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148話 金色のバスローブ。





俺はライルに合図を送った。

合図を確認したライルは俺に向かって全力疾走してきた。


飛び込んできたライルの足の裏を指を組んだ両手で受け止めて


「うおりゃあ!」


全開身体強化で上にぶん投げた。


シュタッ


シュルシュル


城壁の上に着地したライルがロープを降ろしてきた。

俺はそれを使い城壁を越えた。






「やっぱり反対側の方に向かったんだろうな」


城壁を越えた俺達は闇夜に乗じてこの都市最大の建造物へと向かう。


「あれだけの音と閃光だからな。状況確認も兼ねて騒ぎになってるだろうよ」


「警戒度は上がったけど都民も夜なのに気になって出て来ているみたいだから良かったかもな」


怪我の功名か…なんか微妙に違うけど。


挿絵(By みてみん)







俺達は都民の間を縫うように移動して貴族街の壁まで来た。その壁も身体能力任せで突破し、漸く城を視界に収めることが出来た。



「じゃあ侵入するぞ」


城の中に入ると作戦を遂行する為の準備を始めた…中と言っても建物ではなく外堀と城壁の中という意味だが。


流石黒尽くめ、見張りもいるが見つからない。もちろん魔力波で鉢合わせないようなルートもしっかりとってあるし、偶々だが魔力波を使う為に併用している魔力視で変な魔力を見つけた。

それはどうやら防犯の魔導具から出ていた警報装置のような物の魔力だった。それを魔力視で見つけて避けるように移動している。

そのお陰で見張りも少ないのかもな。


最後の一つを仕掛け終わった俺達は来た時と同じように城から離れた。





「さあ見せてもらおうか」


ライルがウキウキしているが俺はハラハラしている。


「ふぅー。じゃあ行くぞ!」


カチッ


ドガーーーンッ


トランシーバーを起爆装置に繋いだ爆弾が破裂した。

狙いは城の裏手だ。

この爆弾は攻撃力に乏しかった聖奈さんがダンジョンで魔物用の罠として使う為に仕入れていたものだ。

結局使う場面も無く、魔法の鞄に死蔵していたがついにお披露目された。


まぁこれが無ければ怪我を覚悟の上で合成魔法を使うしかなかったけど…

しかも威力が高すぎて無辜の民まで数多く犠牲者になってしまう。

あるなら適した物を使わせてもらおう。


城で働いている平民?悪いが運がなかったと諦めてもらうしかないな。

非情かもしれないけどエンガード民やナターリア民を俺は取る。

ここで手をこまねいている今も、戦場では兵士が死んでいるかもしれないから時間はかけられない。

恨むなら自国の皇帝を恨めよ。と俺は言い訳しながらも


カチッ


ドガーーーン


カチッ


ドガーーーン


次々と起爆させていった。


爆発の影響でいくつかの尖塔も崩れていっているのがここからでも確認出来た。


「どうだ?」


ライルが尋ねてきているのは逃げ出してくる人がいるのかだ。


「大勢が入り口に殺到してきているぞ」


少し前ならこんな人が多いところでは『魔力視魔力波』は使えなかったけど、方向を絞れる今ではどこでも使える。


「やっぱりないんじゃないのか?」


「わからん。聖奈の勘みたいなものだからな」


もしくは既に死んでしまったか…


だが、この帝都を見た時に俺は確信に近いレベルであると踏んだけどな。


「動いたぞ!それもこれは…台地の中だ!」


どうやらホントにあったようだな。


「すげーな。隠し通路で脱出なんてなんでわかるんだよ?」


「さあな」


恐らく漫画とかでよく見るからかな?まぁ実際に地球にある城でも多々見つけられているみたいだから…使うかどうかは別にして、あるのがデフォなのかも。


「行くぞ」


ライルを伴い気配のある方へと向かった。

どうやら街中に出るものでは無く、この台地の下に出るものみたいだ。


俺達も下に降りて更に追っていくと


「どこに出るんだ?」


「まだ地面の下だな…もしかしたら相当遠いのかもな」


確かに脱出が必要な時に近くに出ても意味は薄いもんな。


さらに進むと森が見えた。


「どうやらあそこらしいぞ」


「強い奴もいるよな?」


「そりゃ皇帝や皇族の護衛が弱いわけ無いだろうな」


反応を追う前に城からある程度人が出たところで全てを起爆させたから後続の敵は少ないはずだ。

護衛の実力がどの程度かはわからないけど…ここで負けるわけにはいかないからな。


森の中にポッカリと穴が空いたように木がない部分がある。そこが出口のようだ。

反応はその真下で止まっている。

草が生えている地面の下にでも扉があるのだろう。


「敵がどの程度かわからんから奇襲で行くぞ」


「おう」


転移で武器をリゴルドーに取りに行った後、俺達は別々に森に身を隠した。




5分程すると地上で物音がしなかった為か、地下で動きがあった。

登ってくる…


こちらを見ているであろうライルに手で合図を送った。

すると…


ガコンッ


音とともに地面に穴が空いた。そこから人が顔を出したかと思うとすぐに上がってきた。

反応は20人程。


10人程出てきたところで漸く皇帝が現れた。もちろん俺は見た事はないが、護衛の意識の向け方や周りの人の対応の仕方、何より服装が…

あんなに目立っちゃダメだろ…


急な事とはいえ、もう少しマシな服はなかったのか?

皇帝と思われる人物は金ピカのバスローブのような物を着ていた。


まぁターゲットがわかりやすいからいいか…


俺は転移で取って来た対物ライフルを構えた。

ライルには射線上には来ないように伝えたけど少し怖いな。


俺は一番強そうな見た目の騎士(?)に照準を合わせて引き金を引いた。


パァンッ


「な、なんだ!?」


銃声を聞いて全員が慌てる。

さらにターゲットだった(・・・)騎士がゆっくりと倒れてそこに視線が集まると


パァンッパァンッパァンッパァンッ


剣を持っている者を優先して狙い、引き金を引き続けた。

流石に全弾撃ち切ると音のした方向がバレたが、もう充分だろう。


残りは半分だが、剣を持っている者すらいない。恐らく皇族や高位文官、貴族だろう。


ライルには皇帝が逃げた時だけを頼んであるので俺が出ることに。

対物ライフルはその場に置いておき、代わりに愛剣を握りしめると前に出た。


ザッ。


わざと足音をたてて注目を集めた。


「だ、誰だ!?」


「名乗るほどのモノじゃない」


よし!一度は言いたいランキングだ!


「ぶ、無礼者が!こちらの方を何方と心得る!」


知ってはいたが水戸◯門で聞いたセリフで確信が持てた。馬鹿を臣下に持つと大変だね?


「無礼?無礼ついでに悪いが、次に勝手に喋ったら殺す。いいな?」


俺は問答をするつもりはないからな。

大剣を鞘から抜けば先程まで威勢の良かったおっさんは首を縦に振りまくった。

返事は一度でいいよ。


「お前が皇帝だな?」


「貴様?皇国の回し者だな!?」


ガッ


「ぐあっ!?」


俺は高速で近づき鞘の方で皇帝の腕を殴った。もちろん手加減はしたけど…変な方向に曲がってる…痛そ…


「ひぃぃい」


「次に聞かれたこと以外を喋ったら反対の腕も同じ事になる。他の者達もだ」


皇帝以外はみんな激しく頷いた。


「よし。まずはお前達に聞く。皇族は一歩前に出ろ」


痛みで暴れている皇帝以外の皇族が前に出た。

10人中4人いた。皇帝を除くと3人だ。


「他の者達はこの3人をコイツでしばれ」


「は、はいっ!」


俺がロープをいくつか地面に投げると最初に食って掛かってきたおっさんが率先して動いてくれた。

皇帝の威光が効かないとみるや、高速の手の平返しだ。俺じゃなきゃ見逃してるぜ…


皇族も1番の権力者がやられた為か大人しく縛られていく。

縛り終えたので、声を掛けた。


「良くやった。抵抗しないのであれば命は助けてやる」


ここではね。後の事は知らないよ?


「も、もちろんにございます!」


「ライル!」


返事を聞けた為、ライルを呼んだ。


「やっぱりそいつはずるいな」


やってきたライルは開口一番、銃にダメ出し(?)をしてきた。

仕方ないだろ!もし剣豪とか本物の剣聖とかが相手だったらどうすんだよ!

命大事に。


「皇帝を縛っておいてくれ。それとそいつらの見張りも」


「あいよ」


ライルにロープを渡したら聞き分けのいいおっさんに話を聞く。


「コイツら以外に生き残りの皇族は?」


「わ、わかりません…ほ、ホントです!神に誓います!」


嘘かどうかわからんな。


「じゃあ皇族の人数は?」


「えっ…ま、待ってください!今!今数えます!」


両手を使って一生懸命数えていることから嘘ではなさそうだな。

それよりも、高位の人間が自国の皇族の数を把握していないなんて…


「15人です!!間違いありません!」


「お前は?」


俺はもう一人に確認したところすぐに合っていると返事がきた。

聞く奴間違えたな…


「みんなあの城にいたのか?」


「は、はい!お世継ぎが十分におられたので、他の皇族はみな粛清されました!ですので今は城にいる皇帝陛下の御子息のみになります!」


妃は?まぁ皇帝が死ねばただの人か。元々皇族では無いのだし。粛清とかのきな臭い話も出たけど今は関係ないな。

聖奈さん曰く、皇族を残すといつまで経っても平和は訪れないから逃さないでとの事だったし、城に戻るか…

生きてるとは思えないけど…


ライルにここの見張りを任せて、俺はおっさんと共に城へと転移した。


「こ、ここは!?」


「転移魔法だ。さっきも言ったが下手な真似をしたら首を刎ねる。こんな魔法は知らないだろ?他にも沢山あるから変な真似はすぐにバレると思え」


「!?も、もちろんにございます!」


うん。やっぱり人選は間違えていなかったな。


「それで?皇族の住居はどの辺りだ?」


今は瓦礫と化した城を指差して問いかけた。

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