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140話 血は繋がらない家族。





「わかったわ。一度こっちで協議してから返事を出すわ。帰りに職員さんに伝えておくから後日にでも確認してね」


聖奈さんが話をまとめて3人に退室を促した。

3人が出ていくと今度はこちらの番だ。


「それでみんなは誰が良かった?」


「私は女性です!何だか男の人はうるさかったので!」


「私は若い男性ですね。やはり3人の中では自衛に自信があるところが良かったと思います」


「俺もミランと同じだ」


3人はそれぞれ決めていたのか…俺は話しを消化するだけで終わったぞ…


「セイくんは?」


「うーん。特にないかな。みんな一長一短かなって」


年長の男性はやはり経験が豊富だ。24階層までなら間違いなく彼と共に行くのが一番安全だろう。

もう一人の男性は経験もある程度あるし一人の戦闘員としても期待が持てる。後、まだ若さがあるから新階層に行っても応用や機転が期待できる。

最後に女性だが、これはウチのパーティ事情にはドンピシャだ。変な男が入ってトラブルを起こす事はあっても逆はないからな。後、父親が以前の最深層パーティのメンバーだった事も大きい。先程の年長の人は女性の父親の事も知っていたそうだ。そして女性はそんな父親から罠についての情報や解除、発見の技術を仕込まれたそうな。


女性に関して分からないことが多いのは、彼女は未だに20階層以上に潜った事がないからだ。つまりホントに解除、発見が出来るのか不明という事。


以上の点からミランとライルは若い男性を選んだ。


「そう…セイくんは今まで当たりを引き続けていたから選んで欲しかったな。

ちなみに私は女の子ね!」


「2対2か。セイはどっちでもいいのか?」


そう言われると…男よりは女性の方が…ぐへへっ


「ではこうしませんか?」


心のリーダー、ミランさんが助け舟を出してくれた。


「まず女性に声をかけます。その後、お試しでダンジョンに潜って実力を把握します。ダメならご縁がなかったと言うことで」


「それだと俺達が危険すぎないか?そいつが罠を見破れなかったら死ぬぞ?」


「そうです。ですのでその女性から先程の年配の男性に一度だけ一緒に来て貰えないか頼んでもらいます。お知り合いの様でしたので、住んでいるところは知っていると思いますしね」


流石ミラン(さすミラ)!それで行こう!


「女性が説得出来なかったらそれまでだね?私はミランちゃんの案に賛成だけどみんなは?」


もちろんみんな賛成した。

ダメならまた募集すればいいからな。





ギルドに手紙を託して女性と待ち合わせた俺達は手紙の日時に待ち合わせ場所に来ていた。


「肉盛りを五皿とサラダを二皿にパンをバスケットで」


「俺はステーキセットで」


「ちょっ!?ちょっと待ってください!?」


注文の途中で女性が待ったをかけてきた。


「どうした?」


「ラ、ライルさんのは一人の量なのですか!?」


「ああ。ライルはよく食べるからな」


「よくたべるって…」


放心しているから放っておこう。


ランチを注文した俺達は改めて自己紹介とミランの話をした。


「そうですよね…あの中から私がストレートに選ばれるわけはないですよね」


彼女の名前はマリン・パート。20歳でBランクだ。Bランクと言っても実力(戦闘能力)はCランク程度との事。これまでの彼女は生粋のサポーターで荷物を運んだり、見張り、料理番などの雑用要員で10階層を突破したようだ。

今フリーなのは流石に11階層からは守りきれないと言われてクビになったからのようだ。


「全く戦闘が出来ないわけじゃないんだろ?」


「はい…私は本当に父に色々学んだんです!ですから20階層以降であれば役に立てます!」


うーん。話を聞かないタイプかな?


「それは聞いた。だからそれを確かめないといけない。しかしその為に俺達自身を危険に晒すつもりはない。最初に言った様にあの男性に同伴してもらえないか聞いてくれないか?」


「…おじさんは良い人です。だけど、(友人)の娘である私を危険な冒険者にさせたくないのです!だから今回も引退したのに私の邪魔をする為に…」


複雑ぅ!!


「お父様は?」


「死にました。ダンジョンで」


もっと複雑ぅ!!


「ごめんね。話は変わるけどなんで罠の専門家は溢れてるの?」


「それは…元々Aランクになれた人でも仲間に恵まれてなれた人と、実力でなれた人の違いです。

実力がある人は変わらず潜れますが、無い人はついていく為に新たなスキルを手に入れなくてはなりません。20階層を超えるとそういう人は罠の専門家にならざるを得ません。戦闘には殆ど参加しなくなるので実力も変わらず…いえ、歳と共に降っていきます。

さらには20階層についたタイミングで足手纏いはクビにしたり、新たに熟練の罠の専門家を雇ったりが主流なんです」


「つまり、罠の専門家は戦闘にあまり参加しない為仲間が死んでしまっても無事だから減らないけど、戦闘要員のAランクの数は死んで減るから需要と供給のバランスが崩れるってことかな?」


「そうですね…仲間が死んでも他のパーティに出くわせば助かる可能性が高いですね。私とは違い普通の罠の専門家は戦闘でもBランク上位の力がある人が殆どですしね…」


大変だな…というか、そこまでしてしがみつきたいものかね?

俺なら…ミランに泣きつくな!間違いない!捨てないでぇー!!


罠の専門家って大分ニッチ(隙間)な役割なんだな…

それに聖奈さんもよくあんな説明で内情を理解できたな…


「わかったよ。でも一つ変わらないのは私達の安全を確保する事だね。おじさんに頼む以外に私達を納得させられる事ってある?」


「それは…ないです」


よし!おじさんに頼もう!大丈夫だ!可愛い娘みたいな存在に頼まれたらおじさんと言う生き物は断れないから!


「じゃあ説得するしかないね!」


「ですが…どうやって…」


聖奈さんが秘伝の説得術を伝授した。

まずは誠心誠意頼む事だそうな。自分は本気なんだと相手に伝わればマリンの安全以外の何かしら他の理由がない限りは断れない。

それでも伝わらない場合は…脅す…


「まっ。最後のは最終手段だね!おじさんもAランクなんだからお金に困っている事はないから買収は出来そうにないし、心に訴えるしかないね」


「わかりました。おじさんは普段は日帰り出来る階層に一人で潜っているので、帰ってきたら説得に行きます」


Aランクと言えど40をこえた人を仲間にする人は少ないだろうな…

もう一人の男性はやはりAランクとしてのプライドがあってBランクとは今更パーティを組みずらいのだろう。

大変だな冒険者。


ランク制度なんてものは周りの人を評価する時の指標としては有効だけど、いざ自分の身に降り注ぐと高ランクなら守らなくてはいけない立場に変わったり、低ランクなら恥ずかしかったりする人もいるのだろう。


俺は全然気にしてないから恩恵しかないけど。


「私達も行くよ」


「えっ?いいのですか?」


そりゃ説明下手だし…説得も最終的には聖奈(プロ)に任せよう。


俺達はその後、これまでの話などをしたりして時間を潰した。

ちなみにライルは一番早く食い切った。





「一軒家に住んでるのか…」


夕方近くまで時間を潰した後は、店にも居づらくなったのでマリンの厚意に甘えて家にお邪魔する事に。


「はい。父が残してくれた家です。Bランクになれたので没収されずに済みました」


家族と言えどここに住むことの出来る条件を満たしていないと持ち家でも追い出される様だ。

父の死後、第一の目標であるBランクになるにはなれたが、上を目指すパーティからはお払い箱にされてクビになったと。


家は二人で住むには十分な広さがあった。一階のリビングに通された後は、お茶を飲みながらその時を待った。


「そろそろ帰ってきているはずですので行きましょう」


「わかったよ。初めは頑張ってね!無理そうなら私が代わるから」


聖奈先生たのんます!!


マリンの家からおじさんの宿までは少し離れている。そこまで歩くこと10分。遂に着いたようだ。

宿に入り受付にいた人に呼び出してもらう。

俺達は食堂を兼ねている一階で飲み物を注文して待った。





「お前達は…どういう事だ?俺はお眼鏡に叶わなかったんだろ?」


赤髪短髪のガタイがいいおじさんこと、ガッシュさんが開口一番告げた。


「お話があります。とりあえず座ってください」


マリンが告げると渋々とガッシュさんは席につきエール(この世界のビールの様なもの)を頼んだ。


マリンの拙い説明を聞いたガッシュさんは


「断る。確かにこいつの親父の事は良き友人として、また一人の冒険者として尊敬していたが事はそう単純じゃない」


そりゃそうだよな。人に歴史ありとは良く言ったもんで、ただの農民にも大工にも職に関わらずルーツなど色々あるもんだ。

俺はそう言う事ばかり気にするから聖奈さんみたいに他人に踏み込めないんだよな。

良くも悪くも…


「おじさんが手伝ってくれたら私は父の夢を追いかけられます!お願いします!」


「だからダメなんだ。俺はもう自分に見切りをつけているからいいが、マリンのような将来があるものを危険地帯に送り届ける真似なんて出来ん」


俺もやめといた方がいいよって言いたくなる。


「私はまだ半人前にもなれていません。それは自分が一番わかっています。ですが、父の生きてきた証を継げるのは私しかいないんです!」


うん。若者の気持ちも応援したくなってきた…


「その父親もダンジョンで死んだんだ。どこでどうくたばったのか俺も知らんが、半人前にもならんマリンをそんなとこに連れて行ったら俺がアイツに殺されちまうよ」


「…………」


あーあ。ダンマリになっちゃった。


「良いでしょうか?」


我らが聖奈先生の出番だ!


「貴方が付いてきてくれたらマリンちゃんは死なないように比較的安全に経験を積むことが出来ます。もちろん貴方がいなくなった時にマリンちゃんが死なないと約束は出来ませんが」


「そうだろうよ。むしろ俺がいかなきゃマリンは危険地帯には行けない。俺にとっては娘みたいなもんだ。俺が行かない理由はわかったろ?」


「ええ。ですので提案があります」


ほほう。ここから巻き返す提案があるんだな。


「貴方もウチのパーティに入ってください。もちろん臨時でも常駐でも構いません」


「…は?」


「えっ?」


「「えっ?」」


ヤバい。ついつい驚いてエリーと声が被ってしまった。

聖奈「セイくんごめんね。おっさんを仲間にしちゃって」


聖「いや、俺は年齢性別にこだわりは無いぞ?」(ホントは女性ばかりがいいけど)


聖奈「最近のBLはおっさん達の絡みが多いの。これは仕方のない流れなのよ」


聖「うん。やっぱり断ってきて」


エリー「出ました。またBLです。一体なんなのでしょうか?」


ミラン「神聖…おっさん…うーん。まだわかりませんね」


ミランの不毛な推理は続く。

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