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146話 主人公気付く。





「結局見つけられなかったな…」


小部屋はかなりの数回ったが、階段を見つけることは叶わなかった。


「順調なんだからそう言うな。それに宝箱も見つけられたしな」


「そうです!古書ですよ古書!」


エリーは興奮しているが翻訳が使える3人はがっかりした。

初めての宝箱の中身は古代人の日記だった。

まだ金貨の方が需要あるやん。

古書や古文書と言えば聞こえはいいけど毎日の愚痴が書かれただけの日記なんて誰得?


リゴルドーに帰った俺達はご飯を食べて休んだ。





あれから3日間も潜っていたが下への階段は未だに見つからなかった。

罠や魔物のせいで速度はゆっくりとはいえ30キロくらいは歩いている。


「なぁ。マリンはどうだ?」


「うむ。元々の器用さとアイツから受け継いだ知識、そして今日までの経験で十分ダンジョンに通用すると言っても過言ではないな」


ガッシュさんからこうも言われてるんだ。もうやめても怒られないよね?おじさん代わり映えしない景色にうんざりしてきたんだ。


「ありました。小部屋です」


「おお。次こそは階段があったらいいな…」


又もや見つけた小部屋に誰も歓喜の表情になる者はいなかった。多すぎなんだよ…


「階段だわ!」


その声にみんなテンションが天元突破した。


「ヤッホーい!」


「やったね!」


みんなで意気揚々と階段を下りすぐに家に帰った。

こんなとこにいつまでも居られるかっ!





「ご飯すぐに作るね!」


リゴルドーの家にみんなで転移したら聖奈さんが開口一番に伝えた。


「セーナの飯の為に頑張ってんだよな!頼むぜっ!」


「私達も手伝います!」


最近ではエリーとミランも手伝う様になった。お菓子作り限定だが…

この二人と結婚する相手は糖尿真っしぐらだな。

させないが……


「セイくん。水都と王都よろしくね!」


「ああ。そういや3日ほど顔を出してなかったな」


両方とも売れ行きは順調だ。安定したからこそ、配達もそこまで焦らなくとも良い。


「じゃあ行ってくるわ」


俺はそこで俺達が何も知らずに呑気にダンジョン探索をしていた事を知った。





「じゃあ水都の店にも国王様から書状が届いていたんだね?」


もはやいつもの和気藹々とした雰囲気はない。しかし身体が資本なのは皆周知の事実のため食事を取りながらだ。


「ああ。時間を取られる可能性が高いからまずは王都に飛んで店の子に聞いたりして状況を把握して、ここに戻ってきた」


「王都は?アイツらは無事か!?」


ライルが珍しく取り乱してきたが仕方ない。王都の子達とは一番仲が良かったもんな。


「無事だから落ち着け。王都の店にもシュバルツさんから手紙が来ていた。これだ」


『アンダーソン殿下が戦場に向かう事となった。私も護衛として行くが、セイも出来たらで良いが…いや、言葉を取り繕うのはやめよう。死ぬかもしれないが来て王子を一緒に守ってくれ。無事に帰れたら私の用意できる物であれば何でも差し出そう。

出立はいつになるかわからんが近いうちだろう』


「シュバルツさん…動揺してるね」


あの騎士のお手本の様な人が書いた手紙とは思えない。殴り書きのような、それでいて擦って消した後も見える。お世辞にも綺麗とは言えない物だった。

その後の手紙には知らせる事ができる情報が書いてあった。


「あの王子様が総司令官か…」


一年前のことだけど子供みたいな見た目とは違ってちゃんと立派な王族をしていたな。


「それで?王国軍は?」


「すでに出立していた。流石にシュバルツさんも王子もいないから王都にいっても仕方ない。国王様に会えるツテもないしな。だからこれから水都に行こうと思うが…どうだ?」


「勿論だ!」「「はいっ!」」「私がいないとね!」


「俺は遠慮しておく。縁もゆかりもないからではなく、戦争には加担しない主義だ。すまんな」


「わ、私は行きます!パーティですからねっ!」


マリンを連れて行くか迷ったが議論する時間も惜しい為、ガッシュさんをエトランゼに送るとそのまま水都に飛んだ。






「これを預かっています」


水都の門番に国王からの手紙を見せて通してもらった。

もちろん国王がどこにいるのかわからないため、案内の騎士も付いた。


「こちらです」


騎士に通された場所は初めてくる所だった。

この可愛くも綺麗な城には似つかわしい武骨な扉が目の前で開いた。


「良く来たな。見ない顔もあるが入れ」


扉の遥先に座っている見知らぬ男が声をかけてきた。

長テーブルの一番上座に座る男はカイザー様だ。初めて見せる威厳に別人に見えた。

長テーブルは40人くらいは座れそうなもので、何人かすでに腰掛けていた。


「陛下…この者達は?」


国王の近くに座っていた人が俺達のことを聞く。俺達はダンジョン帰りのままなので少し小汚い。


「お前が普段飲んでいる酒の売主だ」


「ほほーう。あの酒の…いえ、陛下!この様な時に商人を呼ぶなど!」


そりゃそんな反応になるわな。この人もお得意様か。ありがとう。お陰様で飯が美味いぜ!へへっ!


「セイは凄腕の冒険者でもある。前に伝えたであろう?」


「冒険者ですか。しかしすでに声は掛けています。この者がそれ程とはとても…」


「其方の評価は聞いていない。邪魔をするなら下がれ」


国王の有無を言わさぬ言葉に男は口を固く閉ざした。


「陛下。直言をお許し下さい」


「セーナか。構わぬ」


「実は私共は嘘をついていました」


なんだ?うそ?よくわからんが任せるぜ!緊急事態だしな。


「嘘だと?」


「はい。私達は奴隷と主人の主従関係ではなく同じ立場なのです」


「その事か。よい。調べていたから以前より知っておる」


知ってて黙っていたのか。やっぱりこのおっさん…カイザー様は懐が深いな。

聖奈さんも聖奈さんでバレている事を知ってる風だったな。


「これまでの事、これからの事、私達が何を出来るかをお伝えしたく。人払いをお願いします」


「ば、ばかな!冒険者が調子に乗るなっ!」


口に唾を溜めて先程の男が声を荒げる。


「出てゆけ」


「ほれみろ!不敬罪にならなかっただけありがたいと思え!」


カイザー様が冷たく告げるが


「貴様のことだ。余はなんといった?邪魔をするなら下がれと言った。他の者も下がってくれ。一度休憩にする」


騎士達が男を両脇に抱えて出て行った。他の人達も不承不承ながらも出て行った。


「それで?」


「私達はAランクになりました」


「それはめでたいな。しかし自慢だけか?」


「エトランゼ共和国のダンジョンで最近なりました」


「それがどうした?」


「今日も先ほどまでダンジョンにいました」


「…」


国王は黙ってしまった。

カイザー様でも流石に信じられないよな…


「それが私達の…いえ、セイくんの出来ることです。もしご納得出来ないのであれば陛下を一瞬の内に国外に連れて行く事が出来ますがどうされますか?」


「疑ってはおらん。其方達が余に今更嘘をつく理由がないからな。それは何処へでもか?」


「いえ。行ったことのある所のみです」


俺に向けて言ってきたので会話に参戦だ!


「戦争が起こっているのですよね?陛下ほどの仲ではありませんがエンガード王国の王族にも縁があります。王子の護衛の騎士について来てほしいと文がありましたが間に合いませんでした。

手紙の内容や、向こうの王都での聞き込みによりある程度の状況は把握しています。

陛下の召喚状は私に戦争の手伝いのご依頼ですよね?」


「そうだったのか。召喚状はそうだ。実務もそうだが知恵を借りたくてな」


カイザー様とは酒の席で色んな話をしたからな。俺の頭の良さが伝わってしまっていた様だ…

嘘です。地球の誰でも知っている知識を自慢しただけです。


「知恵?まだ軍は出立していないのですか?」


「そうだ。エンガード王国と歩調を合わせている為、未だ出発はしておらん。こちらの方が戦場に近い故な」




もちろん知恵を貸したのは聖奈さんだ。

異世界転移以外の俺達に出来る事を伝えた後、軍の方針を聖奈さんの意見で見直したりしていると外が騒がしくなった。

どうやら休憩は終わった様だ。他の人達が入室するタイミングで聖奈さんに小声で聞いた。


「よく軍事関係の話がわかるな?」


「散々やり込んだからね」


どうやらゲームの知識らしい。ヤバいだろこいつ。良く自信満々に口を出せたなっ!


俺達は城の従士に連れられて別室待機となった。





「待たせたな」


あれから2時間、こちらに来たのが18時頃だったから今は21時前だ。


「水都の外に集めた軍は明朝出立する」


「陛下はこの度の戦争の行方はどうなるとお考えですか?」


俺達は皇国の事も帝国のことも知らないからな。

まずは基礎知識として以下のことを教えてもらった。



挿絵(By みてみん)


ナターリア王国は人口400万

エンガード王国は人口300万

ハンキッシュ皇国は人口500万

シューメイル帝国は人口1,000万


近隣国の兵士の数は人口比5%〜戦時最大15%くらいのようだ。

戦国時代の日本より割合的には多いが、国全体の人口に違いがあるからこんなもんなのかもな。

シューメイル帝国は大昔に元々ハンキッシュ皇国を追われた皇族が興した国で近年辺りの国を武力で併合してここまでの国になったそうだ。

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