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147話 忍びの者と呼んでくれ。






つまり近年は帝国のヤンチャを近隣3カ国で抑えてたけど皇国で魔物被害が起こってバランスが崩れた為、帝国が戦争を始めたってことか。


「セイ達には本当はこちら側で戦ってくれないかと打診するつもりであったが、状況が変わった。

セイの魔法で戦況を報告してほしい。どうだ?」


「その答えを出す前に、私達はここに急いでやってきました。まずは仲間の意思を確認したく思いますがいいでしょうか?」


「構わん」


いや…アンタがいたらやりづらいんだが?

まぁいいか。


「俺は店やミラン、エリーの家族のことを除いたとしても助けになりたい。特にリゴルドーには思い入れがあるしな。この戦争に負けたらカイザー様の言う通り、エンガード王国もナターリア王国にも未来はないと思う。みんなはどうだ?」


「セイくん。ここに来ているんだからみんな気持ちは同じだよ。セイくんの力があれば知り合いは助ける事が出来ると思うけど、なんか違うんだよね。

みんな帝国にムカついているんだと思う」


「俺の先輩達の生活を脅かしたんだ。ただでは済まさねぇよ」


先輩って…まさかあの子達?


「私はセイさんが行くところには必ず一緒に行きます」


「私の名前を轟かせるチャンスです!」


「セイさん達は恩人です。そのセイさん達の恩人は私の恩人でもあります」


一人おかしい奴がいるけどいつもの事なのでスルーだ。


「どうやら力になってくれる様だな?」


「はい。ですが転移魔法で、ではありません。戦争を終わらせて来ます」


うん。聖奈さんにカッコいいセリフを奪われたけど、俺はリーダーだからどっしり構えていればいいのさ…


「戦争を終わらせる?いくらセイ達が強くとも相手は100万を超えるのだぞ?」


「私達には可能です。ですが一つ条件があります」


うん。どっしり構えてるだけ…

俺は何も知らない、何も聞いてない、やめてやめてやめて・・・


その後聖奈さんはとんでもない事を言った。







「情報通りだな」


崖の上からライルが呟く。


「情報だと3方向から皇都を目指している。ここは主力部隊50万の進軍経路で間違いないな?」


「数なんかわかるかよ。数え切れねぇってことは確かだ」


帝国軍は50万25万25万に分けて進軍して来ている。俺達は今、帝国と皇国を結ぶ道で一番広い戦場になりそうな所に通じる帝国側の崖に二人で来ている。


「セーナ達に報告に行くか?」


「そうだな。予定通りにしよう」


ここで俺が魔法やライフルで攻撃してもいいけど焼け石に水だからな。


『テレポート』





「そう。予定通りだね。流石に進軍速度はしれているね」


今いるのはエンガード王国軍の天幕だ。

あの後、皇国と王国の国境に転移した俺達はまだ王国軍が通っていないと知って、そこから王都方面に移動して合流を果たした。

初めは不審者扱いを受けたが、Aランクの冒険者カードと共にシュバルツさんの手紙を見せたところようやく会うことが出来た。


「やはり何度見ても急に現れると驚きを隠せんな」


アンダーソン王子が告げる。

ここは王子の天幕で俺たちの事は、周りの騎士や貴族には国王が遣わせた冒険者であると説明してある。


「予定通りって事はこのまま作戦に移るのか?」


地図を睨みながら聖奈さんが頷いた。

地図と言っても地球のように正確性はない。その為、制作者の異なる地図をたくさん並べて、整合性の取れている箇所以外は信用しない様にしている。

俺とライルが調査していた場所は整合性が取れていなかった為、調査していたのだ。

もちろん聖奈総督の指示である。皆の者従え!


「こっちの進軍速度と向こうの進軍速度を考えると決戦の場はここになるはず。私達が当たるのは帝国軍北軍25万ね。セイくんが調査した帝国軍本隊50万は皇国軍と当たる。やっぱりどう計算しても開戦には間に合わないね…」


「聖奈。全力を尽くすのはわかるが一人で背負う必要はない」


「そうだ。セーナが気に病むことではない。私が不甲斐ないばかりに其方に負担を強いてしまった。済まない」


出来る王族は違うな…これが帝王学を生まれた時から学ばされている人達か。

あの呑んだくれのカイザー様も人が変わったようだったし…

出来が悪い仲間だと思ってたのにぃ!!


「大丈夫だよ。ただゲームだと完全勝利を目指すタイプだから現実とのギャップに戸惑っていたんだよ」


「セイ。セーナは何を言っているのだ?」


王子が小声で聞いてきたが『さあ?』とだけ答えておいた。


「セイくんとライルくんは予定通りお願いね!私達は万が一にも殿下に敵の凶刃が届かない様に帯同するね」


「わかった。王子には悪いがパーティの命を最優先に行動してくれ」


王子は目の前にいるがこれは初めから伝えていた事だ。


「もう!どれだけ私の事が好きなのよ!」


「セーナさん違うです!セイさんは私の事が好きなのです!」


「セイさんも命を大切に行動してくださいね?」


うん。どう考えてもミランを選ぶぞ。


「セイさんはみんなの事が心配なのよ。必ず生きてまた会いましょう?」


マリンは大人だな。自分の事になると何言っているかわからん事が多いけど……


俺とライルは鞄に受け取るものを受け取って転移した。






「こいつには初めて乗るな!」


ライルと俺の前にはいつぞや乗ったオフロードバイクがある。

ちなみに車の話をした時にやはり興味を持ったマリンとライルを乗せた事はある。


「安定性に欠けるがライルとなら問題ないだろう」


今いる場所は先程の崖から帝国軍を越えてさらに帝国内に入った場所だ。

ここに来る為には帝国軍に見つからずに来なくてはならなかった。その為、道から離れた崖から眼下に広がった森の中を二人で走り抜けた。


「よし行くぞ!」


ドルルルルルゥ


まさか異世界に来て男とタンデムすることになるとは…世の中予想できない事ばかりだな。





道中バイクの後ろに乗るライルが話しかけてきた。


「明らかに監視がいたけどいいのか?」


「軍が通る道なんだから監視ぐらいいるだろうな。でもバレたところで俺達の素性も、バイクの事も理解できないだろうし、報告される前に俺たちの方が先に帝都につくだろうよ」


通信の魔導具とか持ってたら少し面倒臭い事になりそうだけど、そこまで問題でもない。


俺たちはこの世界では信じられない速さで東進して帝都の近くまで来た。





「ここからは徒歩で進もう」


バイクから降りた後、ライルに告げた。

もちろん徒歩と言っても走るんだけど…


バイクを転移で持ち帰った後、走って帝都に向かった。




帝都を視界に入れた時、ついつい言葉が漏れた。


「めんどくせぇ…」


帝都はこの世界では珍しく攻めづらさに極振りしたモノだった。

今まで見てきた街は生活のしやすさや輸送、通行の便利さを取り入れた街造りをしてあった。


「まぁやる事に変わりはねぇよ」


「そうだけど…」


この世界の街づくりは普通は人が生きていくために重要な水を第一に考えるはずだ。その次に人が行き交いやすい場所で、守りはあくまでも城壁などに頼っていた。


挿絵(By みてみん)


しかし帝都は切り立った崖の上にあった。

水などはどうやって工面しているのだろう?


高台の台地にある帝都だが、台地の下はエトランゼのように何もない。

つまり俺達が侵入しようとしてもすぐにバレるって事だ。


「作戦では侵入してから作戦を遂行する予定だったけだ、バレずに侵入は無理だな」


「じゃあ無理矢理突破するしかねーな」


そうだな…気は進まないけど、プランBに変更だ。






バシュッ


『フレアボム』


ドゴーン


遠くに見える城壁が赤く染まった。


深夜、俺たちは黒い服に身を包み夜の闇に紛れて城壁から数百メートルの位置まで近寄り、RPGと魔法により高台(50mくらいの高さ)の上の城壁に攻撃をした。


RPGはあまり狙いをつけれないが今回は着弾してくれたらどこでもよかった。


『テレポート』


間髪容れず転移魔法を使い、帝都から見て反対の位置に転移した。



「よし、行くぞ!」


「おうっ!」


先程の爆発の騒ぎに乗じて反対側の壁から侵入する為に転移したんだ。

今の格好は黒の目出し帽に黒の上下、黒の靴と、某人気アニメの黒尽くめの人達より黒い。

しかも今日は曇りで星あかりも月明かりも乏しい為、俺達を視界に捉える事はかなり困難だと思われる。



無事に高台の下に取り付けた俺達はロッククライミングを始める。

もちろんプロでもなんでもないが秘密兵器を用意してきた。


ガッガッガッ


「これならかなりの速さで登れるな」


「急拵えにしては上出来だぜ」


両手には鉤爪付きの籠手が嵌められており、靴には装着型の爪先スパイク(長め)が付いている。

城壁が高すぎた場合は登らなくてはならない為、この様な装備も準備してきていた。


順調に崖を登り切り、台地の上へとたどり着いた俺達の障害は10mほどの城壁を残すのみとなった。

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