142話 ダンジョン探索再再開。
「凄いな」
武器の評価は高かったようだ。
「だが、あれだけだと突破は難しい筈だ。後は何がある?」
やはりAランクパーティに在籍していた人は誤魔化せない。
誤魔化すつもりもないけど。
「じゃあセイくんに見せてもらおっか!」
「セイ?アイツは剣士だろ?もちろんAランク級なのもわかるが…」
どうやら思い出してくれたみたいだな。
「そう言えば転移魔法を使っていたな…」
「そうだよ。セイくんは剣も魔法も銃も使う器用貧乏さんだよ!」
うん。言わないで。
『アイスブロック』
「何も起きないよ?」
マリンが聖奈さんに聞くがそれよりも早く
「な、何だありゃ!?」
遥か上空から氷の塊が落ちてきた。
ドガーーーンッ
遠くの森の上空に砂塵が舞った。
「あれをセイが?」
「セイくん。なんで新魔法じゃなかったの?」
エリーの奴…あれだけ口止めしたのに。まぁ相手が悪かったか。
「危険だからだ。あの魔法はヤバい…」
「えぇ…見たいなぁ…」
「さっきの魔法より凄いのか?」
聖奈さんは駄々っ子に、ガッシュさんは当たり前の疑問を
「さっきの魔法はある程度離れた位置に撃てて安全だけど、聖奈が言っている魔法は効果範囲が広すぎて無理なんだ」
「じゃあ私達はここにいるね!」
おいっ!
「小さな核兵器くらいの規模の威力だけどいいのか?」
慄け!!
「うん!見せてね!」
えっ…そこは危ないからやめようの流れじゃ…
「セイさん気をつけてくださいね」
「安心しろ。俺は一度経験しているから大丈夫だ」
うん。マリンの手前カッコつけるしかなくなったな。
俺はみんなをその場に残して1キロくらい離れた。
ふぅ。緊張するな…
『トルネード・フレアボム』
トルネードが木々を薙ぎ倒しながら離れていく、それを後発のフレアボムが追いかけていく。
俺はフレアボムを発動した瞬間に身体強化をかけて即座に反対方向に走った。
トルネードの木々を薙ぎ倒す音が消えた。どうやらフレアボムに吸収されたようだ。
そして…
ズドーーーーーンッ!!
『トルネード!』
あまり効果は無いだろうが少しくらい相殺してくれ!と願って魔法を放ち身構えた。
「ぐぅぅぅうう!!」
暴風…いや衝撃が俺を襲った。
「何とか耐えたな…やはり直ぐに距離を取ったのが良かったな」
俺は離れた四人と合流する為に走った。
「何が起こったんだ!?」
こちらからでもキノコ雲とは呼べないがそれに近いものが見えたようだ。
「爆心地に行きたいからよろしくね!」ガシッ
転移しろって事だな…
転移でみんなを連れて行ったそこは凄い事になっていた。
「ひゃー!ホントに凄いね!クレーターが出来てるよ」
「こんなのを使わないと倒せない敵が居たのか?」
「いないけど…偶々使えたんだ」
アホな子を見る目でガッシュさんが見てきたが気のせいだろう。
「ガッシュさんも20階層に行ったんだろ?その時に15階層のデカい亀はどうやって倒したんだ?」
「ああ。あれは水攻めしたな」
どう言うことか聞くと、仲間の魔法使いが2人がかりで亀の顔があるところに水を張り、それを熱湯にして倒したようだ。
その時の亀の攻撃は仲間達と盾を持って魔法使い達を守ったとの事。
色んな倒し方があって面白いな。
銃の取り扱いについて説明が済んだのでマリンの家に帰った俺達は明日からダンジョン探索を再開する事に決めた。
もちろん離れている二人の承諾ありきだが問題ないだろう。ちなみにマリンの誕生月は9月だった。
翌朝。準備を終えた俺達は20階層のボスゴーレムを視界に捉えていた。
「あれが20階層のボス…」
「そうだよ。まぁ見てて」
聖奈さんはそういうとRPGを構えた。構えたが撃つ気はない。
「じゃあガッシュさんに聞いて組み立てた作戦で行こう」
「はい!任せるです!」
俺の言葉に同意したのはエリーのみ。今回は二人で倒す。
詠唱を終えた俺は
『アイスバーン』
金属鎧のゴーレムの下半身が凍ったのを確認したエリーが
『フレアボム』
ドーーンッ
パラパラッ
ゴーレムの下半身が辺りに降り注いだ。
「消滅を確認。周りに変化はありません」
ミランの言葉を聞いてマリンが賞賛の声を漏らす。
「す、凄い…アッサリと…」
「原理は知らんがこうやって氷系の魔法が有効みたいだな」
ガッシュさんから齎された情報を聞いて地球の高校生以上ならすぐに思い浮かぶだろう。
低温脆性破壊。
言葉を知らなくとも金属を急激に冷やせば脆くなるのは何となく理解している。
「だが、一人でコイツを凍らせた奴を俺は知らんな」
「セイくんのはズルみたいなものだから気にしたら負けだよ!」
うん。俺でもチートだと思うよ。初めは聖奈さんにチートなんてないって言ってたのに…今ではお世話になっています。
「それより行こうぜ。毎回倒さなきゃいけないんだ。すぐ慣れる」
「そうだな。本番はこれからだ。二人とも頼んだぞ」
ゴーレムの後ろの今となっては荘厳なゲートをくぐる。
何故今回も20階層からスタートしたかと言うと、マリンの昇級も関係しているが、このゴーレムの魔石の納品が推奨されている為だ。
それだけならお金に困っていないから無視してもいいんだけど、20階層以上を潜る冒険者でコイツの魔石を納品しない奴はいないからだ。
組合からも出来るだけ持って帰るように言われている事から貢献度も高くそれなりに需要がある魔石なんだろう。一度や二度ならいいかもしれないが毎回ここの魔石がないと怪しすぎるから俺達も出来る限り持って帰る事に決めた。
「洞窟だね…」
マリンは初めてだもんな。
「親父さんから聞いてた通りだろ?罠の知識はあるようだが実践はまた別だ。俺の横を歩け」
「うん!」
隊列は先頭にガッシュさんとマリン。次に俺とミラン。三列目に聖奈とエリー。最後尾にライルだ。
この階層の広さはそこそこある。片側一車線のトンネルより少し狭いくらいだ。高さは4メートルくらいある。足元は少し凸凹しているが歩くのに問題はない。
「いいか?」
「ああ。行こう」
ガッシュさんが名ばかりのリーダーでしかない俺に確認を取ってくれた…ありがてぇ……
言ってて悲しくなるからやめよ…
「待て。敵の反応がある」
暫く進むと魔力波に反応があった。
「…便利だな。ホントに俺達は罠だけに気をつけていればいいようだ」
「どれくらい離れていますか?」
洞窟はまっすぐではない。道幅も一定ではなく、少し広くなっているところもあった。ガッシュさんの説明では別れ道もたくさんあるらしく、見た目があまり変わらない為、迷路だ。
「200mは離れている。初めての敵だからここで迎え撃とう。隊列を戦闘隊形に移し待機だ」
「はいっ!」「わかった」
みんなは返事をして隊列を変えた。
今回の隊列は先頭は聖奈とライルに俺。2列目にエリーとミラン。最後尾に二人だ。
「敵を捕捉。いつでも撃てるよ」
50mくらい先に何かが蠢いている。
「撃て」
バァンッバァンッバァンッ
『ギィ!?』
「止め!」
俺の声に撃ち方をやめて、様子見に入る。
「まだ消滅していません」
「あれが21階層の敵か…」
敵は俺達が見慣れた姿をしていた。
「ホントにゴブリンかよ」
「ゴキブリよりも見飽きたね…」
「ガッシュさんの説明通り、今までのとは違い遥かに強いようだが…イメージがな」
もうゴブリンは沢山だ…
話によるとこの階層では他にもウルフなどが出てくるようだ。
「行ってくる」
俺はそう残して、重症を負っているであろうゴブリンに走り寄り剣を一閃した。
ミラン「セイさん。なぜ金属を急激に冷やすと脆くなるのですか?」
聖「ぶ、分子や鉄を構成するものが…」
ミラン「分子とはなんですか?」
聖「なぁ。ミランは俺の事が好きか?」
ミラン「//も、もちろんです//」
聖「それに理由って必要か?」
ミラン「い、いえ…」
聖「そう言う事だ」(いや、どう言う事だよ!)
ミラン「ロマンと言う事ですね!わかりました!」
聖 (わかっちゃったよ…)
聖の誤魔化しは続く。




