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138話 ストーカーは任せてくれ!






「ライル。起きてくれ。どうやら来たようだ」


枝の上で器用に寝ているライルを起こした。こいつはこれまで一人でダンジョンに寝泊まりしていたようだから気になっていたが…

何処でも寝れる君だったようだな。


「おっ。しっかりと6人いやがるな」


双眼鏡を渡して確認させた。

ライルも視力は相当いいが、流石にこの距離での顔の判別は難しく、これからの事を考えると他3人の顔を覚えて貰わねばならない。


「どれくらい離れていれば見つからないんだ?」


「確実な事はわかんねーな。だけど200mくらい離れていたら後を付けてるとは思われねーだろうな」


そうか。まぁ相手の索敵範囲なんてわからんよな。

これからしばらくの間、6人の後を付かず離れず尾けて行く事にした。







「何も起こらないな。まぁ何も無い方がいいんだけど」


一行は6階層まで順調に進んできていた。

他の3人はここまで来た事があるようで迷いなく歩を進めていた。


「それはどーだかな。事をやらかすならここだと思うぞ」


「何でだ?」


「これまでの階層は知っての通り森に草原だったろ?森では身を隠せるが逆に魔物も見つけづらい。草原は足の速い狼と辺りを全く見渡せない長い草が邪魔だ。

ここは隠れるところも沢山ある岩場で魔物は足の遅い岩亀だ。

近頃だとここで狩りをする冒険者もいない」


なるほどな。近頃いないと言ったのは金銀などの採掘を出来なくなったからか。興味がないから忘れていたな。何せ俺は大金持ちだからなっ!


「伏せろ。どうやら向こうは何かするつもりだぞ?」


ライルの指示に従い伏せて確認する。


「キョロキョロしてるな。ここで休憩するのか?」


時刻は昼だ。休憩するにはうってつけだが…


「さてな。とりあえず確認に行くぞ」


「わかった」


俺達は息を潜めて近付いていった。






sideサーヤ

「休憩?私は大丈夫だけど貴方達がそういうなら従うわ」


ここまで順調に来られたのだもの。この3人の腕は確かね。


「おう。誰が一番最初だ?」


何やら3人で話し合いをしてるみたいね。


「何惚けてんのさ!アンタが最初だよ!」


「チッ!わぁったよ!」


3人のうち一人が岩の上に移動した。


「待って。見張りなら私達もするわ。戦いでは役に立ってないもの」


どうやら見張りの順番で揉めていたみたいね。


「アンタ達はいいのさ。見張りよりも大事な仕事が待ってるんだからね!」


えっ?

この女性(ひと)の言っている意味が私にはわからなかった。


「お前も好き者だよな。女の癖に女がいいなんてな」


「馬鹿言うな!アンタらみたいなムサイ男が嫌なだけさ」


えっ?何?女だけど女がいい?どうゆう事?







side聖

「見張りが立ったな。どうする?」


3人のうち一人が岩の上から辺りを監視している。


「どうするって近付かなきゃわからんだろ」


「そうだな。よし!あそこの陰なら見つからないだろうから転移するぞ」


多少時間はかかるけど、近寄らないとな。


『テレポート』




おっ。ここからなら声が聞こえるぞ。


「やめなさい!ジーナ立って!メイ逃げて!」


「うるさいねぇ。アンタにはそのうるさい女をやるからちゃんと押さえておきなよ」


「お前が殴り飛ばした女は起きる前に縛っとけよ」


どうやらクライマックスには間に合ったようだな。






sideサーヤ

ジーナが殴られて気絶してしまった…

どうしてこんな事に…


「やめて…二人には手を出さないで…」


「って事はなにかい?アンタが私を楽しませてくれるってことかい?」


うぅ…何よこの変態アマゾネス!!


「サーヤ…」


メイ…逃げて…


ダッ

キンッ


「おっと。このお転婆さんは活きがいいね!」


メイの不意をついた攻撃は容易く受け止められてしまった。


「メイ!逃げて!」


ボグッ


ここまで聞こえる打撃音を残して、メイのお腹に女の拳が突き刺さった。


バタッ


「メイ!!」


「うるさいね。死んじゃいないよ。さて。これからがお楽しみだね」


「よし!俺達も始めるぞ」


そう言うと男は後ろから羽交い締めしていた私を組み倒した。


「いやーーー!?セイさん!助けてぇ!!」


「はははっ。男の名前か?いいぞ!もっと叫べ!」






side聖

ライルが見張りの男を指差して消えた。

どうやらアイツをやってくれるようだ。


「セイさん!!助けてぇ!!」


俺はその悲鳴を合図に飛び出した。




「グェッ!?」


俺は剣を一閃して男の首を刎ね飛ばした。


「だ、誰だい!?」


「あいにくと悪党に名乗る名は持ち合わせていないな」


カッコいい!一度は言いたいセリフランキング上位を言えたぜ!


「セイさん!?」


サーヤがこちらに気づいた。

いや、折角格好付けて名乗らなかったのに、意味ないやん?


「はっ。アンタが噂の…どうだい?取引しようじゃないか。この3人と私を好きにしていいから見逃してくれないかい?」


3人はともかく、アンタは遠慮させてくれ。俺にも選ぶ権利がある!!


「時間稼ぎか?見張りの奴が無事だといいな?」


「なっ!?まさか…」


カッコいい事を言ったけどどうなったかホントに知らん。

ライル負けないで!


「ちっ!どうやら和解は無理らしいね!」


ヒュン!


うおっ!はえーなっ!


女の不意をついた斬撃を何とか躱せた。俺が避けたのを確認した女は勝てないと踏んだのか作戦を変えてサーヤを人質に取った。


「動いたらこの女を殺す!わかったねっ!?」


「わかった」


俺は聞き分けがいいからな!即答だっ!


「セイさん!?私の事はいいんです!コイツらを倒して!」


「この場を動かないから安心しろ」


「ははっ!聞き分けがいいねぇ。そんなにこいつらが大切かい?じゃあついでにもう一つ注文だ!この『アイスランス』えっ!?」


まさか魔法使いだとは思いもしなかっただろう?

女はアイスランスに脚を貫かれて暴れている。


「ギャー!?わだじのあじがぁ!?」


「うるせーな」ヒュン


ライルが有無を言わさず首を刎ね飛ばした。


「無事か?」


「当たり前だろ?こんなペーペーに負けねぇよ」


さいでっか。

ライルは会った時からBランクでも抜けた強さだったからな。


「サーヤ。放心してるところ悪いが二人の介抱を頼む」


「えっ…あっ!はいっ!」


ジーナは大丈夫だけど他二人の服がはだけているからそれはサーヤに任せて、俺達は殺した冒険者の確認をする事にした。


「コイツらはどうする?」


「どうするって…まさかセイは人肉を…」


「アホな事抜かすな!処理だよ処理!」


カニバリズム(食人)はヤバいよ…


「ほっとけばいいだろ。ここはダンジョンだ。明日の朝には魔物の腹の中だろ」


そういうものか。


「二人が起きた時に見たくないだろうから崖下に落としとくぞ」


ライルは何とも思ってなさそうだが、あの三人娘は町人に毛が生えた程度の冒険者だ。

俺達は3人同じところに落としといた。






「「「本当にありがとうございました!」」」


無事に目を覚ました2人を足した3人から礼を言われた。


「気にするな。俺も対人戦の経験が積めて良かったよ」


くぅーかっくぃー!!


「いや、お前死にそうな顔でしんぱ…うう!!」


余計な事を言いそうになったライルの口を物理的に塞いだ。

力は俺の方が上だ!パワー!!


「私達…冒険者をやっていくのは無理なんでしょうか…?」


サーヤが気落ちしている。


「さあ?それはわからんな。一つ言えるのは少しずつしか人は成長しない。サーヤ達は低階層が適正だと思う」


俺の言葉に3人は肩を落とした。

それに気付かないフリをして俺は独り言のように続けた。


「俺の仲間にミランという子がいる。その子は家庭の事情で12歳から一人で冒険者をしていた。普通の女の子がだ。街中でコツコツと小さな依頼をこなしていた。

俺はダンジョンを攻略していく冒険者もミランのような冒険者も同じ冒険者だと思う。

何も高ランクやダンジョンが冒険者の全てではないからな。

3人が本気で冒険者をするならここで低階層からコツコツと強くなるもよし、別の国に行ってそこで少しずつ強くなるもよしだと思うが…どう思う?」


長い独り言を終わらせて3人に問う。

これでホントの独り言になっていたら泣くよ?


「私は…」


言葉を詰まらせたサーヤが続ける。


「この3人でずっと冒険者をしたいですっ!」


「私もよ、サーヤ!」


「私もぉっ!」


うん。3人がどんな答えを出すかはともかく、今回の件を乗り越えてくれたらいいな。

聖「俺はみんなと冒険を続けたい!」(サーヤのセリフはいつか言いたいランキングだからな!)


聖奈「パス」


ミラン「うーん。パスで」


エリー「やったー!私の上がりです!」


ライル「またエリーの勝ちかよ…」


聖 (あれ?トランプに夢中で聞こえなかったのかな?)「俺はみんなと…」


聖奈&ライル「うるさいから黙って(ろ)て!」


ミラン「セイさん。後で聞きますから…」


聖「…」


聖は言う場面と伝える人達を間違えた。

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