が併合する前の国と皇国が国交をしていた主要な国境の為、かなり見通しも良く、広大だ。


50万以上の人達が布陣してなお、余りある大地だ。戦争なんかせずに畑でも耕せよと思わなくもないが時すでに遅しだな。


500mほど両陣営が離れているこの踝丈の草原に開戦の狼煙が上がった。


太鼓の音と共に帝国軍が足並みを揃えて前進してきた。が、こちら側は一歩も動かなかった。


「じゃあ行ってくるね!」


「ホントに大丈夫か?」


聖奈さんのまるでピクニックにでも行ってきますくらいの挨拶に指揮官が不安を投げかける。


「大丈夫だよ。指揮官さんは近づく敵だけに対処してくれたらいいよ」


俺達に任せろとは言ったが、この広い戦場では必ず撃ち漏らし、間に合わない場合がある。

それくらいなら数の力でどうにかしてくれという事だ。


最初は敬語だった聖奈さんだが、国王を実際に連れてきた事で無駄に取り繕う事はしなくなった。


聖奈さんが車に乗った事を確認した俺は車を走らせた。


「向こうがこっちを見てるよ!びっくりしてるね!」


そりゃそうだろう。得体の知れないモノが信じられない速さで向かってきているんだ。

以前にも言ったけど、この車には装甲板が取り付けられている。そして攻撃は基本的にはサンルーフから身を乗り出しての狙撃になる。

助手席にはミランが乗り、2列目にはエリーと聖奈さんが乗り、サンルーフから二人が身体を出している。

三列目にはマリンとライルが乗っていて、ライルがサンルーフから後方の見張りをしている。

運転席はもちろん俺だ。


ちなみに車のガラスは特注品だ。ちょっとやそっとの事では壊れない仕様になっている。


「始めるよ!」


向こうはまだ100mも進んでいない。

こちらは両軍の中間地点を横断する進路を取った。


パラララララッ


エリーが元ミラン愛用のサブマシンガンを敵に向けて放つ。


パァンッパァンッパァンッパァンッパァンッ


聖奈さんは指揮をとっているモノに向けてライフル弾を放つ。

まあこれだけ動いているから狙いは逸れるだろうけど。


バシュッ


サブマシンガンをマガジン一つ分撃ち終えたエリーはRPGを放った。


ドゴーン


『うぎゃあっ!?』


『う、腕がぁ!?』


混雑してて良かった。危うくスプラッタシーンを目撃するところだったな。


狙う必要が無ければこれ程頼もしい武器はないな。


「セイ!俺にもアレ貸してくれ!」


「アレって…対物ライフルか?」


「そうそれ!」


ライルにせがまれたので弾込めの為に魔法の袋を預けていたマリンに許可を出した。


バァンッ


『ぎょえっ!?』


「スゲェー!!1発で三人くらい体の一部が吹き飛んだぞ!」


バァンッバァンッバァンッ


対物ライフルの連射は前方の敵の戦意を挫くのに充分すぎたようだ。


『に、逃げるぞ!俺は逃げる!』


『俺もだ!やってられるか!』


後ろを押し返すように逃亡を図る帝国兵。

真ん中の兵士は訳もわからず前後を挟まれて圧死しそうだな…


「よし。ここは十分だ。少し移動するぞ」


「OK!」「意味は知らねーがおーけーだ」


王国側から見て右方向の帝国軍が崩れた為、戦場を移動する。





次の狙撃場所に車を停めて攻撃を始めた。

暫く同じ事を繰り返していくと


「セイさん。帝国軍左翼が王国軍とぶつかります」


「わかった」


ミランの言葉に返事をすると車を降りて魔法を発動する。


『フレアボム』


かなり距離はあるが今の魔力操作、制御を持ってすれば問題ない。


一キロ程先に魔法が着弾した。

さらに


『アイスブロック』


狙いは先程の魔法より帝国側だ。


「ダンジョンでの環境破壊は無駄じゃなかったな」


遥か上空から米粒みたいなモノが落下してきているのを見て感慨深く呟いた。


ドンッ


距離はあるが流石質量攻撃。腹に直接響く音を残して砂煙をあげた。

良かった。血煙じゃなくて。


環境破壊に繋がるからあまり連発出来ないな。


あまりの理不尽な攻撃に逃げ出す左翼の帝国軍。前後を分断された左翼の帝国軍は放っておいても瓦解するだろう。


その後も俺達は両軍のど真ん中を右から左へと進んでいった。






「白旗です。帝国軍降伏しました」


この世界でも白旗なのか。もしかしたら昔に同郷の者が伝えたのかな?

何にしても終わって良かった。


「よし。戻ろう」


俺は車を王国軍本陣にある天幕へ向けて走らせた。







『アールカナ!アールカナ!』


俺達は大声援に出迎えられた。

しかしアルカナって…一瞬何の事かわからなかったぞ…

本人でも忘れている『アルカナの探求者』というパーティ名。そう言えば聖奈さんが指揮官に伝えていたな。


「素晴らしい活躍だった!ありがとう!君たちはナターリアの…いや、この戦争に関わる三国の救世主だ!」


そんなに持ち上げても何もやらんぞっ!

穿った見方だったか…いや、穿ったは正確には的確とかプラスの意味だったな。

むしろ的外れって思うべきだろうな。


「ここはもう大丈夫だね?」


「あ、あぁ。良ければ戦後処理も手伝って欲しいがそれは頼めれんしな」


「戦後処理?そんなのは帝国軍のお偉いさんだけ捕らえて、後は武器、兵器を放棄させて、兵糧だけ持たせて自国に帰るようにすればいいよ。後、この戦争の結果を自国で喧伝するようにしてもらえれば尚よしかな。

とにかく無力化させて、さらに解散させれたら問題ないよ」


ここで出来る戦後処理などそれくらいだろう。

それにしても誰も戦争を経験していないとは言え軍部のお偉いさんまで聖奈さんを頼るとは…

おれ?俺はあれだよ…社長だから部下を使わないとな!


後は帝国を含めた4カ国での協議だ。


「了解した。援軍はいくらほど送ればいいと?」


そこまで聖奈さん任せかよ…


「10万…いえ。5万もいればいいんじゃないかな?皇国もあまり大勢が来ても食糧難になるだけだしね」


「わかった。では兵站と5万を送り出そう」


聖奈さんの目的は済んだことだし、俺達は一旦水都に帰った。






「良くやった。持つべきは飲み友達であるな!」


水都の城でカイザー様に現状を報告すると俺みたいな感想が返ってきた。

どうやらナターリアが今回の戦争で出来ることはやれた為、肩の荷が降りたようだ。


「またセイと遊んでやってくださいね。王妃様の許される限りですが」


最初はニコニコと聖奈さんの言葉を聞いていたカイザー様だが、最後の言葉に視線を泳がした。

うん。わかるよ。


「それで向こうからは何かありましたか?」


これは皇国についてだ。帝国が反応するには時間が無さすぎるからな。


「ああ。最初に援軍要請が来ていてな、もちろん他人事ではないから二つ返事で了承したのだ。

しかし軍を送ってからさらに追加の要請があった」


そう言うといつもの爺さんが手紙?を渡してきた。


「それが皇国からきた親書だ。読んでみろ」


俺は受け取って読み出した。


『この度の援軍感謝申し上げる。既知の通り我が国は西は魔物、東は帝国という敵に挟まれ建国以来の窮地に立たされて…』


まわりくどいがこれは…


「ようはお礼は出来ないけどもっと援軍をって事だね」


横から手紙を覗き見していた聖奈さんが歯に衣着せぬ物言いをした。

わかりやすい…


「確かにこのまま行けば帝国軍50万に呑み込まれるやも知れぬ。王国はそのまま援軍に向かったのであろう?我が国も5万の援軍が向かったと聞いた。問題なかろう。

が!セーナの望みを叶える為であれば足りぬな。援軍に行けば足りるやも知れぬが」


「はい。元々エンガード王国軍の援軍に行こうと思っていましたので変わりありません」


まだ戦地には着いていないだろうな。

後3日…早くても明後日くらいか?


「しかし、皇国が自力で跳ね除けてしまえばセーナの望みは叶わぬかも知れぬぞ?」


カイザー様はすでに開戦しているであろう皇国対帝国の戦いで皇国が勝ったら難しいと言ってきたが


「皇国は勝てないと思いますよ。もちろん戦争に絶対などありませんが、私達が戦った印象では帝国は少なくとも二つの王国よりは練度も戦略も上でした。

皇国だけ3国の中で抜けていなければほぼ負けです」


「なるほどな…自国の戦力が低いと言われても致し方なしだ。

皇国もそこまで差はないはずであろう。ではすぐにでも行くのか?」


その答えに聖奈さんはとびきりの笑顔で答えた。

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