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143話 凱旋者との邂逅。





「大丈夫ですか?」


ゴブリンを斬り倒した俺にミランが声を掛けてきた。


「ああ。問題ない」


「硬さは?」


ライルの質問に


「オーガよりは柔いな。ライルの剣でも充分ダメージを与えられる」


「そうか。まだ役に立てそうだな」


そんな事を気にしていたのか。


「それにしても良かったね。敵がドンドン強くなるなら(ドラゴン)級も覚悟してたけど、どうやら…」


「それであっている」


聖奈さんの言葉を遮りガッシュさんが言葉を続けた。


「ここからは潜れば潜るだけ敵が強くなっていく。取れる魔石の大きさも比例して大きくなる。

魔石は未だに合成の研究がされるくらい大きなサイズは価値が高いようだ。何百年も出来ん事が今更出来るとは思えんがな」


俺にもわからんけど。だが世の中はそんな不思議人間のお陰で便利になってきてるもんな。

この世界は不便が風情みたいなところがあるけど。


「俺が知る限りでは23階層で10階層のオーガクラスの強さの魔物がゴロゴロ出る」


「それはヤバいな…」


オーガの身体能力だと相当だぞ…

俺とライルなら乱戦になってもやれるが他の面子は厳しいだろうな。


「良かったね。セイくんの魔力が底なしで」


「魔力波ですか」


「うん。それがある限り囲まれる事は無さそうだしね!」


何だかお気楽ムードだけど。


「よし、この程度なら問題ねぇな。先をいこーぜ」


ライルの提案に乗って先に向かう事に。

隊列を元に戻して進む。



「罠だ。わかるか?」


急に立ち止まったガッシュさんがマリンに問いかける。


「わかるよ!習った通りだねっ!」


どうやら二人には見えているようだが…俺には見えん。


マリンとガッシュさんは壁に近寄り何か作業を始めた。

暫くすると戻ってきて一言。


「もう大丈夫です。お父さんに習った通りで解除できました!」


うん。俺にだけだね。未だに敬語なのは…


「マリンは手先が器用だな。俺なんかよりも向いてるぞ」


「ホントに!?おじさんに言われると自信が付くよ!」


まぁ楽しそうだからいいか。


マリン達が解除した罠は壁からセンサーみたいなものが出ていてそれを起動させると今回の罠は壁から酸が噴き出てくるらしい…


もっと原始的なものかと思ったけど、本気でヤバい奴だった。


この後は聖奈さんとミランが別々にマッピングしてこの階層をしらみ潰しに埋めていく。

次の階層への階段があるようだが、ほぼ一週間で場所が変わる為、階段のできる所は限られているからマッピングが重要になるみたいだ。


階段のできる場所は小部屋になっており、魔物が入ってこないことは無いが入り口は人一人がくぐれるサイズの為、防衛しやすく休憩や仮眠の時は良く使うらしい。


俺達は初罠から3時間で3つの小部屋を見つけた。

罠は最初とは違うものが出たけどよく分かんなかったな。2人がかりで解除するからはえーんだ。これが。


「ここってどれくらい広いんだ?」


ホントは楽しみたかったから聞く気は無かったけど、半日も代わり映えがないとな…


「1日で下に降りられたら大分運がいいだろうな。最悪は探している時に階段が移動した場合だ。そうなると全部の小部屋を回っても階段は見つからんからな」


「それって全ての小部屋の配置を知っていてもって事だよな?キツイな…」


うん。もうダンジョン探索やめてもいいや。

マリンが許さないだろうけど…


その後も休憩を挟みながらみんなで探した。こういう時の俺達の長所は体力の限界近くまで探索できる事だ。

他とは違い家に帰れるからな。




「反応が近づいてきた」


俺の言葉に慣れた様子でみんなが配置を変えた。


「見えました…人?」


ミランが伝えてきたのは予想外の事だった。


「人?冒険者って事か?」


「はい。こちらの人数より多いですね。どうやら偶然鉢合わせただけのようです」


Aランクでこちらより数が多いのか。頼むからまともな人であってくれ。


近づいてきた冒険者達は8人組だった。向こうは慣れているのか警戒度がこちらより低く見える。

男性5人に女性が3人のパーティーだ。

その中の一人が声を掛けてきた。


「よう。見ない顔だな?」


特に敵対する気はなさそうなので会話をする事に。


「最近Aランクになったばかりでな。という事は、熟練者か?」


「ははっ。熟練者なんていいもんじゃないな。荷物が少ないが…大容量のマジックバック持ちか。悪い事は言わんから偽装のバッグくらいは持ち歩け。下の奴らに狙われるぞ」


なんだ。警戒したけど良い人っぽいな。


「ご忠告ありがとう。次からはそうするよ。俺はアルカナの探求者のセイだ」


「素直なのは良い事だ。俺は凱旋者のカーズだ。頑張れよ」


みんな20後半くらいの見た目の凱旋者達は何事もなく通り過ぎていった。

彼らは荷物は持っていたが、多分マジックバッグも持っているんだろうな。


「あれは現在の最深部到達パーティーだ」


ガッシュさんは名前を聞いた事があるようだ。


「スマートで余裕がありました!」


「ですが、皆さん警戒は怠っていませんでしたね」


「あれがトップランカー…アイドルみたいにオーラがあるね!」


3人はテンションが…

いいさ。俺もいつかああなってやるんだからっ!!


「凱旋者の悪い噂は聞かないな。だが、冒険者でも人の足を引っ張る奴もいるし、中にはダンジョン内で盗賊みたいな事をする奴らもいるから気をつけろよ」


うん。この前見たよ。


「でも、もう少しですね」


えっ?何が?


「そうだね。今日中に見つけられそうだね!」


「よし!いこーぜ」


ちょっと…貴方達のリーダーがわからないんだが?


「そうだな。凱旋者が向こうから来たという事は階段が近い可能性がある。入り組んでいるから確実ではないがな」


そういう事か!良い人そうだから聞けば良かったな。謝礼は弾むぜ?

いや、あの人達もお金持ちか…


俺がなんの得にもならない事を考えていると見つかった。


「ここが階段か…」


「そうだ。やはり凱旋者が通った道だから罠がなかったな」


それを道標にしたのか…やるなガッシュさん…

どうりで引き返したりしたわけだ。あそこからここまで1時間くらいでこれたもんな。


「とりあえず下に行こ?」


「そうだな」


聖奈さんの号令で階段を降りた。




「ここが22階層か。なんだかさっきと変わらないから階層を間違えそうだな」


降りた先も普通に洞窟だった。道のサイズも変わらない。

ガッシュさん情報の光苔の灯りも変わらなかった。


「今日はここまで来れたんだから帰らない?」


そうだな。ガッシュさん曰くかなりの早さでの階層突破らしいので今日はキリ良く帰る事にした。

ガッシュさんをエトランゼに送り届けてからリゴルドーに帰った。

外は真っ暗ですでに月が出ていた為、聖奈さんはすぐに地球へと転移して行った。


「セイさんは行かないです?」


「今日は予定がないからな」


何だよ。一人サボってるみたいな目で見るな!

聖奈さんみたいに勝手は出来ないんだ!


「ミランこれ食うか?」


「はい!」


「なんでっ!?」


嘘だ。ちゃんとエリーの分もあるよ。


二人にお菓子の餌付けをしながら過ごした。なんだか最初にした誓いはいつの間にやらどっかに行ってしまったようだ。

ありがたや〜


「あんまりお菓子ばっかり食ってるとセーナが帰ってきた時に飯が食えなくなるぞ」


「大丈夫です!ライルさんに食べてもらうので!」モグモグ


ライルが幼児二人にお小言を伝えるがエリーはどこ吹く風だ。


「まぁ食うけどよ」


食うんかいっ!


そんなコントを繰り広げていると聖奈さんが帰ってきた。


「セイくん。来てもらっても良い?」


「構わんよ」


何だろう…聖奈さんにそんな風に言われると子供の時に家に学校から電話が掛かってきた時のことを思い出すのは。

何も悪い事はしてません!


「私も良いですか?」


「良いよ。行こ」


ミランも付いてきてくれるみたいだ。

良かった。怒られるわけじゃなさそうだ。

凱旋者1「若いっていいなぁ。さっきのパーティはかなり若かったな!」


凱旋者リーダー「俺達もまだまだ若いぞ!」


凱旋者女性「そんなこと言ってリーダーカッコつけてたよね?やっぱり若い女の子の前だと男って馬鹿だよねぇ」


凱旋者リーダー「普段はおばさんばかりなんだ!たまの若い子にカッコつけてもいいだろ!」


その後、リーダーの姿を見たものはいないとか…



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